Archive for category 夢物語

Date: 7月 1st, 2016
Cate: 夢物語

オーディオ 夢モノがたり(その11)

カッターヘッドを手にしたことのある人なら、
カートリッジとカッターヘッドの大きさと重さの違いにびっくりされるはずだ。

写真を見て、カッターヘッドの大きさはなんとなくわかっていた。
あれだけのサイズだから、けっこうな重さであろうこともわかっていたにもかかわらず、
ウェストレックスのカッターヘッドを手にしたときは、やはりびっくりした。

理屈ではわかる。
ラッカー盤に溝を刻んでいくメカニズムである。
カートリッジのような繊細さとは対極のところにあるモノだ、と。

カートリッジもカッターヘッドも、アンプに接続されている。
カートリッジはイコライザーアンプの入力へ、
カッターヘッドはパワーアンプの出力へ、と接続されている。

カートリッジが扱う電力は、極微小だ。
オルトフォンのSPUで41.66nW、シュアーのV15 TypeIIIで0.2606nW程度である。
(「図説・MC型カートリッジの研究」より)
カッターヘッドを駆動するパワーアンプの出力は、大きいものでは数百Wである。

似ているようでいて、規模において大きく違うカートリッジとカッターヘッド。
だからこそカッターヘッドの構造を置き換えたようなカートリッジの難しさがあることにつながっていく。

オルトフォンのカッターヘッドDS731/732は、
カッティング針がロッキングブリッジと呼ばれる部材に取り付けられていて、
このロッキングブリッジの両端を、それぞれコイルが駆動する。
ロッキングブリッジとコイルとの間には、フレキシブルジョイントが介在している。

このフレキシブルジョイントがなければDS731/732は動作しないはずであり、
オルトフォンのカッターヘッド的構造のカートリッジを考える場合、
この部分をどうするのかが大きな問題である。

カッターヘッドの、あのサイズだからできる構造を、
そのままカートリッジのサイズに持ち込もうとするのは無謀である。

フレキシブルジョイントをなくして、カートリッジとして動作するためにはどうしたらいいのか。
いわゆるコイルにとらわれていては、解決できそうになかった。
リボンならば、という発想に切り替えてみると、なんとかなりそうな構造になる。

ただしリボンといってもフラットなリボンではなく、
いわゆるプリーツ状のリボンということになる。

Date: 7月 1st, 2016
Cate: 夢物語

オーディオ 夢モノがたり(その10)

カートリッジの発電方式にはいくつかある。
代表的といえるのはMM型とMC型であり、MC型カートリッジといっても、
その内部構造は実にさまざまである。

空芯コイル、鉄芯入りコイルといった違いだけでなく、
コイルの形状、その取り付け方、マグネットを含む磁気回路、
ダンパー、リード線の引き出し方の違いなど、多種多様である。

MC型カートリッジの教科書といえるのが、
1978年のステレオサウンド別冊「図説・MC型カートリッジの研究」である。
長島先生の本であり、HIGH-TECHNIC SERIESの二冊目である。

この本についてはこれまでにも何度か触れている。
いまもよく開く一冊である。

この本に、オルトフォンのカッターヘッドDSS731/732の構造図が載っている。

カッターヘッドは、ウェストレックス、ノイマンが有名であり、
ウェストレックスには10A、ノイマンにはDSTというカートリッジがあった。
どちらもラッカー盤検聴用カートリッジといわれている。

ウェストレックス、ノイマンに対してオルトフォンの場合は、
たしかにカートリッジはいくつもある。
カートリッジの種類、数はウェストレックス、ノイマンよりもはるかに多い。

けれどオルトフォンのカートリッジの構造は、
ウェストレックス10A、ノイマンDSTとは異る。

「図説・MC型カートリッジの研究」を読んだ時から、
なぜオルトフォンには、DS731/732の構造のままカートリッジが存在しないのか、
と思っている。

カッターヘッドをそのままカートリッジに置き換えたような構造が、
いかに大変なのかは理解している。
この種のカートリッジが、これまでにどれだけ登場したのかを振り返れば、わかることだ。
使いこなしも難しい。一般的なカートリッジとはいえない。

