Archive for category 黄金の組合せ

Date: 9月 3rd, 2016
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その26)

twitterやfacebookで、
JBLの4300シリーズ(4343、4333、4350など)とマッキントッシュのアンプの組合せ、
これを黄金の組合せと当時はいっていた──、
そう書いてあるのをみると、
どのオーディオ雑誌に書いてあったのだろうか……、と思う。

少なくともステレオサウンドでは、1970年代後半、
マッキントッシュのアンプとの組合せがつくられたことは、あまりなかった。
いまぱっと思い浮ぶのはステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’80」での、
井上先生による4350Aの組合せぐらいである。

菅野先生による4350Aの組合せは、
「コンポーネントステレオの世界 ’78」に載っていて、
アンプは低域がアキュフェーズのM60、中高域がパイオニアのEXCLUSIVE M4だった。

瀬川先生の4343の組合せでマッキントッシュのアンプ組合せとなることはなかった。
「コンポーネントステレオの世界」では岡先生も4343の組合せをつくられているけれど、
マッキントッシュのアンプではなかった。

おそらくマッキントッシュのアンプとが黄金の組合せだった、
といっている人たちが読んでいたのはステレオサウンドではなく、
スイングジャーナルだったのではないだろうか。

私はスイングジャーナルを熱心に読んでいたわけではないが、
スイングジャーナルにおいてもJBLとマッキントッシュが黄金の組合せだったという印象は、
ほとんどない。

でも、スイングジャーナルぐらいしか思いあたらない。
なので、ここではスイングジーナルが、4343に代表される4300シリーズを鳴らすアンプとして、
マッキントッシュのアンプを、黄金の組合せと、少なくとも読者に思わせるように、
誌面づくりをしていた、と仮定しよう。

スイングジャーナルはジャズに特化した雑誌だ。
クラシックが、そこで扱われることはあまりない。
つまり、そういうスイングジャーナルで黄金の組合せとなるということは、
その組合せは、ジャズに特化したもの、といえる。

ここで、黄金の組合せの「黄金」について考えてみたい。

Date: 8月 31st, 2016
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その25)

1970年代後半におけるJBLのスタジオモニターの人気は、非常に高かった。
いまのJBLの4300シリーズの人気しか知らない世代にとっては、
あの当時の4300シリーズの人気の高さは、信じられないほどであろう。

私も4300シリーズに憧れていた。
4343を筆頭に、4350にも憧れていたし、
以前書いているように現実的な選択としての4301の存在もあった。

ステレオサウンド別冊HI-FI STEREO GUIDEをめくり、
電卓を片手に想像(妄想)していたのは、
おもに4300シリーズの組合せだった。

予算を自分で決めて、その制約の中で、どういう組合せをつくっていくか。
予算に制約がなければ、
それこそ4343にマークレビンソンのアンプ、EMTのプレーヤーという組合せになってしまうが、
買える買えないに関係なく、制約を設けての組合せづくりは、楽しい。
そしてテーマをもうけての組合せも、だ。

4343で制約を設けたら、組合せのバランスをどこか崩すことになる。
どこにするのか。そういうケースでは、次のステップも考えていく。

そうやって4343の組合せだけでも、けっこうな数を考えていた。
そういう私の組合せでなかったのが、マッキントッシュのアンプとの組合せだった。
私にとって、4343とマッキントッシュのC26、C28時代のアンプとの組合せは、
ほとんど関心が持てなかった。

C27、C29以降のマッキントッシュのアンプになって、ようやく聴いてみたいと思っても、
それで組合せをつくっていたかというと、C27だけは選んで、
パワーアンプは他社製のモデルを選ぶという組合せをつくっていた。

当時のマッキントッシュのアンプは、
私が考えているテーマにひっかかってこなかった。
そんな1970年代後半を過ごしていた私にとって意外だったのは、
4300シリーズとマッキントッシュのアンプは黄金の組合せだった──、
これを見かけたときは、え、そうだっけ? と思ってしまった。

Date: 5月 31st, 2016
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その24)

