Archive for category アナログディスク再生

Date: 9月 1st, 2025
Cate: アナログディスク再生

Westrex 10Aのこと(その9)

(その8)圧電型カートリッジについて書いている。
今日、Facebookに、京セラのセラミック圧電型スーパートゥイーターの投稿が表示された。

クラウドファンディングの告知である。
京セラもクラウドファンディングの会社もフォローしていないし、しかも約一週間前の投稿でもある。

(その8)が三日前だから、なんともタイミングがいい。
最後まで、その投稿を読む。

圧電型ということもあったが、
それ以上に京セラのスーパートゥイーターはピストニックモーションではなく、ベンディングウェーヴ型でもあることが、
私にとっては非常に興味をそそられると同時に、
やはり圧電型カートリッジの最新の音を、ぜひ聴いてみたくなる。

今回のクラウドファンディングが成功し、次はカートリッジをやってくれたら──、とちょっとだけ期待したくなる。

Date: 8月 29th, 2025
Cate: アナログディスク再生
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Westrex 10Aのこと(その8)

ウェストレックスの10A、ノイマンのDST。
これらのダイレクトカップリングのカートリッジの音を思い出すと、
私の頭の中に時々浮かぶのは、圧電型カートリッジの可能性である。

私が小さいころ、いわゆるステレオがある家庭は少なかった。
ステレオがない家庭にあるレコード再生のための機器は、
卓上型プレーヤー、ポータブルプレーヤーと呼ばれていたモノである。

フルレンジのスピーカーが搭載されていて、ターンテーブルプラッターは、シングル盤サイズ。
手軽に持ち運びできるように蓋を閉じると持ち手がある。
ケースはプラスティック製。

オーディオマニアからすれば、いい音が出てくるはずはない、と、それで終ってしまうであろう作り。

中学生のころ、中を見たことがある。アンプ部は、小さい基板一枚で構成されていた。
モノーラル再生のみなので、基板にはOPアンプ(それも一つ)だった。

どうみてもイコライザー回路はない。
MM型、MC型といった速度比例型ではなく、振幅比例型の圧電型カートリッジを採用しているため、アンプはこれ以上は無理というほどに簡略化されている。

本格的な音は、鳴ってこないが、声だけは活き活きと鳴っていた、と記憶にある。
当時の圧電型カートリッジは高性能は期待できないレベルとはいえ、この発電方式ならではの良さは少なからずあったのではないのか。
そんなことを時々思うことがある。

そんな時代と現代とでは、いろんな素子が改良されて良いモノになっている。
圧電型カートリッジは、可能性はどうなのか。
圧電型カートリッジは、ダイレクトカップリングに向く。当時は破損しやすかったため、カンチレバーが必要だったが、現代の圧電素子ならば、どうだろうか。

Date: 8月 23rd, 2025
Cate: アナログディスク再生

Westrex 10Aのこと(その7)

ウェストレックスの10A、ノイマンのDSTほどではないが、
オルトフォンのSPUやEMTのTSD15も、ローコンプライアンスのカートリッジである。

軽針圧(ハイコンプライアンス)のカートリッジの音にまったく惹かれないわけではないが、
SPUやEMTの音を聴くと、やっぱりこっちだな、とひとり納得するばかりである。

なぜなのか、と昔から疑問に思っていたし、その理由を考えてもいた。

理屈から言えばハイコンプライアンスの方が、カートリッジの在り方としては正しい、とも言える。
そんなことは昔からわかっていることでも、肝心なのは音であって、
例えば別項「2023年ショウ雑感(その17)」で書いたことも関係してくる。

2023年のインターナショナルオーディオショウでのオルトフォンジャパンのブースで鳴っていた二つの音。

一つはオルトフォン最新・最高級のMC Diamond、
もう一つは、SPU GTE、
どちらも石川さゆりの「天城越え」を鳴らしていた。

どちらの音が、より正しいのか、と問われれば、MC Diamondだ、と答える。
MC Diamondでの音は、スタジオで石川さゆりが歌っているかのように聴こえたからだ。

