Archive for category 素材

Date: 10月 19th, 2016
Cate: 素材

素材考(柔のモノ・その7)

よくよく思い出してみれば、マランツのCD65の五年前に、
KEFのModel 303というスピーカーシステムを聴いている。

Model 303は、当時のKEFの製品ラインナップでローコストの部類であった。
イギリス製ということで、一本59,000円していたものの、
Model 303の数年後、598スピーカーの狂騒とは実に対照的なつくりのスピーカーシステムだった。

エンクロージュアはプラスチック製、
しかも四周をスポンジ系のグリルで囲んでいる。
ローコストなつくりに徹底しているともいえる。

瀬川先生は「およそ無愛想な小っぽけなスピーカー」と表現されていた。
でも、その音は、バランスのいい音で、
この点においても、日本の598スピーカーとは対照的であった。

ステレオサウンド 54号の特集では、
黒田恭一、菅野沖彦、瀬川冬樹の三氏ともに特選とされている。

オーディオマニアは、プラスチックよりも金属や木のほうが優れていると思いがちだ。
木にしてもチップボードよりも合板、合板よりもムクの板、と思う。
私だってその傾向がある。

けれど製造する側の見方は、違うところもある。
同じクォリティのモノを生産していく。
そのためには安定した素材の方が、製品の価格帯によっては有効といえる。

Model 303のウーファーの振動板はグリルを外して確認したわけではないが、
ベクストレンのはずだ。天然素材の紙ではない。

そういう視点でみていけば、Model 303はバラツキの非常に少ないスピーカーシステムであったはずだ。
Model 303の音はCD65以前に聴いて関心していた──、にも関わらずCD65の時には忘れてしまっていた。
それでついこれで金属シャーシーだったら……」と洩らしてしまい、
井上先生に、そうではない、と返されてしまったわけだ。

Date: 9月 30th, 2016
Cate: 素材

素材考(柔のモノ・その6)

私が初めて買ったCDプレーヤーは、マランツのCD65である。
CDが登場してから三年目にして、やっと自分で購入した。

それ以前もCDプレーヤーは使っていたが、借りものだった。
CDプレーヤーは1982年の登場からすべての機種を聴いていた。
まだまだ急速に良くなっていくオーディオ機器だけに、
無理していいモノ(高額なモノ)に手を出すのは控えていた。

とはいえ最新のCDプレーヤーの音を、手軽な価格帯で聴けるモデルということで、CD65を選んだ。
1985年にはCD34も登場している。

CD34は59,800円、CD65は64,800円だった。
人気があったのはCD34のほうだったが、素直に音が拡がるよさがあった。
いわゆる聴感上のS/N比がいいのは、CD65だった。

CD65は手に持つと、軽い。
CD34の方がずしっと重く感じられる。
比較すると、CD65はメカニズムを含めて、軽量に仕上げられている。
シャーシーは、いわゆるプラスチックだった。

井上先生の試聴が終った後に、
「これで金属シャーシーだったら……」といったところ、
必ずしも金属が優れていて、プラスチックが悪いとは限らない、と返された。

プラスチックというけれど、いまではさまざまな種類があって、
物性のコントロールがかなりできるようになっているから、
プラスチックをあなどってはいけない、ということだった。

いまから30年以上の前のことを、ふと思い出した。

Date: 9月 28th, 2016
Cate: 素材

素材考(柔のモノ・その5)

テンピュールから低反発スポンジの枕が登場したのは、
もうどのくらい前なのだろうか。
その後、各社から低反発スポンジ(ウレタンフォーム)の枕が、いくつも登場した。

低反発ウレタンフォームに初めて触れたとき、
いままでになかった感触だと思った。
ソルボセインよりも気持ちいい、と感じた。

今年5月、ある展示会に枕を見かけた。
緑のジェル状の素材を使ったもので、触ってみた。
なかなか面白い感触だった。

この枕から少し離れたところに、Technogel(テクノジェル)の枕が展示してあった。
こちらは青。
ジェルの形状も違うが、感触は大きくは違わないだろうと思いながら、
ジェルの上に直接手を乗せてみた。

