マランツ Model 7はオープンソースなのか(その7)
1978年に、日本マランツからModel 7KとModel 9Kが発売になった。
型番末尾にKがつくことがあらわしているように、キットである。
この高価なキットの資料には、次のようなことが書いてある。
*
ニューヨークの倉庫からする古い青図を私達は入手し、パーツリストをたどってオリジナルのパーツを極力探す努力をしました。ただし年月も経ち今や百パーセントオリジナルパーツの入手はもとより不可能です。従って完成品の再現ではなくして、こよなく♯7、♯9を愛しておられる方に、そして管球式アンプをよく熟知された高度なマニアに部品を提供し♯7、♯9を再現していただこうということになりました。
*
オリジナルにより近いということでは、このキットのほぼ20年後に出た7と9のほうだろう。
だからこそ、キットではなく完成品として、この時は出してきた。
マランツ Model 7はオープンソースなのかについて、考えるうえで、
キットの存在は忘れてはならない。
ステレオサウンド 49号の記事には、資料からの引用がさらに続く。
*
通常のキットとはかなりその意味が異なります。オリジナルな音の記録は現実にはありませんし、現状の古いアンプもパーツの老化を含めて本来の音の保証もありません。この音についてはより知っておられるユーザーに作っていただこうという趣向です。
*
本来の音、
マランツ Model 7の本来の音。
それを知っている人がどれだけいるのだろうか。
私のModel 7はオリジナルだ、
その音こそ、オリジナルのModel 7の音だ、
こんなことを主張する人はいる。
それでも、その人がそう思い込んでいるだけであって、
オリジナルの音そのままだという保証は、どこにもない。
(その6)で、アメリカのNwAvGuyと名乗る匿名のエンジニアのことを書いた。
彼が設計したヘッドフォンアンプとD/Aコンバーターは、回路図はもちろん、
プリント基板のパターンも公開されている。
指定通りに製作すれば、NwAvGuyの意図したとおりの、
つまり本来の音が出せるのか。
出てくるはず、と考えられるが、
NwAvGuyのヘッドフォンアンプ、D/Aコンバーターのオリジナルの音、
つまりNwAvGuyが製作したこれらの音を聴いている人は、
おそらくほとんどいないと思われる。
指定通りに製作して、その結果として出てきた音を、
本来の音と信じるしかない、ともいえる。