Archive for category アナログディスク再生

Date: 3月 15th, 2020
Cate: アナログディスク再生

トーンアームに関するいくつかのこと(その7)

マカラはメカニズムを専門とするメーカーがつくりあげたプレーヤーシステムである。
マカラの人たちは、片持が音にどういう影響を与えるのか、
そのことを知っていたのかどうかはわからない。

それでもメカニズムの専門家として、片持の製品を世の中に送り出すことはしなかった。
マカラのプレーヤーシステム4842は、いまから四十年前に登場している。

なのに現在のプレーヤーHolboが片持のまま製品化している。
片持のままのプレーヤーを、製品と呼んでいいのか、という問題はここでは語らないが、
なぜ片持のままなのか。

メーカーの開発者に訊くしかないのだが、
おそらくトーンアームの高さ調整との関係ではないのか、と推測できる。

片持のリニアトラッキングアームであれば、
弧を描く通常のトーンアームと同様の機構で、
トーンアームの高さを調整できる。

けれどベアリングシャフトと呼ばれているシルバーの太いパイプを両端で支えたとしよう。
この構造で、高さ調整をすると、調整箇所が二箇所になる。

エアーベアリング型のアームにとって、
ベアリングシャフトの水平がきちんとでていなければ動作に支障がでる。

片持ならば、調整箇所は一箇所で、
基本的にはプレーヤー全体の水平が確保されていれば、
ベアリングシャフトも水平ということになるし、
高さを変更しても水平は維持できている(はずだ)。

ところが高さ調整の箇所が両端二箇所ともなると、
プレーヤー全体の水平は出ていても、
ベアリングシャフトの水平は、二箇所をきちんと調整する必要がある。

いいかげんな調整では水平が微妙に狂ってしまう。
その点を防ぐには片持構造が、いちばん楽な方法である。

Date: 3月 15th, 2020
Cate: アナログディスク再生

トーンアームに関するいくつかのこと(その6)

ホルボのHolboというアナログプレーヤーを、
片持の代表例として取り上げたのには、一つだけ理由がある。

Holboは、プレーヤーシステムであるからだ。
トーンアーム単体ならば、他の例といっしょに取り上げただろうが、
くり返すが、Holboはプレーヤーシステムである。

プレーヤーシステムであるならば、
この手のエアーベアリング方式のリニアトラッキングアームの片持は、
メーカーが気付いているのであれば、なんとかできるからだ。

1980年第後半、アメリカからリニアトラッキングアーム単体がいくつか登場した。
それらのなかには、Holboに搭載されたトーンアームとよく似たモノがあった。

でも、それらのリニアトラッキングアームは、
既存のアームレスプレーヤーに取り付けなければならない。

取り付けのためのアームベースは、メーカーによって違ってくるが、
多くのモノは、弧を描く一般的なトーンアーム用のスペースしか想定していない。

その限られたスペースに、リニアトラッキングアームという、
別の動きをするトーンアームを取り付けなければならない。
そのために片持にならざるをえなかった面もあるとはいえる。
それでも工夫はできたはずだが。

エアーベアリング方式で、リニアトラッキングアームといえば、
日本のマカラが最初のモデルのはずだ。

余談だが、
1979年のオーディオフェアで発表されていたフィデリティ・リサーチのプレーヤーは、
プロトタイプであったが、このマカラをベースにしていた。

マカラのリニアトラッキングアームも、一見すると片持のようにみえるが、
片持になっていると思われる側は、下部からの支柱があるのがわかる。

Date: 3月 12th, 2020
Cate: アナログディスク再生

トーンアームに関するいくつかのこと(その5)

B&Wの805Dのトゥイーター後方の角の先端を支えるといっても、
テンションを与えるような支え方はすすめない。

どういう素材を使うのか、どの程度の支え方にするのかによっても音は違ってくる。
が、それでも支えない状態の音と支えた状態の音の違いは、
一度、その違いを聴いてしまうと無視できないほどである。

