Archive for category 戻っていく感覚

Date: 5月 6th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その12)

ナカミチの1000だけが大きかったわけではない。
1000IIと同時代のパイオニアのCT-A1も、かなり大きなカセットデッキだった。

1000IIの外形寸法はW52.6×H29.8×D21.9cm、重量17.0kg。
CT-A1は、W42.0×H21.7×D39.0cm、18.0kgと、なかなかのサイズだった。

単体のサイズでは、この二機種には及ばないがテクニクスのRS690Uは、トランスポート部とアンプ部を独立させたセパレート型カセットデッキで、
トランスポートはW48×H19.3×D37.5cm、13.5kg。アンプはW48×H17.3×D37.5cm、8.5kgと二筐体合わせると1000IIよりも大きく重い。

これらのカセットデッキに魅力を感じる人もいれば、私のように、ここまでやると凄いのはわかるけど……、という人もいよう。

大きなカセットデッキにあまり興味を持てなかった私でも、例外的な存在が、B&OのBeocordシリーズである。

Date: 5月 5th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その11)

私にとって、ルボックスのB710、スチューダーのA710は、チューナーにおけるマランツのModel 10B、セクエラのModel と同じ位置付けにあるわけではない。

私の中では、チューナーでいえばアキュフェーズのT104、パイオニアのExclusive F3的な位置ともいえる。

カセットデッキとチューナーと、ジャンルが違うから、こんな位置付けをしても、あまり意味はないとは思いつつも、それではカセットデッキで、
マランツ、セクエラに匹敵するモノとなると、ナカミチの1000ZXL、もしくは1000ZXL Limitedかと思うけれど、
何かちょっと違うな、と感じるところもある。

カセットテープ(デッキ)の限界まで追求している点では、確かにそうだと思う。でも1000ZXLの、あの大きさを見ると、その点が、Model 10B、Model 1と違うと感じるところにつながっていくように思う。

ナカミチの1000が大きくしようとして、あのサイズになったのではなく、性能を追求していったら、あのサイズになったことはわかっている。

それでも……という抵抗感が私にはある。それはカセットテープのための機械だから来ていることかもしれない。

カセットテープと書いてきているが、ここでのカセットテープとは、フィリップスが開発したコンパクトカセットのことである。

テープをなんらかのケースに収めたものの総称がカセットテープであり、フィリップスのコンパクトカセット以前に、RCA、ソニーから独自のカセットテープは出ていた。

カセットテープとは、コンパクトカセットのことであり、コンパクトとつくことが示すように、それまでのカセットテープよりもずっと小さくなっている。

Date: 5月 3rd, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その10)

何度も書いている瀬川先生が、熊本のオーディオ店に定期的に来られて開かれていたオーディオ・ティーチイン。

毎回、土日二日連続で行われていて、最後の回となったのはトーレンスのリファレンスを聴く内容だった。前日の土曜日の内容はカセットデッキだった。

この時、やっとカセットデッキのクォリティが、他のオーディオ機器と同じ評価軸で語れるようになってきた──、と話された。

同じことは、FMfanでの連載でも書かれていた。瀬川先生によると、それまでのカセットデッキの評価は、カセットテープだから、この程度だろうという、他のオーディオ機器よりも一段低いところで語られていた、ということだ。

それがようやく1980年ごろから変ってきた、と。

オーディオ・ティーチインのカセットデッキとカセットテープの回も、もちろん行っている。なのに、どのカセットデッキを聴いたのか、カセットテープはどれだったのか、詳細をほぼ全て忘れてしまっていて、どうにも思い出せない。

オーディオに関する限り記憶力には自信を持っているのに、この回だけは、すっぽりと抜け落ちているのは、カセットデッキ(テープ)への関心が薄いためなのだろう。

そして、この時期、ルボックスのカセットデッキ、B710が登場している。

Date: 4月 27th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その9)

こうやってカセットデッキのことを振り返って書いていると、気づくのは、チューナよりもカセットデッキには関心があまりなかったことだ。

いいなぁと思っていたカセットデッキは、いくつかある。思い出すままにあげていくと、
テクニクスのRS-M88、ラックスの5K50Mなどがそうだけど、どうしても手に入れたいという気持は持てなかったことに改めて気づく。