ステレオサウンド 52号に、QUADの新型コントロールアンプ44が登場する。
405の登場とともに、33に代るコントロールアンプの噂はあったけれど、三年遅れての登場である。

型番の44は、多くの人が予想した通りだった。
大きさは33よりも大きくなっていて、
そのかわり405とのバランスがとれるようになっている。

アンプの内部構成も44と33はずいぶん違う。
モジュール構成を採る44は、使い手の要求に応じて入力モジュールを自由にかえられる。
ある種の融通性が加わっているし、
密閉されたモジュールではないから、モジュールごとの修理となるわけで、
メンテナンスのしやすさも考慮されての構成といえよう。

QUADアンプの愛好家、405の愛好家にとって、待ちに待ったコントロールアンプの登場だった。
44と405の組合せの音は、けっこうな回数聴いている。
いい組合せだと思う。

若いころもそう思っていたし、いまもそう思う。
でも、当時は44と405の組合せをそれほど欲しい、とは思っていなかった。

405は欲しいパワーアンプのひとつだった。
でも組み合わせるコントロールアンプは、44が出る前も出た後も、
私にとってはAGIの511(初期モデルか並行輸入のブラックパネル)が魅力的に思えたからだった。

44と405は純正組合せなわけで、それがいい音がするのは当り前、
コンポーネントの楽しさは、あえて純正とは違う組合せにある──、
若いころはそういう気持が強かったからだ。

AGIの511も、405も44も、小改良を受けている。
511と405はモデルチェンジもしている。
時間が経てば、人も変るわけで、いまでは44と405の組合せを欲しい、と思うようになった。

それでも44と405の組合せが、黄金の組合せかと問われれば、
そうではない、と即答する。

Date: 7月 5th, 2015
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その23)

AGIのコントロールアンプ511とQUADのパワーアンプの405の組合せ。
このふたつが、ある時期、良好な組合せ、うまい組合せと評価されてきたのは、
それぞれがもっている枠がうまく合さった結果のような気もする。

どちらのアンプにも枠がある。
ただしQUADの枠は意図的、意識的な枠なのかもしれないし、
AGIの枠は若さゆえに生じた枠だったのかもしれない。

このふたつの枠は、どちらも比較的初期の段階ではうまく合さっていた。
でもどちらのアンプも何度か小改良が施されている。
そのことによって枠に変化が生じる。

QUADの枠は、その枠自体が魅力となっていても、
405の改良、405-2への変更によって枠は少しとはいえ大きくなっている。

AGIの枠は、大きくしようという改良ではなく枠そのものをなくしていこうという改良のようでもある。

ふたつのアンプの枠は方向性にわずかとはいえ違いが出てきた。
AGIのデヴィッド・スピーゲルは20代の若いエンジニア、
QUADのピーター・ウォーカーは老獪といえるエンジニアである。
違いがあって当然であろう。
そのため、ある時期から511と405の組合せは、ステレオサウンドの誌面にも登場してこなくなっていった。

タンノイのIIILZとラックスのSQ38Fの組合せは、黄金の組合せと呼ばれていた。
けれど、IILZの後継機Eaton、SQ38Fの後継機 SQ38FD/IIの組合せは、誰も黄金の組合せとは呼ばなかった。
この理由も、改良にともなう枠の変化だったのではないだろうか。

Date: 3月 5th, 2015
Cate: ステレオサウンド, 黄金の組合せ

黄金の組合せ(ステレオサウンド 194号)

昨夜、audio sharing例会でステレオサウンド 194号をじっくり見た(読んだとはあえて書かない)。

194号の特集が「黄金の組合せ」だと知り、
私だったら、こんなふうにする、と勝手に想っていた。

「黄金の組合せ」という表現を、いまあえて使い、
ステレオサウンドがどういう記事にするのか、非常に興味があった。

なにも私が想像していた通りでなければダメだとはまったく思っていない。
とにかくどういう内容で、どういう誌面構成にしたのかに興味があった。

特集の内容については、あえて書かない。
194号を見ながら考えていたのは、なぜ、この内容の特集に「黄金の組合せ」を使ったのか、である。

しかも「黄金の組合せ2015」となっている。
ということは、今回の特集の評判がよければ、来年の春号では「黄金の組合せ2016」をやるのだろうか。
冬号では、毎年恒例のステレオサウンド・グランプリとベストバイ、
春号は「黄金の組合せ」ということになれば……、
もうなんといったらいいのだろうか、言葉に迷ってしまう。

