Archive for 11月, 2023

Date: 11月 30th, 2023
Cate: ステレオサウンド

管球王国 Vol.110(その3)

管球王国 Vol.110で、是枝重治氏はこんなことも書かれている。
     *
野口さんは初期の『ステレオサウンド』誌の五味康祐「オーディオ巡礼」に登場しておられました。正座して首を垂れ、エネスコを奏するクレデンザにじっと聴き入る五味一刀斎の後ろ姿は極めて印象的です。写真からその場の音が聴こえてきました。撮り手は誰でしょう。室内照明のまま絞り解放で撮られた思わしきモノクローム写真は味わい深いのです。
     *
ステレオサウンド 15号の「オーディオ巡礼」の扉の写真が、
五味先生の後ろ姿である。

この記事は不思議なことに、岡鹿之介氏のリスニングルームの写真はあるけれど、
野口晴哉氏のリスニングルームの写真はない。
かわりなのか、そのへんははっきりしないが扉の写真は五味先生の後ろ姿である。

《野口邸へは安岡章太郎が案内してくれた》と五味先生は書かれている。
思うに、五味先生の後ろ姿は、安岡章太郎氏が撮られたのだろう。

Date: 11月 30th, 2023
Cate: デザイン

倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙(その4)

世田谷美術館は砧公園のなかにある。
砧か──、とおもっていた。

帰り道、来た道をもどるよりも違う道を選びたい。
オーディオマニアだから、砧に反応する。

世田谷美術館を出て、砧八丁目をめざして歩き始める。
すぐに着くわけではないが、歩いた方が早い位置関係。

そんなところに何があるかといえば、瀬川先生が建てられた家がある。
ステレオサウンドに連載されていた、あのリスニングルームがある家である。

もう四十年以上経っている。
もう取り壊されて、別の建物があってもおかしくないほどの年月だ。

いまも残っているとは期待していなかった。
けれど、そこには「大村」の表札があった。

いまも残っている。
このことが、今回の「記憶のなかの小宇宙」ということと、
私のなかでは結びついていく。

Date: 11月 30th, 2023
Cate: デザイン

倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙(その3)

今日(11月30日)、「倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙」に行ってきた。

最寄りの用賀駅から世田谷美術館まで、住宅街を歩いていく。
車の往来が激しい環八をほとんど歩くことなく着けるのがいい。
途中、ステレオサウンドが入っているビルの前を通る。

このビルの少し先の横断歩道をわたると砧公園で、そのなかに世田谷美術館がある。
歩ければ十五分ほどかかる。

平日の午前中ということもあって、ゆっくり見ることができた。
見て感じたこと、書きたいことはいくつもある。

一つ書きておきたいのは、
オーディオに関心をもっているのであれば、
オーディオには直接関係ないだろう、とは思わずに来てほしい、ということだ。

行って見ても、オーディオとなんら結びつかない人もいよう。
でも、何かが結びついていく人も、きっといる。

世田谷美術館での開催は、2024年1月28日まで。
その後、富山県美術館で、2024年2月17日から4月7日まで、
京都国立近代美術館で、2024年6月11日から8月18日まで開催される。

Date: 11月 23rd, 2023
Cate: 1年の終りに……

2023年をふりかえって(その2)

今年の1月29日から毎日更新しなくなっている。
昨秋の時点では、書くことをやめるつもりだったけれど、
別項で書いているように、終のスピーカーがやって来たことで、
毎日ではないものの続けている。

続けていることで、今年会えた人が数人いる。
書いてきてよかった、と思っている。

そして出会えた人もいれば、もう会えなくなってしまった人もいる。
検索してみると、日本では三十数秒に一人、亡くなっているらしい。

こうやって書いているあいだにも、どこかで誰かが亡くなっている。
そのなかにオーディオ関係者が含まれていることだってある。

今春、原本薫子氏、
今秋、早瀬文雄氏(舘一男氏)が亡くなっている。

原本薫子氏と舘一男氏とは、ステレオサウンドの試聴室で出会っている。
井上先生の使いこなしの記事、
76号に掲載されている「読者参加による人気実力派スピーカーの使いこなしテスト」である。