そんな私でもスチューダーのカセットデッキが、今でも欲しいと思うのは、
(その2)で引用した瀬川先生の文章がなせるわざといえる。
なのにルボックスではなくスチューダーなのかといえば、CDプレーヤーで、ルボックスとスチューダーの音の違いを聴いて知っていたからだ。

ルボックスからB225が登場し、その音を聴いた時は唸ってしまった。CDからも、こういう音が出るのか、と。
しばらくしてB225のスチューダー版A725が登場した。

B225をベースにさちモデルなのに、そこにはコンシューマー用とプロ用機器の違いが、やはりある。

B225はD/Aコンバーターに、フィリップスのTDA1540を採用していた。14ビット仕様だった。
16ビット仕様のTDA1541が出て、B225はB226へとヴァージョンアップした。

スチューダーのA725もA727へとアップした。ここにもルボックスとスチューダーの違いは、やはりあった。

だからカセットデッキもルボックスのB710ではなくて、スチューダーのA710が欲しい。

Date: 4月 26th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その8)

ナカミチのカセットデッキに熱くなれなかった私は、カセットデッキ(カセットテープ)そのものに熱くなれなかっただけかもしれない。

いま所有しているカセットデッキは、ヤフオク!で落札したヤマハのK1dのみ。
ヤマハのK1は、いいなぁと思っていたけれど、憧れの機種だったわけではない。
K1dは、型番末尾のdが示すようにdbx対応である。

1970年代の終りごろ、オーディオメーカー各社から、いくつかのノイズリダクション方式が登場した。

それまでノイズリダクションといえばドルビーしかなかったところに、どれがいいのか迷う(わからない)ほどに、ノイズリダクションが出てきた。

カセットデッキに搭載されもしたし、外付けのタイプも多かった。
ドルビーもそれまでのBタイプだけでなくCタイプも出してきた。

個人的にはdbxに関心があった。この頃、dbxは勢いがあったように感じていたし、ドルビーの牙城を崩すかも──、そんなことも思ったりしたが、ドルビーは強かった。

dbxに関心があったのは、菅野先生録音のオーディオラボからdbxを採用したプログラムソースが出ていたことが大きい。

ステレオサウンド 60号掲載の菅野先生のリスニングルームの棚には、K1dがあったことも、理由として大きい。

欲しいと強い気持があって落札したわけではなかった。カセットデッキが一台欲しいと思ってヤフオク!を眺めていたら、
たまたまK1dが出品されていて、応札する人も現れずすんなり手に入れることができた。

Date: 4月 23rd, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その7)

スカリー(Scully)のオープンリールデッキ、280Bもそうだった。
菅野先生がオーディオラボでの録音に使われていた280Bも、ナカミチのカセットデッキのように、
280Bで録音したテープは、280Bで再生すればいい音なのだが、同クラスの他社のオープンリールデッキで再生すると冴えない音になってしまう、と菅野先生から聞いたことがある。

実際、どのくらい違うのか、音を聴いたわけではないが、オクタヴィアレコードからオーディオラボのSACDが発売になった時の話を聞いている。

オーディオラボのマスターテープの保管場所がようやくわかり、千葉のあるところまで行かれたとのこと。テープの保管状態は良かったそうで、急いで東京に持ち帰り、再生してみたところ、冴えない音だったそうだ。

いろいろ試してみてもダメで、菅野先生に相談しに行ったところ、返ってきたのは、スカリーで録音したテープは、スカリーで再生しなければならない、ということだった。

とはいえ、その時点で菅野先生のところにも280Bはない。スチューダーやアンペックスほどメジャーなデッキではなかったこともあり、探すのも大変だった、とのこと。

やっと、あるレコード会社の倉庫に眠っている一台が見つかり、再生してみると、昨日録音したかのような生き生きとした音が鳴ってきたそうだ。

こういう例もある。なのでナカミチの、こういう面を批判する気はほとんどないが、
オープンリールテープと違い、カセットテープは誰かとやりとりすることも少なくないはず。

自分で録音したテープを誰かに渡す。その逆もある。そんな場合、どうだったのだろうか。
自分で録音したテープは自分で聴く──、それだけであればナカミチのデッキは優れた機械だろうが、カセットテープの性質を考えると、それでいいのか、と思うところはある。

