Archive for category 黄金の組合せ

Date: 7月 27th, 2022
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その38)

黄金の組合せということでは、この文章も忘れられない。
     *
 ……という具合にJBLのアンプについて書きはじめるとキリがないので、この辺で話をもとに戻すとそうした背景があった上で本誌第三号の、内外のアンプ65機種の総試聴特集に参加したわけで、こまかな部分は省略するが結果として、JBLのアンプを選んだことが私にとって最も正解であったことが確認できて大いに満足した。
 しかしその試聴で、もうひとつの魅力ある製品を発見したというのが、これも前述したマッキントッシュのC22とMC275の組合せで、アルテックの604Eを鳴らした音であった。ことに、テストの終った初夏のすがすがしいある日の午後に聴いた、エリカ・ケートの歌うモーツァルトの歌曲 Abendempfindung(夕暮の情緒)の、滑らかに澄んで、ふっくらとやわらかなあの美しい歌声は、いまでも耳の底に焼きついているほどで、この一曲のためにこのアンプを欲しい、とさえ思ったものだ。
 だが結局は、アルテックの604Eが私の家に永く住みつかなかったために、マッキントッシュもまた、私の装置には無縁のままでこんにちに至っているわけだが、たとえたった一度でも忘れ難い音を聴いた印象は強い。
     *
瀬川先生の「いま、いい音のアンプがほしい」からの引用だ。

エリカ・ケートのモーツァルトの歌曲、
マッキントッシュのC22とMC275、アルテックの604E。

時代をふくめて、黄金の組合せが奏でた音。

Date: 5月 17th, 2022
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その37)

黄金の組合せとは、アナログディスク全盛時代だからこそ、と、
改めて、この項を書きながら思っているところだ。

スピーカーがあり、アンプがあり、
そしてカートリッジがあってのいわば三位一体ともいえる絶妙の組合せだからこそ、
黄金の組合せと呼ばれたのだろう。

タンノイのIIILZ、ラックスのSQ38F、オルトフォンのSPU-G/T(E)、
この三つが揃っての黄金の組合せなのだ。

もしカートリッジがSPU-G/T(E)ではなく、
SPU-G/T(E)と正反対の性格の音のカートリッジだったらどうなっただろうか。

SPU-G/T(E)よりも透明で繊細な音だけれども、
低音の豊かさ、充足感に乏しいカートリッジでは、
《〝黄金〟の鳴らす簡素な音の世界》は奏でられなかったはずだ。

私が考えた組合せでも、そうだ。
カートリッジがピカリングのXUV/4500Qだったからこそ、である。

瀬川先生が考えられる《現代の黄金の組合せ》もまた、
アナログディスクゆえの組合せである。

瀬川先生はCDの音を聴かれていない。
瀬川先生が長生きされていたら──、
1990年ごろに現代の黄金の組合せについて何か書かれていたとしたら、
どんなことを書かれただろうか。

Date: 5月 16th, 2022
Cate: 黄金の組合せ
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黄金の組合せ(その36)

黄金の組合せで思い出すことが、一つ私にはある。
瀬川先生が熊本のオーディオ店に定期的に来られていた時のことだ。

別項「ある組合せ」ですでに書いているが、
私の希望でスペンドールのBCII、ラックスのLX38、ピカリングのXUV/4500Q、
この組合せが鳴らした音は、いまでもはっきりと思い出せるだけでなく、
その時、瀬川先生が「これはひじょうにおもしろい組合せだ。ぼくも聴いてみたい組合せ」と言われた。

一曲鳴らし終った後に、
「いやー、これはほんとうにいい音だ。玄人の組合せだ!!」と言ってくださった。
ちょうど最前列の真ん中の席が空いていたので、そこに座られ、
瀬川先生のお好きなレコードを、もう一枚かけられて、
そのときの楽しそうに聴かれていた表情と、「玄人の組合せ」という褒め言葉が、
高校生だった私には、二重にうれしかった。 

この組合せは、黄金(絶妙)の組合せ、といっていいかもしれない。

BCIIもLX38も、音の輪郭が甘いほうである。
そこに同じ傾向のカートリッジをもってきては、どうにも聴けない音になってしまうところを、
カートリッジにXUV/4500Qをもってきてピリッとさせる──、
そんなふうに瀬川先生が解説してくださった。

