Archive for category 戻っていく感覚

Date: 10月 26th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

サンスイ EC10が、JBL 2220Bとともにやって来た(その2)

サンスイのEC10とともにやって来たJBLの2220Bを眺めていて思い出したことがある。
ステレオサウンドで働き出したころ、Nさんのところに何度か行って、その音を聴かせてもらっていた。Nさんといっても、いまも編集部にいる同姓のNさんではなく、私よりも七つ上のNさんである。

このころ、NさんはJBLの2220Bをジェンセンのウルトラバスレフレックス型エンクロージュアに入れ、上の帯域は2397に2440か2441という2ウェイで、アンプはマッキントッシュのMC2300、コントロールアンプはなしで、EMTの927Dstの出力を、エッグミラーのアッテネーターW85で受けて、というシステムだった。

Nさんは根っからのジャズの聴き手だった。私がArt Ensemble Of Chicagoを初めて聴いたのは、このシステム、Nさんのところでだった。

ここで、カルロス・クライバーのブラームスの四番も聴いているが、クラシックを鳴らすのは無理があるシステムとも感じていた。

しばらくしてNさんは引っ越しして、そこでウェスターン・エレクトリックの350Bのプッシュプルと349Aのプッシュプルを持ち込んで聴いている。台風直撃の日にアンプをタクシーで運んだ。

350B、349A、どちらもウエストレックスのA10をベースとしている。350Bの方はある方の自作で、349Aは伊藤先生が作られたそのものだった。

Nさんは350Bのプッシュプルの音に昂奮されていた。MC 2300よりも、ずっとしなやかで熱い感じの音だった。MC 2300の出力は300W、350Bプッシュプルの方は20Wほど。
それでもスピーカーの出力音圧レベルが100dB超えだから、20Wでも十分すぎるほどだ。

最後になって伊藤先生の349Aにした時の音を聴いた瞬間、私は、当時鳴らしていたロジャースのPM510には、このアンプしかないと直感したほど、素晴らしかった。

ジャス向きとしか思えないJBLの2ウェイから、クラシックが澄んだ音、しなやかな音で響いてくれるだけでなく、音の消え際の美しさと自然さは、どんなアンプでも聴いたことがない。

Nさんは、この日の試聴で350B熱が高まっていったが、私は349Aに惹かれてしまった。

エンクロージュアは違うけれど、この時のJBLの2ウェイは、私のところにあるモノで構成できる。
2220BにEC10があり、2397+2441がある。

349Aは、そのころは一本五千円ほどだったのが、いつの間にか、かなり高価な真空管になってしまった。これから、また、あのころ、揃えたのと同じ349Aを──、ということは考えていない。

それでも代わりに、あの五極管ならば──、ということを、ちょっと考えている。

時間をかけて集まってきたモノを眺めていて、あの日、聴いた音を思い出した。

Date: 10月 8th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

サンスイ EC10が、JBL 2220Bとともにやって来た(その1)

9月30日に落札したサンスイのEC10が、やって来た。ヤフオク!の商品説明にもあったように約一週間かかっての到着。
軒先き渡しなので、しかも大型なので梱包もしっかりしてあって、受け取ったあとは一人で作業。

開梱も、しっかりした梱包だな、と何度も思いながら時間をかけてやっていた。開梱のあとは梱包材の片付けで、あれこれ四十分ほどかかってしまった。

EC10のサイズは、JBLの4343に近い。横幅と高さは少し小さいが、奥行きはEC10の方がある。重量はスピーカーユニットか2220Bだけなので、4343よりは軽い。とはいえ、なかなかの大きさ。

まだスピーカーユニットの換装はしていない。2220Bがついているのを見ていると、私のところにはJBLのホーンとドライバーが三ペアあるから、一度は、JBLでの組合せも鳴らしてみたくなったし、BOSEの901SeriesVを中心に、上はエラックのリボン型、下はEC10+2220Bで補強してみるのも面白そうだと思い始めている。

EC10には、ECシリーズのカタログと取扱説明書も付いていた。カタログには、昔の秋葉原にあった光陽電気の判があった。
ということは、最初のオーナーは東京(もしくは近郊)で購入。その後、引越しされてそこで処分されて買取店に引き取られたのか。
それとも個人売買を経て、福岡あたりまで行き着いたのか。