どちらも展示用のモデルで、直接手でジェルに触れられるようになっている。
Technogelに触れて、驚いた。
手のひらが気持ちいい、といっているような感じだったからだ。

私がこれまで触ってきた人工的な素材の中で、初めて気持いいと感じたものだった。
他にもっと気持いいと感じる人工的な素材はあるのかもしれないが、
私が触ってきた範囲では、Technogelが抜群に気持ちいい。

Technogelのマットレスも展示してあった。
デモ用だから横になることもできたが、やらなかった。
Technogelのマットレスの感触を体験してしまうと、
買ってしまいそうになるからだった。

今月、またTechnogelに触れる機会があった。
やはり気持いいと手のひらが感じている。

気持よさを味わいながら、今回はこれはオーディオに使える素材かもしれない。
そう思うようになっていた。

自然素材を積極的に使うのは、
感触が手に馴染んでいる、ということもある。
自然の、いい素材は触って気持ちいい。

ならばTechnogelの気持いいも、音の上でいい方向に働いてくれそうな予感がある。

Date: 9月 24th, 2016
Cate: 素材

素材考(柔のモノ・その4)

ステレオサウンド 60号に菅野先生のリスニングルームが載っている。
それ以降のステレオサウンドにも何度か載っている。

手元にある方は並べて見較べると、ある変化に気づかれるだろう。
変化はひとつだけではないのでヒントを書いておくと、
スピーカー・エンクロージュアの上に注目してほしい。

それはただ乗っているだけではない。
間には柔のモノが使われている、とだけ書いておこう。

菅野先生から、いろいろ試してみた、という話を聞いている。
そしてあるモノに落ち着いた、ということだった。

ゴムやフェルトなど、そういったモノを使うとき、
何を選ぶのか。

私は基本的には自然の素材をまず試してみるようにしている。
天然ゴムもそうだし、フェルトも使えば、木や紙もある。
その後に人工のモノを試すようにしている。

1980年に入ってからか、ソルボセインという素材が登場した。
優れた振動吸収性を持つ、というこの素材は人工筋肉として開発された、ということだった。
青いシートで売られていた。

いまではかなりポピュラーな素材のひとつである。
もちろんずっと以前に試してみた。

この手のものは、どこかにどう使うかということの方が重要であり、
ただ単に敷いてみた、ぐらいの使い方では、はっきりとしたことは何も言えない。

ソルボセインを使っていて気になったのは、触った感じだった。
あまりいい感じはしなかった。
自然素材のいいところは触った感じの良さもある。

結局のところ(といっても私が試した範囲ではあるが)、
おおむね触っていい感じのするものが、音でも好結果につながるところがある。
必ずしも絶対とはいえないけれど、
スピーカーやアナログプレーヤーにおいては、その傾向が顕著であると感じる。

ソルボセイン以降もさまざまな新素材が登場している。
消えていったものもある。
それらすべてを触っているわけではないし、試してみたわけでもないが、
最近、興味深い素材があるのを知った。

Technogel(テクノジェル)という素材だ。

Date: 9月 22nd, 2016
Cate: 素材

素材考(柔のモノ・その3)

セレッションのSL600のエンクロージュアの材質は、
軽くて高剛性のアルミハニカムである。

セレッションの技術者は、最初はがっちりとしたつくりにした。
両側板、天板、底板をがっちりと接着していた。
ところが、意に反して、冴えない音がしたそうである。
最終的には一個所、ハニカム素材の接合面に緩衝材をいれている。

SL600とSL6の違いはエンクロージュアの材質だけでなく、
専用スタンドも違う。

SL6用は木製だったが、SL600用は鉄製で支柱のパイプの中には軽石に似たものがつめられている。
クリフストーンスタンドと呼ばれていた。

エンクロージュアの高剛性化にともなってスタンドの剛性も高くなったわけだが、
スタンドの天板とSL600の底板との間に、
付属してくる粘着性のあるゴムを挿入するようになっている。