二人が読者代表として参加されている。
その二人が、二人とも今年亡くなっている。

単なる偶然なのだろう──、そう思いながらも、ほんとうに偶然なのだろうかとも思ってしまう。

二人を知らない人からすれば、偶然だよ、それ以外の何がある、ということになるが、
そう思えないのは、あることがひっかかっているからだ。

そのことについては、二人のプライヴェートについて触れることになるから、
誰にも話すことはしない。

一度だけ、菅野先生に話したことはあるが、それが最初で最後だ。

Date: 11月 23rd, 2023
Cate: ディスク/ブック

“盤鬼”西条卓夫随想録

「“盤鬼”西条卓夫随想録」のクラウドファンディングが始まっている。

どういう内容になる本なのかは、タイトルが示している。
リンク先をクリックすれば、詳しいことがわかる。

このクラウドファンディングが成立するのかどうか。
いまのところ支援者は四人(私を含めて)、達成率2%。

私自身、読みたい本なので成立してほしい。

Date: 11月 13th, 2023
Cate: High Resolution

MQAのこれから(とTIDAL・その12)

ソーシャルメディアを眺めていると、Qobuzが始まったら、
他のストリーミングサービスは解約するとか、
TIDALよりもQobuzのほうが音がいい、とか、そういった書き込みがけっこうある。

どこのストリーミングサービスの音がいい──、
そのことにあまり関心がない。

TIDALとQobuzを比較試聴して、どちらがいいとか悪いとか、
そういったことを決めつけて、どちらかに絞る必要があるだろうか。

MQAを積極的に評価している私にとっては、TIDALはなくてはならない存在だし、
Qobuzにももちろん興味がある。契約するつもりだし、TIDALを解約するつもりもない。
聴ける音楽の幅がひろがれば、それでいい。

だからどちらも利用すればいいのではないか。
なぜ、どちらかに決めて絞る必要があるのか。

月々の使用料金が一万円を超えるとかならば、どちらに絞るということもわかるが、
TIDALはいま円安で三千円ほど、Qobuzはもう少し安い。
二つあわせても五千円を超えない。

来年にはQobuzが本格スタートになるわけで、
そうすれば、ようやく日本もストリーミング元年を迎えるのかもしれない。
そうなってほしい、と思うし、
TIDALも始まってMQA元年を、日本もようやく迎えられるようになってほしい。

Date: 11月 13th, 2023
Cate: 1年の終りに……

2023年をふりかえって(その1)

2020年は11月8日から、
2021年は11月1日から、
2022年は11月10日から、それぞれこの項を書き始めている。

今年は毎日書くことをやめているので、
例年と同じころに書き始めないと、
書き終らないうちに2023年が終ってしまうかもしれない。

まだ二ヵ月近くあるけれど、
それでも今年は長かった、と感じている。

今年をふりかえって、
オーディオをずっとやってきたから出会えた人たちがいることを、
まず挙げたい。
例年よりも多くの人と出会えた。

こうやって新しい人と出会えるのは、
オーディオの大きな楽しみのひとつといえる。

年齢、仕事など、そういったことを抜きにしての関係が、そこにはある。

なぜオーディオはおもしろいのか、これほどながく続けられるのか──、
その問いへの答の一つが、このことのはずだ。

Date: 11月 13th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その17)

今年のインターナショナルオーディオショウで、
同じ曲を対照的な音で聴くことができた。

フェーズメーションとオルトフォンジャパンのブースで、
石川さゆりの「天城越え」である。

初日の金曜日、オルトフォンジャパンのブースで、
年内発売予定のオルトフォンのSPU GTEでの「天城越え」だった。

私がオルトフォンジャパンのブースに入った時は、
発売予定のMASTERCUT RECORDSがかかっていた。

そのあとで、SPU GTEに切り替った。
できればMASTERCUT RECORDSをSPU GTEでかけてほしかったけれど、
レコードは別のものだった。
そのうちの一枚が石川さゆりの「天城越え」だった。

このアナログディスクは、ステレオサウンドから発売されている45回転のLP。
誌面でも巻末の広告でも取り上げられているから、ご存知の方、
すでに入手して聴いている、という方も少なくないだろう。

私はまったく関心がなかったので、
あっ,これがあのディスクか、という程度だった。

それでも鳴ってきた音は、
なんといおうか、どこかのナイトクラブで石川さゆりが歌っている──、
そんな光景が浮んでくる鳴り方だった。

オルトフォンジャパンのブースは、どちらかといえば暗くしているブースだった。
スピーカーシステムはTAD、パワーアンプはアキュフェーズ。

国産ブランドの組合せで、こんな雰囲気を感じさせる音が聴けることも意外だった。
その意味で、私にとって、今回のインターナショナルオーディオショウで聴いた音で、
いちばん印象に残っている。

オルトフォンジャパンの音がいちばんよかった、というわけではなく、
印象に残っている、ということだ。
MASTERCUT RECORDSの音(カートリッジはMC Diamondだったはず)よりも、
SPU GTEでの「天城越え」のほうが、私にとってはそうだった。

