Archive for category アナログディスク再生

Date: 8月 15th, 2026
Cate: アナログディスク再生

トーンアームに関するいくつかのこと(リニアトラッキング型・その2)

私がオーディオに興味を持ち始めたから、リニアトラッキング型トーンアームは、理想に近い形として紹介されていた。

当時は、素直にそう信じた。理想のトーンアームは、リニアトラッキング型によって実現できるはず──、そんなことを思っていた。

(その1)で挙げているモデルの多くは、電子制御によるリニアトラッキング型だった。
リニアトラッキング型トーンアームを自作しようとすると、なかなかに大変なことだと思ったし、私が知る限り、当時のオーディオ雑誌にリニアトラッキング型トーンアームの自作記事はなかった。

センサーがあって、トーンアームを移動するためのモーターがあって、センサーからの情報を元にトーンアームを移動させていく。

そのセンサーを含めて見事にデザインしたのが、B&OのBeogramであって、これで故障知らずで使っていけるのであれば、それは素晴らしいことなのに、故障が多かった、と瀬川先生が特選街という雑誌で、そんなことを指摘されていた。

それを読んで、やっぱりそうなのか……、と思いつつも、憧れは憧れとして、私の中では続いていた。

でも、このころになると、リニアトラッキング型トーンアームの動作は、本当のところはどうなんだろうという疑問も生じてきた。

そこで、まず考えたのはリニアトラッキング型トーンアームにとって、そのメリットを最大限に活かせるのは、どんなレコードなのかだった。

答はすぐに出た。円盤ではなく、エジソンが最初に発明したのと同じくシリンダー型のすることだった。

Date: 8月 14th, 2026
Cate: アナログディスク再生

トーンアームに関するいくつかのこと(リニアトラッキング型・その1)

1970年代後半から1980年ごろは、リニアトラッキング型トーンアームを搭載したアナログプレーヤーが、いくつかあった、と書くよりもいくつもあった、と、書いた方がいいかもしれない──、そう思わせるほど、あった。

まずB&OのBeogramがあった。リニアトラッキング型トーンアームに、あのデザイン。手元に置きたいプレーヤーだった。

ヤマハからは、PX1が出た。続けてPX2、P750も出た。パイオニアからはPL-L1が出て、普及モデルのPL-L5もリニアトラッキング型だった。

テクニクスはレコードジャケットサイズのプレーヤー、SL10でリニアトラッキング型を採用している。

マカラのプレーヤーもあったし、ルボックスからもB790が登場した。

ダイヤトーンからは縦型のアナログプレーヤー、LT5VC、LT5Vがあったし、これらよりも少し前には、ハーマンカードンからは、Rabco ST7とRabco ST6があったし、私がオーディオに興味をもつ以前のモデルとして、マランツからSLT12があった。

1980年代に入ると、海外からリニアトラッキング型トーンアームが、単体として登場してきた。
それらのいくつかはステレオサウンド 87号で取り上げている。

この記事、「スーパーアナログプレーヤー徹底比較 いま話題のリニアトラッキング型トーンアームとフローティング型プレーヤーの組合せは、新しいアナログ再生の楽しさを提示してくれるか。」は私の担当だった。

ここで取り上げているモデルは、全て輸入元のスタッフによってセッティングをやってもらった。

なので、試聴はすんなりトラブルなく進むと思っていたら、そうではなかった。試聴の時には、輸入元の人はいないため、私が調整するしかない。
マニュアルがあったわけでもなく、実物を見て、どこを調整するのかを判断しての作業となった。

Date: 5月 22nd, 2026
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(SME 3012-R Special・その10)

(その9)で、SMEの3012 S/IIがやって来たこと、パーツがいくつか欠品していること、それらを揃えてもすぐには使う予定はないと書いたのは、ほぼ一年前。

それがここに来て心変りしている。
やはりターンテーブルを用意したいと思うようになってきた。

ガラードの301、401、トーレンスのTD124あたりか、と頭に浮かんだけれど、違うモノにしたいともすぐに思うようになった。

あまり高価なモノではなく、あまり大きなモノにもしたくない。何があるだろうか。

製造中止になっているせいひ、現行製品で、何があるのか。
そんなことをぼんやり考えながらAliExpressを眺めていたら、フォノモーターを見つけた。ターンテーブルプラッターを用意すればいい。