はっきりとしたことはわからないが、少なくとも東京から福岡に行き、そこでヤフオク!へ出品。それを東京に住む私が落札。

EC10が発売になって、ほぼ五十年。その間にずいぶん移動している。

Date: 10月 4th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

サンスイ EC10がやって来る(その4)

ステレオサウンドがこれまでに出してきた別冊が何冊になるのか数えていないが、けっこうな数になる。

全ての別冊がステレオサウンド本誌よりもワクワクしながら読んだわけではないが、いくつかの別冊は当時のステレオサウンド本誌と同じくらいか、それよりも面白かったものもある。

どれが面白かったかそうでなかったかは読み手次第のところもある。それでもHIGH TECHNIC SERIESは、多くの人が面白いと感じていたと思っている。

このHIGH TECHNIC SERIESとサンスイのECシリーズは連動しているように、当時から感じていた。
三冊目のトゥイーターの号では、JBLのLE8TをEC20におさめてのトゥイーターの試聴が行われている。

HIGH TECHNIC SERIESは四冊目のフルレンジの号で終ってしまったが、おそらく五冊目ではウーファー、六冊目ではミッドハイ用のホーンとドライバーの試聴だったと思っている。

そうなるとウーファーのエンクロージュアにはECシリーズが使われていた可能性は大きい。
ホーンとドライバーの試聴でもウーファーを決めての試聴になるだろうから、ここでもエンクロージュアはEC10の可能性大といえる。

ECシリーズはEC10、EC20などの第一弾が製造中止になった後、1982年に第二弾として、EC246、EC146、EC138を出してきた。

型番の下二桁の数字が搭載できるウーファーの口径となっている。EC246、EC146は18インチ(46cm)口径ウーファーが搭載でき、サブバッフルを使うことで38cm口径も使えるようになっていた。

HIGH TECHNIC SERIESも続きが出なくなり、瀬川先生がなくなり、ECシリーズも製造中止になり、JBLがサンスイから離れ、サンスイは名前だけになってしまった。

落札したEC10は金曜日に福岡から発送されているが、大型のためと佐川急便が不正アクセスを受けた影響もあってだろうが、まだ到着していない。

いつ頃到着なのか、配達状況をウェブサイトでチェックしようとしても、不正アクセスの影響でできなくなっている。

憧れのオーディオ機器ではないものの、こうやって書いているといろんなことをおもう。

Date: 10月 2nd, 2026
Cate: 戻っていく感覚

サンスイ EC10がやって来る(その3)

サンスイのECシリーズは、カタログを眺めながら、あれこれプランを立てるのが、あの頃はすごく楽しかった。

ECシリーズのエンクロージュアは寸法もよく考えられていて、積み重ねて使う場合でも、デコボコになることはなかった。ECシリーズは、積み木的組合せが可能だった。

ステップを踏んでグレードアップできるのがECシリーズの大きな特徴なのだが、最終的に4343と同等の4ウェイシステムを構築しようとすると、けっこうな予算を必要とする。

ならば4343を最初から買った方がまとまりはいいし、面倒でもない。それでもあの頃、ECシリーズを夢を見させてくれた。それは憧れだけではない夢でもあった。

しかもECシリーズのエンクロージュアは、バスレフポートの交換が簡単にできる。EC10は3つ、EC20は2つ、 EC30は2つのポートを持ち、メクラ板も付属しているから、密閉型にもできる。
バスレフポートも、D5(100φ×90mm)とD6(80φ×110mm)がついていた。

とにかくいろいろ遊べる。
私と同じようにECシリーズのカタログを眺めていた人は、きっといるはず。

そんなEC10がやって来る。しかも、そのEC10にアルテックの604-8Gを搭載しようと考えている。
ブルーバッフル、周りはサテングレーの、JBLのユニット用に開発されたエンクロージュアに、604-8Gである。

Date: 10月 1st, 2026
Cate: 戻っていく感覚

サンスイ EC10がやって来る(その2)

サンスイのECシリーズは、1977年10月の発売。
コーン型ユニット用エンクロージュアがEC10、EC20、EC30の3モデル。ホーンやトゥイーター、ミッドバス用としてEC11、EC12、EC21の3モデルがあった。

