Archive for category 戻っていく感覚

Date: 3月 10th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その19)

(その1)でチューナー篇から書き始めたのは、たまたま目の前にあったステレオサウンド別冊の表紙にセクエラがあったからだ、と書いている。

そうなのだが、もう一つ理由があって、チューナーはほぼ新製品が登場しないからだ。
ステレオサウンドのベストバイでも以前はチューナーのカテゴリーがあった。
いまではない。当然だろう。

いまチューナーの新製品といえば、毎年登場するわけではない。マッキントッシュとアキュフェーズが比較的新しい製品を出しているとはいえ、
昔と今とではチューナーの存在は薄くなりつつある。

チューナーを持っていないオーディオマニアがいても不思議ではない。

この項のチューナー篇を書いていて、ケンウッドのL02T以降のチューナーには、関心がない。
セクエラのModel 1が復活した時は、おおっ、と思ったが、それが最後だった。

これから先もチューナーの新製品は、数は少ないだろうが登場するだろう。高価なチューナーも現れるかもしれないが、その登場に昂奮することはないと思っている。

L02Tはすでに書いているように、どうしても欲しいとまでは思っていない。
私が欲しいと思っているチューナーの中で新しいモノとなると、アキュフェーズのT104である。

マランツのModel 10Bとセクエラを別格として、この二つのモデルよりも身近なチューナーとして欲しいモノは、
パイオニアのExclusive F3、ケンウッドのL01T、アキュフェーズのT104が並ぶわけだが、
ここまで書いてきて思い出すのは、ステレオサウンド 55号のベストバイである。

55号のベストバイの巻頭には、オーディオ評論家それぞれのベストバイ観があり、My BestBuyとして、各ジャンルから三機種ずつ選んでいる。

瀬川先生のチューナーのベスト3が、Exclusive F3とL01TとT104なのを思い出している。

Date: 3月 1st, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その18)

ケンウッドのL02A、L02Tは、ステレオサウンドの試聴室で何度か聴いている。
くり返し聴くことができたのは、プリメインアンプのL02Aのほうで、チューナーのL02Tの方は、一度だけだった。

音を聴かなくとも、カタログやオーディオ雑誌の記事、それに実物を目の前にすれば、すごいと多くの人が感じたはずだ。

L02Aについてプリメインアンプ篇で書くことになるだろうから、ここではL02Tだけについて書く。

L02Tが登場したころ、オーディオをやっていた人は、セクエラのModel 1とL02T、どちらが高性能なのだろうか、と頭の中で比較したと思う。

L02Tは300,000円。セクエラは1,480,000円。
日本製とアメリカ製の違いがあって、単純にこの価格差だけでは比較の対象とはならないクラスであっても、
L02Tの内容を知るほど、どうなのだろうか、という興味は募っていった。

L01Tでは、そんなことは思わなかった。

以前、別項で書いているように、ステレオサウンドの試聴室でL02Tとナカミチのカセットデッキ、700ZXEとで、シルヴィア・シャシュの日本公演の放送を録音したことがある。

L02Tを聴いたのは、この時かぎり。仕事ではない録音だし、他のチューナーと比較試聴したわけでもない。
それにステレオサウンドの試聴室でチューナーを聴いたのも、この一回かぎりだった。

なので聴いたとはいえ、どれだけの実力なのかの判断基準があったわけではない。
単純に、最高といえる(それに近い)チューナーとカセットデッキで、大好きなシルヴィア・シャシュの公演を録音していることが嬉しかった。

ステレオサウンドで働いていたからできたことで、そうでなければ普及クラスのチューナーとカセットデッキでの録音がやっとだっただろう。

そういう個人的な思い出があるL02Tだけに両方欲しいと思いながらも、誰かにL01Tとどちらかが欲しいときかれたら、L01Tと答える。

Date: 2月 28th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その17)

