素材考(カーボンか鉄、塗装の下にあるもの・その1)
1980年に、イタリアのフレームメーカー、チネリから登場したLaser。
ニューヨーク近代美術館の永久所蔵されるほどに美しいフレームである。
私が自転車に興味をもった1990年代にはすでに製造中止になっていた。
製造されていたとしても、なかなか高価なフレームだけに買えなかったけれど……。
とにかく憧れのフレームである。
2012年だったか、限定でわずかに復刻された。
けっこうな値段だったが、これだけのフレームだから、その値段も当然と思えた。
2013年にLaser Miaが登場した。
オリジナルのLaserはスチール製だったのを、Miaではカーボン製になった。
オリジナルの造形は、ほぼそのままである。
フロントフォークの形状が少し違うくらいである。
なのに、スチール製のLaserとカーボン製のLaser Miaとでは、
どこかが違う、とつねに感じる。
フロントフォークの違いからくるものではなく、フレーム全体に、
Laser Miaはシャープさを感じないのだ。
寸分違わぬ、というのは本当だろう。
なのに、この印象の違いはどこからくるのか。
フレームは、どちらも同じ色で塗装してある。
それでもスチール製のLaserにはシャープさを感じ、
カーボン製のLaser Miaには輪郭の甘さを感じるのは、なぜなのか、とずっと考えている。
塗装されていても、その下の材質の違いは感じとれるものなのか。