Nautilusの場合、そのアピアランスを損ねることなく、
三本の角の先端を支えるというのは、なかなか難しいことになるだろう。

ああしてみたら、とか、こうしてみたら、と二、三、その方法を考えてはいるけれど、
試すことはまずない。それでもNautilusの音を極限まで抽き出したいのであれば、
その使い手は、なんらかの方法を考えた方がいい。

その意味で、Nautilusの開発に携わっていた人たちは、
片持の弊害をわかっていたはずである。

ビビッド・オーディオのGIYAシリーズをみれば、明らかだ。
GIYAを最初にみたとき、こういう処理の仕方もあるな、と感心したものだ。

もっもとB&WのNautilusの場合、
三本の片持の影響をすべてひっくるめてのNautilusである、
と捉えるべき考え方もできる。

どう捉えるかは、Nautilusの使い手自身が判断することだ。

Date: 3月 12th, 2020
Cate: アナログディスク再生

トーンアームに関するいくつかのこと(その4)

アナログプレーヤー関係ではないが、
片持の代表的例、もっといえば片持のキングといえるオーディオ機器は、
やはりB&WのNautilusだ。

ウーファーをのぞく上三つの帯域のユニットの後部は、
消音構造のために、角のように伸びている。

この角は、先端が片持である。
これだけ長い片持のオーディオ機器は、これ以前にはなかったし、
Nautilus以降もない。
しかも三本の片持である。

Nautilusの、この三本の角の先端を、適切な方法で片持ではないようにしたら、
どれだけ音が変化することだろう。

Nautilusでは試したことはないが、
B&Wの小型2ウェイの805Dでやったことはある。

805Dのトゥイーターの後方にのびる角は、さほど長くない。
それでも先端の下に支えをかましてやる──、
たったこれだけのことなのに、音は大きく変化する。

その時は、数人で聴いていた。
ギターのディスクがかかっていた。

アクースティックギターなのに、エレクトリックギターのように鳴っていた。
それが、ほんのちょっと角の先端を支えただけで、
アクースティックギターの響きに変っていった。

私の隣で聴いていた人は、高校時代にギター部にいた人で、
彼も片持のままの805Dのギターの音には首を傾げていたが、
私が手を加えたあとの805Dの音を聴いて、納得していた。

Date: 3月 1st, 2020
Cate: アナログディスク再生

トーンアームに関するいくつかのこと(その3)

ホルボのHolboというアナログプレーヤーがある。

昨年登場し、ステレオサウンドでも取り上げられているし、
ステレオサウンドのウェブサイトでも、確か二回記事が載っている。

最近発売されたということで、ここで取り上げているが、
リニアトラッキングアームの片持という問題点は、
なにもこのHolboだけでなく、ほかの多くの同種のトーンアームについてもいえることである。

なので、輸入元ブライトーンのHolboのページにある写真を見てほしい。
とにかく写真だけでいいから見てもらえれば、どこが片持なのか、
誰にでもすぐにわかることだ。

ベアリングシャフトと呼ばれているシルバーの太いパイプがある。
ここが片持になっている。

このパイプは、水平移動するトーンアームにとって、いわばレールにあたる。
ここをなぜ片持のままにしておくのか、
片餅のままでも問題がない、とでもメーカーは思っているのか、
さらにいえば輸入元も、これで十分と思っているのか、
この種のトーンアームを含むプレーヤーシステムを評価しているオーディオ評論家は、
オーディオ評論家(職能家)といえるのだろうか、
そんなことを見るたびに思ってしまう。

こんな疑問を投げ掛ければ、
メーカーも輸入元も、さらにはオーディオ評論家と呼ばれている人たちも、
パイプの径が十分に太くて、材質も吟味されているから、
必要な剛性は確保できている──、と答えるであろう。

ほんとうにそうおもって、そう答えるのであれば、
もうなにをかいわんや、としかいいようがない。

Date: 2月 29th, 2020
Cate: アナログディスク再生

トーンアームに関するいくつかのこと(その2)