それでもこの種のカートリッジには夢がある、といえよう。
ダイアモンドの針先の真上で発電する。
この困難なことに挑戦してきたカートリッジの設計者がいて、実際の製品が登場してきた。

私も、ときどき思い出しては考えている。
どうすれば実現できるのか。
実現できそうな構造を考え出せるのか。
その度にDS731/732の構造図を見ていた。

Date: 6月 8th, 2015
Cate: 夢物語

オーディオ夢モノがたり(思いついたこと)

コンプレッションドライバーのフェイズプラグを見ていて思いついたことがある。

この項ではカートリッジについて書いている最中だが、
今日思いついたこともカートリッジに関することである。

カートリッジの針先、ダイアモンドチップに関することである。
なぜカートリッジの針にダイアモンドを使うのか。
それはダイアモンドが地球上でもっとも硬度の高い物質だからである。

硬いということは、その表面を磨けるということである。
平滑であるためには、そのものの硬度が要求される。

針先の形状は丸針からはじまり、楕円針、ラインコンタクト針、超楕円針など登場した。
いうまでもないことだが、針先の先端が音溝の底をトレースしているわけではない。
針先の両サイドが音溝に接触しているわけで、
この部分の接触面積をできるだけ線、それも可能な限り細い線に近づけた方が、
理論的には精確なピックアップにつながっていく。

今日思いついたことは、形状に関することといえばそうなのだが、
丸針とか楕円針といった形状のことではない。
フェイズプラグを見ていて思いついたのは、
針先にスリットをいれたら、いったいどうなるのだろうか、である。

フェイズプラグには放射状、同心円状、そのどちらかにスリットをいれる。
針先のダイアモンドに、同じようにスリットをいれる。
あの小さなダイアモンドチップにスリットを入れることが可能なのか、それもわからない。

入れることが可能だとして、どういうふうに入れたらいいのかもわからない。
放射状なのか、同心円状なのか、
それにどのくらいの溝を、何本入れたらいいのか……、
正直、スリットを入れることによるメリットがどういうこのなのかも、はっきりとはイメージできない。

けれどスリットを入れることでなんらかの変化が、トレースに起きることは確かなはず。
スリットによって、なにかが保持されるのではないか、と思っている。

Date: 12月 21st, 2014
Cate: 夢物語

オーディオ 夢モノがたり(その9)

いまカートリッジの発電方式としてリボン型に関心をもっているのは、
糸電話に関する記事を、10年ほど前に読んだからである。

糸電話は多くの人が小学校の理科の授業で実際につくり実験している。
それ以来糸電話のことはすっかり忘れていた。

けれど、ある日、あれこれ検索していて、リンク先もあれこれクリックしていっていたら、
糸電話の限界に挑戦している人のページにたどりついた。
そこには小学校での理科の授業とはまるで違う距離への挑戦だった。

数10mの長さでも糸電話は会話ができる。
さらに100mにのばしても会話はできる、とある。
もっと距離をのばせるのか。

もちろん糸の種類によって距離は変ってくるだろうし、
それだけ長い糸を用意できるかも問題になるし、
いちばんの問題は糸をピンと張れる場所をどうするか、である。

以前見た記憶では1kmまで会話ができる、とあったはず。
これを書くために検索してみたら、500mでも会話ができた、という記事があった。
1kmも記憶違いではない、と思う。

糸電話の構造は身の回りにあるものでまかなえる。
そんな簡単なモノなのに、伝達できる帯域幅は広くはないけれど、
えっ、と驚くような距離でも会話が可能なことを考えるに、
カートリッジの発電方式にうまく応用できないのか、と。

そういえば、と思い出したのが、ナガオカのリボン型カートリッジであった。

Date: 11月 19th, 2014
Cate: 夢物語

オーディオ 夢モノがたり(その8)