瀬川先生のフルレンジからの4ウェイの案を、まずJBLのLE8Tから始めようとすると、EC30(42,000円、一本)か EC20(60,000円)があった。

EC30の外形寸法はW39.0×H59.0×D29.0cmで、そのころサンスイが出していたSP-LE8T(W35.8×H59.6×D30.0cm)と近い。EC30の内容積は48ℓ。
LE8Tの推奨エンクロージュア容積は21〜113ℓで、EC30との組合せは、いい結果となるだろう。

EC30の一つ上のEC20の外形寸法はW50.0×H78.0×D38.0cm、内容積は115ℓと、LE8Tの推奨エンクロージュア容積の、ほぼ上限。

4ウェイまで発展させていくのであれば、最初はLE8TとEC30の組合せからだな、と高校生だった私は考えていた。
EC20は、20cmから30cm口径用だから、将来38cm口径用のEC10を導入する際に、大きすぎることになる。

それにEC30には、トゥイーター取付け用サブバッフルが付属していたのもよかった。次のステップとして2405を追加する際、サブバッフルを用意する必要がない。

EC20、10も取り付けられるのだが、別途購入しなければならなかった。高校生が少ない小遣いでやりくりしていくのだから、こういう配慮はありがたいと感じていた。

そんなことを当時はあらこれ考えていた。結局、実行にうつすことはなく、ずいぶん時間が経った。ほぼ五十年後に、EC10を落札した。

Date: 10月 1st, 2026
Cate: 戻っていく感覚

サンスイ EC10がやって来る(その1)

スピーカー自作ブームというのが、確かにあった。私がオーディオに興味を持ち始めたら1970年代の後半はそうだった。

スピーカー自作のムックがいくつか出ていたし、スピーカーユニット、エンクロージュア、その他のパーツなども、いろいろ揃っていた時代だった。

ステレオサウンドから、その頃出ていたHIGH TECHNIC SERIESも、二冊目のMCカートリッジの号以外は、スピーカーの自作をメインテーマとしていたといえる。

別項でも何度も何度も書いているが、HIGH TECHNIC SERIESの一冊目はマルチアンプがテーマだった。瀬川先生提唱のフルレンジユニットから始める4ウェイシステムの構築が載っていた。

フルレンジだけで鳴らす。それからトゥイーターを足す。次はウーファーを足し、最後にフルレンジとトゥイーターの間にミッドハイを足して4ウェイ化するというもの。

瀬川先生は、ずいぶん前に、このフルレンジから最終的な4ウェイの案を発表されていたが、私にとっては、HIGH TECHNIC SERIESが最初だった。

JBLから4343がすでに出ていて、高い評価を得ていただけでなく、ヒットしていた時代でもある。4343に憧れながらも、高校生にとって手が届く4343ではなかった。それでも4343への憧れ、そして4ウェイへの憧れは大きくなっていた。

その頃である、サンスイが当時輸入していたJBLと共同開発したエンクロージュア、ECシリーズを出してきたのは。
このECシリーズは、エンクロージュアを自作しなくても、瀬川先生のフルレンジからの4ウェイを、実現できるための出てきた──、そんなふうにも捉えていた。

Date: 9月 28th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(オープルリールデッキ篇・その18)

ナグラ初の据置型オープンリールデッキのT-Audioは、ナグラ唯一の据置型モデルでもある。

T-Audioの登場にワクワクしたかというと、それほどでもなかった。ポータブル型であれだけのモノをつくれるナグラだから、据置型をつくったら──、という期待は持っていた。

T-Audioは、ナグラらしい据置型といえる。だから素晴らしいと高く評価する人もいるし、私のようにプロ用機器としての据置型オープンリールデッキに、凄みを感じとりたい者には、スマートすぎると感じる。

T-Audioの音も、そういう印象を先に持ったためか、スマートと感じられる。それが悪いというわけではなくて、私がただ単にオープンリールの2トラ38の音に、勝手に期待している世界とは、かなり違っているという、それだけのことだ。