トーンアームには片持の部品が他にもある。
アームリフターの操作レバーも片持である。

昨晩(その1)へのコメントが、facebookであった。
海外のフォーラムにあったフィデリティ・リサーチのFR64Sの使いこなしに関するものだった。

コメントをくださった方がGoogle翻訳をベースに手直ししてくれものだった。
そこにはトーンアームの構造上、
アナログディスク再生に必要ない部品はすべて取り外した、とある。

具体的にはアームレスト、アームリフターである。
同じことをやっている人が海外にもいるんだな、と思いながら読んでいた。

アームレストにしてもアームリフターにしても、
取り外してしまえるのならば外してしまったほうが、
雑共振の元を減らすという意味でもより効果的である。

片持ということではヘッドシェルの指かけもそうである。
指かけの多くは外せる。
外した音を、一度聴いてほしい。
(もちろん外した場合、針圧の再調整は必要になる。)

他にも片持のところはある。
インサイドフォースキャンセラーに関するところだ。

ここは再生上必要になるので取り外してしまえ、と乱暴なことはいわないが、
影響を与えていることは間違いない。

そしてトーンアームの後部、
つまりメインウェイトが挿し込まれているシャフトも片持である。

基本片持になっている箇所は、雑共振という視点からは疑った方がいい。

そしてトーンアームで一番の片持はなにかといえば、
メインウェイト用のシャフトではなく、
リニアトラッキングアームに存在している。

Date: 2月 28th, 2020
Cate: アナログディスク再生

トーンアームに関するいくつかのこと(その1)

トーンアームの新製品が、いまの時代でも、というよりも、
いまの時代だからこそ出ている、といったほうがいいのか、
とにかく新製品が日本からも海外からも登場している。

いまでは単体トーンアームは、かなり高価である。
高価になってしまう理由もわからないではないが、
それにしても……、と思うところがある。

アームレストである。
単体トーンアームであれば、アームレストがある。

プレーヤーシステムとしてのトーンアームであれば、
アームレストはキャビネットに立てられていることがほとんどだ。

けれど単体トーンアームではそうはいかないから、
片持構造のアームレストがある。

さらにアームレストにパイプを固定するためには、
なんらかの部品がそこにはついている。

このアームレストが、音質上好ましくない存在である。
必要なアームレストであるわけだが、
音楽を聞いているとき、
つまりカートリッジがレコードの音溝をトレースしているとき、
アームレストはフリーな状態(アームを固定していない)である。

片持構造のアームレストは、この時振動している。
その振動は音質に影響をもたらしている。

どのトーンアームなのかは書かないが、
ずっと以前、アームレストにいくつか細工をしたことがある。
簡単にできることだが、見た目はひどくなる。

あくまでも実験的に行ったことだが、
アームレストになんらかの対策を施せば、
アームレストがどれだけ音に影響を与えているかが、音で確認できる。

アームレストの影響をなくすには、根元からポキッと折ってしまうことだろう。
そんなことをすれば、トーンアームは固定されず、カートリッジの破損につながる。

アームレストに関しては、
あまり注意を払っていないモデルが、高価なモノでもけっこう、というか、
そうとうに多い。

ここまでの価格にするのであれば、
アームレストに対して、そうとうに注意を払うべきだ。

Date: 2月 28th, 2020
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その34)

日本のオーディオの歴史をふりかえれば、
日本のメーカーのトーンアームはSMEのコピー(モノマネ)から始まった、といえる。

ほぼ日本だけの規格ともいえるところがあるヘッドシェルのコネクターも、
まさにそうだ。
このコネクターの採用により、カートリッジの交換が容易になり、
カートリッジを、レコードに応じて、音楽に応じて、ときには気分に応じて交換する──、
そういう楽しみ方が日本のオーディオマニアではごくあたりまえのことになっていた。