こういう選択肢もあり、だなとすぐに思った。

以前別項で書いたようにロングアームには、40cmクラスのターンテーブルプラッターがよく似合う。

ターンテーブルプラッターもAliExpressで見つかるようになるかもしれない。40cmクラスのモノは無理でも30cmクラスならば、いずれ登場するであろう。

材質も金属あり、アクリルありとなると勝手に期待している。

Date: 5月 17th, 2026
Cate: アナログディスク再生, 世代

アナログディスク再生の一歩目(その7)

トーレンスの“Reference”を、熊本のオーディオ店で聴くまで聴いていたアナログプレーヤーは、マイクロの糸ドライヴ以外は全て国産のダイレクトドライヴ型だった。
それに価格的にも、それほど高価なモノはなかった。

だから、EMTの930stや927Dstについて書かれたものを何度もくり返し読んでは、その音、その再生レベルの高さといったことを想像していた。

そこにいきなり聴く機会が訪れた“Reference”。しかも瀬川先生が鳴らされる。

アナログプレーヤーで音が変るのはわかっていても、ここまで変るのか、という衝撃。
“Reference”の前に、930stでも聴いたことがあったならば、その衝撃はいくぶんか弱くなっていたかもしれないが、いきなりの“Reference”の音は、アナログプレーヤーは、もうこれしかない! と思い込むほどの凄さだった。

この時の“Reference”の音(凄さ)も、私にとっては「アナログ再生の一歩目」ともいえる。
ここまで鳴る──、そういう凄さを聴けたのだから。

Date: 4月 1st, 2026
Cate: アナログディスク再生, 老い
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アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その20)

アナログディスクのレーベルにヒゲをつけてもなんとも思わない、感じない人は、
どんなに高価なアナログプレーヤーを使っていても、初期盤を持っていたとしても、恥を知らない人なのだろう。

ヒゲに無頓着な人だけではない、最近のオーディオマニアにも恥を知らない人が増えてきているように感じる時がある。

Date: 3月 26th, 2026
Cate: アナログディスク再生, 老い

アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その19)

レコードのレーベルにヒゲをつけるかけ方をしている人がいる、と書いた。

先日、これもソーシャルメディアで流れてきた動画でも、そうだった。
外国人男性で、かなり高価なアナログプレーヤーを使っている。
盤面に針を降ろす時は慎重に丁寧にやっているふうだけど、
その前のターンテーブルプラッターにディスクをのせる時、
無頓着にセンタースピンドルの先端で、レーベル面を擦っている。

その外国人の男性がいくつらいなのかははっきりしないが、三十代から四十代くらいに見えた。

ヒゲに関しては、世代も国の違いも関係ないようだ。ヒゲに無頓着な人は私よりも上の世代にもいるのを知っている。

ヒゲに無頓着な人が、アナログディスクの音を語る──。

Date: 1月 8th, 2026
Cate: アナログディスク再生, 老い
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アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その18)

(その17)へのコメントがFacebookであった。
詳細は書かなかったから、高齢の方の取り扱いだと思われたようだが、実際は40代の方。

私よりも二世代若いとなると、音楽を聴き始めた頃はCDだっただろうし、
周りにアナログディスクの取り扱いの手本となる人もいなかった可能性もある。

コメントは、だから雑になってしまったのではないか──、ということだったが、
ショート動画を見るかぎり、扱いは丁寧なのだ。
だがセンタースピンドルの先端目指してすーっとレコードを置くことをやっていない。

音溝が刻まれているところだけには気を使っているのだろう。
つまりレコードのヒゲについて何も知らないからの、あの扱いなのだろう。

いま40代の人が読んできたであろうオーディオ雑誌には、レコードのヒゲについて書かれた記事はなかったように思う。
けれど、私が読んできたオーディオ雑誌にも、ヒゲについての記事はなかった。

私は「五味オーディオ教室」からスタートしているから、絶対にレコードにヒゲをつけてはならない──、
そのことが意識として常にあるけれど、他の人はどうだろうか。

ヒゲに関することは、あまり世代は関係ないように捉えているから、
丁寧に扱いながらもヒゲがつくことには無頓着な人がいることは、
オーディオの世界がいろんな意味で活発ならば、どこかで手本となる人と出会えただろうし、
注意してくれる人もいただろう。

オーディオショウでも、ヒゲについて言う人はいない。

そういうところに、オーディオの世界が老いてきているのかと、思ってしまう。

Date: 1月 5th, 2026
Cate: アナログディスク再生

Wilson Benesch Circle(その6)