ならばナグラとともにポータブル型で双璧といわれるステラヴォックスは、どうかというと、1987年ごろにTD9を出してきた。

TD9は、日本に入ってきたのかどうかも知らない。存在を知っているだけで、インターネットで得られる以上のことは知らない。

それでもT-AudioとTD9、一度は比較試聴してみたい。

実際のところ、ナグラとステラヴォックスは、どう違うのか。音も、じっくりと聴いているわけではないし、自分で使ってみたことがあるわけでもない。

井上先生が、ステレオサウンド 49号に書かれている。
     *
 業務用途に使用されるオープンリールのポータブル型レコーダーでは、ともにスイスでつくられるナグラとステラボックスが双璧といわれ、つねにこの2社の製品が対比されて語られている。簡単に考えれば、ともに映画用の映像と音声を同期させる録音・再生を目的として使われているが、ナグラが、ポータブルというよりは、可搬型と呼んだ方がふさわしい現場まで運んで行って置いて使うためのレコーダーとすれば、ステラボックスは肩にかけたまま軽量のメリットを活かしたルポ的使用をするタイプであることが、根本的な両者の違いである。
     *
T-Audioは、そういう意味でナグラらしい可搬型と感じるし、TD9は写真やインターネットでの情報からは、据置型と感じる。

Date: 9月 26th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

戻っていく感覚(「風見鶏の示す道を」その21)

1976年12月に、黒田先生の「風見鶏の示す道を」を読んだ。ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ‘77」の巻頭に載っている。

当時、中学二年だった私にとって「風見鶏の示す道を」は、「五味オーディオ教室」に次ぐものとなった。
黒田先生が「風見鶏の示す道を」で言わんとされること全てを、読んですぐに理解できたわけでもなかったが、
これから先、ずっとオーディオでレコード音楽(録音再生される音楽)を聴いていくということは、こういうことでもあるのか、と静かな衝撃でもあった。

「コンポーネントステレオの世界 ‘77」を買った時、すでに冬休みだった。その間、何度も読み返していた。

「風見鶏の示す道を」に登場する乗客は、レコードを携えていた。そして目的地を、駅員に訊ねる。

「風見鶏の示す道を」から、もう少しでまる五十年になる。そのタイミングで、AKG K1000がやって来たことをあわせて考えていた。
私は、K1000を携えて駅にいる。そのことを考えていた。

Date: 9月 13th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

DBシステムズ DB1+DB2がやって来る(その15)

GASのTHALIAは、中古も見たことがない。ヤフオク!に時々出品されているけれど、落札したことはない。

それほど売れなかったからだろう。私だって、ステレオサウンドで働くようになって、井上先生の音の聴き方に間近で接することができたから、
前回書いたように、瀬川先生と井上先生の二人が評価するオーディオ機器は──、という考えになったけれど、もし、この機会に恵まれていなかったら、どうだっただろうか。

GASのアンプの中で、瀬川先生が評価していたモデルぐらいの認識に留まっていたかもしれない。聴く機会がないオーディオ機器なのだから、そうなっていただろう。

いつかはTHALIAも手に入れたい。
ジェームス・ボンジョルノのファンでもあるから、GASのアンプ全て──、とは考えていない。それでもいくつかは聴いてみたいし、手元にあってほしい。

偶然でしかないのはわかっていても、DB1+DB2とペアとなるパワーアンプ、DB6、THALIAとペアとなるGRANDSON、どちらも出力は40W+40W。

関心のない人には、どうでもいいことなのだが、私は面白いなぁと思うし、うんうん、ともなる。

Date: 9月 9th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

DBシステムズ DB1+DB2がやって来る(その14)

実を言うと、GASのTHALIAは聴いたことがない。THAEDRAは持っているし、これまでも自分のモノとして、他の人のところでも聴いている。

THAEDRAの下のモデル、THOEBEは一度だけある、というものの、その音について語れるだけの聴き方ではなかった。とりあえず聴けた、というレベルに留まる。

THALIAは実物を見たこともない。
当時のステレオサウンドに載っている試聴記を読むと、THOEBEよりもTHALIAの方に興味がある。

瀬川先生は、THALIAについて、こう、書かれている。
     *
テァドラやセーベほど立派ではないが、反面ナイーヴな音が魅力的。(ステレオサウンド 47号)

 テァドラがその本質的に持っている力をややあからさまに(と私には聴きとれるが)押し出すのに対して、孫のタレイア(サリアと呼ばれているようだが、本来ギリシャ神話からその名を取っていると思うので、)の方は、中〜高音域でえてして張りすぎやすい音域をしまくコントロールしてあるようで、それに加えてハイエンドにかけて軽い強調感が聴きとれることもあいまって、総体にやや細身に仕上っているが、音に繊細なやさしさと、よくひろがってゆく奥行き感とがあって、ややひかえめな感じだが、クラシックの弦合奏や、ヴォーカルでもキングズ・シンガーズのような響きの美しさやハーモニィを重視した曲の場合に、GAS三機種の中ではこれが私には最も好ましかった。(世界のコントロールあとパワーアンプ)
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THALIAを高く評価していた井上先生は、こう書かれている。
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現代アンプとしては、力強く彫りの深い音をもつ爽やかな製品。(ステレオサウンド 47号)