スカリーの280Bは自己完結していた機器なのだろう。ナカミチのカセットデッキも、そうなのか。

Date: 4月 12th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その6)

オーディオマニアの中には、ナカミチマニアもいる。
ナカミチに限らず、JBLマニアもいるし、他のブランドのマニアもいるが、
ナカミチマニアが、いちばん熱心というか、やや言葉は悪いが狂信的なマニアではないだろうか。

ナカミチの全機種を蒐集している人もいる。
同じ歳の友人Aさんも、ナカミチが好きだった。
彼はハタチごろ、秋葉原の光陽電気でアルバイトをしていた。
ナカミチからDragonが発売になっていた頃である。

彼はDragonが好きだった。もちろん自分でも購入していたし、お客にも熱心に勧めたそうだ。
個人でDragonを一番売った男とのこと。

Dragonに興味がある客、買いたそうな客はすぐにピンとくるそうだ。その人に熱心に説明する。

Dragon好きの男が、Dragonを好きになりそうな、好きな人を相手に声をかけるのだから、かなりの台数を売り上げたのもわかる。

フラッグシップモデルとして1000があり、その下に700。
一般的なコンポーネントのサイズのデッキとして500シリーズ、600シリーズがあり、
数字の型番から外れたモデルとしてDragonを出してきたナカミチ。充実したラインナップを形成していた。

Aさんは、Dragonをカッコいいと熱く語っていた。

私には理解できないものの、ナカミチはマニアを熱くさせる何かを持っていたのだろう。ナカミチマジックと呼んでいいのかもしれないし、
ナカミチマジックは、音の面でも言うことができた。

ナカミチのカセットデッキで録音したテープは、ナカミチのカセットデッキで再生する分には、
確かにいい音なのだが、ナカミチで録音したテープを他社製のカセットデッキで再生、
反対に他社製のカセットデッキで録音したテープをナカミチのカセットデッキで再生した音は、
意外なほど冴えない場合が多い。

Date: 4月 12th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その5)

メタルテープが登場した時、オーディオマニアとしてどんな音が聴けるんだろう、と私だって興味を持った。

TDKからMA-R、ソニーからMetal Masterが登場してくると、聴いてみたいという気持は強くあったけれど、
どちらのメタルテープも、未だに聴きていない。

ヤフオク!に出品されている未開封のモノ、MA-RもMetal Master、どちらもかなり高額。
買えない金額ではないものの、そこまでして……という気持が、私の場合、強い。

ナカミチの680ZXを、もしこれから先手に入れることがあったら、MA-R、Metal Master、どちらかは高価でも落札するだろう。

680ZXは標準速だけでなく半速での録音・再生ができる。同時代のマランツのカセットデッキは倍速に対応していた。

音のことだけをとれば、倍速での録音と再生となるが、私の興味は少し別のところにあって、
680ZXとMA-RかMetal Masterとの組合せだと、半速で、どれだけのクォリティを維持できるのか。ここに興味が、いまでもある。

メタルテープには、どのメーカーからもC120は出ていなかった。C60だけのメーカーもあったし、C90までしかなかった。

半速だとC90で片面90分録音できる。CDよりも長い収録時間。

だからといって、その倍になった収録時間をどう活かすのかをあれこれ考えていたわけではない。
単純に、すごいなぁ、どれだけの音質なのだろうか、そこへの興味だけである。

それを確かめたいだけなのだが、私にとってナカミチのカセットデッキといえば、680ZXだけとなる。

Date: 4月 11th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その4)

私が熱心に読んでいたころのステレオサウンドは、カセットデッキ、オープンリーデッキをあまり取り上げていなかったのは、
姉妹誌に隔月刊のテープサウンドがあったからだろう。

私が住んでいた田舎の書店に、ステレオサウンド他オーディオ雑誌はけっこう並んでいたが、
テープサウンドは見かけた記憶がない。

テープサウンドがない、ステレオサウンドでもあまり取り上げない。そのこともカセットデッキ(テープ)にあまり関心を持てなかったことにつながっていると思っている。

それにLPを買ったらカセットテープに録音して、そちらを聴く──、
そういう習慣は私にはなかった。多くの人がそうだろうと思っていたら、
意外に多くの人が、まずカセットテープに録音していた、と話すのを聞いて、えっ、そうなのか、と驚いたことが何度もある。

