Archive for category ロングラン(ロングライフ)

Date: 8月 26th, 2020
Cate: ロングラン(ロングライフ)

定番(その9)

JBLのControl 1は、1986年ごろに最初のモデルが登場している。
現在はControl 1 PROである。

この間に何度かのモデルチェンジをしているし、
パワーアンプ内蔵モデルが登場した時期もあった。

つまり、それだけ売れているわけだ。

Control 1が登場した時は、ステレオサウンドにいた。
周囲の人たち、それもJBLのスピーカーを鳴らしている人たちの反応が、
どういうものなのかは知っていた。

私だって、その頃は、QUADのESLを鳴らしていたけれど、
4343への憧れはずっと抱いたままだったから、
Control 1登場のニュースは、複雑なものがあった。

この十年ぐらいで、JBLはずいぶん変った。
Control 1の登場が、いまのJBLにつながっているような感じを受けるし、
だからこそ、Control 1はPROとなり、いまも現行製品なのだろう。

4312が古くからの定番を引き継いでいる位置づけだとすれば、
Control 1は、はっきりといまのJBLの定番といえる。

Control 1 PROは、ペアで二万円前後である。
一ペアあたりの利益は小さいわけだが、
安価な製品だけに数は、かなり売れている、とみていいだろう。

おそらく安定して売れている製品だからこそ、
JBLは定番として、いまも製造している。

つまり定番をもつブランドは、ある程度の安定した収益が見込める。
定番をもっているからこそ、フラッグシップモデルの開発ができるし、そこに力を注ぎ込める。

冒険だって可能になる。

Date: 8月 22nd, 2020
Cate: ロングラン(ロングライフ)

定番(その8)

企業にとっての定番と、
ユーザーから見ての定番は同じなのだろうか。

定番といえる製品は、その企業(ブランド)の、いわば顔といえるモノ、
そして、時代が変っても売れ続けるモノであろう。

たとえばJBLにとっての定番といえば、どれになるのか。
オーディオマニアからみれば、LE8Tだったり、D130、375といったスピーカーユニット、
パラゴン、オリンパス、ハーツフィールドといった家具的雰囲気をもつスピーカーシステム、
4320、4343、4350といったスタジオモニターシリーズあたりを思い浮べるのは、
50より上の世代だろう。

でも、ここに挙げたモデルは、ほんとうに定番といえるのか。
いえるのは、スピーカーユニットぐらいである。

LE8TにしてもD130にしても、ほかのユニットもながいこと現行製品だった。
つまりは売れ続けていたわけだ。

4343はたしかに、ペアで百万円をこえるスピーカーシステムとしては驚異的な本数が売れている。
それでも4343は、1976年秋ごろに登場し、1982年頃には4344になっている。

そうやって考えてみると、4312こそが定番なのかもしれない。
4310の時代も含めれば、そうとうにながい。

とはいえ4312になっからは、4310(4311)のスタイルを大きく変えてしまった。
それでも流れを受け継ぐモノとはいえる面もある。

JBLというブランドの定番だからこそ、
JBLは70周年記念モデルに4312を選んだ、ともいえる。

それでも……、と思うところも残る。
4310(4311)は、上下逆転のユニットレイアウトとともに、
30cm口径のウーファーはアンプとのあいだには、ネットワークが存在しない。
表からは見えないものの、この特徴こそが4310(4311)といえたのだが、
70周年記念モデル以降、ウーファーにローパスフィルターが入るようになった。

この変更点は、スピーカーシステムとしての完成度という点からではなく、
あくまでも定番といえるかどうか、という視点で捉えるならば、違う、と思ってしまう。

JBLの現在の定番となると、Control 1ではないだろうか。

Date: 5月 23rd, 2020
Cate: ロングラン(ロングライフ)

定番(その7)

定番といえるモデルをもつメーカーとそうでないメーカーがある。
型番だけが定番を受け継いでいるから、といって、
そのモデルが必ずしも、誰もがみてもはっきりと定番といえるわけでないことは、
日本のメーカーの製品には、少なくない。