最初は私もそのゴムを使っていたが、
しばらくしてあれこれいろんな素材を試してみた。
大半はゴムよりも硬いもの、剛性のあるものだった。
結局は、付属のゴムに戻ってしまった。

ハニカム素材をスピーカーに積極的に、そして最初に導入したのはダイヤトーンだった。
ウーファーの振動板に採用している。
ダイヤトーンは振動板には積極的に新素材を採用してきた。
ウーファーだけでなく、ドーム型ユニットの振動板にもである。

そのダイヤトーンは、エンクロージュアの材質は、昔ながらの木である。
なぜかここに新素材を採用してはこなかった。
試作品ではやっていたのかもしれない。はっりきとしたことはわからない。

セレッションは反対にエンクロージュアには高剛性のハニカム素材を採用していたが、
ウーファーの振動板は高分子系のもので高剛性とはいえない。
トゥイーターの振動板は銅。金属だからその分剛性は高いけれど、
金属の中では剛性が高いとはいえない銅である。

高剛性でガタつきのないモノは理想なのかもしれない。
でもそのための高剛性とは、いったいどれだけの高剛性なのか。
もっともっと剛性を高めていければ、そしてガタつきを極限までなくしていければ、
ゴムやフェルトなどの柔らかい(曖昧な)素材を必要としなくなるのかもしれないが、
現状では、どこかにそういったモノを使ったほうが、好結果が得られることが多い。

Date: 9月 21st, 2016
Cate: 素材

素材考(柔のモノ・その2)

SAECのSBX3を使ったプレーヤーシステムを組むとなると、
ターンテーブルシートも、SAECの金属製のSS300ということになる。
ここにゴム製のシートを使ったのでは、全体のポリシーが統一されなくなる。

ゴム系の素材だけでなく、フェルトなど柔らかい素材を追求する理由は、
メーカーによって多少違うところはあるだろうが、支点の明確化のはずだ。

この理屈は理解できるし、賛同もできるが、
実際にはアナログプレーヤーは振動を扱い、振動から無縁ではいられないモノであり、
完全にゴム、フェルトなどの柔らかい素材を排除して、
理屈通りにうまくいくものだろうか、という疑問は、そのころからあった。

トーレンスのReferenceも金属の塊といえるプレーヤーだが、
アームベースには木を使っているし、アイアングレインなども使って、
振動をうまくコントロールしているように見受けられる。
Referenceのターンテーブルシートは厚手のフェルトである。

メーカーが実験室で、熱心なオーディオマニアがリスニングルームで、
いわば試作機としてあれこれ試してみるのはいいし、
そこから得られた成果をメーカーは実際の製品に反映してくれればいい。

オーディオガラのプレーヤーキャビネットは、
想像するにかなり扱い難い性質のモノであったはずだ。

個人のリスニングルームは実験室ではない。
そこにおいて、うまい結果を得るには、妥協点というか、
ゴムやフェルトの柔らかい素材をうまく使っていくしかない、と考える。

高剛性をつきつめていくと、
最終的にはレコードの材質が塩化ビニールであることにぶちあたる。
素材として、塩化ビニールは柔のモノである。

Date: 9月 21st, 2016
Cate: 素材

素材考(柔のモノ・その1)

剛性追求の波は、1970年代後半からアナログプレーヤーに関しても始まっていた。
SAECのダブルナイフエッジという構造と実際の製品としてのトーンアームは、
剛性追求のモノといえた。

SAECは1981年ごろに、プレーヤーキャビネットSBX3を出した。
材質は高剛性重金属とあるだけ。
見た目は、完全に金属の塊りであり、
このプレーヤーキャビネットに似合うトーンアームはSAECの製品以外にはない、
という感じさえ漂っていた。

キャビネットの手前上部にはスリットがある。
このスリットに立方体のブロックがはめこんであり、位置を左右に移動できる。
たしか共振点をコントロールするためのものだったはずだ。