LPの録音ということを積極的にやっていたら、カセットデッキ(テープ)への関心は相当に違っていただろうが、そうではなかった。

メタルテープが登場した時、もちろん興味はあった。でもそのころ使っていたカセットデッキはメタルテープ登場以前の機種ゆえ、当然対応していない。

メタルテープ対応のカセットデッキを買うだけのお金があれば、LP再生環境を良くしたい、と思っていたから、
メタルテープの音を聴いたことは数度あっても、自分で使ったことはずっとなかった。

メタルテープ対応カセットデッキを手に入れたのは2019年、ヤフオク!で落札したヤマハのK1dが初めてである。
カセットデッキは手に入れても、メタルテープも落札するまで、しばらく聴くことはできなかった。

自分のシステムで、自分で録音して(といってもCDのダビング)聴いたのは2020年になっていた。

私のカセットデッキ(テープ)への関心の薄さは、このことからもわかってもらえよう。

カセットデッキ(テープ)へ強い関心のある人にとってのナカミチと、
関心の薄い私にとってのナカミチの存在の大きさは、ずいぶんと違ってきて当然である。

Date: 4月 9th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その3)

1970年代のオーディオブームからの十数年。この間にオーディオに取り組んでいた人にとっては、
カセットデッキといえばナカミチ!、なのだろう。

私がオーディオに興味を持ち始めた1976年ごろに、ナカミチのフラッグシップモデルの1000はII型になっている。
この時、それほど話題にはなっていなかったと記憶している。

ナカミチの1000が、そしてナカミチという会社が、やっぱりすごいといわれたのは、
1980年に登場した1000ZXLである。

カセットデッキ(テープ)にあまり関心を持たない私でも、すごい製品を出してきたな、と思ったほどだった。

井上先生がステレオサウンド 57号の新製品紹介で1000ZXLについて書かれている。
     *
 このカセットデッキが、オーディオのプログラムソースとして、あれほどの小型なカセットハーフと低速度ながら素晴らしい将来性を持つことを最初に印象づけたのは、昭和48年に発売されたナカミチ1000が登場したときであった。
 カセットデッキとしては異例に巨大な業務用ラックマウントサイズのパネルを採用した1000は、たしかに価格的にも異例なほど高価格な製品ではあったが、ダブルキャプスタン・スタガ一方式の走行系メカニズムとパーマロイ系のスーパーアロイを採用した独立3ヘッド構成をベースに、独自のヘッドアジマス調整機構、ユニークな3チャンネルマイクアンプ、リミッター機構などを備え、驚異的な性能と音質により聴く人を唖然とさせたことは、現在でも鮮烈な印象として残っている。
 当時、オープンリールを超した性能と音質といわれたが、確かに、3モーター・3ヘッド構成の2トラック19cm/secのデッキとの比較試聴でも、誰にも明瞭に聴き取れる優れた音質を1000は聴かせてくれた。
 それから4年後に発展、改良して登場した1000IIは、テープの多様化に対応してバイアスとイコライザー単独切替、アタックタイムを早くし、従来の−20〜+3dBから−40〜+10dBにレンジを拡大したピークレベルメーター、走行系の操作ボタンが機械的な押ボタン型から電気的なタッチセンサーに改良されるなどをはじめ、巻本的な走行系の中間プーリーの改良、耐久性を向上したスーパーアロイヘッド改良のステイブルレスポンスヘッド採用などかなり大幅な変更を受けた結果、聴感上でもよりナチュラルに伸びたワイドレンジ感と分解能の向上として聴きとれ、その内容が一段とリファインされた。
 しかし、時代背景として各社の開発競争の激化、とくに中級機から普及機ランクでの性能、音質が急激に発展し、高性能テープの登場とあいまって、1000が登場した当時ほどの格差は実感的に感じられなかった。世界最高のカセットデッキとしての座は不動のものではあったが、この第2世代の王者は完成度が高まった内容を持ちながら、印象度としてはさほど強烈なものではなく、いわば、安定政権とでもいった存在であったと思う。
 昭和53年になるとメタルテープの実用化が発表され、カセットデッキは激しい動乱の時代に突入し再スタートを強いられることになった。メタルテープの実用化に先だち、海外テープメーカーとも密接な関係をもつナカミチでは、早くからメタル対応モデルの開発が行なわれており、メタル対応デッキの技術開発は発表されていた。しかし、製品化はメーカーとしては比較的遅く、かつての1000の登場当時に似た、いかにもナカミチらしい凄さを感じさせた製品の登場は、1000IIのメタル対応機ではなくそれまでの500シリーズと700の中間を埋める位置づけにある680であった。
 この680の優れた性能とクリアーで抜けきった鮮明な音質は、またもやメタルテープ時代での新しいナカミチの独自の魅力を聴く人に印象づけた。680は、短期間のうちに自動アジマス調整機構を新採用した680ZXに発展し、670ZX、660ZXとでシリーズ製品を形成する。
 この時点から1000IIのメタル対応機の登場は時間の問題として噂され、すでに限界とも感じられる680ZXに、どれだけの格差をつけて登場するかが話題であった。
 今回、ベールを脱いで登場した1000ZXLは、第3世代のカセットデッキの王者の座に相応しい見事な製品である。
     *
私にとって、この頃のナカミチのカセットデッキといえば、1000IIではなく、井上先生の文章にも登場している680ZXだった。