型番は違ってきているけれど、定番といえるそうモデルはある。
QUADのコンデンサー型スピーカーシステムである。

現在のQUADコンデンサー型は、ESL2812、ESL2912となっているが、
1981年に登場したESL63と基本的に同じままである。

ESL2912はパネルが六枚になっていて大型化されたモデルだから、
ESL63のそのままとはいえないが、基本的に大きく違っているわけではない。

ESL2812はパネル数もESL63と同じである。
外観は多少は変更されている。

けれどサンスイのプリメインアンプの607、707、907シリーズが、
新モデルが出るたびに、別のアンプに変っていったこととは対照的である。

日本ではQUADのESL2812の存在はないに等しいのかもしれない。

さっきQUADの輸入元のロッキーインターナショナルのサイトをみたら、
スピーカーのところに表示されるのは、小型ブックシェルフ型のみで、
ESLは、そこにはない。

QUAD本家のサイトをみれば、そこには2812、2912ともにきちんとある。
製造中止になったわけではなく、ロッキーインターナショナルが取り扱いをやめたのだろう。

輸入元が取り扱いブランドの全製品を輸入しないのは、昔からよくあることだ。
日本市場では売れそうにないと判断されたモノは取り扱わないようだ。

たとえばハーベスのトップモデル、Monitor 40.2は、
まだMonitor 40だったころから気になっているモデルなのだが、
Mプラス コンセプトのサイトには、ずっと以前からいまも、Model 40のページはない。

Date: 10月 21st, 2019
Cate: ロングラン(ロングライフ)

どこに修理を依頼したらいいのか(修理にまつわる難しさ)

この項で、二つの修理業者について以前書いた。
その一つの業者について、悪い、とまではいかないまでも、
いい評判ではなくなっている、というウワサを耳にした。

そこに修理を依頼したことはないから、
はっきりとしたことはいえない。

それに修理業者の評判は、難しい。
ある人が、故障したオーディオ機器を、どこかに修理に出す。
戻ってきた製品を、どう評価するのか。

たとえば、あるオーディオ機器を二台以上所有していて、
同じ時期に、同じ箇所が故障したばあいは、
一台はA社、二台目はB社に修理に出して、
戻ってきて、両社の修理の出来ぐあいを比較するならば、
そこそこにきちんとした判断はできようが、
たいていの故障は、そういう状況ではない。

一台しか持っていないオーディオ機器が故障して、
どこかに修理に出すわけだ。
修理から戻ってきたモノを、何かと比較することはできない。

結局、なんとなくの印象で、修理業者は評価されているところもあるはずだ。

そして、信頼できそうな修理業者は少ない。
だから、そういうところに修理依頼は集中するであろう。
そうなると、以前とは違ったトラブルとはいえない些細なことだって起るかもしれない。
でも、それは人によって受け止め方が違ってもくる。

さらに個人で修理を請け負っているところはそうではないが、
複数の人たちでやっているところだと、人の入れ替りもあるはず。
いろんな変化が起っているだろうし、これからも起るだろう。

よさそうなところがそうでなくなってしまう。
残念だけど、あり得ることだ。

ただ、それは業者側だけの問題なのだろうか、と思うから、
こんなことを書いている。

修理を依頼する側、つまりオーディオマニアの態度も、
時によって、人によって、修理業者を困らせ、
やる気を失わせているのかもしれない。

信頼できる、腕のいい修理業者がいなくなって困るのは、
われわれオーディオマニアだ、ということを忘れないでいただきたい。

Date: 8月 29th, 2019
Cate: ロングラン(ロングライフ)

どこに修理を依頼したらいいのか(大事なひとこと)

六年前に「チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・修理のこと)」で、
パイオニアサービスネットワークのことを書いた。

パイオニアのExclusiveの修理をやっている会社である。
いまのところ現在形なのだが、9月いっぱいで修理の受付を終了する。

すでにいくつかのオーディオ関係のサイトやSNSで取り上げられている。
人によって受け止め方は違うけれど、
私は、いままでよくやってくれた、と思う気持が強い。

もちろんもっとながく続けてほしい、という気持はあるが、
それはもう無理というものだろう。

製造中止になってながい時間が経っているオーディオ機器の修理のことは、
これまでもいくつか書いてきた。

故障しないオーディオ機器は、まずないわけだから、
ほとんどの人がいつかは直面する問題である。

昨晩、Exclusiveの修理が終了することが話題になった。

メーカーであれ、輸入元であれ、オーディオ機器をオーディオマニアに売る。
そこでは、メーカー、輸入元の人が、
オーディオマニア(つまり客)に「ありがうとございました」という。

