Archive for category アナログディスク再生

Date: 11月 1st, 2024
Cate: アナログディスク再生

Wilson Benesch Circle

アナログディスクを再生することはめっきり減ったのは、
MQAが登場したから、と私の場合はそうである。

いま手元に三台のアナログプレーヤーがあるけれど、ほとんど稼働していない。

メインは、Wilson BeneschのCircleなのだが、
これすらも、ほぼ使っていない──、そんな状況だ。

なので6月末に引越ししてからも、アナログプレーヤーの設置は後回しにしていた。

昨晩、そろそろやるか、とふと思い立って、
ここだな、といえる場所に設置。

その際、今年、ヤフオク!で落札したジュエルトーンのガラス製ターンテーブルシート、GL602Jと組み合わせてみた。

Circleに付属していたのは、粗い感じのフェルトで、
ここだけターンテーブルプラッター、トーンアーム、ベースの質感と、
少しだけ違和感があった。

それを交換したわけだが、それほど期待していたわけではなかったのに、
GL602JをCircleに乗せた瞬間、カッコよくなった、と感じた。

Circleのプラッターは半透明のアクリル製で、
モーターやインナープラッターなどが、
ぼんやりとだが、透けて見える。

いままではフェルトだったから、普段は見えなかった。
GL602Jにすると、そのままというわけではないが、
いい感じで透けて見える。

これが、けっこういい感じで、新鮮なのだ。

改めて、Circleはカッコいいプレーヤーだな、と見直している。

Date: 7月 31st, 2024
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その16)

今年のインターナショナルオーディオショウでも、
多くのブースでアナログディスクをかけていた。

けれど、そのレベルはバラバラだった。
そんなディスクのかけ方をするのか、と思ったところは一つではない。
ヒゲを明らかにつけているかけ方をしているところもあった。

個人のディスクで、持ち主がヒゲを気にしないのであれば、
そんなぞんざいな扱いでもいい、とは思わない。

誰かの目の前でかけていることが、すっぽり頭の中から抜け落ちているのか。
ヒゲなんてことをもともと知らないのか。

オーディオショウには多くの人が来る。
アナログディスク再生に関心を持ち始めた人もいる。
そういう人の手本になりたいとは、まったく思わないのだろうか。

ぞんざいな扱いしかできない人は、
おそらく周りに手本となる人がいなかったのだろう。
だとしたら──。

オーディオショウの出展社のスタッフは、オーディオ業界の人たちである。
いわばオーディオのプロの人たちのはずだ。

なのに、周りに手本となる人がいないのだとしたら……。

Date: 6月 28th, 2024
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(SME 3012-R Special・その6)

ステレオサウンド 127号のレコード演奏家訪問は、長島先生だった。
ここで、菅野先生と長島先生が語られていることは、
まだ読んでいないという人はぜひ読んでほしいし、
オーディオを介して音楽を聴くという行為で、
大事なことはなんなのかを感じとれるはずだ。

とはいえ、ここで書きたいのはそういうことではなく、
アナログプレーヤーに取り付けられているトーンアームのことだ。

以前別項で、SMEのSeries Vは、
長島先生のアイディアだろう、と書いた。
だからこそ長島先生は、すぐにSeries Vを導入された。

なのに127号の写真をみると、
トーンアームがSeries Vではなく、3012-Rだった。

なぜSeries Vではないのか、
なぜ3012-Rなのか。

いまとなっては、その答をきくことはできない。
それでも問い続けているからこそ、いまこれを書いている。

Date: 6月 26th, 2024
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(SME 3012-R Special・その5)

いま別項で「純度と熟度」について書いている。
そこで触れている高い純度と高い熟度のバランス、
これを実現している(私がそう思っているだけにしても)モデルは、
そう多くはない。

SME 3012-R Specialは、唯一の例とまではいわないものの、
数少ないモデルの一つである。

なぜ、そうなのかを説明はしない。
3012-R Specialを、きちんと使ったことのある人ならば、
納得されるはず。

Date: 6月 25th, 2024
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(SME 3012-R Special・その4)

自転車(ロードバイク)のフロントフォークも、
いまやストレートフォークばかりになっている。

ストレートフォークを最初に採用したのは、
イタリアのコルナゴのはず。
1990年代の半ばごろから登場してきた、と記憶している。

ストレートフォークが登場したばかりのころ、あんまり美しくないなぁ、と思っていた。
それまでのロードバイクのスタイルとのあいだに違和感を覚えていた。
なんだろう、この違和感は……、と、
なぜそう感じるのだろうか、
とあれこれ考えていた時期があった。