Date: 11月 8th, 2023
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade)のこれから(その5)

2020年10月7日のaudio wednesdayは、
music wednesdayというテーマで、赤塚りえ子さんと野上眞宏さんの二人にDJをお願いした。

選曲という冒険。
このことを実感した10月7日の、四時間の夜だった。

2024年のaudio wednesdayでも、music wednesdayをもちろんやる。

Date: 11月 8th, 2023
Cate: デザイン

倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙(その2)

あと十日で、「倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙」が開催される。

ということを今日書くつもりでいたら、
こんな記事が飛び込んできた。
倉俣史朗デザイン、伝説のバー「COMBLÉ」(コンブレ)が復活!

今度こそ行ってみよう。

Date: 11月 7th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その16)

「告白」を聴いたのは初めてだった。
だから冒頭で電話のベル音が鳴るのを知らなかった。

Audio Necの電話のベルは、どきっとするほどリアルに感じられた。
そして聴いているうちに、録音スタジオのマスタリングルームでは、
こんな感じで鳴っているのではないだろか──、
そんなことをおもっていた。

モニターオーディオのPlatinum 300 3Gでのベル音は、
二度目ということもあって、どきっとすることはなかった。

順番だけのことではないはずだ。
Platinum 300 3Gで「告白」を聴いて、Audio Necで聴けば、
やはりAudio Necのベル音にどきっとしたように思う。

Platinum 300 3Gは、家庭での良質の音という感じを受けていた。
どちらが優れているスピーカーシステムということではなく、
家庭で音楽を聴くということ、
そのことをあらためて考えさせられる対照的な鳴り方をしていた。

「五味オーディオ教室」で読んだことも思い出す。
     *
 音を聴き分けるのは、嗅覚や味覚と似ている。あのとき松茸はうまかった、あれが本当の松茸の味だ——当人がどれほど言っても第三者にはわからない。ではどんな味かと訊かれても、当人とて説明のしようはない。とにかくうまかった、としか言えまい。しかし、そのうまさは当人には肝に銘じてわかっていることで、そういううまさを作り出すのが腕のいい板前で、同じ鮮魚を扱ってもベテランと駆け出しの調理士では、まるで味が違う。板前は松茸には絶対に包丁を入れない。指で裂く。豆はトロ火で気長に煮る。これは知恵だ。魚の鮮度、火熱度を測定して味は作れるものではない。

オーディオ愛好家は、耳で考える
 ヨーロッパの(英国をふくめて)音響技術者は、こんなベテランの板前だろうと思う。腕のいい本当の板前は、料亭の宴会に出す料理と同じ材料を使っても、味を変える。家庭で一家団欒して食べる味に作るのである。それがプロだ。ぼくらが家でレコードを聴くのは、いわば家庭料理を味わうのである。アンプはマルチでなければならぬ、スピーカーは何ウェイで、コンクリート・ホーンに……なぞとしきりにおっしゃる某先生は、言うなら宴会料理を家庭で食えと言われるわけか。
 見事な宴席料理をこしらえる板前ほど、重ねて言うが、小人数の家庭では味をどう加減すべきかを知っている。プロ用高級機をやたらに家庭に持ち込む音キチは、私も含めて、宴会料理だけがうまいと思いたがる、しょせんは田舎者であると、ヨーロッパを旅行して、しみじみさとったことがあった。
     *
たしかに、この二つのスピーカーの音には、このことを思い出させる違いがあった。
どちらが優秀ということではなく、どちらが好ましいのか。
そういう聴き方もある。

Date: 11月 7th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その15)

ナスペックのブースで、
モニターオーディオのPlatinum 300 3G担当の女性スタッフの方は、
最初に「私の好きな曲ばかりかけます」と前置きされた。

ジブリ作品が大好きということで、「もののけ姫」も鳴らされたし、
推しということで、福山雅治の歌もかけられた。

そんなふうに進んでいった。
別項で「好きという感情の表現」を書いているけれど、
そのことを考えていた。

ナスペックの男性スタッフも、他の出展社のスタッフも、
基本的には好きな音楽をかけているのではないのか。

好きな音楽のなかから、
そこでのアンプやスピーカーなどの特色を活かしてくれそうな曲を選ぶ──、
そうおもいたいけれど、実際にはほんとうに、このスタッフは、この曲が好きなのだろうか、
と疑問に感じることが多い。

