Archive for category 相性

Date: 8月 29th, 2015
Cate: 相性

本末転倒だったのか(その7)

多くのアナログプレーヤーのターンテーブルプラッターは、いわゆる円盤であり、
どんな形状であれ穴が開けられているモノはないのではないか。

930st、927Dstのメインプラッターはアルミのダイキャストである。
この穴はダイキャストの型の時点で設けられているのか、
それとも型から取り出した後に穴開け加工を施すのか、どちらなのかは私に知らない。

金属加工の素人考えでは、穴がないほうが造るのは手間がかからないのではないか。
EMTはわざわざ穴を開けている。
この理由が正直わからなかった。

ステレオサウンド 52号でメインプラッターに八つの穴があるのを知ってずいぶん経ったころ、
930st、927Dstのメインプラッターが、車のホイールに思えてきた。
そうすると、930st、927Dstのメインプラッターの外周にはゴムリングがはめられている。

これは鳴き止めであり、タイヤなわけはないのだが、
外周にゴムというところも車のホイールに似ている。

ホイールもターンテーブルプラッター、どちらも回転体である。
EMTのメインプラッターの裏側をみると、
短いけれど中心部からリブが伸びているのがわかる。
こういうところもホイールっぽい、と思えてくる。

優秀なホイールと優秀なターンテーブルプラッターには共通するところがあるのかもしれない──、
いつのころからかそう思うようになってきた。

Date: 8月 29th, 2015
Cate: 相性

本末転倒だったのか(その6)

EMTのアナログプレーヤーは、
リムドライヴの927Dst、930st、ベルトドライヴの928、ダイレクトドライヴの948、950などがある。
私が惚れ込んでいるのは、930stと927Dst。

このふたつのターンテーブルプラッターはアルミ製。
多くのアナログプレーヤーもアルミ製だったりする。

ターンテーブルプラッターの材質と重量だけでアナログプレーヤーの音が決定されるわけではない。
とはいえ多くのアルミ製ターンテーブルプラッターの中にあって、
930stと927Dstは圧倒的な安定感の上に構築された音を聴かせてくれる。

ターンテーブルプラッターは重いほうが慣性質量が増すから、
このことが音の良いプレーヤーの条件のひとつのようにいわれた時期がある。
重ければそれだけで音の良いプレーヤーに仕上るわけではないが、
確かにある程度の重量のターンテーブルプラッターのプレーヤーに、
音の良いモノが多いのもまた事実である。

だからある時期、とにかく重さを誇るプレーヤーがいくつも登場した。
けれど930st、927Dstのターンテーブルプラッターを見ると、不思議に思うことがある。

ステレオサウンド 52号からBIG SOUNDという連載が始まった。
一回目は927Dstで、山中先生が書かれていた。
カラー写真で927Dstが、いままでなく詳細に紹介されている。

927は16インチ盤を再生できるようターンテーブルプラッターは大きい。
52号ではメインターンテーブルプラッターの実測値が載っている。
それによれば、直径42cm、重量4.7kgである。
ちなみにシャフトの長さは首下164mm、径20mm、軸受スリーヴの外形は40mmである。

軽くはないが、驚くほどの重さではない。
52号の写真をみればすぐにわかることだが、
927Dstのメインプラッターには八つの丸い穴が開いている。

この穴の数は時代によって違うようで、私が中古で手に入れた927Dstは四穴だった。
形状も丸ではなく、一辺が弧を描く三角形だった。

なぜEMTは穴を開けるのか。
穴などないほうが重量は増すし音も良くなる可能性があるのではないか、
そんなことを52号の写真を見ながら思っていた。

Date: 2月 22nd, 2015
Cate: 相性

本末転倒だったのか(その5)

チェーンリングとチェーンをトランスと見立てれば、
後輪のホイールがスピーカーということになる。

この場合、タイヤがスピーカーの振動板であり、
リムがスピーカーユニットのフレーム、スポークがボイスコイルとなるだろうか。

では前輪はいったいなんなのか。
前輪には駆動力はかからない。
けれど構造的には後輪とほぼ同じである。
となると、後輪と瞳孔系の前輪はさしずめパッシヴラジエーターなのか。

これが正しい見方かどうかはなんともいえない。
ただこういう見方をした場合、自転車のフレームはスピーカーのエンクロージュアにあたるのか。

スピーカーシステムにおいてもっとも視覚的に大きな存在はエンクロージュアである。
回転体であるホイールはスピーカーユニットとすれば、
自転車全体がスピーカーシステムであり、乗り手がアンプ。

こう考えるのと(その1)で書いた”FRAME MY WHEELS”、
この言葉の意味がわかってくる。

Date: 2月 18th, 2015
Cate: 相性

本末転倒だったのか(その4)