パイオニアのエクスクルーシヴ・ブランド、
トリオのケンウッド・ブランド。

どちらも同じようなところを目指しているように見ている人もいただろうが、エクスクルーシヴ・ブランドとケンウッド・ブランドには、はっきりと違いがあった。

ケンウッドは意欲的といえたし、もっといえば少しばかり実験的なところがあった。

ケンウッド・ブランドの最初のモデル、L01AとL01Tは、その後のケンウッド・ブランドのモデルと比較してもそうだった。

ケンウッド・ブランドの次のモデルはアナログプレーヤーのL07Dだった。
高剛性を追求し、ゴムなどの弾性体を排除する方向で開発されている。

曖昧な素材を排除して、高剛性と重量で、アナログプレーヤーの問題に対処するのは、
マニアックなアマチュア的アプローチともいえる。

それでも当時は、高剛性追求が一つの流れとしてあった。
L07Dは、L01Dではなかった。
ケンウッド・ブランドであっても、01と07は違っていた。この点も、エクスクルーシヴ・ブランドでは起こらなかったはずだ。

その次のモデルは、待望のセパレートアンプだった。私はL01Aのセパレートアンプ版を期待していたが、出てきた製品は違っていた。

そして、その次のモデルが、ケンウッド・ブランドの集大成といっていいL02AとL02Tだった。

Date: 2月 27th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その16)

1970年代の終り近くになってアンプの音の解析が一歩進んだように感じた。
スルーレート、ライズタイム、TIM歪といった動的特性がクローズアップされるようになってきただけでなく、
アンプの非磁性体化も、各メーカーで取り組むようようになってきた。

サンスイのAU-D907 Limitedがそうだし、ケンウッドのL01A、L01Tもそうだっただけでなく、より徹底していた。

L01Aはプリメインアンプにも関わらず、電源部を独立させている。
筐体も底板に木、フロントパネルにはアクリル材、それにアルミを組み合わせることで構成している。もちろんツマミやスイッチからも磁性体を徹底的に排除している。

それでも最後まで残るのが、電源トランスという鉄のかたまりだ。
とはいえ、電源トランスを排除できるわけではないので、別筐体とすることで、非磁性体化の目標を、可能な限り追求、実現している。

この非磁性体化をチューナーにも持ち込んだのがL02Tだ。
チューナーはプリメインアンプほど電源トランスの容量を必要としないこともあってだろう、L02Tでは電源トランスは本体の筺体内に収められている。

L02Tの特徴は非磁性体化だけではなく、回路的にはL01Aよりも意欲的な試みをやっている。

L01Tを聴く機会はなかった。L02Tは160,000円だった。
トリオのKT9700は150,000円、後継機のKT9900は200,000円だったから、
価格だけで判断すれば、L02Tが突出しているわけではなかった。

それでもトリオ・ブランドのチューナーにはない質感が、L02Tにはあるように感じた。
音は聴いていないものの、チューナーとして中身が全く同じであっても、
筐体がまるで違うのだから、音もかなり違う仕上がりとなっていたはず。

いまも中古品として並んでいるL01Tを見つけると、買ってしまおうかな、という衝動がある。

Date: 2月 26th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その15)

オーディオに興味を持つ前まではアマチュア無線の免許を取ろうと勉強していた。
初歩のラジオを読みながら、合格したら、どの無線機を買おうか、と思っていた時期がある。

トリオの名前は、オーディオよりもアマチュア無線のブランド(メーカー)として、先に知っていた。

トリオのチューナー、というよりもチューナーのトリオという印象があった。
トリオのチューナーは定評があった。でもカタログやオーディオ雑誌に掲載されている写真をみると、なんとなく、どこかにギラついた印象が残っている感じがして、好きにはなれなかった。

チューナーとしての性能、音も優秀なんだろうけど──、私の中では、そこのレベルでとまっていた。

トリオのチューナーに対して印象ががらっと変ったのは、L01Tの登場によってだった。

L01Tという型番からもわかるように、それまでのKTで始まるトリオのチューナーとは、違っていた。
ブランドもトリオではなく、ケンウッド。

いまでこそトリオではなくメーカー名もケンウッドになっているが、当時はトリオが会社名でありブランド名であり、ケンウッドは海外でのブランドだった。

そのケンウッドの名称を、国内の別ブランドとして展開するようにしたのは、パイオニアのエクスクルーシヴ・ブランドと似ている。

パイオニアの場合、最初はパイオニア・ブランドでのExclusiveシリーズだったが、途中から販売会社パックスをつくり、エクスクルーシヴ・ブランドとなった。
その後、パックスは解散して、パイオニアに戻る。

L01Tがチューナーで、ペアとなるプリメインアンプがL01A。この二機種の登場は、私にとっては新鮮だった。

Date: 2月 25th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その14)