 クリアーで反応の早い音をもつコントロールアンプである。
 聴感上での周波数レンジはかなりフラットレスポンス型で、バランス的にはローエンドが抑えられており、中域は米国系のアンプとしてはやや薄いタイプである。音色は明るく軽く、音の粒子は細かく充分に磨かれている。
 音の表情はフレッシュでみずみずしく、キメの細かい鮮鋭さでは、上級機種のテァドラIIやセータよりも明らかに一枚上手である。基本的なクォリティは充分に高く、音の緻密さがあり、この価格帯の国内製品と比較すれば、いきいきとした伸びやかな音をもつ点で出色のコントロールアンプと思う。(世界のコントロールアンプとパワーアンプ)
     *
他の人はどうなのか知らないが、私は瀬川先生と井上先生が評価しているオーディオ機器は、私にとってかなり高く評価できるモノであることがほとんどだから、
一度も聴いたことがないTHALIAでも、その音は、私がイメージしている音そのものといえる、と確信している。

そして、THALIAの音を想像するたびに、DB1+DB2のライバル機種だと感じるし、比較試聴してみたくなる。

Date: 9月 8th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

DBシステムズ DB1+DB2がやって来る(その13)

プアマンズ・レビンソンは、1970年代後半、DBシステムズのDB1+DB2と書いている。

ではDB1+DB2のライバル機は、当時発売されていたコントロールアンプのどれなのか。

1977年版のHI-FI STEREO GUIDEから、同価格帯のアンプを(その2)でいくつか挙げている。
この中では、AGIの511をDB1+DB2のライバル機として挙げる(思い浮かべる)人が多いと思う。私も当時はそう思っていた。

瀬川先生が熊本のオーディオ店に来られた時の比較試聴でも、511(ブラックパネル)とDB1+DB2は聴いている。価格も近い。どららも新興メーカーのデビュー作。さらには輸入元は、どちらもRFエンタープライゼスだった。

しばらくはそう思っていた。それが変ってきたのは、GASのTHAEDRAを聴いてからだった。

THAEDRAを聴いてすぐに考えが変ったわけではなく、ジェームズ・ボンジョルノへの関心が強く増していくとともに、私の中ではTHALIAの存在が、DB1+DB2のライバル機としても、その大きさを増していくようになった。

Date: 9月 6th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

DBシステムズ DB1+DB2がやって来た(その7)

目の前にあるから、思うこと、思い出すことがある。

昨晩、ふとおもったのは、岩崎先生は、DB1+DB2をどう評価されたかたった。
岩崎先生は1977年3月に亡くなられている。DBシステムズの音は聴かれていないはずだ。

もし聴かれていたら──。
誰もその問いへのはっきりとした答は出せないだろうが、それでも私は、高い評価をされていただろうと思う。

DB1+DB2を初めて聴いた高校生のころは、こんなことはまるっきり考えもしなかった。
ステレオサウンドの特集で、新しい輸入的での取り扱いが始まってのDBR15Bを聴いた時も、考えもしなかった。

そこからずいぶん経って、いまやっと、そうおもい考えている。

岩崎先生は、ダルクィストのスピーカーシステム、DQ10を高く評価されていた。
DQ10とDB1+DB2に、共通する何かを感じるかどうかで、その答は違ってくる。

だから私が、こう書いていても、賛同する人もいれば否定する人もいていい。

朝沼予史宏さんとDBシステムズの話をした時に、いまおもい考えていることを問いかけたら──、とも思っている。

岩崎先生と朝沼予史宏さんとの関係を知ってるから、そう思う。

Date: 9月 5th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

アンチテーゼとしての「音」(アンチ「自己」・その5)

早瀬文雄(舘 一男)さんは、私が知る限り(聴いている限り)でも、かなりの数のスピーカーシステムを鳴らされている。

割合でいえばJBLが多いけれど、いろんなメーカーのスピーカーを鳴らされている。JBLには強いこだわりがあっても、それ以外のブランドに関してはそれほどでもなかったと感じるほど、
登場したばかりの新しいブランドのスピーカーでも、その音が気に入れば、すぐさま購入して鳴らされていた。