従来の、先端がカーヴしているベンドフォークは、
いまでは限られたモデルのみである。

いまではストレートフォークであっても、登場まもないころの違和感は、ほとんど感じなくなった。
こちら側が慣れてしまっただけなのかそう思うことはない。

ベンドフォークのロードバイクを見ると、
やっぱりベンドフォークだ、と思うからだ。

ストレートフォークのロードバイクは、乗ったことがない。
乗れば、やっぱりストレートフォークだな、と、
ころっと変ってしまうかもしれないが、
そうなったとしても、ベンドフォークは美しい。
このことにかわりはない。

プロの自転車乗りならば、勝利が求められているのだから、
どちらが美しい、とかは関係ない。
勝てる機材としてのロードバイクであって、
そのためのストレートフォークなのだろう。

細身のベンドフォークと3012-R Special。
決して懐古趣味からそう感じるわけではない。

Date: 6月 15th, 2024
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(SME 3012-R Special・その3)

トーンアームのパイプの形状は、
私がオーディオに興味を持ち始めた1976年は、S字型かJ字型が大半だった。
ストレート型もいくつかあったけれど、少数派だった。

ストレートパイプが増えてきたのは、1980年代に入ってからだろう。
しばらくしてピュアストレート型が提唱されるようになってきた。

オフセット角は不必要というもので、
それまでのストレート型はヘッドシェル部に角度がついていたが、
ピュアストレート型はヘッドシェルまで直線になっている。

ピュアストレート型の優位性を、理論的に説明する人もいる。
それはそれで納得できるところも多い。

それでも、でもね……、と思うの私だ。
トーンアームは、ピュアストレート型でないほうがいい。

いい、というのは、好きだ、という意味、
さらには美しいという意味で書いている。
SMEの3012-R Specialが盤面をトレースする姿をみていると、
この長さ、そして形があってこそ、と思う。

レコードを聴いているとき、盤面をじーっと眺めているわけではない。
目に入るのは、カートリッジを盤面に降ろすときとあげるときぐらいであっても、
美しいと感じられる形であってほしい。

そんなことよりも、音のほうが重要だろう、といわれるのはわかっている。
それでも──、である。

Date: 5月 31st, 2024
Cate: SME, アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(SME 3012-R Special・その2)

SMEのトーンアームなら、
3012-R Specialよりもひとつ前のモデル、
3012 Series IIのほうが優秀という声があるのは知っている。

3012-R Specialは妥協のトーンアームだという人がいるのも知っている。

私は3012 Series IIは使ったことがない。
3012-R Specialよりも優秀なのかもしれない──、と思いつつも、
トーンアームとしての完成度の高さでみたら、やはり3012-R Specialだと私は思っている。

特にユニバーサルトーンアームとしての完成度は、3012-R Specialが上だと言い切る。

SMEのトーンアームとしての特徴であるナイフエッジ。
構造的にもラテラルバランスがきちんととれていて、その性能(感度)を発揮する。

3012-R Specialはラテラルバランスがとりやすい。
カートリッジをつけ替えて、ゼロバランスをとり、ラテラルバランスをとり、針圧をかける。
それからトーンアームの高さやインサイドフォースキャンセラーを調整する。

これらを手早くきちんとやれるのか。
そういうことを含めてのバランスのよさということで、3012-R Specialを私はとるし、
だからこそユニバーサルトーンアームとして唯一の存在とも思っている。

しかも私の目には、3012 Series IIよりも3012-R Specialが美しくみえる。
優雅ともいいたい。

今回ガラードの301との組合せをながめていて、
プレーヤーキャビネットが光をどこまでも吸収するような黒に仕上げられていたら──、
そんなことを想像していた。

目に映るのは、301と3012-R Specialとカートリッジ、そしてレコードのみ。

Date: 5月 29th, 2024
Cate: SME, アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(SME 3012-R Special・その1)

5月26日の野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会でのアナログプレーヤーは、
別項で書いているようにガラードの301にトーンアームはSMEの3012-R Special、
カートリッジはEMTのTSD15をアダプターを介して取りつけた。

昇圧トランス、ヘッドアンプは使わずに、
マランツのModel 7のPhono端子に直接挿している。
そのためシステム全体では逆相になっている。

このことも別項で書いているが、
東京に来て最初に買ったオーディオ機器が、3012-R Specialである。
当時、限定ということだったので、とにかく、このトーンアームだけは手に入れなければ──、
そのおもいだけで手にしたモノだ。