SBX3の重量は使用するターンテーブルによって取付け穴の大きさが変るため、
40〜45kgとなっていた。

トーホーからは砲金製のキャビネットも出ていた。
ビクターのターンテーブル用がTV30、デンオンのターンテーブル用がTC20だった。

SAECのSBX3以前にも、金属の塊といえるキャビネットはあった。
東京・吉祥寺のオーディオガラの鉄製のモノがそうだった。
SBX3より、もっと武骨な金属の塊だった。
重量は70kgくらいあったはずだ。

このころゴム系の柔らかい素材は曖昧につながるということで、
一部のメーカーでは排除する、もしくは極力使わない動きがあった。

サテンのカートリッジは、そのことを早くから謳っていた。
サテン独自の発電機構によるMCカートリッジにはゴム系のダンパーは使われていない。

Date: 9月 13th, 2016
Cate: 素材

羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その15)

別項「wearable audio(その1)」で書いたこと。
あの日、菅野先生のリスニングルームで私の腕の肌が感じていたことを思いだしている。

もしあの時、体を強ばらせる聴き方をしていたら、
きっと腕の肌は、音を感じること、音の波動を感じることはなかったように思う。

あの日、露出していたのは腕だけだった。
それこそ究極的には全裸で聴いていたら……、そんなことを想像もしていた。

仮に、あの日の菅野先生の音を自分の音とできたとして、
自分のリスニングルームで全裸で聴くかといえば、なかなかできないだろう。

独り暮しなのだから、気兼ねすることなく、
外から覗かれなければ全裸で聴いてもかまわないし、特に問題はない。
間違いなく、全裸で聴いた方が、より音楽を体感できる、という確信はある。

それでも……、である。
いくら独りでの行為とはいえ、眼前で音楽が演奏されている以上、
服はきちんと着ていたい、と思う。

ならば、服を着ることで、全裸よりもよりよく体感できるようにすることを考えるべきである。
そこで思い出すのが触覚コンタクトレンズである。

Date: 4月 11th, 2016
Cate: 素材

羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その14)

聴覚も触覚だとすれば、音楽の聴こえ方は、聴き手の身体状態と関係してくることになる。
たとえば前のめりになって聴くことがある。
そのとき身体(からだ)の状態はどうだろうか。

身体をこわばらせていないだろうか。
手はどうだろうか。握りこぶしをつくっていないだろうか。

こわばらせるは、強ばらせる、と書く。
文字通り、身体に力がはいっていると肌の感覚はどう変化するだろうか。

力を抜いた状態と強ばらせた状態で、肌の、何かの刺戟に対する反応は果して同じだろうか。

握りこぶしをつくっていたことに気づいた人は、
ためしに手のひらを広げてみたらどうだろうか。

それだけでも音の聴こえ方は変ってくる。
スピーカーから出てくる音は変化していなくとも、
聴き手の身体状態のあり方が変れば、音の受けとめ方が変ってくるのだから、
音が、結果として変って聴こえても不思議ではない。

音の聴き方をたずねられることが増えてきた。
凝視するような聴き方はしないこと、と答えている。

凝視すれば眉間にしわができる。
力を抜いた状態ならば眉間にしわなどできない。

音を耳だけで聴いていると思い込んでいる人には、
こんなことをいってもまるで通じない。

けれど、あきらかに音楽を受けとめているのは、触覚である。

昨夜、あるフルート奏者も同じことを話されていた。
音楽の聴き手側になったときに、身体に力がはいった状態と抜いた状態とでは、
音楽の聴こえ方が違ってくる、ということだった。

Date: 3月 31st, 2016
Cate: 素材

羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その13)

人間には視覚と触覚の二感しかない──、
このことを念頭において、
ステレオサウンドに以前掲載されていた菅野沖彦・保柳健、二氏の対談を読み返すと、
ここにも出て来ていたのか、といまごろ気づくことがある。

