ミソモクソモイッショにしたのは誰なのか、何なのか(その8)
オーディオ評論家を先生と呼びはじめたのは、
ステレオサウンドが最初だった、という話は過去にもいまも何度も聞いている。
そうといえるとも思うし、ステレオサウンドが最初だろうか……、と、
すこし微妙なところもあるのも知っている。
とはいえステレオサウンドは、早い時期から先生と呼んでいたことは確かであるし、
ステレオサウンドがそう呼ぶことで、先生と呼ぶことが広まっていたようにも思う。
藝術新潮1980年5月号に「五味先生を偲んで」という、
原田勲氏の文章が載っている。
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私の編集している雑誌『ステレオサウンド』は私が先生に師事することで、はじめて成立したものであった。私と先生の関わりは「五味さん」または「五味康祐」というような呼びかたをしたとたんに、嘘になってしまう。そんな距離感で、私は先生を見たことがないのだ。
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ここから始まった、といっていいだろう。
ここから始まったことが、30年、40年……と経つうちに変ってしまった。
形骸化とは、いまの先生という呼称の使われ方だ。
どんなオーディオ評論家に対しても、先生とつけて呼ぶ人に、
原田勲氏にとって五味先生の存在は、おそらくいないのだろう。