ステレオサウンドの試聴室でも、3012-R Proがリファレンストーンアームだった。

だからというわけではないが、今回、ひさしぶりに3012-R Specialに触れて、
やっぱり使いやすいトーンアームだな、よく出来たトーンアームだな、
3012-R Specialこそがユニバーサルトーンアームだな、
そんなことを思っていた。

それにレコードをかけている時も、盤面の上に弧を描いていく3012-R Specialは、
やっぱり美しい、とも思っていた。

Date: 4月 25th, 2024
Cate: アナログディスク再生, 世代

アナログディスク再生の一歩目(その6)

高二の時に手に入れたオルトフォンのMC20MKIIと、
オーディオクラフトのヘッドシェル、AS4PLの組合せは、
私にとっての本格的なアナログディスク再生の一歩目と、
いまふりかえってみても、そういえる。

とはいっても、この時、プレーヤーは国産のダイレクトドライヴの普及クラスのモノだった。
もちろん、その上、つまりグレードアップを考えてたりはしていても、
そうそう簡単に、はっきりとグレードアップというかたちとなると、
高校生のアルバイトとこづかいでどうにかできるわけではなかった。

あれこれ、次のステップは──、そんなことを毎日のように思っていた。
あの頃の、ひとつの目標はマイクロの糸ドライヴだった。
RX5000+RY5500に、トーンアームにはオーディオクラフトのAC3000MC、
この組合せが目標だった。

あくまでも目標であって、現実的には、その下のモデルあたりとなるわけだが、
それだってすぐに手が届くわけではなかった。

マイクロの糸ドライヴ型はたしかに目標であったけれど、
同時に、いつかはEMTというおもいもずっと持っていた。

930stを、いつか手に入れる。
そんなことをおもっている日々が続いていた。
そこに登場したのが、トーレンスの“Reference”だった。

ステレオサウンド 56号の瀬川先生の文章に触れた者、
その時代に読んできた者にとっては、リファレンスは衝撃だったはずだ。

私には、そうとうに大きい衝撃だったし、
別項で触れているように、瀬川先生の熊本に来られた時に、
その音をかなりの時間を聴くことができた。

うちのめされた、とは、この時のことだった。

Date: 6月 27th, 2023
Cate: アナログディスク再生, 老い

アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その15)

今回のOTOTENだけのことではないのだが、
気になることがあった。

トーンアームのインサイドフォースキャンセラーのオモリについてだ。
SMEのトーンアームのように糸の先にオモリをつけたタイプの場合、
なにかの拍子に、このオモリが揺れてしまうことがある。

このことに無頓着な人が少なくないように、昔から感じている。
今回のOTOTENでもあった。

私が座っているところからもはっきりとわかるくらいにオモリが揺れている。
気にしないのか──、
そんなふうに眺めていた。

音に影響しないのであれば、オモリが揺れていても気にしなければいいのだが、
このタイプのインサイドフォースキャンセラーをもつトーンアームを使っている人は、
自分でオモリを意図的に揺らしてみて、その音の違いを確認してみたらいい。

Date: 12月 17th, 2022
Cate: アナログディスク再生, 世代

アナログディスク再生の一歩目(その5)

アナログプレーヤーを構成する部品のなかで、カートリッジは交換が簡単に行える。
オーディオマニアならば、カートリッジを複数個持っている人は大勢いる。

いまは、カートリッジはこれだけです、という人でも、
そこにたどりつくまでにはいくつものカートリッジを使ってきたはずだ。

けれどトーンアームとなるとどうだろうか。
トーンアームの比較試聴をしたことがある人は、それほど多くないはずだ。
まして若い世代となると、トーンアームの比較試聴をやったことのある人は、
もっともっと少なくなる。

同じカートリッジであってもプレーヤーシステムがかわれば、音はかわる。
プレーヤーシステム全体の比較試聴をしたことのある人は、そこそこいよう。
けれどトーンアームをつけ替えても比較試聴となると、どうだろうか。

私はステレオサウンドで働いていたから、トーンアームの比較試聴の機会にめぐまれた。
けれどそうでなかったら、どれだけのトーンアームの試聴ができただろうか。

昨晩のaudio sharingの忘年会で、私より若い世代の人との話で、
やはりトーンアームのこのことが話題になった。

カートリッジとターンテーブルはそのままでトーンアームの比較試聴の機会はない──、
そうだろうと思いながら聞くだけしかできなかった。

そういう機会を、いまのところつくることもできないし、
ここに行けばトーンアームの比較試聴ができるよ、というところはあるのだろうか。
私は知らない。

Date: 11月 27th, 2022
Cate: アナログディスク再生, 老い

アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その14)