47号(つまり連載一回目)に、それは出てくる。
マイクロフォンの話題が出た後で、菅野先生が述べられている。
     *
菅野 マイクロフォンというのは、ある程度のものであれば、あとは使い方で変化させられます。これは自分の触覚器官の代行ですからね。
     *
マイクロフォンに耳にたとえられるし、耳の延長ともいわれることが多い。
ならば聴覚器官の代行となるのに、菅野先生は「触覚器官」といわれている。

これが、のちの音触につながっていくのだろう。

Date: 2月 21st, 2016
Cate: 素材

羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その12)

KK塾、三回目、
講師の石黒浩氏がモダリティの数について話された。

人間の認識において重要なことは、モダリティの数であり、
少なくても多すぎてもいけないということだった。

その数は二つだ。
二つのモダリティが満たされていると、人の認識は本物と錯覚するとのこと。
実例として、ある人の声を後方からスピーカーで鳴らす。
声の再生だけではモダリティは一でしかない。

ここにもう一つ、別のモダリティを足す。
例えば、その声の主がつけている香水の匂いを、声といっしょにかがせる。
声と匂い、モダリティが二つになる。

すると本人が真後ろにいて話しかけていると錯覚する。
ではもうひとつモダリティを加えると「不気味の谷」の問題が発生するため、逆効果になるそうだ。

二つのモダリティが、足りない情報を人間の脳が勝手に想像(補充)するから、らしい。
この話を聞いていて、以前川崎先生が話されていたことを思い出していた。

この項の(その4)と(その5)に書いたことだ。

五感ではなく二感だ、ということ。
人間には視覚と触覚の、ふたつの感覚しかない、ということである。

まったく同じことをゲーテも語っている。
     *
視覚は最も高尚な感覚である。他の四つの感覚は接触の器官を通じてのみわれわれに教える。即ちわれわれは接触によって聞き、味わい、かぎ、触れるのである。視覚はしかし無限に高い位置にあり、物質以上に純化され、精神の能力に近づいている。
(ゲーテ格言集より)
     *
石黒浩氏の実験における二つのモダリティ(声と匂い)は、
どちらも触覚・接触の器官を通じての感覚である。

Date: 10月 26th, 2015
Cate: 素材

羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その11)

音について語られた文章は、以前はオーディオ雑誌で読むのがほとんどだった。
少なくともオーディオ評論家と呼ばれている人たちの、しかも編集者の目を経た文章であった。

いまは違う。
インターネットには、あのころとは比較にならないほど多くの音について語られた文章が、溢れている。
どんな人が書いているのか、まったくわからないものもある。
それらの大半は、編集者という第三者の目を経ることなく、公開されている。

それらすべてをオーディオ評論と呼べるのなら、
オーディオ評論が溢れているし、これからも減ることはないであろう。

Facebook、twitterといったSNSをやっていると、
特に見ようと思っていなくとも、音について語られた文章が目に入る。

昔は個人の音の印象は仲間内だけであった。
いまはそうではない。
その人をまったく知らない人の目にも留る。

そうなると、仲間内で好きに語っていたときと同じ感覚で音について語っていいものだろうか。
「アマチュアだから、いいじゃないか」、そう言い切れるだろうか。

そうやって書かれた文章を読むと、耳のいい悪いではなく、聴き方の巧みさは必ずしも同じではないことを思うし、
鍛えられた耳とそうでない耳との違いについて考えてしまう。

自己流の聴き方の怖さも感じる。
「アマチュアだから、好きに聴いていいだろう」、たしかにそうである。
けれど仲間内から一歩でも出て、音について語るのであれば、そのままではまずい。

東京では、今年のオーディオのショウは終ってしまった。
去年もそうだったが、ショウがあると、音の触見本の必要性をいつもより強く感じる。

Date: 5月 25th, 2015
Cate: 素材

素材考(発電ゴムという素材・その3)

リコーの発電ゴムがどれだけの性能なのかは、はっきりとしたことはなにもわかっていない。
リコーの発表資料にあるとおりの性能であるならば、センサーとしての性能も期待できる。