ナガオカ/ジュエルトーンのリボン型カートリッジの内部構造はサテンのMC型に似ているといっても、
ナガオカ・ブランドで出していたNR1とジュエルトーン・ブランドのJT-RIIIとでは、
リボンの配置と、リボンにカンチレバーの振動を伝えるアーマチュアの形に変更が見られる。

NR1はV字型のアーマチュアがありその両端にリボンが取り付けられている。
リボンはカートリッジの内部の左右両側に前から後に伸びるように配置されている。

リボンとはいうもののNR1では、実際に使われていたのは0.025mmφの銅線である。
乱暴な説明をするとMC型カートリッジのコイルをほどいて一本の銅線にした、ともいえる。
そのため銅線の長さはコイルに比べてかなり短くなる。
ローインピーダンス、低出力にどうしてもなってしまう。

ジュエルトーン・ブランドになると、アーマチュアが基本的にV字型であることに変りはないが、
大小ふたつのV字を組み合わせた形状、
つまり小さなV字に、大きなV字が上下逆に覆い被さるような形状である。

JT-RIIIもNR1同様、リボン型といっても実際には銅線で、
出力電圧を稼ぐために片チャンネルあたり2本になっている。
この銅線は上下逆のV字型アーマチュアに取り付けられている。

NR1とJT-RIIIではリボンの配置が水平か垂直かの違いがあり、磁気回路も異る。
JT-RIIIの出力電圧は0.04mV(5cm/sec, 1kHz)と、やはり低い。
JT-RIIIと同時代で出力電圧が低かったオルトフォンMC30の半分しかない。

Date: 7月 23rd, 2014
Cate: 夢物語

オーディオ 夢モノがたり(その7)

ナガオカ/ジュエルトーンのリボン型カートリッジの内部構造は、
サテンのカートリッジに似ている、といえる。

いまは1980年代であれば、これだけで説明がすむわけだが、
いまは30年以上が過ぎ去った2014年で、サテンのカートリッジ、といっても、
サテン? という人が大勢いるだろうし、
サテン、懐かしいなぁ、という人でも、その構造がどうなっていたのかをすぐに思い出せる人は少ないかもしれない。

サテンのカートリッジの原型となっているのは、ウェストレックスの10Aといえる。
ウェストレックスはカッターヘッドをつくっていた。
10Aはカッターヘッドとペアになっていて、
カッティングされたラッカー盤の検聴用を目的としたカートリッジである。

ラッカー盤は基本的に一度だけの再生である。
それもあってか、10Aの構造はウェストレックスのカッターヘッドをそのまま再生用カートリッジとして、
規模を小さくといえるものである。

10Aの構造図を正面からみると、針先からV字状にアーマチュアがのび、
その先端に円筒形のコイルが取り付けられている。

この10Aの構造を模倣したのが、日本のニートのV50である。
サテンのMC型カートリッジも10Aと基本的には同じ構造だが、
コイルの形状を変え、磁気回路の設計も10Aとは異るし、
針交換を可能にするなど、サテンならではの工夫がみられる。

このあたりは業務用専門としてのウェストレックスとコンシューマー用としてサテン、
それにトレースは基本的に一度きりのラッカー盤相手のカートリッジと、
何度でもトレースする塩化ビニール盤(LP)相手のカートリッジの違いともいえる。

ナガオカ/ジュエルトーンのリボン型は、このサテン型の発電コイルをリボンに置き換えた構造といえる。

Date: 7月 23rd, 2014
Cate: 夢物語

オーディオ 夢モノがたり(その6)

カートリッジにおけるベンディングウェーヴ方式──、
そんなことが可能なのか。可能だとすれば、どういう構造になるのか。

この一年、そのことをずっと考えてきたわけではない。
数か月ごとに、ふっと思い出しては、どうすればいいのか、ぼんやりと考えていた。

考えていた、と書いたけれど、考えていた、とはいえないレベルでのことだが、
それでも、なにか突破口となるの切り口はないのか、と考えていた。

それで気がついたのが、リボン型カートリッジのことだった。
リボン型は、MC型の一種である。

MC型はMoving Coilということからもわかるように、
マグネットが固定されていて、コイルが動くことで発電する。

このコイルの巻数を極限まで減らしていったら……、
それはもうコイルではなくなってリボンになってしまうわけだが、
スピーカーユニットでリボン型があるように、カートリッジにもリボン型のカートリッジが、
日本のナガオカが製品化していた。