必ずしも客と顔を合せるとは限らないから、つねにそういうわけではなくても、
「ありがとうございました」というのは、売る側の人である。

けれど修理となると違ってくる。
修理を依頼してきた人(オーディオマニア、客)が、
メーカー、輸入元の人に「ありがとうございました」ということになる。

ユーザーから「ありがとうございました」という感謝のことばをもらえる。
修理、特に製造中止になってずいぶんな時間の経ったモノの修理はさらにたいへんなのだが、
この「ありがとうございました」のことばが聞けるからこそ、やりがいがある──、
そういう話をきいた。

修理代金をきちんと払っているのだから……、
なぜ客側が「ありがとうございました」といわなければならないのか──、
そう思う人はいるのか。

それでも、言おうよ、といいたい。
たった一言で、修理にかかわってきた人たちの気持は変る。

パイオニアサービスネットワークへも、多くの「ありがとうございました」があったのだとおもう。

Date: 7月 16th, 2019
Cate: ロングラン(ロングライフ)

定番(その5のその後)

その5)で書いている友人Aさんの友人のCさんのこと。

奥さんに黙ってCL1000を購入。
奥さんが旅行で留守にしている隙に、
それまで使ってきたC1000をCL1000へと置き換える。

Cさんの計画通りに事は運んだ。
けれど数日後、奥さんが「どこか変えた?」と言ってきたそうである。

音がずいぶん良くなっているから、どこか変えたでしょう、とCさんに問いつめた。
そのくらい音が良くなって、Cさんも一瞬どきっとしたものの、なんとか切り抜けたそうである。

交換したことは一部認めたそうである。
計画は成功したとはいえ、こんなにも早くバレるくらいに、
音が良くなったことこそ、嬉しい誤算といえることなのだろう。

Date: 6月 29th, 2019
Cate: ロングラン(ロングライフ)

定番(その6)

C1000は、ステレオサウンド 38号に登場している。
新製品としてではなく、
38号の特集「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」のなかで登場している。

C1000は井上先生、上杉先生、長島先生のリスニングルームの写真に登場している。
38号を初めて読んだ時に、ここにもC1000、ここにもある、と思ったほどだ。

こんなことを書くと、メーカーが各オーディオ評論家にばらまいたんだろう、
と自称・事情通の人はそういうに決っている。

その可能性を完全に否定はしないが、
仮にそうだとしても、気にくわないオーディオ機器を、ふだん目につくところに置くだろうか。

長島先生は、C1000を左チャンネルのスピーカーの横に置かれていた。
レコード棚の上であり、机の隣でもある。

C1000の周囲に、他のオーディオ機器はない。
つまりC1000は飾ってあるだけである。

ほとんどの人が、音楽を聴いているときに、必ず目に入ってくる位置に気にくわないモノは置かない。
気にくわないモノを眺めながら、好きな音楽を聴きたい、と思う人はいないはず。

ということは、長島先生はC1000のデザインを気に入っておられたのか。

上杉先生はアンプ棚の上段に、C1000を収納されていた。
この位置も、音楽を聴いているときに、必ずC1000が目に入っている。

井上先生にしても、多少位置は違うが、少し視線をずらせば視界に入ってくる位置だ。

38号の、これらの写真を見て、
みんなC1000のデザインを気に入っているんだろうなぁ、と思った。
いまもそう思っている。

そういうアンプだから、Aさんの友人のCさんも、ずっと長いこと使いつづけてこられたのだろう。

そのC1000のデザインを受け継ぐCL1000のプロポーションを、
ここ数年のずんぐりむっくりにしなかったのは、賢明である──、
というよりやっと気づいてくれた、という感のほうが強い。

Date: 6月 28th, 2019
Cate: ロングラン(ロングライフ)

定番(その5)

この項でも、別項でも、
ラックスのアンプの、最近のずんぐりむっくりなプロポーションに否定的なことを書いてきた。

私だけがそう感じているのではなく、
私の周りでは、私と同世代か上の世代の人たちも、やはり同じように感じている人が少なくない。

最近、そのラックスからCL1000が登場した。
1970年代のラックスのソリッドステートのコントロールアンプC1000(1010)と、
ほぼ同じといえるデザインをもつ管球式コントロールアンプである。

このCL1000、ずんぐりむっくりではない。
かといって、C1000と同じ外形寸法かというと、少し違う。

C1000はW48.5×H17.5×D24.5cm、
CL1000はW46.0×H16.6×D45.4cm。
奥行きは大きく違うが、横幅と高さは数センチの違いであり、
C1000とCL1000の横幅と高さの比率は同じである。