好きという感情をストレートに出すことにためらいがあるのか。
だとしても、なんらかの感情は伝わってきそうなものな……。

男性らしさ、女性らしさ、などという。
でも人それぞれなのだから、男性(女性)らしさということよりも、
性別に関係なく、人はみな違うということであっても、
オーディオショウでの選曲においての女性らしさとは、
好きという感情を素直に出してくれるところにある、と私は思っている。

この女性スタッフは途中で、竹内まりやの「告白」を鳴らされた。
「告白」はAudio Necでのプレゼンテーションで最後にかけられた曲であり、
アンプ、CDプレーヤーなどがまったく同じ条件で、
スピーカーシステムだけがAudio NecからPlatinum 300 3Gに替わったのだから、
比較試聴という意味での選曲だった。

「告白」を鳴らし終ったあと、「やはりずいぶん違いますね」といわれた。
価格がPlatinum 300 3GとAudioNecとではずいぶん違う。
だから、かなりの違いがあって当然なのだが、
とはいえAudio Necの鳴り方が、必ずしも好ましいとはいえないところも感じていた。

Date: 11月 7th, 2023
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade)のこれから(その4)

今日(11月7日)は瀬川先生の命日。
2024年11月7日が水曜日ならば、JBLの4343をなんとか用意して鳴らしてみたい。

そんなことをおもっていたけれど、2024年はうるう年なため11月7日は木曜日になってしまう。
2024年の11月の第一水曜日は6日。

一日のずれだけれども、
2024年11月6日のaudio wednesdayは、4343を鳴らしたい。

運搬するのを手伝ってくれれば、4343を貸します、といってくれる人がいる。
宇都宮から運んでこなければならないけれど、どうにかしたい。

いまのところ、どうにかしたい、というおもいだけで、
うまく実現できるかどうかはなんともいえないけれど、
あと一年あるからなんとかなるかもしれない。

Date: 11月 7th, 2023
Cate: ステレオサウンド

管球王国 Vol.110(その2)

管球王国 Vol.110を読んでいて、目に留ったのは82ページだった。
是枝重治氏の記事で、そこにはこう書いてある。
     *
1960年1月号だったか『ラジオ技術』誌のグラビアに、野口晴哉さんのオールWEの装置が出ています。まだモノーラルでした。アンプは東洋ウエストレックスが作った807のppアンプでした。既にその頃はベルシステムから分離されていたのかもしれません。それ以前のウエストレックスはすべてリースが前提で、個人の注文を受けることなどあり得ないからです。数年前にお亡くなりになったラジオ技術社の金井 稔さん(ペンネーム五十嵐一郎、青山六郎)のお話では、野口晴哉さんは東洋ウエストレックスの技術部長・斉藤利千代さんと懇意だったそうです。
     *
1976年末に朝日新聞社から出た「世界のステレオ」、
このムックに、「野口晴哉コレクションより 幻の名器」という記事がある。

記事中にあるいくつかの写真。
そこにかなり大型の管球式パワーアンプらしきものが写っている。
とはいえ、このアンプについての詳細は触れられていなかった。

なにも資料がないためらしい。

おそらくこのアンプが、東洋ウエストレックス社製の807のプッシュプルアンプなのではないだろうか。

Date: 11月 6th, 2023
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade)のこれから(その3)

2024年のaudio wednesdayも、テーマを決めての音出しをやっていく。
とはいえ四谷三丁目の喫茶茶会記でやっていたときとは、いろんな条件が違う。

まず空間が大きく違うし、使える器材もそうだ。
器材が思うように集めることができれば、やりたいテーマはいくつもすぐに出てくるけれど、
そういうわけにはいかない。

喫茶茶会記でやっていたころも、制約は多かった。
そういう中でテーマを考えていくのも、けっこう楽しいものである。

音出しの場を提供してくださる方からは、
「新月に聴くマーラー」をやってほしい、といわれている。

2016年8月3日は、ちょうど新月だった。
テーマは「新月に聴くマーラー」で、
窓のない空間で音を鳴らしていたから、明かりを消してしまうと、かなり暗くなる。
真っ暗に近くなる。

そういう環境でマーラーを聴く、ということをやった。
それをやってほしい、ということだ。

2024年の第一水曜日で新月の月はない。
けれど前後火曜日、木曜日は新月の月はある。

6月、9月、10月である。
どこかで「新月に聴くマーラー」を行う。

2016年とは場とシステムも違うだけでなく、プログラムソースも違う。
MQAで鳴らすことができる。

すべてをMQAで、という制約はもうけないが、
極力MQAでの「新月に聴くマーラー」するつもりだ。