それとも来年秋の50周年記念号以降は、隔月刊にでもするのだろうか。
そのための布石としての「黄金の組合せ2015」だったのか、と、ちょっと思ったけれど、
隔月刊化は可能性としては低い。

そんなことよりも、なぜステレオサウンド編集部は、194号の特集に「黄金の組合せ」とつけたのか。
私は、ここに、なにがしかの「オーディオの想像力」を感じとることはできなかった。

Date: 3月 3rd, 2015
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(タイムレスということ)

金は最も安定した金属だといわれている。
輝きを失わないのが金である。

ならば黄金の組合せも、そういう組合せであるべきではないのか。
10年経っても20年経っても、輝きを失わない組合せを、
人は意図的につくり出せるのだろうか。

黄金の組合せは、どこか発見するものような気がする。

Date: 7月 3rd, 2014
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その22)

私は、というと、511に関しては瀬川先生に近い。
初期の511の音を聴くことはできなかったけれど、
並行輸入品のブラックパネルの511は、瀬川先生が熊本のオーディオ販売店に来られたときに聴いている。

そのときに、瀬川先生の口から、
511の音の変化、それになぜブラックパネルの511を用意してもらったかについての説明があった。
このときの511の音は、瀬川先生が書かれていたとおりの音に聴こえた。

このときの音が強く印象に残っていたこともあって、
それに私も若かったこともあって、
その後の511、511Bを何度もステレオサウンド試聴室で聴いているけれど、
変ってしまった511の音には魅力を感じなくなっていた。

だがいまふり返ってみると、井上先生が改良された511、511Bの音を評価されていたことを理解できる。

アンプとしては、明らかに511は良くなっていた。
良くなっていくことで失われたものはなんだったのかについて考える。

結局は、それは枠だったのかもしれない、と思うようになってきたのは、
511Bの音を聴いてからずいぶん経ってからだった。
そして、初期の511がもっていた枠とは、
開発者デヴィッド・スピーゲル (David Spiegel)の若さゆえに生じた枠だったのではないのか、
そう思うようになってきた。

Date: 7月 3rd, 2014
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その21)

QUADの405は405-2へとモデルチェンジしている。
型番の変更はこのときだけだが、405のサービスマニュアルをダウンロードすれば、
405-2になる以前にも細かな変更が何度か加えられていることが回路図みればわかる。

AGIの511もモデルチェンジしている。
最終的には511Bとなっているが、511も何度か変更されている。

私がブラックパネルの511とわざわざ書くのは、そのためである。
どの時期の511が優秀かということでは、511Bということになるだろう。
性能も初期の511よりも格段に向上している。

肝心の音に関しても、より現代アンプと呼べるように変ってきている。
たとえば井上先生は511は初期のモデルから高く評価されていて、
何度かの改良がなされた音に関しても、より高く評価されていた。

511Bになる前でも、初期のモデルよりも洗練度を増した、ステレオサウンド 47号に書かれているし、
511Bが60号の新製品紹介に取り上げられたときは、次のように書かれている。
     *
bタイプは、511初期のクッキリとコントラストをつけた音から、次第にワイドレンジ傾向をFET差動IC採用で強めてきた、従来の発展プロセスの延長線上の音である。聴感上の帯域が素直に伸びている点は従来機と大差はないが、内容的には一段と情報量が多くなり、分解能の高さは明瞭に聴きとれるだけの充分な変化がある。音色は明るく、のびやかな再生能力があり、大きなカラーレーションを持たないため、組み合わせるパワーアンプにはかなりフレキシブルに反応をする。内外を含め最近のコントロールアンプとしては最注目の製品だ。
     *
このへんは瀬川先生とは実に対照的である。
瀬川先生は初期のモデルは高く評価されていたけれど、変更後の511に関しては、
ベストバイでも点数をいれらることはなかった。