CL1000の横幅が、ずんぐりむっくりプロポーションの44.0cmだったら、
どんな印象に変っていただろうか。

C1000とはずいぶん違った印象になったのだろうか。
もしそうなっていたら、ある人はCL1000を買わなかったかもしれない。

友人のAさんの友人(Cさん)、昔からの音楽好きな人らしい。
ずっとラックスのC1000を愛用してきた。

そのCさんは、CL1000を買った、そうだ。
たまたま臨時収入があったこと、
C1000も、もう四十年以上経つアンプだから、
いくら気に入っているとはいえ、維持していくのも大変になっている。

そこに、パッと見、同じといえるCL1000である。
これならば、奥さんのいない隙にC1000と交換してもバレない、というメリット(?)もある。

もしCL1000の横幅が44.0cmだったら、
ずんぐりむっくりのプロポーションだったら、
Cさんは買い替えなかっただろうし、
音を聴いて気に入って、奥さんに黙ってこっそり入れ替えたとしたら、
黙って買ったこと、臨時収入を隠していたことなどが、すぐにバレてしまっただろう。

横幅、高さは数センチ小さくなっていても、
フロントパネルのプロポーションは変っていないCL1000だからこそ、
Cさんは踏み切れたのではないのか。

Date: 12月 5th, 2018
Cate: ロングラン(ロングライフ)

定番(その4)

昨年、(その3)でラックスのアンプのプロポーションについて書いた。
ずんぐりとしたプロポーション。

私には、こんなプロポーションにする理由がわからずにいた。

別項「2018年ショウ雑感(その25)に、facebookでコメントがあった。
そこには、ミニヴァンをかっこいいと思っている人たちが多いのは嘆かわしい、とあった。

ミニヴァンをかっこいい、と思う人がいるのか、と驚くとともに、
そうか、そういう感覚からすれば、
ラックスのいまどきのずんぐりプロポーションもかっこいいのか、とも思った。

ラックスのずんぐりプロポーション・アンプのデザイナーが、
どういうクルマをかっこいいと捕えているのかは知らない。
ミニヴァンをかっこいい、と捉えているのかどうかもわからない。

それでも、そこにつながっていく何かがあるような気はしている。

Date: 12月 27th, 2017
Cate: ロングラン(ロングライフ)

どこに修理を依頼したらいいのか(ボイスコイルの断線・その2)

ボイスコイルは、円筒状のボビンに金属線が巻かれているモノだ。
単純な構造といえばそういえるが、そう簡単なモノではない。

コイルの断面は、丸と四角がある。
四角のものはエッジワイズと呼ばれていて、
JBLの主だったユニットはエッジワイズ巻きである。

いまはどうなのか知らないが、JBLのコイルの巻き方はきれいだった。
エッジワイズ巻きは断面が丸の普通の金属線よりも巻きのが難しい、と聞いている。

なのにJBLのエッジワイズは見事だった。
ボイスコイルにはアンプからの信号が通り、
スピーカーの振動系で最初に動き出すのは、ここである。
ここの動きから、すべてが始まるわけで、
ボイスコイルがいいかげんな造りであれば、
他がどんなに立派に見える造りであっても、スピーカーとしての性能は見かけほどではない。

しかもボイスコイルは外側からは一切見えない。
その見えない部分だからこそ、手を抜くこともできる。
けれどわかっているメーカーは、そんなことは絶対にしない。

ボイスコイルの線材は、銅もあればアルミもある。
JBLはフルレンジユニットには軽いアルミを、ウーファーには銅を使う。
たとえばD130はアルミ、D130のウーファー版の130Aは銅である。

スピーカーユニットをバラせば、ボイスコイルを見ることはできるが、
それでも見えないところもある。
熱処理をしているかしていないか、である。
JBLは行っていた(現在はどうなのか知らない)。

他にもボビンの素材、接着剤などが、ボイスコイルには関係してくる。

ボイスコイルを巻き直す、ということは、
修理対象となっているスピーカーユニットの、これらのことをすべて把握したうえで、
まったく同じに仕上げ直すことである。

そんなことが可能だろうか、とずっと思ってきた。
まず無理である。
それとも私の知らない、何か特別な修理方法で断線を直せるのか。

そんなものはないことが、今回の件ではっきりした。
ボイスコイルの断線を修理する、と謳っているところがどんなことをやっているのか。
同等品のボイスコイル(ボビンを含めて)に付け替えている。