ステレオサウンド 43号、ベストバイで五人が選んでいるチューナーはトリオのKT9700で、
井上卓也、岡俊雄、菅野沖彦、瀬川冬樹、山中敬三の票を集めている。

パイオニアのExclusive F3を選んでいるのは、上杉佳郎、瀬川冬樹の二人。

KT9700は150,000円、Exclusive F3は250,000円。
おそらくだが、チューナーとしての性能はKT9700の方が上だっただろう。

でもKT9700とExclusive F3の写真を見比べると、KT9700が女性ヴォーカルをしっとりと鳴らしてくれるふうには思えなかった。

瀬川先生は《音の傾向は、9300と同系統の、やや硬質で鮮明な印象。反面、音のやわらかさやふくらみや豊かさという面では、たとえばパイオニアのF3あたりの方に軍配が上がるが、この辺は好みの問題だ》と書かれている。

こういうのを読むと、やっぱりExclusive F3だな、と十四歳の私は思っていた。

いつかはExclusive F3と思うようにもなっていたが、少し冷静になれば、チューナーに二十五万円払えるだけの経済的余裕が持てるようになれば、
同レベルのアンプ、スピーカー、プレーヤーも手にしているわけだし、だとすれば、好きなレコード、聴きたいレコードは躊躇うことなく買えるだろうから、
チューナーを介して好きな曲を聴くということ、つまりレコードが買えなくてFM放送を聴くことはほとんどないだろうから、チューナーの音に好みを求めることはあまり意味がないことにも気づいていた。

それでもセクエラのModel 1、マランツのModel 10Bを別格の存在とすれば、
Exclusive F3は、そのころの私にとっては最高級チューナーといえる存在だった。

そのExclusive F3は、いま手元にある。岩崎先生が使われていたモノがある。

Date: 2月 24th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その13)

ステレオサウンド 43号。
たとえばスペンドールのBCIIについて、岡先生は《ピアノよりも弦楽器やヴォーカルが見事である》と評価されている。

また岡先生はQUADのESLについて《弦とヴォーカルのよさは類のないものである》とも書かれている。

アンプだとラックスのSQ38FD/IIについて、瀬川先生は《とくにクラシックのプログラムソースで、弦やヴォーカルのいかにも息づくような暖かさ、血の通った滑らかさを聴けば、この音はちょっと他のアンプでは聴けない特長であることが理解できる》、
同じラックスのCL32では《弦やヴォーカルの音が冷たい金属質にならず、どこか暖かい滑らかさで響くところが、やはり球ならではという感じ》と書かれている。

どれ一つ、この時点では聴いたことがなかったら、ひたすら読んでは、その音を想像していた。

ヴォーカルがうまく鳴るには、艶があって瑞々しい音であってほしい。女性ヴォーカルを聴くのだから色気もあってほしい──、そんなことをおもいながら、43号を何度読み返したことか。

そんな読み方でチューナーのところを見ると、何が最有力候補として浮かび上がってくるかというと、パイオニアのExclusive F3だった。

セクエラのModel 1も選ばれていたが、この凄い性能のチューナーから、女性ヴォーカルの再生に向いた音がしてくるとは思えなかった。

ヤマハのCT7000もいいな、と思いながらも、瀬川先生なCA2000のところで書かれている《ヤマハの一連のアンプの音質に、もうひとつ、色気の欠けていることが不満である私自身、ここまで磨き上げた端正で上品で、清潔な美しい音を聴かされるとその歪みのない澄明な音色にはひとつの魅力があることがよくわかる》、
これを読んでそうか色気がないのか……、CT7000の音もそうなのか……、と思っていた。

Exclusive F3について瀬川先生は《C3やM4と一脈通じる、繊細で、ややウェットではあるが、汚れのない澄明な品位の高い音質》と書かれていたのだから、
女性ヴォーカルを聴くにはExclusive F3だ、と14歳の私は思ってしまった。

Date: 2月 23rd, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その12)