もちろんずっとSMEのトーンアームのコピーのままだったわけではないが、
SMEのトーンアームが日本のメーカーに与えた影響はそうとうに大きいものであった。

だからこそ日本のオーディオメーカーに、
日本独自といえる電子制御のトーンアームを、
完成形といえるレベルまで開発を継続してほしかった。

事実、(その5)でもふれているように、
SMEのロバートソン・アイクマンは1979年のオーディオフェアに来日して、
《ソニーの電子制御アーム。これも私にとって興味をいだかずにはいられないものでした》
と、ステレオサウンドのオーディオフェアの別冊でのインタヴューで語っている。

そのソニーの電子制御トーンアームは、洗練はされていなかった。
当時、広告や記事での写真を見てもカッコイイとは感じなかった。
いま見ても、そのへんの印象は変らない。

まだまだ登場したばかりの形という感じだった。

十年。
1990年ごろまで、日本のオーディオメーカー各社が、
電子制御トーンアームに積極的に取り組んでいれば、
そのカタチも洗練されていったはずだ。

そうなっていれば、日本独自の素晴らしいトーンアームが生れていたかもしれない。

Date: 2月 27th, 2020
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その33)

CDの登場が1982年ではなく、
1987年、五年遅れで登場していたら──、と妄想することがある。

ビクターやソニー、デンオンがてがけていた電子制御トーンアームは、
かなり進歩した性能になっていたのではないだろうか。

テクニクスも電子制御トーンアームを出してきた可能性も考えられる。
ヤマハもリニアトラッキング式に積極的だったから、
電子制御トーンアームの開発に取り組んだかもしれない。

CDの登場も、アナログディスク再生技術の進歩ということを考えると、
早かった、といっていい。
それにCDの普及も勢いがあった。

もう少しゆっくり普及していっていれば、
アナログディスク再生もおもしろい技術が出ていたであろう。

その分、CDの技術も進んでいったといえるのだから、
こんなことをいってもしかたないことだし、
誰かがどうにかできたことでもないだろう。

昨年、SAECのトーンアームのWE407/23が、WE4700として復活した。
最新の加工技術によって、WE407/23各部の精度を高めている、という。

それにWE407/23が販売されていたころと、いまとでは売れる台数に大きな開きがある。
それゆえ高価になるのはわかる。

でも、実際の価格をみると、ここまで高くなってしまうのか、と驚きもある。
他社のトーンアームも、そうとうに高価なモノがあるから、WE4700だけが飛び抜けて高価ともいえない。

だからよけいに、電子制御のトーンアームが、あの時代、もう少し進歩を遂げていたら、
現代の先端技術をうまく利用して、いまの時代に高性能に復活できたのではないだろうか。

Date: 12月 1st, 2019
Cate: アナログディスク再生

アナログディスクの自作(補足)

facebookでコメントがあり、
カッティングマシンを中心としたブログのURLがあった。

YAMADAN DISK RECORDINGS BLOGで、
2016年の「レコードカッティングマシンのこと(国産)」へのリンクであった。

このブログに掲載されている機種のなかで、ディスクルが、
私の記憶の中にあるモノとよく似ている。
たぶん、これであろう。

ソノシート用ではなかったが、モノーラル専用である。
価格もわかった。

そうなのだ、当時としてはかなり高額だった。
高校生には、ちょっと無理な価格だった。

上記ブログは、ディスクル以外のモデルも紹介されている。

Date: 12月 1st, 2019
Cate: アナログディスク再生

アナログディスクの自作

Phonocutという機械が、SNSで話題になっている。
WIREDが『アナログ盤を自作できるマシンが、まったく新しい「レコードの時代」の到来を告げる
という記事を公開している。

記事には、こうある。
《「Phonocut」は、家庭用としては初のアナログレコードのカッティングマシンだ》

WIREDの記事を書いている人は、私よりもかなた若い世代なのだろうか。
記事の内容そのものについての批判ではなく、
ただ上に引用した箇所について、ちょっと補足したいだけである。