一方のSPU GTEの音は、石川さゆりがナイトクラブで歌っているかのように、私の耳には聴こえた。

スタジオで録音しているのだから、MC Diamondの聴こえ方の方が正しいとは、私でも思う。
それでも……である。

わかった上で、どちらをとるかである。

Date: 5月 17th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Westrex 10Aのこと(その6)

昔から高音質を謳ったアナログディスクは、いろんなレーベルから発売されていた。
もちろんいまも発売されているわけで、半速カッティングを誇らしげに謳っているところもある。

この半速カッティングだが、私は昔から懐疑的である。
それはアナログをエネルギー伝達、デジタルを信号伝達と捉えているからだ。

もちろんアナログディスクを信号伝達メディアとして捉える考えもあっていいし、
その考えに立てば、半速カッティングは有効な手段となるわけだが、
エネルギー伝達メディアとしてアナログディスクを考えているのであれば、
半速カッティングには、どうしても疑問符がついてまわる。

1980年代、山中先生も半速カッティングには否定的だった。
それだけでなく、倍速カッティングの音を聴いてみたい、とも言われていた。

何をバカなことを──、と思う人もいるし、私のように山道する人もいる。
私も倍速カッティングが可能ならば、その音はぜひとも聴いてみたい。

くり返すが、アナログディスクをエネルギー伝達メディアとして捉えているからの倍速カッティングである。

Date: 5月 16th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Westrex 10Aのこと(その5)

昔から言われているのは、
カートリッジにおいてハイコンプライアンスの方が、
レコードからピックアップする情報量が多い、ということだ。

あるカートリッジの改良版が出た。
以前のモデルよりもハイコンプライアンスになっている。
そういう場合、たいていの評価に、以前のモデルよりも情報量が増えた、とあったりする。

いまもそうだと言える。
ハイコンプライアンスになると情報量が増え、それは良いこととしての評価だし、
そう受け止められてもいる。

でも、本当にハイコンプライアンスになるのは、いいことなのだろうか。
この疑問は、昔から持っている。

十年ほど前にも書いているように、
デジタルは信号伝達、
アナログはエネルギー伝達と考えている。

これは私の考え方、受け止め方であって、
アナログディスクを信号伝達メディアとして再生すること、
そういうアプローチの人がいることに、何か言いたいわけではないし、
そういう考えに立つならば、カートリッジはハイコンプライアンスなのも理解できる。

理解はしても、アナログディスクをエネルギー伝達メディアとして受け止めている私は、
ハイコンプライアンスのカートリッジよりも、
ローコンプライアンスのカートリッジに惹かれる。

ウェストレックスの10Aを聴くと、まさにアナログディスクはエネルギー伝達メディアだと、強く思い込める。

Date: 4月 26th, 2025
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(SME 3012-R Special・その9)

数日前、ヤフオク!で落札した。
今年になってLPは数枚落札していたけれど、オーディオ機器の落札は、これが初めて。

落札したのは、EMTのトーンアーム、929だ。
930st、928、950に搭載されているモデル。
いまさら、なぜ929? と思われるだろう。

929を取り付けるプレーヤーを、いまは持っているわけではない。
私が使うためではなく、あるところの930stのための落札だ。

写真で見ても状態は良さそうだった。必要なパーツの欠品も特にない。
高くなりそうかな、と思っていたけれど、予想していた落札価格よりも低かった。

その929が今日届いた。
アームパイプの仕上げも昔のまま。状態はいい。
いい買い物をした、と実感がわく。

アナログプレーヤー関係のモノは、時には意外なほど高値がつく。
それだけ出しても欲しい人がいるからなのだろうが、
それでも……、とおもうところは、やはり残る。

今年になって私のところにやって来たトーンアームは、929が最初ではなく、
SMEの3012 S/IIがやって来た。

こちらはいくつか欠品のパーツがあるから、ebayで揃えていく。
といっても、パーツが揃って整備しても、使う予定はない。

それでも、いま手元に二本のトーンアームがある。
929は近日中に、行くべきところに行ってしまうけど、
こうやって二本のトーンアームを眺めているだけで、オーディオっていいな、と思える。