最初のころはナガオカの名前で、後にジュエルトーンのブランドで出していた。
おそらくリボン型カートリッジはナガオカ/ジュエルトーンだけだったはずだ。

Date: 8月 8th, 2013
Cate: 夢物語

オーディオ 夢モノがたり(その5)

もちろんどんなに軽い材質の振動板であろうと、質量はある。

たとえばイオン化した空気を入力信号に応じて変調させ放電強度を変化させることで、
イオン化された空気の変化が気圧の変化として音が発生させるイオン型(放電型)には、
いわゆる振動板がなく質量ゼロの発音体という認識で受けとめられているが、
実際にはイオン化された空気が振動板(振動体)であるから、
そのイオン化された空気の質量分だけは存在する。

ベンディングウェーヴの振動膜にも質量はあるのだが、
ピストニックモーションのように振動板(振動膜)全体をいっきょに前後に動かすわけではない。
ボイスコイルが取り付けられている端から振動膜が波打ち、振動膜全体が振動する。
だからこそ振動膜の動きやすさ(波打ちやすさ)が重量になり、
その意味での可動質量はピストニックモーションとは異り、無視できる、
さらには解放されている、といえるのではないか。

とすればである。
ここから先が、この項のテーマである「真夏の夜の夢」なのだが、
カートリッジにおけるベンディングウェーヴ方式が実現できれば、
可動質量から解放されるのではないか──、と夢見ているわけだ。

実際にはどういう構造にすればいいのか、
果してステレオ・カートリッジが成立するのか、
トレース能力は充分に確保できるのか、
実現はかなり困難のように思えるのだが、
ベンディングウェーヴのスピーカーユニットが現実のモノとして、
素晴らしい音を聴かせてくれているのだから、
ベンディングウェーヴ方式のカートリッジがもし実現すれば、
誰も聴いたことがない音をアナログディスクから抽き出してくれるはずだ。

Date: 8月 8th, 2013
Cate: 夢物語

オーディオ 夢モノがたり(その4)

世の中の大半のスピーカーはピストニックモーションであるけれど、
ごくわずかではあってもピストニックモーションではない発音原理のスピーカーが存在する。
ベンディングウェーヴによるもので、
ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニット、マンガーのBWTユニットがある。

DDD型ユニットにしてもBWTユニットにしても、振動板がないわけではない。
どちらにも振動板(板というよりも膜といったほうがいい)はある。

このふたつのユニットは振動板をピストニックモーションさせてない。
ここが決定的に異る点である。

マンガーのBWTユニットの振動板に触れたことはないが、
ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットのチタンの振動板には触れている。

チタンといえば強度の高い金属と思われている方もいると思うが、
DDD型ユニットに採用されているチタン膜は薄く、感触としてはぷにょぷにょしている。

つまりボイスコイルから伝わってきた振動は、振動板を前後に動かす(ピストニックモーション)のではなく、
振動膜を波打たせる。

ベンディングウェーヴ方式にとって、ピストニックモーションにおける振動板の質量は、
振動膜の動きやすさ(きれいに波打つことができるかどうか)である。
これは考えようによっては、振動板の質量からの解放である。

Date: 8月 8th, 2013
Cate: 夢物語

オーディオ 夢モノがたり(その3)

スピーカーの振動板と同じように、振動系の軽量化、可能であれば質量ゼロこそが理想といえるものに、
カートリッジがある。

カートリッジはダイアモンドの針先があり、形状や材質に違いはあるもののカンチレバーの先端に、
その針先は埋めこまれる。
つまりこれをスピーカーにあてはめてみれば、針先はボイスコイルにあたる。
カンチレバーは振動板といえる。