早瀬文雄(舘 一男)さんは、黒色を嫌っていた。
ヤマハのGTR1を使っていた時も、黒が嫌だからと塗り替えていた。

なのでGYRODECのブラック仕上げを選ぶことはなかったはず。
Wilson BeneschのCircleは石臼みたいなアピアランスで、
ターンテーブルプラッターは半透明の白っぽい感じだが、ベース部は黒。

舘さんがCircleを使っていた時、これがメインのアナログプレーヤーだった。
なのに私に「使いませんか」と譲ってくれたのは、黒だったことも理由の一つのように思っている。

音は気に入っている、いいプレーヤーだ、と彼はCircleを高く評価していたから、黒だったからだろう。

ターンテーブルプラッターがまわっているのを、ぼんやり眺める。
GYRODECには、そういう視覚的な楽しさがある。Circleにはない。

こうやって書きながらも、どうして舘さんがGYRODECに、あそこまで惚れ込んでいたのか、その理由ははっきりとはわからない。

考えるだけ無駄といえばそうなのだけれど、目の前にCircleがあって、たまにLPをかけると、とりとめもなく考えてしまったりする。

Date: 12月 31st, 2025
Cate: アナログディスク再生, 老い

アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その17)

X(Twitter)に投稿されていたショート動画を見たばかり。
私が知らないだけで、ある程度有名なレコードコレクターの方が、レコードをかける動画だった。

無雑作にセンタースピンドルの先端で、レコードの中心孔周辺を擦っている。
いわゆるヒゲをつけまくるレコードのかけ方だ。

レーベルにヒゲがつこうが、音が刻まれている盤面には関係ない──、そういう感覚、認識なのだろう。

そんな人がレコードコレクターとして、そこそこ知られている。
人が、というよりもオーディオ界そのものが老いてきているような気さえする。

Date: 12月 28th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Wilson Benesch Circle(その5)

早瀬文雄(舘 一男)さんのスピーカー遍歴はすごいが、アナログプレーヤー遍歴もなかなかだった。

マイクロのSX8000IIにSMEのSeries Vの時もあれば、BARCO-EMTの復刻930stの時もあったし、ガラードの301、
いま私の元にあるWilson BeneschのCircleなどがある。
他にも記憶しているアナログプレーヤーはあるが、
書きたいのはそれらのことではなく、
J.A.ミッチェルのジャイロデックのことだ。

いまではMichell(ミッチェル)となっているが、
1980年代に輸入されていたころは、J.A.ミッチェルという表記だった。

GYRODECが、最初に日本に紹介された。
舘さんは、このGYRODECにベタ惚れだったと言っていいくらいに、そのデザインを高く評価していた。

メインのアナログプレーヤーとして使っていた時もあれば、サブ用として、
舘さんのリスニングルームには、常にGYRODECがあった。

私の記憶違いでなければ、一度手放してまた購入されている。

見ているだけで満足という感じでもあった。

いまではブラック仕上げもあるが、舘さんはシルバー仕上げだった。

Date: 12月 26th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Wilson Benesch Circle(その4)

私のところにあるWilson Beneschのアナログプレーヤー、Circleは、舘(早瀬文雄)さんが使っていたモノである。

舘さんが東京から京都にクリニックを移し引越しする時に、使ってください、と言ってくれたモノだ。

カートリッジはZYXが付いていたけれど、カンチレバーは折れていた。うっかりプラッターにぶつけて折ってしまったとも言っていた。

そんなうっかりがあるかな、と思ったけれど、自分で使ってみると、そのうっかりはたやすく起ってしまうことに気づく。

アームレストの固定が緩いから、すぐにトーンアームが外れてしまいプラッターにぶつかる。
運が悪ければ、カンチレバーが折れる。
舘さんもそうやってのことだったのだろう。

Date: 9月 1st, 2025
Cate: アナログディスク再生

Westrex 10Aのこと(その9)

(その8)圧電型カートリッジについて書いている。
今日、Facebookに、京セラのセラミック圧電型スーパートゥイーターの投稿が表示された。

クラウドファンディングの告知である。
京セラもクラウドファンディングの会社もフォローしていないし、しかも約一週間前の投稿でもある。

(その8)が三日前だから、なんともタイミングがいい。
最後まで、その投稿を読む。

圧電型ということもあったが、
それ以上に京セラのスーパートゥイーターはピストニックモーションではなく、ベンディングウェーヴ型でもあることが、
私にとっては非常に興味をそそられると同時に、
やはり圧電型カートリッジの最新の音を、ぜひ聴いてみたくなる。

