世代とオーディオ(その16)
エアチェックという言葉が、昔よく使われていた。
(その12)で書いているように、
本来は放送局からの電波が正しく送信されているのかをチェックするから、
エアチェックなのであって、主に放送に携わっている人たちが使う言葉だった。
それがFM放送を受信して録音することに使われるようになっていった。
私が高校生だったころ、エアチェックという言葉は、
オーディオマニアでなくとも使っていた。
電波を受信して録音することをエアチェックといっていたということは、
TV放送をビデオデッキで録画するのも、エアチェックであるわけだ。
(その13)で、瀬川先生の別冊FMfanでの発言を引用している。
*
最後に一つ、お話しておきたいのは、この前、「週刊朝日」だったかで明治時代の写真を日本中から集めたことがありましたよね。
要するに、家の中に眠っている写真を何でもいいから、日本中から集めて。そうしたら、しまっていた人でさえ気がつかなかったようなすばらしい資料がたくさん集まったわけですね。
今エア・チェックでやっていることって言うのはそれに似ていると思うんですよ。一人一人は何気なく自分が聴きたいから、あるいは、そういう意志もなしに、習慣でテープのボタンを押してしまって、録っちゃったみたいなこともある。これだけFM放送がはんらんしてくると、それぞれ、みんな録る番組が違うと思うんですよ。しかし、どこかにみんな焦点が合っている。これから十年、二十年たって、あるいは五十年くらいたって、かつてこんな番組があったのか、誰かこれ持ってないかなと言うときに、ちゃんと残っていたら、これは大変な資料になると思うんです。
エア・チェックには楽しさの他に、そうした意義があると思う。そこに、エア・チェックのスゴサみたいなものをぼくは強く感じるわけです。
*
1976年のことだから、家庭用ビデオデッキの普及はまだ先のことだった。
1980年代に入り、ビデオデッキが急速に普及してくる。
まだまだテープが高価だったから、
録画しては消去して、また録画・再生という使い方がよくされていた。
それでも、昔録画したテープを保管している人もいる。
そうやって残っていったテープからの動画が、いまYouTubeにアップロードされている。
まさに瀬川先生が語られていた《エア・チェックのスゴサ》が、
インターネットのおそろしいほどの普及によって、この時代、強く感じられるようになった。