ステレオサウンド 43号の特集は、ベストバイだった。
「五味オーディオ教室」で出逢って一年未満の私にとって、43号は本当に面白かったし、何度読み返したことか。

ベストバイはステレオサウンドの恒例の特集となっていまも続いているし、今後もずっと続いていくだろうが、
ベストバイという特集は、43号がいまも一番といえる。

価格帯で分けたり、星をつけたりしても43号を超えることはない。

43号を持っている人は、いまのステレオサウンドのベストバイと比べてみるといい。43号では熱っぽさが誌面から伝わってきた。いまは、それがない。

編集部、オーディオ評論家の熱が感じられない。
もし43号が、いまのようなベストバイの号だったら、私はくり返し読まなかっただろう。

こんなことを書くと、当時のオーディオ機器の価格と、いまのオーディオ機器の価格があまりにも違いすぎて──、そんなことをいう人がいるだろうが、そんなことではない。

そのことがわかっていないから、こんなベストバイしか作れなくなったのだろう、と思うしかない。

話が逸れてしまったついでに書いておくと、書き手の怠慢ともいえる。それが、どういうことかは、別項で書く予定。

とにかく43号は熱心に読んだ。当時、中学三年生だった私は、女性ヴォーカルが最優先だった。
グラシェラ・スサーナの歌を、うまく鳴らしたい。そればかりを考えて43号を読んでいたので、
ベストバイに選ばれたモデルの、各オーディオ評論家の文章から、そのことを読みとろうともしていた。

Date: 2月 19th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その11)

ステレオサウンド 43号。特集はベストバイ。
瀬川先生は、パイオニアのExclusive F3について、こう書かれていた。
     *
自宅で数ヶ月モニターしたのち、返却して他のチューナーにかえたら、かえってF3の音質の良さを思い知らされて、しばらくFMを聴くのがイヤになったことがある。C3やM4と一脈通じる、繊細で、ややウェットではあるが、汚れのない澄明な品位の高い音質で、やはり高価なだけのことはあると納得させられる。
     *
すでにセクエラのModel 1はあったし、その存在も知っていたけれど、当時中学生だった私は、普及クラスのチューナーからのステップアップは、このExclusive F3だな、と決めていた。

Exclusive F3は250,000円。
セクエラのModel 1は1,480,000円。
どちらも買えるわけではなかったけれど、セクエラへの道は途方すぎていて、
Exclusive F3の方がずっと現実的に思えていたからだ(錯覚ともいう」。

それに《C3やM4と一脈通じる、繊細で、ややウェットではあるが、汚れのない澄明な品位の高い音質》、ここに強く惹かれた。

女性ヴォーカルを聴くのに、これほど適したチューナーは他にはないように思えた、というよりも、そう思い込もうとしていた。

Date: 2月 18th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その10)

QUADのFM3は、私にとっては小型ラジオ的位置にいるチューナーであるし、
これまで別項に書いているように、QUADのコントロールアンプの33と、専用の木製スリーブに入れた状態で、最大の魅力を放ってくれる──、そういう存在だ。

33とペアということだから、チューナー付きコントロールアンプ的存在でもある。

FM3単体ではそれほど欲しいとはならないが、33と専用スリーブとセットとなると、欲しいという気持は途端に大きくなる。

このへんはウーヘルのEG740と近い。EG740もウーヘルのテープデッキと組み合わせることを想像すると、欲しい気持は強くなるからだ。

ここが、マランツのModel 10B、セクエラのModel 1と違う。

そういう視点からみれば、マッキントッシュのチューナーは、QUADのチューナーと同じといえる。
一時期、マッキントッシュの管球式チューナーを使っていたが、毎日、そのパネルを見ていると、
やっぱり、このチューナーはマッキントッシュのコントロールアンプと一緒に使うモノであり、
単体のチューナーとして見た時の魅力は、私の場合、下がってしまう。

いま私のところには、パイオニアのExclusive F3とオーレックスのST720がある。
どちらもステレオサウンド 43号を読んだ時から欲しいと思っていた。

Date: 2月 17th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その9)

セクエラ氏が創立したセクエラ社は解散してしまっているが、David Day氏によってセクエラの権利が買い取られて、
1990年ごろだったと記憶しているが、
DaySequerraとして復活しているし、Model 1も復刻されている。

RFエンタープライゼスが輸入していた。それから三十年以上が経っているけれど、DaySequerraは健在だ。

さすがにModel 1は製造されていないが、アップグレードプログラムが、3,800ドルで用意されている。

マランツのModel 10B、セクエラのModel 1は、CRTを搭載していて受信状況がモニターできた。

このCRTは、どんなに大事に使ってきていても、寿命を迎える。
DaySequerraでは、液晶モニターに置き換えるサービスを提供している。

Model 10Bは管球式チューナーだから高い電圧が標準となるが、Model 1はソリッドスタートだから、チューナー本体は低電圧で、CRT部のみ高電圧となる。

それが液晶モニターに置き換わることで、高電圧回路を省ける。このことによるメリットは小さくない。

いま日本には輸入元がないから、アップグレードプログラムを望む人は、直接問い合わせることになるし、応じてくれるのかは定かではないが、
もし私がセクエラのModel 1を手に入れることがあったら、このアップグレードはやりたい。

