五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その24)
アンプの自作が初めて、という人にいいたいのは、
一時間自炊のすすめ、である。
これは伊藤先生から30年以上昔にいわれたことだ。
別項「伊藤喜多男氏の言葉」で書いている。
一時間自炊といっても、なにか特別なものを作って、ということではない。
特別な食材、高価な食材を用意しての自炊ということではない。
それこそ冷蔵庫の中にある食材を使って自炊、
近所の店で食材を買ってからの自炊である。
一度も自炊をしたことのない人が、
一流の高級料理店で出される料理をつくろうとするだろうか。
たぶんやらないだろう。
なのに趣味の世界となると、
オーディオの世界となると、
初心者がいきなり300Bのアンプを作ろうとしたりする。
それも高価な部品をたっぷりと使って、である。
趣味の世界だから、という一言で片づけてしまえるところもあるといえばある。
でも趣味の世界だからこそ、段階を踏んでこそ、ではないだろうか、と思う。
五極管で真空管アンプを作ってみよう、と思う人がいるかもしれない。
そういう人は、まず自炊をしてほしい。
ありふれた食材での料理から始めてみる。
たとえば肉ともやしの炒め物。
もやしは安価だし、特に難しいわけではない。
誰にでもできる料理といえば、たしにかそうなのだが、
変に凝る人は、味つけに変った調味料を使ったりするかもしれない。
そんなことをしてほしいのではなく、
ごく当り前の味つけであっても、炒める前にもやしのヒゲをきれいに取っていく。
一手間かけるだけである。
これだけのことなのだが、ヒゲを取ったのを味わうと、次からもそうしたくなる。