「BCIIとLX38がこんなに合うとは思わなかった」とも言われた。 
その約半年後に、ステレオサウンドの別冊として出たコンポーネントの組合せの本に、
カートリッジは異っていたけど、菅野先生も、BCIIとLX38を組み合わされている。

なのでBCIIとLX38の相性はかなりいいといえる。

Date: 5月 14th, 2022
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その35)

現代の黄金の組合せは可能なのか。
それに対する瀬川先生の答は、次のとおりである。
     *
 さて、そうであるなら、こんにちの最新録音を、十二分とまではゆかないにしても一応、聴きとれるだけの能力を具えながら、かつての〝黄金の組合せ〟的に、全体として必ずしも大がかりな形をとることなく、そして価格的にも大げさでない、いわば〝現代の黄金の組合せ〟といったものが考えられるものか、どうだろうか。
 結論を先に言ってしまうなら、現代ではもはや、十年前のように明確に、これ一組、と言い切れるほどの絶妙の組合せは考えられなくなっていると思う。というのは、現在では、十年前と違って、水準をつき抜けた優秀なパーツが、非常に数多く出揃っているからで、またそれに加えて、すでに述べてきたように、音楽の種類もまた聴き手の要求も、おそろしく多様になってきていることもあって、たった一組の〝絶妙の〟組合せに話を絞ることは難かしい。
 とはいうものの、黄金のあるいは絶妙の組合せ、というタイトルは、これ自体なかなか魅力的なテーマであって、必ずしも一種類に限らなくとも、いろいろとリストアップしながら考えてみたい誘惑にかられる。果して現代の黄金の組合せとは、どんな形になりうるのか、いくつかの考えをまとめてみたくなってきた。

 かりに、価格や大きさを無視して考えてみると、たとえばこんな組合せが……。
     *
残念なことに、瀬川先生の、この原稿は未完成であり、
前書きにあたる、この部分はここで終っている。

肝心の、現代の黄金の組合せに対する瀬川先生が考えられたかたち、
それについての部分はまったくない。
ただ後半にあたる録音を俯瞰したところはある。

その最後のところに、こう書かれている。
《レコードの録音は、ほんとうに変りはじめている。そういう変化を前提として、そこではじめて、これからの再生装置のありかたが、浮かび上ってくる。》
そして──以下次号──、ともある。

前書きを書かれ、後半の録音についても書かれたあとに、
現代の黄金の組合せについてのところを書かれるつもりだったのか。

なので、瀬川先生がどんな組合せを考えられたのか、
提示されたであろうかは、もう想像するしかないが、
きっとそこにはロジャースのPM510の組合せは登場していたはずだ。

Date: 5月 14th, 2022
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その34)

《しかし十年を経たいま、右の装置が〝黄金〟のままでいることはもはや困難になっている》
と瀬川先生は、はっきりと書かれている。

その理由として、《ここ数年来、飛躍的に向上したレコードの録音の良さに対して、カートリッジもアンプもスピーカーも、すでに限界がみえすぎている》
ことを挙げられている。

オルトフォンのSPU-G/T(E)にしても、
ラックスのSQ38シリーズにしても、タンノイのIIILZもそうなのだが、
当時の最新の録音に十全に対応できている、とはもう言い難かったことを、
瀬川先生は少し具体的に書かれている。

そのうえで、こうも書かれている。
     *
 念のためつけ加えておきたいが、この〝黄金の組合せ〟を、定期的に点検調整し、丁寧に使いこんであれば、そして、鳴らすレコードもこの装置の能力にみあった時代の録音に限るか、又はこんにちの録音でもその音を十全に生かしてないことを承知の上で音楽として楽しんでゆくのであれば、はたからとやかく言う筋のものではないかもしれない。ただ、レコードの誠実な聴き手であろうとすれば、かつての〝黄金〟も、こんにち必ずしも「絶妙」とは認め難くなっているという現実を、冷静に受けとめておく必要はあると思う。
     *
いいかえれば、黄金の組合せ(絶妙の組合せ)は、
オーディオ機器のことだけで成立しているわけではなく、
レコード(録音物)をふくめて成立することであるだけでなく、
最も重要なのがレコード(録音物)のことである。

ここを抜きにして黄金の組合せについて語るのは、
なんとも片手落ちでしかないし、本質がわかっていないともいえる。

Date: 5月 14th, 2022
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その33)