Date: 7月 2nd, 2014
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その20)

これでいいんだという必要量、ここまで必要だという必要量。

AGI・511とQUAD・405、
このふたつのアンプには、どちらも枠をあるからこその魅力をもっていたように、いまでは思う。

405を送り出したQUADというブランドは、もとからそういう枠を実にうまく設定している。
家庭用の、レコード、ラジオ、テープを聴く装置としてのわきまえを心得ているからこそ、
決して大袈裟な製品をつくることはいっさいせずに、
むやすみにクォリティを追求する、というわけでもない。

405は、それまでの303よりも現代的になっている、という評価を得ていた。
出力も303の40W+40Wから100W+100Wになり、そういった枠も拡大していないわけではなかった。
とはいえ、アメリカの物量投入の大型アンプと比較するまでもなく、
コンパクトで発熱量もさほど多くない、消費電力も抑えられている。

これで何が不足なのか、と使い手に問いかけるようなパワーアンプである。

そういう405とペアとなるコントロールアンプ44。
その44と比較すると511は、枠なんて意識していないアンプではないのか、ということになるかもしれない。
私も、511が出て来たとき、405とよく組み合わせられていたころは、
511に、いわゆる枠はないものだと思っていた。

511自体がハイスルーレイトを誇っていたし、
アンプとしての道徳性は、当時もっとも優れていたアンプともいえた。

けれどその後の511の改良のされかた、
そしていま511の音(ブラックパネルの並行輸入品)を聴いてみると、
意外にも枠があることに気がつく。

その枠は、405と同じ、QUADと同じ性質の枠ではないのだけれど、
確かに初期の511には枠がある。

Date: 7月 25th, 2013
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その19)

その一方で、そんな理屈は分かっている。けれど物量を投入すれば音は良くなる。
音が良くなる以上、そこに投入される物量は必要量であり、
これ以上、物量を投入しても音は良くならない、
そういう領域がほんとうにあるとすれば、そこまでの物量が必要量ということになる──、
こういう考えも成りたつ。

AGI・511と同時代のコントロールアンプ、GASのThaedraの電源部は余裕のある容量である。
ラインアンプがA級動作で8Ωのスピーカーに対して、数Wの出力を確保できるように設計されているためでもある。
もっともラインアンプでスピーカーを鳴らす必要はないわけだから、
それを必要量とはいえないのではないか、そうもいえよう。

511の数年後に登場したスタックスのコントロールアンプ、CA-Xは511と対照的な電源部をもつ。
スタックス独自のスーパーシャント電源回路を採用した外付けのシャーシーは、
小型のプリメインアンプほどの大きさで、アンプ本体のシャーシーよりもずっと大きかった。

音質を追求し、理想の電源を目差した結果が、CA-Xの電源部の大きさということになるわけだ。

どちらが正しい、と断言できることではない。
設計者が、どの立場にいるのかを考えなければ答を見つけることはできない。

AGIのエンジニアであったスピーゲルも、511の電源トランスをもっと大きくして、
平滑用コンデンサーの容量をもっと増やせば、音質の向上につながることはわかっていたはず。
それはQUADのピーター・ウォーカーも同じであったはず。

405の電源部をもっと大きなものにすれば、どういう音の変化をするのかは、
キャリアの長いだけに、充分にわかっていたうえで、
あえて、あの電源のサイズなのだ、受けとるべきである。

Date: 7月 23rd, 2013
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その18)

必要量とは、いったいどれぐらいのもの・ことなのだろうか。

昔の高能率のスピーカーユニット、スピーカーシステムは100dB/W/mをこえる出力音圧レベルをもつ。
いまどきの低能率のスピーカーよりも10dB、ときには20dBほどレベルが高い。

ということはアンプの出力もそれほど大きなものは必要としない、といえる。
それに、そのころのスピーカーのインピーダンスは16Ωが一般的だから、
同じ1Wでも、電流の値は8Ωよりも小さくてすむ。