別項の「電子制御という夢」、ここでもセンサーとして期待している。
発電効率が高いのであれば、細かくしてトーンアームの各部に装着できる。
ゴムという素材なのだから、いままでのセンサーでは拾えなかった情報もピックアップできるように思える。

さらにこれまではアームパイプ内部の状態を知ることは難しかったように思う。
発電ゴムならば、パイプ内部にも簡単に装着できるし、トーンアームの実効質量にもほとんど影響を与えないだろう。

さらにさらにカートリッジ内部のセンサーとしても使える。
ダンパーの一部としての利用、そしてカンチレバーのセンサーとしても使えるのではないだろうか。

電子制御トーンアーム。
おそらくどこも新たに開発しようというところはないだろう。
新しい電子制御トーンアーム開発の環境は、その昔よりもずっと整っているけれど……。

Date: 5月 24th, 2015
Cate: 素材

素材考(発電ゴムという素材・その2)

発電ゴムということは、その逆もまたできるはずである。
つまり音声信号を発電ゴムに流せば、振動するはず。
発音ゴムでもあるはずだ。

ゴムなのだから、叩いても共振はしないはずだ。
それに動作だか一手もピストニックモーションでの振動による変換ではないから、
振動板としての剛性の高さは必要としないはず。
つまりベンディングウェーヴ型のスピーカーの素材として使えるはずだ。

オーディオではカートリッジとスピーカーに使えるはずだと多くの人が考える。
他に使えるところはないのだろうか。

これは私の直感なのだが、トランスに応用できるのではないかと考えている。
トランスは鉄芯(コア)にコイルを巻いている。
一次側(入力側)のコイルに信号が流れると、コアに磁束の流れが生じる。
この磁束の流れは二次側(出力側)のコイルに電流を発生させる。

電気→磁気→電気という変換がトランスの中で発生している。
発電ゴムは、この磁気のところを振動に置き換えられるのではないか。
電気→振動→電気というトランスが可能になるのではないか。

トランスは一次側と二次側のコイルの巻線比を変えることで、昇圧(降圧)ができる。
発電ゴムの柔軟性が、コイルの巻線に相当するのであれば、
柔軟性の異る発電ゴムが登場したら、コアを必要としないトランスが可能になるような気がする。

Date: 5月 24th, 2015
Cate: 素材

素材考(発電ゴムという素材・その1)

5月18日にリコーが発電ゴムを発表している。
いわゆる圧電素子のひとつとなる。

これまでの圧電素子といえば、リンク先にもあるようにセラミックと高分子樹脂があり、
それぞれに長所と短所がある。
今回の発電ゴムがリコーの発表通りのモノならば、それぞれの長所を併せ持つ圧電素子となる。

圧電といえば、昔のローコストのカーリトッジは圧電型があった。
セラミック型、クリスタル型と呼ばれていたカートリッジである。

MM型、MC型、MT型が速度比例型なのに対し、
圧電型カートリッジは振幅(変位)比例型であるため、
イコライザーアンプは原則として不要になる。
しかも出力電圧も大きいため、
ポータブル型のスピーカー内蔵のプレーヤーには、圧電型カートリッジが搭載され、
アンプは小出力のパワーアンプのみという簡単な構成になっていた。

そのせいか、これまで圧電型カートリッジはローコスト向きのように受けとめられてきたところがある。
けれど、一部のあいだでは、圧電型の可能性を評価する声もあった。

とはいえ圧電素子そのものが改良されることが必須であり、
リコーの発電ゴム以前にも、圧電素子はいくつも登場してきている。

それでもオーディオの世界で圧電素子が採用される事はなかったが、
今回の発電ゴムは可能性があるように思える。

当然カートリッジへの採用がまず考えられる。
しかもゴムだから、この圧電素子自体がダンパーを兼ねることになる。
コイルも磁気回路もいらない。
設計の自由度は高くなる。

これまでのカートリッジとは違う音を開いてくれる可能性もある。