ステレオサウンド 57号は1980年12月発売の号である。
そこでの《もう十年ほど昔の話》ということだから、
黄金の組合せは1970年ごろの話である。

もういまから五十年ほど昔の話である。
瀬川先生の文章の続きを引用しよう。
     *
 タンノイ(ここで言う「タンノイ」は、最近の製品ではなく、レクタンギュラー・ヨーク以前の旧製品に話を限る)は、IIILZに限ったことではないが、鳴らしかたのやや難しいスピーカーだった。かつての名機オートグラフから最良の音を抽き出すために、故五味康祐氏がほとんど後半生を費やされたことはよく知られているが、いわば普及型のIIILZも、へたに鳴らすと高音が耳を刺すように鋭い。当時普及しはじめたトランジスターアンプの大半が、IIILZをそういう音で鳴らすか、それとも、逆に味も素気もないパサパサの音で鳴らした。またIIILZオリジナルエンクロージュアは密閉型で、容積をギリギリに小さく設計してあったため、低音が不足がちで、そのことがよけいに音を硬く感じさせやすい。つまりこんにち冷静にふりかえってみれば弱点も少なくないスピーカーであったからこそ、その弱点を補うような性格の組合せをよく考えなくては、うまく鳴りにくかったのだが、その点、ラックスの38Fは、鋭い音を一切鳴らさず、低音を適当にゆるめる性格があって、そこが、IIILZとうまくあい補い合った。そして、オルトフォンSPUの低音の豊かさと音の充実感が、全体のバランスを整えて、その結果、費用や規模に比較してまさに絶妙、「黄金」と呼ぶにふさわしい組合せができ上ったのだった。高音をややおさえて、うまく鳴らしたときのこの組合せから鳴る(とくに弦の)音色の独特の張りつめた気品と艶は、聴き手を堪能させるに十分だった。当時でも私はもっと大型装置をうまくならしていたが、それでも、ときとしてこの〝黄金〟の鳴らす簡素な音の世界にあこがれることがあった。まりにも大がかりな装置を鳴らしていると、その仕掛けの大きさに空しさを感じる瞬間があるものだ。〝黄金の組合せ〟には、空しさがなく充足があった。
     *
この文章からわかるのは、互いにうまく補い合った組合せが、
いわゆる黄金の組合せと呼ばれるシステムであって、
大事なのは、《空しさがなく充足があった》のところである。

つまり黄金の組合せとは、絶妙の組合せである。

Date: 5月 13th, 2022
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その32)

黄金の組合せとは、誰が言い始めたことなのだろうか。

瀬川先生は、こう書かれている。
     *
 もう十年ほど昔の話になると思うが、ある時期、本誌で「黄金の組合せ」とも呼ばれたコンポーネント・システムがあった。スピーカーがタンノイIIILZオリジナル。アンプがラックスSQ38F。カートリッジがオルトフォンSPU-GT(E)。
「黄金……」の名づけ親は、たぶん本誌編集長当たりかと思うが、その意味は、唯一最上というよりも、おそらく黄金比、黄金分割……などの、いわば「絶妙の」といった意味合いが濃いと思う。というは、右の組合せはご覧のように決して高価でも大型でもなく、むしろ簡潔で比較的手頃な価格であり、それでいて、少なくとも多くのクラシック音楽の愛好家が求めている音色の、最大公約数をうまく満たしてくれる鳴り方をした。いまでもまだ、この組合せのままレコードを楽しんでおられる愛好家は、決して少なくない筈だ。
     *
この瀬川先生の文章、読んだことがない──、
という人ばかりだろう。

ステレオサウンド 56号に、
「いま、私がいちばん妥当と思うコンポーネント組合せ法、あるいはグレードアップ法」が載っている。
瀬川先生の連載の開始だったのだが、
非常に残念なことに57号は休載、その後も載ることなく、瀬川先生は亡くなられている。

けれど原稿は書かれていた。
完全なかたちの原稿ではないけれど、
57号(もしくは58号)に掲載予定だった原稿の前半と後半が残っている。

その前半は、JBLの4343とロジャースのPM510のことから話は始まり、
黄金の組合せについてへテーマは移っていく。

黄金の組合せ、そして現代の黄金の組合せについて書かれる予定だった。

Date: 2月 22nd, 2022
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(番外)

