倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙(その4)
世田谷美術館は砧公園のなかにある。
砧か──、とおもっていた。
帰り道、来た道をもどるよりも違う道を選びたい。
オーディオマニアだから、砧に反応する。
世田谷美術館を出て、砧八丁目をめざして歩き始める。
すぐに着くわけではないが、歩いた方が早い位置関係。
そんなところに何があるかといえば、瀬川先生が建てられた家がある。
ステレオサウンドに連載されていた、あのリスニングルームがある家である。
もう四十年以上経っている。
もう取り壊されて、別の建物があってもおかしくないほどの年月だ。
いまも残っているとは期待していなかった。
けれど、そこには「大村」の表札があった。
いまも残っている。
このことが、今回の「記憶のなかの小宇宙」ということと、
私のなかでは結びついていく。