Date: 2月 10th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その8)

マランツのModel 10Bを愛用されていた五味先生は、最終的にスチューダーのC37まで導入されている。
多い。
     *
 いい音で聴くために、ずいぶん私は苦労した。回り道をした。もうやめた。現在でもスチューダーC37はほしい。ここまで来たのだから、いつか手に入れてみたい。しかし一時のように出版社に借金してでもという燃えるようなものは、消えた。齢相応に分別がついたのか。まあ、Aのアンプがいい、Bのスピーカーがいいと騒いだところで、ナマに比べればどんぐりの背比べで、市販されるあらゆる機種を聴いて私は言うのだが、しょせんは五十歩百歩。よほどたちの悪いメーカーのものでない限り、最低限のトーン・クォリティは今日では保証されている。SP時代には夢にも考えられなかった音質を保っている。
     *
スチューダーのC37を手に入れられたことは、ステレオサウンド 50号の「オーディオ巡礼」を読めばわかる。
やはり手に入れられたのか、と思いながら読んだ。

C37はコンソール型のオープンリールデッキで、かなり大きい。管球式テープレコーダーである。

10BとC37で、NHK-FMのライヴ放送を録音されたのだろう。どんな音なのか、と想像するしかないわけで、聴いてみたい音でもある。

セクエラのModel 1だったら、スチューダーのA80だっただろうか。そんなことも当時おもっていた。

そういえばマーク・レヴィンソンは、スチューダーのA80のトランスポートをベースに、エレクトロニクスをマークレビンソン製に置き換えたML5を出していた。

このころ、KEFのModel 105やJBLの4343をベースに、ML5のようにマークレビンソン・ブランドで出すというプランもあった。
立ち消えになってしまったけれど、マーク・レヴィンソンはチューナーで、同じことをやろうとは考えなかったのか。
もし考えていたら、ほぼ間違いなくセクエラだっただろう。

Date: 1月 25th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その7)

たとえばウーヘルがある。
ウーヘルはもともとテープデッキのメーカー。
ポータブル型のオープンリールデッキ、カセットデッキで知られていた。

そのウーヘルが、小型コンポーネントシステムを売り出した。
ウーヘルのカセットデッキ、CR240の音を聴いているが、他のモデルの音は知らない。
それでもテープデッキの音は想像できるところもあるが、小型コンポーネント全体の音は、どうだったのだろうか。

この頃のウーヘルの輸入元は三洋電機貿易だった。
チューナーのEG740の外観は、いかにもウーヘル的だけど、製造は日本だったと記憶している。

ウーヘル本社が企画設計して日本製造だったのか。このやり方は、1970年代のマランツがそうだった。
アメリカで設計し、製造は日本で行っていた。

EG740が西ドイツ製か日本製なのかは、あまり気にしていない。日本製であっても欲しいチューナーであることにはかわりない。

ただEG740は外部電源である。コントロールアンプもそうだったはずで、一つの電源から供給するようになっている。

実をいうと、この電源だけは持っている。日本製である。けっこう前にヤフオク!に出品されていたのを、安価だったので落札した。
EG740本体をいつ手に入れてもいいように、である。

少し話が逸れてしまったが、EG740の出力をCR240で録音してみると、どうなるのだろうか。

セクエラは、のちにスピーカーを出していたが、テープデッキは手掛けていない。
マランツはカセットデッキはあったけれど、Model 10Bとは時代が違う。
QUADにもテープデッキはなかった。

ウーヘルのEG740とCR240は同時代の製品である。この組合せの音は、どうだったのか。

Date: 1月 24th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その6)