すべての修理業者がそんな修理の仕方をしているわけではないだろう。
中にはきちんと巻き直している業者もいるはずだ。

だがコイルをオリジナルとまったく同じに巻き直すことは、まず無理であるし、
手先が器用だから、といって簡単にできることでもない。

Date: 12月 26th, 2017
Cate: ロングラン(ロングライフ)

どこに修理を依頼したらいいのか(ボイスコイルの断線・その1)

いまでは、「スピーカー 修理」と検索キーワードを入力すれば、
いくつもの結果が表示される。

これらの修理業者の腕前がどの程度なのかは、
なかなか掴みにくいし、比較もしにくい。
結局、口コミということになってこよう。

ある人のスピーカーのウーファーのボイスコイルが断線してしまった。
ボイスコイルの修理もやってくれるところは、ある。

けれどボイスコイルの修理を、具体的にどうやるのか、
自分の頭で考えてみると、ほんとうに可能なのだろうか、
どれだけきちんとやれるのか、という疑問が、ずっと以前からあった。

製造中止になり、コーンアッセンブリーが入手できなくなったユニットのボイスコイルの断線、
コイルの巻き直し──、ただ巻いて動作する(音が出るようになる)レベルであれば、
手先の器用な人であれば、できるであろう。

けれど、そのユニットの本来の性能をできるかぎり維持するとなると、
そうとうに困難であることは、容易に想像がつく。
ただ巻けばいいわけではない。

だから、ずっと疑問だったのだ。
その難しさのいくつかを挙げていくだけでも、
具体的な修理方法は……、と考えてしまう。

インターネットだけに頼っていても埒はあかない。
その辺のことを知っている、というか、
業界の人を知っている人に、だから訊ねてみた。

彼の返答は、「やっぱり、そうなのか……」と思わせる内容だった。

Date: 7月 1st, 2017
Cate: ロングラン(ロングライフ)

つくもがみ

つくもがみ(付喪神、九十九神)。
長い年月(百年ほど)を経たモノに、神もしくは精霊が宿る、という。

プリミティヴなモノであれば、百年の歳月を経ることもできようが、
オーディオ機器ともなると、アンプもCDプレーヤーなどのデジタル機器はまず無理である。

プリミティヴといえばスピーカーだが、
百年もつかといえば、これもあやしい。

スピーカーよりもプリミティヴなモノとして、
アクースティック蓄音器がある。

ビクターのクレデンザは1925年に登場している。
HMVの#202、#203も、あと十年ほどで百年を迎える。

神が宿るのか。
と思いつつも、付喪神という漢字表記は、
付喪・神と多くの人は見るだろうが、私には付・喪神と映る。

ここにも「喪神」がある。

Date: 2月 12th, 2017
Cate: ロングラン(ロングライフ)

定番(その3)

ラックスのSQ38FD/IIの横幅は47.6cmで、
ウッドケースを脱ぎさったLX38の横幅は44.0cm。
確かにSQ38FD/IIは、現行のLX380の44.0cm(ウッドケースつき)からすれば、
大きいと感じるサイズである。

けれどラックに収まらない、ということはない。
いまどきのラックは横幅48cmのアンプが収まらないのが多い、というのか。

だとしたらアキュフェーズは? と聞き返したくなる。
アキュフェーズのプリメインアンプの横幅は現行製品は46.5cmになっている。
CDプレーヤーのDP750の横幅は47.7cmと、SQ38FD/IIとほぼ同じである。

いまどきのラックには詳しくない。
けれどアキュフェーズのアンプやCDプレーヤーが、
いまどきのラックに収まらない、ということは一度も耳にしていない。

それにラックのサイズにオーディオ機器のサイズを合せるものなのか、という疑問がある。

これを書くにあたり、ラックスの他の製品の横幅を調べてみた。
おもしろいことにLX380だけでなく、コントロールアンプもパワーアンプも横幅は44.0cmに統一されている。

44.0cmに、なにかこだわりがあるのだろうか。
パワーアンプのM900uは、重量48.0kgで、高さ22.4cm、奥行き48.5cmの大型のサイズだ。
それでも横幅は44.0cmである。

全体のプロポーションを崩してまでも、44.0cmの横幅にこだわる理由は、何なのか。
いまのところ見当がつかない。

ラックスはLX380も定番として捉えているのか。
おそらくそうだと思う。
だからこそSQ38Fから続く基本デザインを、LX380でも採用しているのだから。

けれど、そこにズレが生じてしまったように思うのだ。
管球王国のVol.83の傅信幸氏の文章と同じように、受け手とのあいだにズレがある。

Date: 2月 12th, 2017
Cate: ロングラン(ロングライフ)