Phonocutが家庭用としては初のカッティングマシンではない、ということだ。
私が高校生のころに、すでにあった。

オーディオメーカーから出ていたわけではなかった。
全国紙の広告に載っていた。
メーカー名は、もう40年ほど前のことで忘れてしまった。

Phonocutは10インチ盤だが、私が新聞広告で見た機械は、シングル盤専用だったと記憶している。

当時の新聞のモノクロの広告だから、写真も鮮明ではなかった。
技術的な説明がきちんと載っていたわけでもなかった。
ソノシート用だったのかもしれないが、
少なくともカッティングマシン、それも家庭用のそれであったことは間違いない。

これが家庭用として初のカッティングマシンだったのかどうかもわからない。
40年ほど前に、すでにそういう機械は日本にはあった、という事実だ。

Date: 10月 27th, 2019
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その38)

私が高校生のころ使っていたダイレクトドライヴ型は、
国産の普及クラスの製品で、私にとって、初めてのダイレクトドライヴ型でもあった。

ある日、ターンテーブルプラッターを外して、モーターを廻してみたら、
センタースピンドルが、カクカクした感じで回転している。
いわゆるコギングである。

スムーズに回転しているものだとばかり思っていたから、
このコギングは、かなり衝撃的だった。

ターンテーブルプラッターの慣性を利用して、
結果としてはスムーズに回転している、という説明をその後すぐに知ったけれど、
肝心の回転が、こんなにカクカクしていて、ほんとうに問題ないのか。

それになぜ、センタースピンドルでターンテーブルプラッターに回転を伝えているのかも、
これまで書いてきているように、非効率のように思えた。

この普及クラスのダイレクトドライヴ型プレーヤーのせいで、
私のダイレクトドライヴ型に対する不信感は、一拠に大きくなった。

パイオニアのPL30、50、70、
それにExclusive P3が登場する前のことだ。

パイオニアが、このころ採用したSHR(Stable Hanging Rotor)方式の解説図、
これを見てダイレクトドライヴ型のすべてがセンタードライヴでないことに気づいた。

SHR方式を理解しようとして、まずつまずいたのが、
ダイレクトドライヴ・イコール・センタードライヴという思い込みだった。

それでどうやってSHR方式を実現できるのだろうか、とけっこう考えたものだった。
カタログに載っていた図を見て、なんだぁ、と気づいたわけだが、
おかげでセンタードライヴではないダイレクトドライヴ型に気づけた。

Date: 10月 20th, 2019
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(リアパネルのこと・その6)

その人は、特にオーディオマニアではないが、
好きな音楽を、少しでもいい音で聴きたい、と思っている人で、
使っているオーディオ機器も、ものすごく高価なモノではないけれど、
オーディオにまったく関心のない人からすれば、
かなりの高級品と思ってしまうクラスのモノで鳴らしていた。

それでも、それぞれの信号レベルについての知識はなかったのではないのか。
カートリッジの出力がどの程度で、
スピーカーケーブルに流れる信号がどの程度なのか、
そのへんの理解がないから、
シールドされているかされていないかで、
電源コードとの距離を判断していたようである。

シールド線といっても、同軸型と二芯シールドとの両方があり、
そこでのプレーヤーのフォノケーブルは、一般的な同軸ケーブルだった。

二芯シールドだから、完璧なシールドがなされているとは考えていないが、
それでも同軸ケーブルよりは有利なことは確かだ。

その人のオーディオの知識は、その意味では不十分すぎたが、
実際にケーブル類の整理をした音を聴いてもらうと、
きちんとした判断をされていた。

その人は、縦型のラックのいちばん上にプレーヤー、
その下にプリメインアンプで、そのアンプも一般的な端子配置の国産機である。

なのでフォノケーブルをそのままに下にたらせば、すぐにアンプのフォノ入力端子である。
プレーヤーとアンプの電源コードは、フォノケーブルの位置とは反対側の橋だから、
こちらも下に電源コードをたらせば、フォノケーブルと交差することはなかったわけだ。

Date: 10月 20th, 2019
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(リアパネルのこと・その5)