Date: 2月 20th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Westrex 10Aのこと(その4)

ノイマンのDSTは、その改良型のDST62も一緒に聴いている。
最初にDSTを聴いた。そして驚いた。
DST62を聴く。
DSTの方が、素晴らしかった。

DST62だけを聴いていたら、
もしくはDST62を最初に聴いていたら、すごい、と驚いていたはず。

けれどDSTを先に聴いてしまった。
この印象はステレオサウンドの試聴室で聴いても、
持ち帰って自分のシステムで聴いても、変らず私はDSTを取る。

今回、ウェストレックスの10Aを聴いた。決して万全な環境で聴いたわけではないが、
ひとつ確信していえるのは、ローコンプライアンスのカートリッジの音に、
私は惹かれる、ということだ。

Date: 2月 16th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Westrex 10Aのこと(その3)

ノイマンのDSTを欲しい、とあの頃、思った。
しかも譲ってもいい、とも言われていた。
安いわけではなかった。すぐに、買います、と言える金額ではなかったけれど、
法外な値段でもなかった。相当無理すれば買える──、そんな金額だった。

買おうかと迷った。けれど買わなかったのは、DSTがカートリッジだからだ。
すでに製造中止になって随分経つ。
針交換のことを考えると、買います、とはなかなか言えない。
あとどれだけの時間、聴けるのか。それもなんとも言えない。

それで結局は諦めた。
それにDSTを聴いた直後だと、なかなかEMTのTSD15で聴く気は起こらない。
そうであってもTSD15以外のカートリッジは、基本使えないわけだから、
これで聴くしかない。

しばらくTSD15で聴いていると、これはこれで素晴らしいカートリッジだと思えてくる。

DSTの音の印象が薄れてきたわけではないが、針交換の心配もないし、
安心して聴くことができるTSD15の音に、ほっとしたところも感じていた。

それでもいつかはDSTというおもいは持ち続けていた。
そのおもいも、四十をこえたあたりから薄れてきた。
そしてメリディアンのULTRA DACでMQAの音を聴いて、相当に薄れていった。

そこに今回のウェストレックスの10Aである。

Date: 2月 11th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Westrex 10Aのこと(その2)

ノイマンのDSTを聴いて、そのすごさに打ちのめされた──、
と書くと、なんと大袈裟な、と思われるだろうが、
それまで聴いてきたカートリッジすべての音が、
少なくともわたしの中では一瞬にして色褪せたのだから、
打ちのめされたは、決して大袈裟でもなんでもない。

次元が違うとは、この音のことを言うのだとも思っていた。
だからというか、DSTよりもすごい音というのが想像できなかったし、
ウェストレックスの10AはDSTよりもすごいとしても、
DST以上を求めても……、という気持も芽生えていた。

10AはDSTよりもすごいんだろうけど、
世の中に完動品の10Aがどれだけあるのか。
それよりもDSTをなんとか手に入れることを考えた方がいい──、
そんなことも考えていて、10Aに関しての興味は薄れていっていた。

DSTの音を聴いてから数年、イケダサウンドラボからIkeda 9が登場した。
針先のほぼ真上に発電コイルを配置する構造のカートリッジは、
それまでサテン、ソノボックス、ビクターなどがあった。
ソノボックスは聴いたことはない。
サテンは一度だけ聴いている。
ビクターの一連のカートリッジは、何度も聴いている。

けれど私が強烈なほど惹かれるのはDSTだった。
Ikeda 9は、どうなのか。
期待は大きかった。

ステレオサウンドの試聴室でも何度も聴いたし、
オーディオテクニカのEMT用のヘッドシェルに取り付けて、
自分のシステムでも聴いた。

執念のカートリッジだと思う。DSTを聴いてなければ買っていただろう。
5g超えの針圧のDST、標準的な針圧で使えるIkeda 9。
後者の方が安心して使える。

どちらもいわゆるダイレクトカップリング型と呼ばれる構造なのに、
音は、大きく違う。
Ikeda 9も、ダイレクトカップリング型らしい良さが感じられる。

なのに、この二つのカートリッジの音の違いは、なんなのだろうか。

Date: 2月 8th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Westrex 10Aのこと(その1)