定番(その2)

定番といえるオーディオ機器をいくつか思い浮べてみてほしい。
私が(その1)で挙げたモノの他にもいくつかあるだろうが、
その中にはアンプは含まれているだろうか。

たとえばサンスイの607、707、907シリーズは何度もモデルチェンジしている。
けれど定番として捉える人もいれば、そうでない人もいるはずだ。
私は後者だ。

AU607、AU707が最初に登場し、
ダイヤモンド差動回路を採用時に、上級機のAU-D907が登場し、
607、707も数字の前にDがつくようになった。

そして限定モデルとしてAU-D907 Limitedが出た。
ここまでは定番となり得るアンプだった。

けれど次のフィードフォワード回路採用の、型番末尾にFのつくモデルから、
定番から外れはじめたように感じた。

ラックスのSQ38はどうだろうか。
1978年に登場したLX38までは、確かに定番といえるアンプだった。

LX38で一旦シリーズは途絶える。
その後、ふたたびシリーズ展開が始まるのだが、
それを以前のように定番と捉えることはできなかった。

いまはLX380があるが、これを定番と捉える人はどれだけいるのだろうか。

管球王国のVol.83の新製品紹介に、LX380が取り上げられている。
傅信幸氏が書かれている。

そこにLX380のプロポーションについての記述がある。
以前のSQ38は横幅があり大きかった。
このサイズのままでは、いまどきのラックには収まらないだろうから、
横幅を短くする必要があった──、そんなふうな説明がなされていた。

こんな説明で納得する人がいるのか。

Date: 2月 12th, 2017
Cate: ロングラン(ロングライフ)

定番(その1)

長期間にわたって売り続けられている製品・商品をロングランとかロングセラーなどという。
オーディオの世界にもロングラン・コンポーネントはある。

オルトフォンのSPU、デンオンのDL103がすぐに浮ぶ。
これらよりも少し新しいところでは、オーディオテクニカのAT33も挙げられる。

スピーカーユニットではフォステクスのFE103がある。
昔はJBLのLE8T、アルテックの755もそうだったけれど、
いまはどちらも製造中止になって久しい。

JBLには4311があった。
4311の後継機として4312があり、昨年70周年記念モデルとして4312SEが出た。

このへんは人によって捉え方が違ってくるのだが、
私の目には4312は4310、4311とは違うスピーカーとしてうつる。
ましてネットワークに変更が加わった4312SEは、4310、4311の流れの外に位置する。

こういうロングランの製品を日本語にすれば、定番だろう。

SPUにしてもDL103にしても、上に挙げたモデルは、
どれもそのメーカーの定番の製品である(あった)。

ここに来て業績が回復しているというニュースがあったマクドナルドは、
少し前までは、ボロボロの会社のような印象で報道されがちだった。

マクドナルドがなぜダメになったのか。
正確なところはわからないが、友人らと話している時にマクドナルドのことが話題になった。
友人らはみな同世代。
10代のころにマクドナルドを初めて食べている世代だ。

みな、あのころのマックはおいしかった、という。
私も東京に出て初めて食べたビッグマックはおいしいと感じた。

それがいつしかおいしいとは感じなくなっていた。
みな同じだった。
年齢も関係しているだろうし、舌も肥えてきたからなのかもしれないが、
それでもあの頃のビッグマックといまのビッグマックは違い過ぎるだろう、とも話した。

記憶のなかだけの比較でしかないのはわかっている。
正確な比較ではない。
それでも、あの頃のビッグマックは、味だけでなく、ボリュウムもあった、
そのボリュウムが、いかにもアメリカの食べ物という印象を与えてもいた。
とみな感じている。

そのボリュウムがなくなってしまったのが凋落の原因だ、と好き勝手に話していた。

ビッグマックはマクドナルドの定番であり、
ビッグマックという定番があの頃のままであったならば……。
マクドナルドの業績の変化は違っていたかもしれない。

もしかするとあの頃のビッグマックといまのビッグマックは、まったく同じなのかもしれない。
けれど変っている、と感じている。

定番が定番にあり続けるためには、まわりの変化に応じての変化が必要であり、
変化を完全に拒否したところでは、定番を定番として維持することはできないのだろう。