けれどアルテックは……。
私の記憶では、604-8Gの前に、フルレンジユニットの409-8Dを、米松合板の小型エンクロージュアに入れて、という時期が、わずかだけどあった。

この409-8Dは、共通の知人が、余っているからと、舘さんと私に1ペアずつくれたモノ。なので舘さんが購入したアルテックではない。

舘さんが購入した最初のアルテックは、京都での604-8Gのはず。実は、この604-8Gは、上の共通の知人から購入したモノ。

元箱付きの、新品に近いコンディションということで購入した604-8Gが、トゥイーターの断線。
舘さんの落ち込みようはすでに書いているが、続いての、その知人への悪態も、記憶に残っている。

落ち込み方と悪態から、本気でアルテックに取り組もうとしていたことを、隣で感じていた。
そして、そのことが意外であった。舘さんの嫌いな音、もっといえば拒絶する音を知っていたからだ。

Date: 9月 4th, 2026
Cate: 戻っていく感覚

DBシステムズ DB1+DB2がやって来た(その6)

1954年に制定されたRIAAカーヴは、三つの時定数(3180μs/318μs/75μs)から成っている。

1976年にIEC-RIAAカーヴが発表になった。20Hz以下の低域をカットするために、7950μsという四つめの時定数が追加になった。

私は、当時読んでいた電波科学でそのことを知った。そしてDBシステムズのDB1+DB2が、最も早く、この改訂版RIAAカーヴに対応していることも知った。

トーンコントロールを持たないDB1だが、フィルターはハイカット、ローカットがついている。

ハイカットフィルターは、5kHz、10kHzが選択でき、減衰カーヴは6dB/oct.。
ローカットフィルターは、20Hzと36Hzが選択でき、こちらも減衰カーヴは6dB/oct.。

ハイカットフィルターはラインアンプ部にあるため、フォノ入力、ライン入力、つまり全ての入力に対して有効だが、ローカットはフォノ入力のみ、という仕様。

DB1+DB2がやって来て、そうだったなぁ、と思い出し、朝沼予史宏さんDBシステムズを使われていた時、この話をしたら、もっと詳しく教えてほしい、と言われたことも思い出す。

Date: 9月 2nd, 2026
Cate: 戻っていく感覚

My Favorite Things(オープルリールデッキ篇・その17)

1980年代の秋葉原はオーディオの街だった。私がステラヴォックスの実機を初めて見たのは、秋葉原のサトームセンのオーディオのフロアだった。

この時代のサトームセンはオーディオにかなり力を入れていた。マークレビンソンのHQDシステムも展示してあった。そのフロアのガラスケースの中にあった。

それまで写真でしか見たことがなかったモデルが、ガラス越しとはいえ目の前にある。触れないし音も聴けないけれど、これがステラヴォックスなのか、という実感だけで満足できていた。

ステラヴォックスとナグラ、どちらが優れているのかは私にはどうでもいいことで、どちらも欲しいと思うけれど、どちらかと問われればステラヴォックスと答えるぐらいの違いだ。

それにナグラはSNNというモデルがあった。SNNに相当するモデルは、ステラヴォックスにはなかった。

SNNは外形寸法W14.7×H2.6×D10.0cm、重量0.574kg(テープ、電池を含む)で、まさに手のひらサイズのオープンリールデッキ。

テープ速度は4.75cm/secと9.5cm/secで、録音時間は27分(18μテープ、9.5cm/sec)、1時間48分(9μテープ、4.75cm/sec)。

電源は単三電池二本使用。おそらくだが、この単三電池二本だけで、1時間48分の録音は可能だったと思われる。

コンパクトにつくるだけでなく、省電力も実現していたわけで、SNNにはオーディオマニアとしてではなく、モノマニアとして強く惹かれる。

SNNは940,000円(1981年)していた。SNNは欲しいという気持よりも一度使ってみたい、という気持の方が強い。

そんなSNNを出していたナグラから、1982年にT-Audioが登場した。ポータブル機器専門メーカーだと思っていたナグラが、据置型のオープンリールデッキを出してきた。

価格は3,500,000円。このころアンペックスのATR102は4,000,000円、スチューダーのA80が3,990,000円、テレフンケンのMagnetophon15A-S/VUが6,240,000だったから、特別に高価だったわけではない。