最大音圧時でも、これだけの電流しか流れない、
だからスピーカーの入力端子は、これだけの容量のものでことたりる、という考えができる。
その一方で、音質を追求するのであれば、少しでも音が良くなるのであれば、
より太いスピーカーケーブルをしっかりと接続できる端子が必要ということにもなる。

アンプの出力にしても同じように、ふたつの考え方ができる。

どちらも必要量といえば、そうなる。

コントロールアンプの後に接続されるのはパワーアンプである。
パワーアンプの入力インピーダンスは、コンシューマー機器において高い値になっている。
いまでは10kΩが多いが、AGI・511の時代は47kΩ、50kΩが多かった。
真空管アンプでは100kΩもあった。
低いインピーダンスの代表は、GASのAmpzillaの初期モデルの7.5kΩである。

これらの値の入力インピーダンスの機器に、1Vなり2Vの信号を送り出したときに、
ケーブルに流れる電流を計算してみると、いかに少ないかがわかる。
そんなことを考えれば、コントロールアンプの電源の容量(必要量)はさほど大きくなくてもすむ──、
そういう考えが、まずひとつとしてある。

Date: 7月 23rd, 2013
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その17)

AGI・511の天板(といっても平らな板ではなく、コの字上になっている)を取り、
内部を見ると、大きなプリント基板が目に入る。
この基板に、フォノイコライザー、ラインアンプ、電源トランス以外の電源部を構成する部品が取り付けられている。
プリント基板はもう一枚使われていて、これはリアパネルの入出力端子が取り付けられていて、
この、少し小さめのプリント基板とメインのプリント基板はフラットケーブルで結ばれている。

リアパネル右側から入力端子が配置されていて、左側にはACアウトレット用のコンセントがある。
この裏側にトランスが、もうしわけなさそうについている。

扱う信号レベルがもっとも低いフォノイコライザーから物理的に遠いところに電源トランスを置く。
平面上でだけ考えればシャーシーの隅となる。
511では平面上だけの遠い距離ではなく、
プリント基板と同一平面上よりも高いところに取り付けることで、
立体上での距離を確保しているわけだ。

511は主要増幅部はOPアンプだから、完全にディスクリートで構成されたアンプよりも、
消費電流は少ないだからそれに見合った容量の電源トランスといえなくもない。
それでも、ほんとうに小さいな、と思ってしまうほどのサイズである。

平滑用のコンデンサーの容量も、大きいといえない。
定電圧回路を採用しているとはいえ、いかにも最小必要限度の電源部だろう。

どちらかといえば物理投入のアンプが多いアメリカにおいて、この電源部である。
単にケチくさいとはいえないようにも思う。
節倹というべきなのかもしれない。

Date: 6月 24th, 2013
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その16)

QUADは、いまでこそブランド名であり会社名にもなっているが、
1980年代の途中まではブランド名だった。

QUADのブランドをもつ会社の正式名称は、Acoustical Manufacturing Co.Ltd.。
QUADは、Quality Amplifier Domesticの略して名づけられたものだ。

domesticは家庭の、とか、家庭的な、といった意味があることからわかるように、
そしてQUADがイギリスのオーディオ・メーカーということも相俟って、
QUADのアンプは、性能、音質のためだからといって、物量を投入に走るようなことはやらない。

まずサイズ(形・スタイル)ありき、からのアンプである。

405は100W+100Wのパワーアンプ。
いまでこそこの程度の出力はハイパワーということはないが、
405が登場したころは100Wは、充分にハイパワーということができた。

100W+100Wを、W34.1×H11.5×D19.5cm、9.0kgの大きさに収めている。
このことも405登場時には話題になったことだ。

405の内部の半分ほとは電源トランスが占める、とはいえ、
それほど大きな電源トランスとはいえないし、
平滑用の電解コンデンサーも数値を競うかのような大容量ではない。
ほどほどに、節倹の精神とでもいえるつくりである。

AGIはアメリカのメーカーで、設計者は若い。
新進のメーカーだから、物量投入型かと思えば、
内部を見て、意外に思うのは電源トランスの小ささである。

リアパネルの隅に電源トランスは取り付けられている。
ちょこんとした感じで、ついている。
OPアンプ構成だから、ディスクリート構成のアンプよりも消費電流は少ないとはいうものの、
511の電源トランスを初めて見る人は、しょぼい、と思うはずだ。