今回のクラウドファンディングが成功し、次はカートリッジをやってくれたら──、とちょっとだけ期待したくなる。

Date: 8月 29th, 2025
Cate: アナログディスク再生
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Westrex 10Aのこと(その8)

ウェストレックスの10A、ノイマンのDST。
これらのダイレクトカップリングのカートリッジの音を思い出すと、
私の頭の中に時々浮かぶのは、圧電型カートリッジの可能性である。

私が小さいころ、いわゆるステレオがある家庭は少なかった。
ステレオがない家庭にあるレコード再生のための機器は、
卓上型プレーヤー、ポータブルプレーヤーと呼ばれていたモノである。

フルレンジのスピーカーが搭載されていて、ターンテーブルプラッターは、シングル盤サイズ。
手軽に持ち運びできるように蓋を閉じると持ち手がある。
ケースはプラスティック製。

オーディオマニアからすれば、いい音が出てくるはずはない、と、それで終ってしまうであろう作り。

中学生のころ、中を見たことがある。アンプ部は、小さい基板一枚で構成されていた。
モノーラル再生のみなので、基板にはOPアンプ(それも一つ)だった。

どうみてもイコライザー回路はない。
MM型、MC型といった速度比例型ではなく、振幅比例型の圧電型カートリッジを採用しているため、アンプはこれ以上は無理というほどに簡略化されている。

本格的な音は、鳴ってこないが、声だけは活き活きと鳴っていた、と記憶にある。
当時の圧電型カートリッジは高性能は期待できないレベルとはいえ、この発電方式ならではの良さは少なからずあったのではないのか。
そんなことを時々思うことがある。

そんな時代と現代とでは、いろんな素子が改良されて良いモノになっている。
圧電型カートリッジは、可能性はどうなのか。
圧電型カートリッジは、ダイレクトカップリングに向く。当時は破損しやすかったため、カンチレバーが必要だったが、現代の圧電素子ならば、どうだろうか。

Date: 8月 23rd, 2025
Cate: アナログディスク再生

Westrex 10Aのこと(その7)

ウェストレックスの10A、ノイマンのDSTほどではないが、
オルトフォンのSPUやEMTのTSD15も、ローコンプライアンスのカートリッジである。

軽針圧(ハイコンプライアンス)のカートリッジの音にまったく惹かれないわけではないが、
SPUやEMTの音を聴くと、やっぱりこっちだな、とひとり納得するばかりである。

なぜなのか、と昔から疑問に思っていたし、その理由を考えてもいた。

理屈から言えばハイコンプライアンスの方が、カートリッジの在り方としては正しい、とも言える。
そんなことは昔からわかっていることでも、肝心なのは音であって、
例えば別項「2023年ショウ雑感(その17)」で書いたことも関係してくる。

2023年のインターナショナルオーディオショウでのオルトフォンジャパンのブースで鳴っていた二つの音。

一つはオルトフォン最新・最高級のMC Diamond、
もう一つは、SPU GTE、
どちらも石川さゆりの「天城越え」を鳴らしていた。

どちらの音が、より正しいのか、と問われれば、MC Diamondだ、と答える。
MC Diamondでの音は、スタジオで石川さゆりが歌っているかのように聴こえたからだ。

一方のSPU GTEの音は、石川さゆりがナイトクラブで歌っているかのように、私の耳には聴こえた。

スタジオで録音しているのだから、MC Diamondの聴こえ方の方が正しいとは、私でも思う。
それでも……である。

わかった上で、どちらをとるかである。

Date: 5月 17th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Westrex 10Aのこと(その6)

昔から高音質を謳ったアナログディスクは、いろんなレーベルから発売されていた。
もちろんいまも発売されているわけで、半速カッティングを誇らしげに謳っているところもある。

この半速カッティングだが、私は昔から懐疑的である。
それはアナログをエネルギー伝達、デジタルを信号伝達と捉えているからだ。

もちろんアナログディスクを信号伝達メディアとして捉える考えもあっていいし、
その考えに立てば、半速カッティングは有効な手段となるわけだが、
エネルギー伝達メディアとしてアナログディスクを考えているのであれば、
半速カッティングには、どうしても疑問符がついてまわる。

1980年代、山中先生も半速カッティングには否定的だった。
それだけでなく、倍速カッティングの音を聴いてみたい、とも言われていた。

何をバカなことを──、と思う人もいるし、私のように山道する人もいる。
私も倍速カッティングが可能ならば、その音はぜひとも聴いてみたい。

くり返すが、アナログディスクをエネルギー伝達メディアとして捉えているからの倍速カッティングである。