スピーカーの場合、振動板は空気が相手になる。
カートリッジの場合、MC型であれば、それは発電コイルと考えていいだろう。

カートリッジはスピーカーと異り、ひとつのカートリッジで左右チャンネルとなる。
スピーカーのように、左右チャンネルで独立したモノではない。
だから針先の動きは前後(カートリッジでは上下というべきか)にだけ動けばいいわけではない。
そのことはわかったうえでいうのだが、
これまで登場してきたカートリッジの、それぞれの構成部品の関係性は、
スピーカーにおけるピストニックモーションと基本的に同じである、といえるのではないか。

それだからこそカンチレバーの材質に求められる条件は、
スピーカーの振動板に求められる条件とほぼ重なる。

つまりカートリッジもまた振動系の質量から解放されることはない。
新素材の採用や軽量コイルの実現などで軽量は果せても、解放は絶対にない。

だが、けれども……と最近考えるようになってきた。

Date: 8月 8th, 2013
Cate: 夢物語

オーディオ 夢モノがたり(その2)

理屈として、音楽信号をフーリエ変換すれば、複数のサインウェーヴの合成によるものとなるわけだから、
すべての可聴帯域のサインウェーヴを完璧に再生できれば、
つまり正確なピストニックモーションを実現できれば、音楽信号を再生できる。

こんなふうに考えればいいことはわかっていても、
それと感覚的な納得とはまた別のことである。

なぜ紙の振動板のスピーカーから、馬のしっぽのヴァイオリンの音が聴こえてくのか、
金属の皿をひっぱたいたシンバルの音がしてくるのか、
皮をピンと張った太鼓の音がそれらしく聴こえるのか、
これも感覚的納得のいかないことだったし、
考えれば考えるほどわからなくなっていた。

考えた。でもあの時、自分を感覚的に納得させられる答を見付けることはできなかった。
だから、とにかくピストニックモーションの実現が大事なことなのだと思い込ませた。

ピストニックモーションを追求していくと、振動板の質量はできるだけ小さくしたい。
とはいえただ軽いだけの振動板ではピストニックモーションの実現は困難である。
すくなくともダイナミック型のスピーカーでは無理である。

そこで振動板全面に駆動力を与えるコンデンサー型があるし、
それに類似した方式がいくつか考え出されてきた。

けれどピストニックモーションである以上、
振動板の質量をどれほど軽量化しようとも振動板の質量から解放されることは絶対にない。

Date: 8月 8th, 2013
Cate: 夢物語

オーディオ 夢モノがたり(その1)

オーディオについて理解しようと思い始めて、
最初にぶつかった難問が、実はスピーカーの動作についてだった。

動作といっても、フレミングの法則が理解できなかったのではなく、
なぜ、振動板が前後に動くことで、音楽(つまりさまざまな音)が再生できるのか──、
その動作が感覚として理解できなかった。

スピーカーはピストニックモーションを前提としている。
だから振動板は分割振動することなく、入力信号に応じて前後運動をすることが、
ピストニックモーションでは理想とされるし、
そのために振動板の実効質量を軽くしたり、剛性を高くしたり、内部音速の速い素材を採用する。

理屈からして、その方向が間違っていないことはわかる。
でもスピーカーから単音が出てくるのであれば、感覚として理解できる。
たとえば1kHzのサインウェーヴを完璧に再生しようとしたら、
正確なピストニックモーションが求められる。

けれど実際にスピーカーから聴くのは、いくつもの音が複雑に絡み混じり合ったものである。
ヴァイオリンが鳴っていれば、チェロも鳴っている。
それだけではなく他の楽器も鳴っている。
ヴァイオリンにしてもソロ・ヴァイオリンのときもあれば、何人もの奏者によるヴァイオリンのときもある。

こういう複雑な音をなぜフルレンジユニットであっても、そこそこに鳴らしわけられるのか。
振動板は基本的に前後にのみ振動している。
振動板が紙ならば、中域以上では分割振動が発生しているとはいえ、
基本はピストニックモーションである。