Date: 6月 20th, 2013
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その15)

AGI・511とQUAD・405、どちらもこの時代のアンプとしてはいち早くOPアンプを採用している。
405の電圧増幅に使われているOPアンプはLM301、405-2からはTL071である。
511のOPアンプはすでに書いているようにフォノイコライザーにはフェアチャイルドのμA749で、
ラインアンプには511bからは不明だが、511、511aはLF357である。
ただ511のごく初期のモノにはラインアンプには405と同じLM301が使われている。

このLM301は一般的な樹脂モールド型ではなくメタルCAN型であり、
Googleで画像検索すれば、LM301使用の511の内部写真を見つけ出すことができる。

LM301からLF357への早い時期での切り替えの理由ははっきりとしないが、
おそらくスルーレイトに関することだと思う。
511のハイスルーレイトともいえる250V/μSという値は、
実はフォノイコライザー部のみの値であり、
フィードフォワードもフォノイコライザーにのみ使われている。

ラインアンプはLF357に変更されてから、スルーレイト50V/μsである。
ラインアンプはNFBのみかけられている。
ただ出力に挿入されている直流成分をカットのためのコンデンサーの両端からNFBをかけている。

それから511と405に共通していることであげられるのは、
どちらも電源スイッチをもたないということ。

511のフロントパネル右下にはスイッチがある。
ただしこれはアンプ本体の電源スイッチではなく、
リアパネルにあるACアウトレットのON/OFFのためである。
511は常時通電型である。

405も405-2からはリアパネルに電源スイッチが設けられたが、もともとない。
QUADのパワーアンプは管球式のIIにしてもトランジスターの303にしても、電源スイッチはない。

22とIIの組合せでは、パワーアンプ(II)からコントロールアンプ(22)へと電源が供給され、
22の電源のON/OFFと連動するようになっている。

33と303組合せでは、303の電源を33のACアウトレットからとることで連動できる。
405に電源スイッチがないのも、コントロールアンプの電源のON/OFFと連動させるためであり、
その意味でも511と405は使い勝手面での相性もいいといえるわけだ。

Date: 6月 20th, 2013
Cate: 黄金の組合せ

黄金の組合せ(その14)

QUAD・405のフィードフォワード回路の基となっているのは、
フィードバック理論の発明者、H. S.ブラックが、
フィードバックよりも9年前に発明していた技術であり、
ブラックは4つの抵抗からなるブリッジ回路にしていたのを、
QUADのピーター・ウォーカーは2つの抵抗、残り2つの抵抗をそれぞれコンデンサー、コイルに置き換えている。

フィードバックよりもフィードフォワードのほうが先に生まれていながら、
フィードバック理論の方ばかり普及していったわけである。
そのフィードフォワード理論を、ウォーカーは4年かけて実用化している。

405に採用されたフィードフォワード回路はカレントダンピングと名づけられ、
1974年のAESで発表されている。
4年の歳月が、405を完成し発表するまでなのか、
AESで発表するまでなのかははっきりしないが、
仮にAES発表までに4年かかったとしたら、1970年ごろから、ということになる。

ウォーカーは1916年生れだから、54歳。
かなりの試行錯誤の末、カレントダンピングは生れたのかもしれない。
ウォーカーが実際にどのようにフィードフォワードの問題を解決していったのかはわからない。

AGIのスピーゲルはスーパーコンピューターを使い、フィードフォワード技術を実現している。
ウォーカーがスーパーコンピューターを使っている図は思い浮ばない。
ESLを実用化・実現したときと同じように進めていったように思う。

フィードフォワードという同じ技術用語でくくられても、
AGI・511とQUAD・405では、フィードフォワードの利用の仕方に違いがある。

違いは当然ある。
それでも同じ時期にフィードフォワード理論を、
現実のアンプへ応用していったふたりのエンジニアによるアンプだけに、
不思議と共通するところもある。