チューナーについて書いていると、ステレオサウンド 59号の特集ベストバイの座談会を思い出す。
     *
菅野 これも個人によって全く考え方がちがうと思いますね。たとえば、自分があまり関心のないジャンルというものがある。ぼくにとってはFMチューナーがそうです。ぼくはFMチューナーで、レコードに要求するだけの音を聴こうとは思わないんですよ。まあ、そこそこに受信して鳴ってくれればいい。だから大きな期待をもたないわけで、FMチューナーなら、逆に値段の高いものに価値観を見出せないわけです。
 亡くなられた浅野勇先生みたいにテープレコーダーが大好きという方もいる。「もうこのごろレコードは全然聴かないよ、ほこりをかぶっているよ」とおっしゃっていたけれど、そうなると当然レコードプレーヤーに関しては、大きな要求はされないでしょう。やはりテープレコーダーの方によりシビアな要求が出てくるはずですね。
 そのようにジャンルによって物差しが変わるということが全体に言えると同時に、今度はその物差しの変わり方が個人によってまちまちだということになるんじゃないでしょうか。
柳沢 ぼくもやはりFMチューナーは要求度が低いですね。どうせ人のレコードしか聴けないんだから……といった気持ちがある。
瀬川 そうすると、三人のうちでチューナーにあたたかいのはぼくだけだね。ときどき聴きたい番組があって録音してみると、チューナーのグレードの差が露骨に出る。いまは確かにチューナーはどんどんよくなっていますから、昔ほど高いお金を出さなくてもいいチューナーは出てきたけれども、あまり安いチューナーというのは、録音してみるとオヤッということになる。つまり、電波としてその場、その場で聴いているときというのは、クォリティの差がよくわからないんですね。
     *
菅野先生が言われているように、チューナーというジャンルは、それに対する考え方、価値観が個人によってかなり違ってくるものの代表だろう。

《だから大きな期待をもたないわけで、FMチューナーなら、逆に値段の高いものに価値観を見出せないわけです。》
とも菅野先生は発言されている。

私も菅野先生と同じで、チューナーの音にそれほどのレベルは求めていないところもあるといえばある。
それに高性能なチューナーで受信したい番組がどれだけあるだろうか──、と考えると、
ステレオサウンド 59号の時代よりも、それは悲しいとしか言えない。

それでもマランツのModel 10B、セクエラのModel 1は、写真だったら実物を見ると、やっぱりいいな、すごいな、となる。

モノマニアの一面が強く前に出てくるからだろうし、モノマニア心をいまでもくすぐってくる。

そしてチューナーの音である。瀬川先生の発言が、やはり気になる。
《ときどき聴きたい番組があって録音してみると、チューナーのグレードの差が露骨に出る。》
ということは、エアチェック(録音)する場合、相性のいいチューナーとテープデッキがあるのだろうか。

このことを考え始めると、また楽しくなる。

Date: 1月 18th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

早瀬文雄氏の文章を入力していて(その3)

本当に気の迷いだったのか──、
そう思うようになったのは、ずいぶん経ってからのことだった。

少なくとも十数年は経っていた。ある晩、早瀬文雄(舘 一男)さんから電話があった。
スピーカーを買おうと思っているけど、何がいいか、という内容だった。

舘さんとは、いろんなことを話してきたけれど、どのスピーカーを買ったらいいか、いう話はそれまで一度もなかったし、その後もなかった。
この時、一度きりだった。

その時、鳴らしているスピーカーとは別に買うことを考えていて、
そのスピーカーは好きなスピーカーではなくて、オーディオ評論家として自宅で鳴らしておくべきスピーカーとして、であった。

なのでスピーカーの好き嫌いは関係なく、オーディオ雑誌の編集部が試聴室のリファレンススピーカー選びに近いともいえる。

候補はいくつかに絞ってはいたけれど、どれにしたらいいですかね……、と舘さんは電話越しに話していた。

そういう目的ならばB&Wでしょう、が二人の一致した答ではあったが、
舘さんも私も、消去法での選択であることは言わなくてもわかっていたし、
B&Wですよね……、これから先がなかなか盛り上がらなかった。

結局、舘さんは買わなかった。それでよかった、と思ったが、同時に、
舘さんがティールのスピーカーを買ったのも、同じような動機からだったのではないか、と思うようになった。

アメリカのハイエンドオーディオ業界で高い評価を得ているティール。
でもオーディオ雑誌の試聴室などで聴く限りは、優れたスピーカーとは思えないどころか、ひどいスピーカーのように感じられる。

ならば自分のモノとして買って鳴らしてみよう──、そういうところからの購入だったような気がする。