MQAとベンディングウェーヴのスピーカーこそ、
私にとってのごく私的な黄金の組合せになってくれる気がしてならない。

Date: 11月 29th, 2019
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その31)

別項の「リファレンス考」に書こうかな、と考えたが、
facebookへのコメントは「黄金の組合せ」に対してあったので、こちらで書こう。

オーディオにおいて、リファレンス(reference)をどう訳すか、となると、
私は標準原器を第一にもってきたい。

標準原器としてのアナログプレーヤー、
標準原器としてのCDプレーヤー、
標準原器としてのコントロールアンプ、
標準原器としてのパワーアンプ、
標準原器としてのスピーカーシステム、
それぞれをまず具体的にイメージしてみてほしい。

その30)へのコメントには、
「リファレンス」が「最高のもの」を示すマーケティング擁護として使われているからではないか、
その一例として、テクニクスのフラッグシップモデルが、「リファレンス」を冠している、
とあった。

たしかに「リファレンス」はそういう使われ方をされることが、
オーディオ業界では多い。

私が知る限りでは、Referenceを型番として採用した最初のオーディオ機器は、
トーレンスのReferenceである。

それから数年後に、ゴールドムンドの、やはりアナログプレーヤーがReferenceという型番で登場した。
このゴールドムンドのReferenceから、
「リファレンス」はそういう使われ方へと変化していったように、私は感じている。

トーレンスのReferenceの記事は、ステレオサウンド 56号に載っている。
瀬川先生が書かれている。
     *
 ことしの3月に、パリの国際オーディオフェア(アンテルナシォナル・フェスティヴァル・デュ・ソン)に出席の途中に、スイスに立寄ってトーレンス社を訪問した。そのときすでにこの製品の最初のロット約10台が工場の生産ラインに乗っていたが、トーンレス本社で社長のレミ・トーレンス氏に会って話を聞いてみると、トーレンス社としても、これを製品として市販することは、はじめ全く考えていなかった、のだそうだ。
「リファレンス」という名のとおり、最初これはトーレンス社が、社内での研究用として作りあげた。アームの取付けかたなどに、製品として少々未消化な形をとっているのも、そのことの裏づけといえる。
 製品化を考慮していないから、費用も大きさも扱いやすさなども殆ど無視して、ただ、ベルトドライヴ・ターンテーブルの性能の限界を極めるため、そして、世界じゅうのアームを交換して研究するために、つまりただひたすら研究用、実験用としてのみ、を目的として作りあげた。
     *
トーレンスのreferenceは、トーレンスがつくりあげた標準原器である、
と、この文章を読んでも私はそう思う。

ところがゴールドムンドのReferenceとなると、
まずReferenceという型番ありきの開発だったのではないのか。

Date: 11月 28th, 2019
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その30)

リファレンス機器についての読者からの問い合せを三度ほど受けたことがある。
電話での問い合せだった。

一人の方は、具体的に海外製の高価な、そして高評価なオーディオ機器の型番をあげて、
なぜ、○○がリファレンスとして採用されないのですか──、ということだった。
採用されない理由は、読者にいえないことなのか、という勘ぐりも含まれていた。

別の人は、ステレオサウンドで使っているリファレンス機器が、
いちばんいいんでしょう、と念押し的な問い合せだった。

どちらの問い合せも、リファレンス(reference)の意味を取り違えている。
だから、そのことから話すことになった。

電話をかけてこられた方には直接説明できる。
けれど、編集部に電話をかけてくる人は、ほんとうに稀である。
それ以外の人で、リファレンス機器の意味を勘違いしたままの人は、
もしかすると、ずっとそのままな可能性も高い。

そしてステレオサウンド試聴室のリファレンス機器ということは、
それが一つの御墨付になってしまったようにも思っている。

ステレオサウンドのどこにも、リファレンス機器が、
その時点での最高のオーディオ機器だ、なんてことは書いてない。

別項の「リファレンス考」を読んでもらえればわかるように、
リファレンス機器にはリファレンスとして求められる条件がけっこうある。

だから私がいたころも、
アンプはマッキントッシュからアキュフェーズへと替った。

マッキントッシュとアキュフェーズのどちらが優れているか、
そういうことではない、ということがいまだ浸透していないのか。

Date: 11月 28th, 2019
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その29)