自転車をオーディオにあてはめて捉えることになにか意味があるのか。
ないのかもしれないと思いつつも、こりずにやっている。

たとえばチェーンリングとチェーン。
このメカニズムは、オーディオでいえばトランスにあてはまる。
ギヤ比がトランスの巻線比に相当する。

真空管アンプの出力トランスは、
高電圧・小電流を低電圧・高電流へと変換する。

自転車では遅い回転数を速い回転数へと変化する。
アンプの出力トランスとは逆の変換を行っている。
つまり一次側と二次側を反転させたようなものである。

そう考えるとホイールという回転体がスピーカーということになる。
では、その場合、フレームは何にあたるのか。

Date: 2月 16th, 2015
Cate: 相性

本末転倒だったのか(その3)

一台の自転車を、オーディオシステムにあてはめて考えてみると、
ホイールこそがスピーカーかもしれない。

空気に接していて、その空気を振動させて疎密波をつくり出すのがスピーカーなのだから、
地面と接して人と自転車を前に進めていく働きをしているのタイヤをふくめたホイールであり、
どちらも動くこと(スピーカーは前後、ホイールは回転)で仕事をする。

アンプはそのスピーカーを駆動するわけだから、いわばエンジンといえる。
自転車でエンジンとなるのは乗り手である。
となると自転車のフレームは何なのか。

アンプとスピーカーの間にあるのはスピーカーケーブルである。
フレームはスピーカーケーブルなのか。

こんなふうに捉えると、フレームはなんと地味な存在なのか……、となる。

こんな捉え方もできる。
ホイールはスピーカーの振動板である。
この振動板に駆動力を発生させるのは磁気回路であり、
乗り手は磁気回路に相当する。

となると自転車のフレームは、スピーカーユニットのフレームに相当する。

スピーカーケーブルなのか、スピーカーユニットのフレームなのか。
どちらにしても直接は目立たない存在である。
自転車にとって、視覚的にもっともその自転車の性格を特徴づけるフレームなのに。

Date: 2月 18th, 2014
Cate: 相性

本末転倒だったのか(その2)

現時点で最高のホイールであるならば、
どんなフレームと組み合わせても(価格のバランスさえ無視すれば)ライトウェイトのホイールが、
最良のパフォーマンスをもたらしてくれる──、
どうもそうではないようだ。

私の場合、自転車を趣味といってしまうとオーディオはとっくに趣味の域を超えてしまっているし、
オーディオを趣味といってしまうと、自転車はまだまだ趣味とはいえない──、
そんなレベルで楽しんでいるだけなので、
ホイールを交換した(試した)経験も数回ほどである。
ライトウェイトのホイールには手が届かないし、試したこともない。

最高のホイールなのに、なぜ? となるのは、
フレームとホイールとの間には、相性と呼べる性質の関係があるからだろう。

現時点で最高のホイールということは、
現時点で理想に近い、ともいえるのか。
もしいえるのなら、ライトウェイトのホイールは、現時点で最も理想に近い、ということになるわけだが、
それでもすべてのフレームに対して、ベストなチョイスとはならないから、
ライトウェイトとは自社のホイールのために自らフレームを開発したのだろうか。

このことはオーディオでいえば、
これまでアンプばかりをつくってきたメーカーがスピーカーシステムをつくったことになるのか、
それとも反対にスピーカーメーカーがいきなりアンプをつくってきたことになるのか。

Date: 2月 14th, 2014
Cate: 相性

本末転倒だったのか(その1)

ドイツにLightweight(ライトウェイト)というメーカーがある。

自転車のホイールを専門としている。
カーボンをリムに使用したライトウェイトのホイールは、最高のホイールとして高い評価を得ている。

プロ選手も自費で購入し、Lightweightのロゴを消してレースで使用している、
そういうホイールである。

値段もかなりのものである。
前後ペアで、最も高いモノだと81万円(税別)、
その他のモノも前後ペアで60万円を超える。
いうまでもなく自転車一台の価格ではなく、あくまでもホイールだけの価格である。

ライトウェイトは、これまでホイールのみをつくってきた。
そのライトウェイトから今年フレームが発表された。
やはりホイール同様、カーボンを使ったフレームである。
価格は61万円。ホイールよりもほんのちょっとだけ安い。

このフレームには、”FRAME MY WHEELS”とプリントされている。

自転車はまずフレームを決め、使用パーツを選んでいく。
そういうものだと思ってきた。いまもそう思っているけれど、
ライトウェイのフレームにある”FRAME MY WHEELS”を見ると、
自転車の主役というか、もっとも大事なのは、回転体であるホイールであることに気づかされる。

ライトウェイトのフレームは、
最高のホイールという評価を得ている同社のホイールのためのフレームなのである。

自転車もオーディオと同じで、相性というものがある。
大きくとらえればフレームとホイールの相性がある。
オーディオにおけるスピーカーとアンプの相性のようなものである。