20代のころの夢もしくは妄想(その5)
四十年前の春、東京で暮すようになった。
10代のころの夢、20代のころの夢が違ってきたのは、
このこともけっこう大きく影響しているのだろう。
10代の大半は実家で、であった。
そのころは純粋に趣味としてのオーディオのことだけを考えていた時期でもあった。
高校一年ぐらいまでは、ずっと実家で暮していくものだと思っていた。
弟と妹がいる。
つまり長男である。
そうなのだが、これまで長男だ、というと、えっ、と驚かれるだけだった。
長男には、まったく見えないらしい。
でも長男なので、一時、実家を離れても戻ることを当り前のこととして捉えていた。
こんな私でも、長男だから……、という意識はもっていた。
オーディオを趣味としてやるのであれば、実家にいたほうが有利だ。
広い空間が使えるし、AC電源に関しても60Hzである。
それに田舎なので、静かだし、オーディオをとりまくノイズも少ない。
それが高校三年になる前くらいから変っていった。
思い出そうとしても、なにがきっかけだったのかははっきりとしない。
1980年の秋が深まったころには、東京に行かなければ、となぜか思うようになっていた。