1000登場時にカセットデッキ(テープ)に強い関心を持っていた人には、すごい衝撃だったのだろうが、1000IIは、どうだったのか。

1000IIが登場してすぐのステレオサウンドのベストバイ(43号)では、1000IIは選ばれていない。700IIは選ばれているのだが。

このことはナカミチも感じていたのではないだろうか。だからこその1000ZXLであり、一年後の1000ZXL Limitedなのだろう。

Date: 4月 5th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その2)

私にとって、チューナーにおけるマランツのModel 10B、セクエラのModel 1的位置にいるのは、スチューダーのA710である。

型番とルボックスとスチューダーの関係からわかるように、A710は、1981年に登場したルボックスのカセットデッキ、B710のスチューダー版だ。

ルボックスのB710は、ステレオサウンド 59号の新製品紹介で、瀬川先生が担当されている。
     *
 たとえば、カートリッジを比較の例にあげてみると、一方にオルトフォンMC30又はMC20MKII、他方にデンオンDL303又はテクニクス100CMK3を対比させてみると、オルトフォンをしばらく聴いたあとで国産に切換えると、肉食が菜食になったような、油絵が水彩になったような、そういう何か根元的な違いを誰もが感じる。もう少し具体的にいえば、同じ一枚のレコードの音が、オルトフォンではこってりと肉付きあるいは厚みを感じさせる。色彩があざやかになる。音が立体的になる。あるいは西欧人の身体つきのように、起伏がはっきりしていて、一見やせているようにみえても厚みがある、というような。
 反面、西欧人の肌が日本人のキメ細かい肌にかなわないように、滑らかな肌ざわり、キメの細かさ、という点では絶対に国産が強い。日本人の細やかな神経を反映して、音がどこまでも細かく分解されてゆく。歪が少ない。一旦それを聴くと、オルトフォンはいかにも大掴みに聴こえる。しかし大掴みに全体のバランスを整える。国産品は、概して部分の細やかさに気をとられて、全体としてみると、どうも細い。弱々しい。本当のエネルギーが弱い。
 B710とナカミチ1000ZXLとの比較で、まさにそういう差を感じた。そしてここでテープまで変えると、その差はいっそう大きく開き、ナカミチにはTDKのSA又はマクセルのXLIIを、そしてB710には、今回小西六がアンペックスと提携して新発売するマグナックスのGMIIを、それぞれ組み合わせると、国産はハイ上がりのロー抑え、いわゆる右上り特性の、ややキャンつきぎみの細身の音に聴こえるし、ルボックスはその正反対に、中〜低域に厚みのたっぷりある、土台のしっかりした、ボディの豊かな音に仕上る。そしてとうぜんのことに、こういう音はクラシックの音楽を極上のバランスで楽しませる。総体に、派手さをおさえて音を渋く、落ち着きのある色合いを聴かせるのだが、こういう音は、残念ながらこれまで国産のどのデッキからも聴くことができなかった。
 試聴はほとんどドルビーONの状態。そしてメカニズムその他の詳細については、残念ながら紙数の制約のため割愛せざるを得なかった。
     *
これを読んだ時から、カセットデッキはB710だ、と決めていた。
といっても、まだ学生だったし、ステレオサウンドで働く前のこと。40万円を超えるカセットデッキは、すぐにどうにかなるものではなかった。