先ほど公開した「リファレンス考(その10)」の一つ前(その9)は、
二年半前に公開している。

それを思い出したように続きを書き始めたのは、この項に関係してくるからである。
おそらくなのだが、JBLの4343に代表されるスタジオモニターと、
マッキントッシュの同時代のアンプとを黄金の組合せというのは、
どちらもそのころのステレオサウンド試聴室のリファレンス機器であったことが、
深く関係しているのではないのか。

瀬川先生が生きておられたころは、
リファレンス機器は、特にアンプは人によって違っていた。

スピーカーはJBLの4343で、ほぼ固定といえたが、
アンプに関してはそうではなかった。

それが1981年夏に瀬川先生が二度目の入院をされて、
そして三ヵ月後に亡くなられてからは、アンプに関しては変化があった。

ほぼマッキントッシュのペアが、リファレンスとなった。
C29とMC2205(後にMC2255に替る)がそうだった。

1981年夏の別冊「81世界の最新セパレートアンプ総テスト」でもそうだ。
このことが、黄金の組合せと結びついていったのではないか。

トーレンスのReferenceのせい、といってしまうと言い過ぎなのだが、
日本のオーディオマニアは、リファレンス・イコール・最高のオーディオ機器、
そんな認識を持っている人が少なくないように感じている。

「リファレンス考」でも書いているのように、
リファレンスは、ひとつの基準・参照である。
なにも最高のオーディオ機器ということではない。

この勘違いが、JBLとマッキントッシュが「黄金の組合せ」といつしかなっていった。

Date: 11月 28th, 2019
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その28)

つまりJBLの、1970年代後半以降のスタジオモニターと、
同時代のマッキントッシュのアンプの組合せは、
黄金の組合せなんかじゃない、と私は断言する。

それでもインターネット、SNS上には、
これこそ黄金の組合せ、とあったりするのはどうしてなのか。

この時代になると、ジャズといっても、多彩になってきている。
録音も、器材の変化、方法の変化などがある。

ジャズにとっての黄金の組合せ、というふうにくくっても、
私には、そうとは思えない。

いまでもそういっている人たちは、いったいどこで黄金の組合せを目にしたのか。
ほんとうに目にしたのか。そのことすら疑いたくなる。

では、瀬川先生が、4343の組合せとして、
マークレビンソンのML2以前は、
マークレビンそのLNP2とSAEのMark 2500のペアを、よく組み合わせられていたし、
瀬川先生自身、この組合せを愛用されていた。

だからといって、4343、LNP2+Mark 2500が黄金の組合せかというと、
誰もそんななことはいっていな。
瀬川先生もいっていない。

私も、この組合せを一度も黄金の組合せだ、というふうに考えたこともない。
憧れの組合せではあったし、その時点での理想に近い組合せのようにも思っていた。

思うのだが、黄金の組合せという表現を使いたがる人は、
白黒つけたがる人、はっりきと順位を決めたがる人なのではないのか。

黄金の組合せの「黄金」は、そういう人たちにとっては金メダルという意味なのか。

Date: 11月 27th, 2019
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その27)

1970年代後半のJBLのスタジオモニターとマッキントッシュのアンプの組合せ、
これを黄金の組合せと認識している人が、インターネット上にはけっこういるようだ。

でも、黄金の組合せだ、とは私は一度も思ったことがない。
いったい誰がそんなことをいっていたのか。
それすらも疑問である。

JBLのスピーカーでも、それ以前のオリンパスやパラゴンなどで、
古いジャズを聴くのであればマッキントッシュとの組合せというのも、しっくりくる。

けれど4341、4343が登場し、
JBLのスタジオモニターもワイドレンジ指向になっていた。
同時代のマッキントッシュのアンプは、
JBLのスタジオモニターの変化と追従していたわけではない。

それぞれ独立したメーカーなのだからそれでいいのだが、
4343とそのころのマッキントッシュのアンプとでは、
マッキントッシュのアンプのほうに古さを感じてしまう。

もちろん、それで聴きたい音楽がうまく鳴ってくれればいい。
それはわかったうえで、ではジャズの世界でも録音も変ってきていた。

具体的にあげればECMの録音を、
JBLの4343をマークレビンソンとSAE、スレッショルドのアンプで鳴らす音と、
マッキントッシュの、やや古さを残したアンプで鳴らすのとでは、
比較試聴をするまでもなく、前者の組合せがしっくりとくる。

