Archive for 5月, 2024

Date: 5月 31st, 2024
Cate: SME, アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(SME 3012-R Special・その2)

SMEのトーンアームなら、
3012-R Specialよりもひとつ前のモデル、
3012 Series IIのほうが優秀という声があるのは知っている。

3012-R Specialは妥協のトーンアームだという人がいるのも知っている。

私は3012 Series IIは使ったことがない。
3012-R Specialよりも優秀なのかもしれない──、と思いつつも、
トーンアームとしての完成度の高さでみたら、やはり3012-R Specialだと私は思っている。

特にユニバーサルトーンアームとしての完成度は、3012-R Specialが上だと言い切る。

SMEのトーンアームとしての特徴であるナイフエッジ。
構造的にもラテラルバランスがきちんととれていて、その性能(感度)を発揮する。

3012-R Specialはラテラルバランスがとりやすい。
カートリッジをつけ替えて、ゼロバランスをとり、ラテラルバランスをとり、針圧をかける。
それからトーンアームの高さやインサイドフォースキャンセラーを調整する。

これらを手早くきちんとやれるのか。
そういうことを含めてのバランスのよさということで、3012-R Specialを私はとるし、
だからこそユニバーサルトーンアームとして唯一の存在とも思っている。

しかも私の目には、3012 Series IIよりも3012-R Specialが美しくみえる。
優雅ともいいたい。

今回ガラードの301との組合せをながめていて、
プレーヤーキャビネットが光をどこまでも吸収するような黒に仕上げられていたら──、
そんなことを想像していた。

目に映るのは、301と3012-R Specialとカートリッジ、そしてレコードのみ。

Date: 5月 30th, 2024
Cate: 「スピーカー」論

トーキー用スピーカーとは(その17)

5月26日の野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会には、
約九十人が集まった。

これだけの人が入ってくると、音はどう変化するのか。
一人、二人、三人……五人くらいまでの音の変化はなんどか体験している。
けれど九十人となると、想像しようとしてもなかなか難しい。

オイロダインが鳴るようになったのが六日前の月曜日。
火曜日と水曜日の音は聴いている。といっても時間にするとそれほど長かったわけではない。

それで当日。
オイロダインの音を一人でも聴いている。
二人、三人……と人が増えていった音を聴きながら、
九十人のときの音は破綻するのか、それとも劇場用スピーカーなのだから、
ものともしない音を響かせてくれるのか。

後者の予感はあったし、そう期待したかった。

当日、最初にかけたフィッシャー・ディスカウとムーアによるシューベルトの「音楽に寄せて」。
ボリュウムの位置は、少しだけ上げていたけれど、
特に不都合は感じさせない鳴り方だった。

こういうところが劇場用スピーカーの実力なのか。
その15)、(その16)で取り上げている「フロリダ」というダンスホールでの、
ウェスターン・エレクトリックの話も、そうだろう。

「フロリダ」にどれだけの人が集まっていたのかは知らないが、
ウェスターン・エレクトリックのシステムを揃えるに、
そして毎月の使用料がそうとうに高価だったことはわかる。

つまりそれだけのお金をウェスターン・エレクトリックに払っても利益があるほどに、
人が「フロリダ」に集まっていたわけで、
このことは、それだけの人が集まってもいい音が鳴っていたからこそのはずだ。

Date: 5月 29th, 2024
Cate: SME, アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(SME 3012-R Special・その1)

5月26日の野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会でのアナログプレーヤーは、
別項で書いているようにガラードの301にトーンアームはSMEの3012-R Special、
カートリッジはEMTのTSD15をアダプターを介して取りつけた。

昇圧トランス、ヘッドアンプは使わずに、
マランツのModel 7のPhono端子に直接挿している。
そのためシステム全体では逆相になっている。

このことも別項で書いているが、
東京に来て最初に買ったオーディオ機器が、3012-R Specialである。
当時、限定ということだったので、とにかく、このトーンアームだけは手に入れなければ──、
そのおもいだけで手にしたモノだ。

ステレオサウンドの試聴室でも、3012-R Proがリファレンストーンアームだった。

だからというわけではないが、今回、ひさしぶりに3012-R Specialに触れて、
やっぱり使いやすいトーンアームだな、よく出来たトーンアームだな、
3012-R Specialこそがユニバーサルトーンアームだな、
そんなことを思っていた。

それにレコードをかけている時も、盤面の上に弧を描いていく3012-R Specialは、
やっぱり美しい、とも思っていた。

Date: 5月 29th, 2024
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その20)