その3)で、
2018年のインターナショナルオーディオショウで見たアナログプレーヤーのことを書いている。

聴いた、としないのは、聴く以前の製品であったからだ。
(その3)でも触れているが、このアナログプレーヤーで再生すると、
ウーファーが見たことのないくらい前後にフラフラする。

CD全盛時代になってからは、こういうことは基本的になくなったが、
アナログディスク全盛時代では、ウーファーのフラつきはあった。

アナログプレーヤーの低域共振によって発生する現象なのだが、
それにしても2018年に見たウーファーのフラつきぶりはひどかった。

このフラつきの発生原因であるアナログプレーヤーの製品名は書かなかった。
オーディオ雑誌でも、新製品紹介記事に登場してからは、
私の知る限りではほとんど登場していない。

今年のインターナショナルオーディオショウでは展示されていなかった。
なので、もう輸入されていないものだと思ってしまったところに、
この製品の値上げの情報が発表になった。

まだ輸入されていたのか? まずそう思った。
型番はそのままなのだから、大きな改良は施されていないと思われる。
とすれば、ウーファーのフラつきは、あのままのはずだ。

世の中には、ウーファーのひどいフラつきを見て、
低音がすごく出ている、と勘違いする人もいるようだ。
そういう人にとっては、このアナログプレーヤーは低音がよく出るということになるのか。

このアナログプレーヤー、MAG-LEV AudioのML1
いまもウーファーはフラつくのだろうか。
いまも変らずだとしたら、輸入元の人たちは、そのことをどう思っているのか。
なんとも思っていないのだとしたら、製品以上に、そのことのほうが問題である。

Date: 11月 3rd, 2022
Cate: アナログディスク再生, 老い

アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その13)

オーディオテクニカのウェブサイト内に、
レコード曲の思い出を求めて〈40代・女性〉」というページがある。
11月1日に公開されている。

40代とおもわれる女性がLPを手にしている写真が使われている。
この写真をどう受けとったらいいのだろうか。

盤面に指先で触れている。

オーディオテクニカは、
「レコード曲の思い出を求めて〈50代・女性〉」と
「レコード曲の思い出を求めて〈50代・男性〉も公開している。
こちらの写真では、盤面の縁を両手でもっている。
盤面には触れていない。

なので、あえて〈40代・女性〉では盤面に触れるような写真を撮り使っているのか。
40代の人ならば、
音楽をおさめたメディアといえばCDだった人のほうが多いのではないのか。

LPを知らない人、触ったことのない人もいよう。
だから扱い方を知らない人がいるのは知っている。

その上で、オーディオテクニカは、こういう写真を使っているのだろうか。
それにしても、こういう取り扱い方を載せてしまうのは、いただけない。

オーディオテクニカが、この写真を使っている理由が知りたい。
何も考えずの、この写真ということはないと思うのだが……。

Date: 11月 2nd, 2022
Cate: アナログディスク再生, 老い

アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その12)

老化と劣化は同じではない。

その11)で触れている例は、どちらなのか。
そのことを考えてほしいし、
インターナショナルオーディオショウという場で、
アナログディスクが頻繁にかけられるようになっていることはけっこうなことだが、
同時に、CD全盛時に、この人たちは大事なことをどこかに置き忘れてきたのか、
それともアナログディスク全盛時代でもそうだったのか──、
そこで鳴っている音に真剣に耳を傾ければ、わかるはずだ。

Date: 10月 28th, 2022
Cate: アナログディスク再生, 老い

アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その11)

今日、インターナショナルオーディオショウに行ってきたわけだが、
とあるブースでアナログディスクがかかっていた。

かなり高価なプレーヤーでの再生だった。
なのに奇妙なノイズがつきまとった音だった。
パチパチというスクラッチノイズではなく、ジョリジョリといった感じのノイズである。

ずっとつきまっているノイズだから、サーフェスノイズなのだろう。
だとしたら、こんなサーフェスノイズは聴いたことがない。
どう調整すれば(どう調整が失敗すれば)、
こういうジョリジョリといったノイズが出せるのか。

盤の状態がおそろしく悪いのかというと、そんな感じではない。

このブースのスタッフは、誰もこのノイズが気にならないのか。
こういうアナログディスク再生が行われていると、
悪い意味での老いということについて、あれこれ考えてしまう。