Date: 4月 4th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(カセットデッキ篇・その1)

私が中学生、高校生だったころ、生録もブームになっていた。
音楽だけがその対象ではなく、その頃まだ走っていた蒸気機関車の音なども、生録の対象となっていた。

電源が確保できるところならば据置き型のテープデッキを担いで行く人もいたようだが、
蒸気機関車の音を録るのであれば、電池駆動のポータブル型デッキとなる。

ブームなのは知っていても、近くでそういう機会はなかったし、マイクロフォンも用意しなければならないし、
ポータブル型デッキを持っていたわけでもない。

そうなると録音の対象は、エアチェックしかない。
テープデッキは録音済みのミュージックテープを購入して聴くためか、
FM放送を録音(エアチェック)してのモノ。自然とそうなっていた。

当時はオープンリールのミュージックテープはいくつか出ていたが、10代の学生が買える価格ではなかったし、
2トラ38のオープンリールデッキを持っているわけでもない。
いつかは──、と思うだけだった。

カセットテープのミュージックテープは何本か持っていたが、同じ内容のLPと比べると、音質面で満足できるとはいえなかったし、
それにLPよりも高かった。

プレスで大量生産可能なLPと、高速ダビングとはいえ、プレスよりもずっと時間がかかるコピー工程ゆえ、多少高価になるのは理解できても、
そう多くはない小遣いをやりくりしてとなると、ミュージックテープに手は伸びない。

そうだったのだ、あのころのカセットデッキは私にとってエアチェックのためのオーディオ機器だった。

Date: 4月 4th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・その22)

アンプとのペア性を考えてしまうのは、国産プリメインアンプのほとんどがペアとなるチューナーを用意していたことを、
当たり前のこととして受け止めていたからなのかもしれない。

普及クラスのプリメインアンプにはもちろんペアとなるチューナーがあった。
あのころ20万円を超えるプリメインアンプの高級機にも、ペアとなるチューナーが、すべてではなかったが、やはりあった。

このクラスのチューナーとなると、ペアとなるプリメインアンプを持っていなくても、チューナー単体で購入する人もいただろう。

もちろんペアとなるプリメインアンプを持たないチューナーもあったことはわかっていても、こうやってチューナーのことを振り返って書いていると、
アンプとのペア性のことが、私の中では浮上してくるだけでなく、
チューナーにとってのペア性は、アンプとの関係だけでなく、テープデッキとの関係においてもあるような感じがしてくる。

Date: 3月 29th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・続余談)

パイオニアのExclusive F3とオーレックスのST720の音を聴きたいがために、FMトランスミッターを導入して、音声信号をFM変調して送信。

それを受信して聴くというわけだが、少し考えると、FMトランスミッターのRF出力とチューナーのアンテナ端子とを、75Ωの同軸ケーブルで接続すれば、音質的には有利となる。

電波として飛ばして受信するのも楽しいと思うけれど、有線接続もまた楽しいはずだ。

Date: 3月 24th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(チューナー篇・余談)

こうやってチューナーのことを書いていて、もしここに挙げた機種を全て手に入れられるようなことが起ったとして、どう楽しむのか。

先ほどAliExpressを眺めていたら、FMトランスミッターを見つけた。
車載用のモノが多いが、小型ながら据置型もある。入力はアナログの他にUSBも備えているので、デジタル入力にも対応している。

そういえば昔、テクニクスからSL-FM1というアナログプレーヤーが出ていた。
32,800円の普及クラスなのだが、型番が示すようにFMトランスミッターを搭載していた。
しかも乾電池(単一乾電池六本使用)でも動作可能だった。

どんな人が買うのだろうか、どんな使い方をするのか──、
なぜテクニクスはこんな製品を出したのだろうかと、やや冷めた目で見ていた。

でも今になって、FMトランスミッターを使って手持ちのチューナー、
パイオニアのExclusive F3とオーレックスのST720から音を出せる状態にしておくのもいいなぁ、と思っている。