メリディアンの218に最初に使った。
次は、サウンドラボのコンデンサー型スピーカーに使ってみた。
そしてマランツのModel 7にも、
アンカーのモバイルバッテリー、PowerHouse 90を使った。

いずれも好結果が得られた。
ならば次に試したいのは、6月5日のaudio wednesdayでのメリディアンのULTRA DACだ。

ULTRA DACのリアパネルには、“40W max”とある。
たぶん使えるはずである。

どれだけの時間使えるのかは、なんともいえないので、
まず開始前にどういう変化が得られるのかを確認したうえで、
三時間すべてPowerHouse 90を使うのではなく、残り一時間ほどで使ってみたい。

Date: 5月 28th, 2024
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) – 第五夜・選曲について

「今日はカザルスはかけないんですか」
5月26日の野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会で、そういわれた。

「今日はかけないんです。でもaudio wednesdayでは必ずかけます」
とこたえた。
「行きます」と返ってきた。

私に直接いってきた人は一人だけだったが、
他にも数人の方が「カザルスはかけないんですか」といわれていた、とのこと。

6月5日のaudio wednesdayは、
ウェスターン・エレクトリックの757Aでのモノーラル録音のモノーラル再生。
カザルスももちろんかける。

そしてジャクリーヌ・デュ=プレのバッハもかける。
デュ=プレがBBCに残した録音がCDとして世に出たのは、いまから三十年以上前。

デュ=プレはどうしてバッハを録音しなかったのか──。
デュ=プレの演奏にふれたときから、ずっーとそう思い続けてきた。

だから、やっぱり残っていた(録音していた)。
そのことを喜ぶとともに、年代的にはステレオ録音でもおかしくないのに、
モノーラル録音だったことに、すこしばかりがっかりした。

デュ=プレが残したバッハは一番と二番のみ。
全曲ではないけれど、聴ける、というそのことに感謝しかない。

757Aの音を聴くまでは、なぜモノーラルなの? だったのが、
いまではモノーラルでよかったかもしれない、と思い直している。

6月5日、カザルスとデュ=プレ、ふたりのバッハをかける。

Date: 5月 27th, 2024
Cate: きく

野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会(その17)

昨晩(5月26日)の野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会で、
私がかけたディスクをあけておく。

フィッシャー・ディスカウとムーアによるシューベルトの「音楽に寄せて」。
これは日本盤。

クナッパーツブッシュの1951年のバイロイト祝祭劇場での「パルジファル」。
イギリス盤で、オリジナル盤のはず。

ケンプのシューベルトのピアノ・ソナタ第二十一番(日本盤)。

フルトヴェングラー/フィルハーモニーによるベートーヴェンの第九。
1954年の録音で、プライヴェート盤。

グレン・グールドによるブラームスの間奏曲集(日本盤)。

シュヴァルツコップとエドウィン・フィッシャーによるシューベルトの「音楽に寄せて」。
イギリス盤で、オリジナル盤のはず。

クナッパーツブッシュの「パルジファル」では途中でボリュウムを絞った。
ケンプのシューベルトもかける前はそうしようかと思っていたけれど、
第一楽章を最後までかけた。

フルトヴェングラーの第九は四楽章を最後まで。

これで持ち時間の一時間半、ほぼぴったりだった。
レコードはすべて野口晴哉氏のコレクションから選んでいる。

Date: 5月 27th, 2024
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その19)

昨晩の野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会では、
マランツのModel 7の電源はアンカーのモバイルバッテリー、PowerHouse 90から供給した。

PowerHouse 90についている残量計はあまり当てにならないという意見もあるが、
とりあえず信用することにして、一時間半の使用ではまったく問題なく、
おそらく倍の三時間は余裕で使えそうな感じを受けた。

それでも、このへんのことは実証してみないとなんともいえないが、
Model 7の消費電力が35Wだとすれば、実用になる容量といえる。

壁のコンセントからの供給とどれだけ音が違ってくるのか。
ケース・バイ・ケースとしかいいようがない。

50Hzの地区か60Hzの地区かでも違ってくるし、
電源ラインに混入してくるノイズの量によっても違いは生じる。

それでもPowerHouse 90は高価なモノではないし、
あまり音質に寄与しないという結果になったとしても、
オーディオとは関係ないところではきちんと使えるのだから、
まずは使ってみたら、といいたい。

私の周りでは二人が購入。二人とも満足している、とのこと。

Date: 5月 26th, 2024
Cate: きく

野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会(その16)

2023年5月28日が、野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会の一回目だった。
その時に、定期的に行いたい、という話は聞いていた。