私がウェストレックスの10Aというカートリッジのことを知ったのは、
ステレオサウンド 46号の「クラフツマンシップの粋」だ。

この頃のステレオサウンドでは、過去の名器を鼎談で取り上げていた。
46号では「フォノカートリッジの名門」で、井上卓也、長島達夫、山中敬三の三氏によって、10Aを含めて、
いくつかのカートリッジ について語られていた。

この記事の最初に登場するのが、ウェストレックスの10Aであり、
こんなカートリッジがあったのか、という驚きが最初にあった。

記事を読めば読むほど、聴いてみたいというおもいは強くなる一方だったけれど、
そんな機会がすぐに訪れることはないだろう、ぐらいのことはわかっていた。

それからしばらくして池田 圭氏の文章にも、10Aのことが登場していた。
そこには、正月だけに聴くカートリッジ、とあった。

そういう存在なのか、と思った。

「フォノカートリッジの名門」には、ノイマンのDSTについても語られている。
アメリカのウェストレックス、ドイツのノイマン。
どちらもカッターヘッドを作っている会社であり、
原盤検聴用としてのカートリッジということは、
モニタースピーカーならぬモニターカートリッジなのか、という受け止め方もしていた。

DSTは幸いなことにハタチごろにステレオサウンドの試聴室でも、
自分のシステムでもじっくり聴く機会があった。

DSTとDST62の比較試聴も、時間をかけて行えた。

この時のDSTの音も、ほんとうにすごかった。
すごい、という言葉が、真っ先に出てくる。
隔絶したすごさの音を聴いてしまうと、すごい、としか言いようがない。

そのDSTよりも10Aはすごい──、
ある人は、そう言っていた。

Date: 1月 19th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Wilson Benesch Circle(その3)

もう数年以上前のことになる。
あるレコード店にいた。個人経営の店で、アナログディスクだけでなく、
カートリッジやシェルリード線など、周辺アクセサリーも取り扱っていたので、
こだわりのレコード店ということなのだろう。

ここでシェルリード線の比較試聴が行われたのだが、
ひとつ気になったことがあった。

オーディオ機器はラックに収められていて、
上段にプレーヤー、その下の段にプリメインアンプ。

一般的な設置なのだが、アンプやプレーヤーの電源コードが、
プレーヤーからの出力ケーブルとくっつくように結線されていた。

こういうケーブルの取り回しの理由を聞いてみると、
プレーヤーからのケーブルはシールドされていて、スピーカーケーブルはシールドされていないから、
電源コードはスピーカーケーブルから遠ざけて、
プレーヤーからのケーブルにくっつくようにした、とのことだった。

人によって考え方は違うことはわかっていても、
こうも違うのか、と少し驚いたものだった。

Date: 1月 18th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Wilson Benesch Circle(その2)

ウィルソン・ベネッシュのCircleを、最高のアナログプレーヤーとは思っていないけど、
気に入っているプレーヤーの一つだ。

オーディオ雑誌に載っていたモノクロ写真では、
石臼にしか見えなくて、カッコいいプレーヤーとは、まったく思わなかった。

実物を目にすると、石臼のイメージが払拭されるわけではないが、
これはこれでいいな、と思えてきた。
音を聴くと、これでいい、に変ってくる。

登場した頃は、それほど高価なプレーヤーではなかった。
いまは、どのくらいの価格になっているのだろうか。

自分のモノとして眺めていると、なかなかよく考えられていると感心もするが、
一つだけ首を傾げたくなるのは、電源コードの位置である。

トーンアームにいちばん近いところから出ている。
なぜ、ここなの? と思わざるをえない。

石臼的のところを優先するとなると、
信号ケーブルを含めて、こかにまとめるしかないのはわからなくはないが、
それにしても微小信号の出力のすぐ近くにAC 100Vのラインがあるのは、
納得がいかない。