マッキントッシュのアンプも1980年ごろから変化していった。
古さはなくなっていく。
それでもステレオサウンドの試聴室で、
C29とMC2205のペアを聴いた時、
ローレベルの音の粗さに驚いたことがある。

Date: 9月 3rd, 2016
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その26)

twitterやfacebookで、
JBLの4300シリーズ(4343、4333、4350など)とマッキントッシュのアンプの組合せ、
これを黄金の組合せと当時はいっていた──、
そう書いてあるのをみると、
どのオーディオ雑誌に書いてあったのだろうか……、と思う。

少なくともステレオサウンドでは、1970年代後半、
マッキントッシュのアンプとの組合せがつくられたことは、あまりなかった。
いまぱっと思い浮ぶのはステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’80」での、
井上先生による4350Aの組合せぐらいである。

菅野先生による4350Aの組合せは、
「コンポーネントステレオの世界 ’78」に載っていて、
アンプは低域がアキュフェーズのM60、中高域がパイオニアのEXCLUSIVE M4だった。

瀬川先生の4343の組合せでマッキントッシュのアンプ組合せとなることはなかった。
「コンポーネントステレオの世界」では岡先生も4343の組合せをつくられているけれど、
マッキントッシュのアンプではなかった。

おそらくマッキントッシュのアンプとが黄金の組合せだった、
といっている人たちが読んでいたのはステレオサウンドではなく、
スイングジャーナルだったのではないだろうか。

私はスイングジャーナルを熱心に読んでいたわけではないが、
スイングジャーナルにおいてもJBLとマッキントッシュが黄金の組合せだったという印象は、
ほとんどない。

でも、スイングジャーナルぐらいしか思いあたらない。
なので、ここではスイングジーナルが、4343に代表される4300シリーズを鳴らすアンプとして、
マッキントッシュのアンプを、黄金の組合せと、少なくとも読者に思わせるように、
誌面づくりをしていた、と仮定しよう。

スイングジャーナルはジャズに特化した雑誌だ。
クラシックが、そこで扱われることはあまりない。
つまり、そういうスイングジャーナルで黄金の組合せとなるということは、
その組合せは、ジャズに特化したもの、といえる。

ここで、黄金の組合せの「黄金」について考えてみたい。

Date: 8月 31st, 2016
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その25)

1970年代後半におけるJBLのスタジオモニターの人気は、非常に高かった。
いまのJBLの4300シリーズの人気しか知らない世代にとっては、
あの当時の4300シリーズの人気の高さは、信じられないほどであろう。

私も4300シリーズに憧れていた。
4343を筆頭に、4350にも憧れていたし、
以前書いているように現実的な選択としての4301の存在もあった。

ステレオサウンド別冊HI-FI STEREO GUIDEをめくり、
電卓を片手に想像(妄想)していたのは、
おもに4300シリーズの組合せだった。

予算を自分で決めて、その制約の中で、どういう組合せをつくっていくか。
予算に制約がなければ、
それこそ4343にマークレビンソンのアンプ、EMTのプレーヤーという組合せになってしまうが、
買える買えないに関係なく、制約を設けての組合せづくりは、楽しい。
そしてテーマをもうけての組合せも、だ。

4343で制約を設けたら、組合せのバランスをどこか崩すことになる。
どこにするのか。そういうケースでは、次のステップも考えていく。

そうやって4343の組合せだけでも、けっこうな数を考えていた。
そういう私の組合せでなかったのが、マッキントッシュのアンプとの組合せだった。
私にとって、4343とマッキントッシュのC26、C28時代のアンプとの組合せは、
ほとんど関心が持てなかった。

C27、C29以降のマッキントッシュのアンプになって、ようやく聴いてみたいと思っても、
それで組合せをつくっていたかというと、C27だけは選んで、
パワーアンプは他社製のモデルを選ぶという組合せをつくっていた。

当時のマッキントッシュのアンプは、
私が考えているテーマにひっかかってこなかった。
そんな1970年代後半を過ごしていた私にとって意外だったのは、
4300シリーズとマッキントッシュのアンプは黄金の組合せだった──、
これを見かけたときは、え、そうだっけ? と思ってしまった。