そして今日(5月26日)。一年ぶりの開催。
スピーカーが一回目の時と違うことが大きいといえばそうなのだが、
それでも、音は確実に変っている。

アンプも整備されているし、アナログプレーヤーに関してもすでに書いているように、
トーンアームが3012Rになっているし、カートリッジもEMTである。
なので、音は変っていて(違っていて)当然なのだが、
それでもどれだけの変化なのだろうか、と自問もする。

野口晴哉氏が出された音を聴いていて、しっかりと記憶している人は、
私の周りにいない。

答は出ない自問なのだが、自問し続けていくことだと考えている。

Date: 5月 25th, 2024
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その18)

明日(5月26日)の野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会でも、
アンカーのモバイルバッテリー、PowerHouse 90を、
マランツのModel 7に使ってみようと考えている。

いうまでもなくModel 7はアメリカのアンプだから、
50Hzではなく60Hzにしたいし、電源電圧も100Vではなく110Vにしたい。

Model 7の消費電力は35Wとなっている。
PowerHouse 90で、どのくらいの時間持つのか、
音はどう変化するのか、試してみないことにはなにもいえないが、
明日の楽しみの一つである。

Date: 5月 25th, 2024
Cate: 価値・付加価値

銀座で買うということ

いまから四十年ほど前、
イタリア・チェトラから、
フルトヴェングラーとミラノ・スカラ座による「ニーベルングの指環」が出た。
発売前のアナウンスではステレオ録音ということだった。

フルトヴェングラーがステレオで聴けるのか、という期待、
そして初めて手にする「ニーベルングの指環」の全曲盤は、
銀座の山野楽器で購入した。

そのころ、まだ六本木にはWAVEはなかった。
だから銀座まで出かけて買ったわけだが、
立派なボックスにおさめられたフルトヴェングラーの「指環」は重たかったし、
高価でもあったけれど、なんだか誇らしい気持になれたことを思い出す。

そのころの銀座にはハルモニアというレコード店もあった。
ハルモニアのほうによく行って買っていたけれど、
山野楽器でもけっこう買うことがあった。

CD全盛時代でも、他の店になかったアルバムを見つけることもけっこうあって、
銀座に行くことがあれば、わりと行くようにはしていた。

けれどコロナ禍のすこし前あたり、CD売場が縮小された。
かなりの縮小だった。その時から銀座に行っても山野楽器に寄ることはなくなった。

その山野楽器が、7月31日でCD、DVDコーナーをなくす、という。
オンライン販売も5月31日で終了する。

縮小したときから、こうなることは予想されたことなのだろう。
特に驚きはないけれど、さびしい気持もないけれど、
銀座という街が変っていくことに、少しばかりさびしいといえばそうである。

Date: 5月 24th, 2024
Cate: 組合せ

マランツとマッキントッシュの組合せ

昨年の4月、あるお宅で、
マランツのModel 7とマッキントッシュのMC75の組合せを聴いていた。

他の人はどうだか知らないが、
私は、管球式時代のマランツとマッキントッシュに関しては、
この二つのブランドを組み合わせようとはまったく思っていなかった。

特にマッキントッシュは、
マッキントッシュのコントロールアンプ(つまりはC22)と、
マッキントッシュのパワーアンプ(MC240、MC275など)で聴くことが、
絶対条件のように捉えていた。

それはいまでも、心のどこかに残っている。

マランツの管球式アンプに関しても、ほぼ同じだ。
マランツのModel 7を使うのならば、パワーアンプはModel 2、Model 5、
Model 8(B)、Model 9こそがペアとなる相手であって、
ここにマッキントッシュのパワーアンプを持ってくるのは、
論外とまではいわないけれど、マッキントッシュではなく、
他社製のパワーアンプにしたらどうだろうか──、そんなことを心の中で思ってしまう。

いまでもC22とマランツの管球式パワーアンプを組み合わせるのナシと思っているが、
意外にもModel 7とマッキントッシュの管球式パワーアンプの組合せは、アリかな、
そう思うようになってきている。

野口晴哉氏のリスニングルームでは、Model 7とMC275の組合せである。
野口晴哉氏はマランツのModel 8Bも、マッキントッシュのC22も所有されていた。
そのうえでのModel 7とMC275の組合せ。

昨年聴いたModel 7とMC75の組合せ。
意外にいい組合せなのかもしれない。

そう思うのも、MC275のふところの深さのようなものがあってことなのだろう。

Date: 5月 23rd, 2024
Cate: EMT, TSD15, 音の毒

音の毒(TSD15のこと・その1)