このことに関連したことで思い出すことがある。

Date: 12月 18th, 2024
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(オイルのこと)

オイルと無縁ではいられないのが、アナログディスク再生である。
トーレンスの101 Limitedを使っていた時、
オイルはスクアランを使っていた。

深海鮫の肝油を磁気処理したというモノで、
トライアソシエイツという会社から、TR30という型番で発売されていた。

重宝していた。
けれどトライアソシエイツという会社がなくなり、手に入らなくなった。

代わりのオイルはなにかないものか、と検索すると、
スクアランオイルを製品化したものが、いくつか見つかる。

オーディオ用としても、スクアランオイルをベースにしたものが出ている。
でも、TR30とは、何か違うような感じがして、
手を出すまでには行かなかった。

とはいえ、なんらかのオイルが必要になってきたので、
再び検索してみて、一つ見つけた。
スクアランオイルなのだが、TR30に近い、
もしくはほとんど同じかもしれない、
そんな感じのものが見つかった。

昨日の、トーレンスのTD124に使ったのも、
このスクアランオイルである。

TR30よりも高価になっているけど、それでもいい。
このスクアランオイルで、大丈夫のようだ。

Date: 12月 17th, 2024
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(SME 3012-R Special・その8)

(その7)でふれているトーレンスのTD124のメンテナンスに行ってきた。
メンテナンスといってもやったことは、クリーニングと注油ぐらい。

これだけのことだが、回転はよりスムーズになっただけでなく、
立ち上りも早くなったし、スイッチを切った後の回転も長くなった。

特別なことはやっていない。
基本的なことをやってきただけだ。
それでも、何の問題もなく回転するTD124のプラッターを眺めていると、
メカニズムの基本に忠実に作られたプレーヤーだからこそ、
特別なことを施さなくとも、きちんと動作するようになる。

そのことを感じていた。

Date: 12月 1st, 2024
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(SME 3012-R Special・その7)

東京に来て、最初に買ったオーディオ機器はSMEの3012-R Specialだったことは、
すでに何度か書いているし、ステレオサウンド 62号の編集後記にも書いている。

しばらく3012-R Specialだけが、手持ちのオーディオ機器だった。
そのころ、ターンテーブルはどれを組み合わせる、
そのことばかり考えていた。

3012-R Specialを思い切って買うきっかけは、
瀬川先生による新製品紹介記事であり、
そこではマイクロのSX8000との組合せだった。

なので、音だけで選ぶならSX8000なのだが、
そう簡単に買えるモノではないし、それにカッコイイわけではなかった。

3012-R Specialにふさわしいのは、どれなのか。
ガラードの301なのか、トーレンスのTD124なのか。

どちらにしようか、かなり真剣に考えてもいた。
心はかなりTD124に傾いていた。
TD124にロングアームは、さほど似合わないのはわかっていても、
TD124単体のまとまりの良さは、なんとも魅力的だった。

そんなことを先輩編集者のSさんと話していたら、
TD124の程度の良いものがあるよ、と教えてくれた。
かなり心は動いた。

結局、トーレンスの101 Limitedを買ってしまい、
TD124を自分のモノとすることはなかった。

それでもTD124を、どこかで見かけるたびに、
やっぱりいいなぁ、と思う。

いま私のところにはTD224がある。これでいい。
TD124への憧れのようなものは、ほぼ消えていった。

そんなところへ、昨日、TD124が動かないから、来てみてほしい、と連絡があった。

今日、行ってきた。
電源が入らないTD124がある。

電源から辿って一つひとつチェックしていって、
割とすんなり動くようになった。
気になる異音もない。

とはいっても完全な状態とはいえないので、
後日また手入れすることになるが、
静かにまわるターンテーブルプラッターを眺めていると、
あらためてTD124はいいなぁ、と思っていた。

今回のTD124は、124IIではないから、
製造されてけっこうな年月が経っているにも関わらず、
動き始めると何事もなかったように、
年月など関係ないように動作しているのをみると、
基本がしっかりしたモノは、すごいとしか言いようがない。

TD224を、まじめにメンテナンスしよう。