Westrex 10Aのこと(その5)
昔から言われているのは、
カートリッジにおいてハイコンプライアンスの方が、
レコードからピックアップする情報量が多い、ということだ。
あるカートリッジの改良版が出た。
以前のモデルよりもハイコンプライアンスになっている。
そういう場合、たいていの評価に、以前のモデルよりも情報量が増えた、とあったりする。
いまもそうだと言える。
ハイコンプライアンスになると情報量が増え、それは良いこととしての評価だし、
そう受け止められてもいる。
でも、本当にハイコンプライアンスになるのは、いいことなのだろうか。
この疑問は、昔から持っている。
十年ほど前にも書いているように、
デジタルは信号伝達、
アナログはエネルギー伝達と考えている。
これは私の考え方、受け止め方であって、
アナログディスクを信号伝達メディアとして再生すること、
そういうアプローチの人がいることに、何か言いたいわけではないし、
そういう考えに立つならば、カートリッジはハイコンプライアンスなのも理解できる。
理解はしても、アナログディスクをエネルギー伝達メディアとして受け止めている私は、
ハイコンプライアンスのカートリッジよりも、
ローコンプライアンスのカートリッジに惹かれる。
ウェストレックスの10Aを聴くと、まさにアナログディスクはエネルギー伝達メディアだと、強く思い込める。