昨晩ひさしぶりに聴いたEMTのTSD15。
カートリッジは、ステレオサウンドで働いていたこともあって、
かなりの数を聴いている。

それでも自分のシステムで使ってきたカートリッジとなると、
十本にも満たないし、そのなかでいちばんながい時間聴いてきたのはTSD15だった。

いまもTSD15は持っている(聴いてはいないけれども)。

TSD15の構造は、いまどきのカートリッジということだけでなく、
私が使っていた時代でも、音質優先とは言い難い点がいくつもあった。

カートリッジ下側のカバーもそうだし、
ヘッドシェルとカートリッジ本体の取りつけに関して、そういえる。

TSD15には、トーレンス・ヴァージョンのMCH-Iがあった。
このMCH-I(正確にはSMEコネクターを採用したMCH-II)では、
下側のカバーを外した音を聴いては、やっぱりこのカバーはないほうがいい──、
そんなふうに感じていたけれど、TSD15となると、ずっとカバーをつけたまま使っていた。

一度は外した音を確認している。
もちろん音は変る。
それでも外したままにはせずに、すぐにつけなおした。

TSD15の針先が変更になったSFLタイプを買ってからも、
一度はカバーを外した音を確認して、結局はつけたままだった。

外した方がよくなるところはある。
けれど、ここでのテーマである音の毒、
そういうものをひっくるめての音として受けとめていたような気がする。

昨年のインターナショナルオーディオショウで、あるメーカーのカートリッジを、
数機種、安価なモデルから高価なモデルへという比較試聴があった。

こういう比較試聴をすると、確かに値段があがっていくごとに、
なるほどと感心する音が鳴ってくる。

ダイアモンド・カンチレバー採用の百万円超のモデルとなると、
さすがだな、と思っていたけれど、ここまで聴いて思っていたのは、
このカートリッジを欲しいのか、である。

Date: 5月 22nd, 2024
Cate: きく

野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会(その15)

月曜日から三日連続で、野口晴哉記念音楽室に行っていた。
(その14)で書いたように、月曜日の夜おそくに、オイロダインから音が鳴ってきた。

野口晴哉氏が亡くなられたあとも、ときおり鳴らされていたと聞いている。
といっても、鳴らされなくなってかなり経っているのも事実。
どのくらいそうだったのかはわからないが、長いこと鳴らされていなかったことは確か。

今日、やっとアナログプレーヤーでの音出しだった。
26日当日のラインナップは、
スピーカーシステムがシーメンスのオイロダイン、
パワーアンプがマッキントッシュのMC275、
コントロールアンプがマランツの Model 7、
アナログプレーヤーはガラードの301に、SMEの3012R、
カートリッジはEMTのTSD15である。

トーンアームが3012Rなのことに、疑問を抱く人もいる。
3012Rは野口晴哉氏が亡くなられて四年後に登場しているからだ。

本来ガラードの301のシステムには、SMEの3012SIIが取りつけてある。
ガラードの他に、トーレンスのTD124/IIがあり、こちらもトーンアームは3012SII。
けれど故障したのか、3012Rに交換されていて、
元からついていた3012SIIは3012Rの箱にしまってあった。

ガラードの方の3012SIIも万全とはいえず、3012Rをトーレンスのほうから外してきて交換。
この作業を、今日やってきた。少しばかりの木工作業も。

Model 7とMC275も別項で触れているように、
テクニカルブレーンでのメンテナンスが施されている。

ひさしぶりに3012Rに触れて調整してきた。
ひさしぶりにTSD15の音を聴いた。

グレン・グールドのブラームスの間奏曲集をかけた。
日本盤なのに、艶のある音で鳴ってきた。

Date: 5月 21st, 2024
Cate: 音の毒

音の毒(オイロダインのこと・その1)

音の毒、もしくは毒のある音。
シーメンスのオイロダインを知った時から、ずっと頭のなかに居続けている。

ステレオサウンドの姉妹誌であったサウンドボーイの編集長のOさんは、
シーメンスのオイロダインに惚れ込んでいた人で、鳴らしていた人である。

そのOさんのいっていたことで、いまも憶えている、
そして昨晩、わずかな時間ではあったけれどオイロダインの音を、
野口晴哉記念音楽室で聴いて、思い出していた。

Oさんは、歌舞伎でもある、と。
歌舞伎、つまり女形である。

男性が女性を演じる。
そのことによってうまれてくる毒みたいなものが、オイロダインの音にはある、と。

Date: 5月 21st, 2024
Cate: ディスク/ブック

フィガロの結婚(クライバー・その4)

モーツァルトが天才なことを疑う人は、まずいないだろう。
そのモーツァルトの天才性がもっともつよく感じられるのは、
やっぱりオペラだろうと、
エーリッヒ・クライバーによる「フィガロの結婚」を聴き終って、そうおもっていた。