今夏にヤフオク!で手に入れたテクニクスのSL01とサンスイのAU-D607、
この二台で音を鳴らそうとした時に、どう設置しようか、と少し迷った。

ラックの上にSL01、ラックの下側にAU-D607という置き方を、
国産の、この時代のアンプは推奨しているかのようなリアパネルの端子の配置である。

こうすればフォノケーブルは真下に向い、
プレーヤーの電源コードともアンプの電源コードとも、基本的には交わらない。

けれど横に二台を並べようとすると、
プレーヤーを右側に置けば、
プレーヤーの電源コードとフォノケーブルは交わる。
反対にプレーヤーを左側に置けば、アンプの電源コードと交わることになる。

それぞれの電源コードに流れる電流の大きさは、
当然だがプリメインアンプのSU-D607の方が大きいわけだから、
交わることによる影響も、それだけ大きくなると思っていい。

それにAU-D607の二個の電源トランスは、アンプ内部左側にある。
つまりSL01を左側に置くと、カートリッジ、トーンアームという、
微小な信号が流れるラインと、アンプの電源トランスがかなり近づくことにもある。

電源トランスは直接は見えないが、
アンプを自分の手で持てば、どのあたりに配置されているかはすぐにわかる。

そうなると、あえて試すまでもなく、SL01とAU-D607を二台、横にならべるのであれば、
プレーヤーが右側、アンプが左側と自然に決ってしまう。

そういえばあるところで、フォノケーブルが、電源コードとくっつかんばかりに近づいていた。
わざとそうしているように見えたから、
ここ(フォノケーブル)とここ(電源コード)、離しましょう、といったら、
そうするとスピーカーケーブルと電源コードが近づいてしまう、大丈夫ですか、
という返事だった。

フォノケーブルはシールド線、スピーカーケーブルはシールドなしだから、
スピーカーケーブルが電源コードに近づく方が影響が大きいと考えた、ということだった。

Date: 10月 19th, 2019
Cate: アナログディスク再生, 老い

アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その5)

ジンバルサポートのトーンアームは、
回転軸のところに三本のネジがある。
垂直に一つ、水平に二つある。

まれにだが、この三本のネジをかなりきつく締めている人がいるのを知っている。

アナログプレーヤーの各部にガタツキがあれば、
それはてきめん聴感上のS/N比の劣化につながる。

井上先生も、以前ステレオサウンドで、
アナログプレーヤーのセッティングでの注意点として、
ネジをしっかり締めておくこと、といわれている。

基本的にはそうだが、
井上先生はその上で、締め過ぎてはいけないネジがあることも、きちんといわれていた。

それでも、そこまで読んでいないのか、
ただただネジをしっかり締める人がいるようだ。

ある国産のアナログプレーヤーで、ジンバルサポートのトーンアームがついていた。
そのモデルを、ヤフオク!で手に入れた知人がいる。

うまく鳴らない、という連絡があった。
行ってみると、トーンアームの感度が悪い。
ゼロバランスも取りにくいほどに、感度が悪く、
水平方向に動かしてみても、こんなに重い感触である。

知人がいうには、そのプレーヤーを使っていた人は、
けっこうなキャリアを持つ人のようだ、とのこと。

もちろんヤフオク!だから、実際に会って確かめたわけではなく、
商品の説明文を読んで、そう思っただけらしいのだが、
それにしても、こんな状態のトーンアームで、
その人はアナログディスクを再生できていたのか、と疑問である。

原因は回転軸のところにある三本のネジの締め過ぎだ。
一度ゆるめて締め直す。
締め過ぎにはしない。

たったこれだけのことで、トーンアームの感度はまともになった。
きちんとレコードが鳴るよう(トレースできるよう)になった。

あたりまえのことをしただけだ。

それにしても、と思う。
ほんとうに知人の前に使っていた人はキャリアの長い人だとしたら、
こういう状態を動作品とするのならば、
(その1)の最後で書いたように、これもひとつの老い(劣化)なのかもしれない。