本末転倒だったのか(その6)
EMTのアナログプレーヤーは、
リムドライヴの927Dst、930st、ベルトドライヴの928、ダイレクトドライヴの948、950などがある。
私が惚れ込んでいるのは、930stと927Dst。
このふたつのターンテーブルプラッターはアルミ製。
多くのアナログプレーヤーもアルミ製だったりする。
ターンテーブルプラッターの材質と重量だけでアナログプレーヤーの音が決定されるわけではない。
とはいえ多くのアルミ製ターンテーブルプラッターの中にあって、
930stと927Dstは圧倒的な安定感の上に構築された音を聴かせてくれる。
ターンテーブルプラッターは重いほうが慣性質量が増すから、
このことが音の良いプレーヤーの条件のひとつのようにいわれた時期がある。
重ければそれだけで音の良いプレーヤーに仕上るわけではないが、
確かにある程度の重量のターンテーブルプラッターのプレーヤーに、
音の良いモノが多いのもまた事実である。
だからある時期、とにかく重さを誇るプレーヤーがいくつも登場した。
けれど930st、927Dstのターンテーブルプラッターを見ると、不思議に思うことがある。
ステレオサウンド 52号からBIG SOUNDという連載が始まった。
一回目は927Dstで、山中先生が書かれていた。
カラー写真で927Dstが、いままでなく詳細に紹介されている。
927は16インチ盤を再生できるようターンテーブルプラッターは大きい。
52号ではメインターンテーブルプラッターの実測値が載っている。
それによれば、直径42cm、重量4.7kgである。
ちなみにシャフトの長さは首下164mm、径20mm、軸受スリーヴの外形は40mmである。
軽くはないが、驚くほどの重さではない。
52号の写真をみればすぐにわかることだが、
927Dstのメインプラッターには八つの丸い穴が開いている。
この穴の数は時代によって違うようで、私が中古で手に入れた927Dstは四穴だった。
形状も丸ではなく、一辺が弧を描く三角形だった。
なぜEMTは穴を開けるのか。
穴などないほうが重量は増すし音も良くなる可能性があるのではないか、
そんなことを52号の写真を見ながら思っていた。