Archive for category 新製品

Date: 7月 22nd, 2017
Cate: 新製品

新製品(TANNOY Legacy Series・その18)

《伝統のあるオーディオメーカーって止まってしまっているところが多いでしょう。クラシカルなものに淫しているように思う。》

田中一光氏のことばだ。
1993年ステレオサウンド別冊「JBLのすべて」の中で語られている。

S9500のデザインについて語られたあとに、こういわれている。
どのオーディオメーカーとはいわれていない。

私は、タンノイのことだと思った。
タンノイのPrestigeシリーズのことだと思った。
いまもそう思っている。

タンノイのPrestigeシリーズのすべてのモデルがそうだとはいわないが、
《クラシカルなものに淫している》、そういう雰囲気が全体にある。

《クラシカルなものに淫している》、
うまい表現だと思ったし、
こういう表現は自分には無理だな、ともその時思った。

Prestigeシリーズを見て感じていたけれど、
うまく言葉にできずに、ノドの奥にひっかかったままだったものこそが、
《クラシカルに淫している》だった。

クラシカルなデザインが、悪いわけではない。
クラシカルなものに淫していると感じさせてしまうPrestigeシリーズ。

Prestigeシリーズこそタンノイらしい、とおもう人がいる。
だが私は、クラシカルなものに淫しているPrestigeシリーズのデザインは、
タンノイの本来的な音にそぐわない、と感じている人間である。

それともPrestigeシリーズの音も、
クラシカルなものに淫しているのだろうか。
いぶし銀もいまでは、クラシカルなものに淫した音の代名詞となってしまうのか。

Prestigeシリーズの音をすべて聴いているわけではないが、
そうではないと思っている。

Prestigeシリーズ以外のスピーカーシステムもあった(ある)のはもちろん知っている。
でも、どこかPrestigeシリーズに比べると……、というところを感じてしまう。

そこにようやくクラシカルなものに淫していないシリーズが登場した。
Prestigeシリーズに比べると……、と思わずにすむモノが、
Legacyシリーズとして、41年前のArden、Cheviot、Eatonが現代のモデルとして復活する。

Date: 6月 30th, 2017
Cate: 新製品

新製品(TANNOY Legacy Series・その17)

「タンノイのPrestigeシリーズの鍵は、いわば付加価値でしょ」
こんなことをすぐに言い出す人が少なからずいる。

なにかというと、すぐに「付加価値が」という。
こういう人とはオーディオの話はできない、と思っている。

Prestigeシリーズの鍵と鍵穴は、付加価値といえるのか。
システム全体からすれば、そこにかかっているコストはそれほど高いものではないだろう。
けれど、まったくコストがかかっていないわけではない。
少なからぬコストをかけて、タンノイならではのいぶし銀といえる音を、
大きく疎外している存在を、付加価値といえるのか。

付加価値ならぬ負加価値というのならば、同意する。
何の疑いも持たずに聴ける人にとっては、付加価値なのだろう。

しかも、あの鍵は、共通していたはずだ。
少なくとも同じ型番のPrestigeシリーズならば、鍵の使いまわしができる。
スピーカー本体のシリアルナンバーと鍵が対になって一台一台鍵が違い、
鍵にもナンバーがふられている──、
文字通りの鍵としての機能をもっていたら、付加価値というのもわからぬわけではない。

Prestigeシリーズについて、少々きついことを書いているが、
Prestigeシリーズはまじめにやっていると思っている。

内蔵ネットワークにしても、GRF Memoryもそうだし、
それ以降はしばらくはプリント基板による配線だったのを、
ワイヤー配線に切り替えているし、全機種というわけではないが、
アルニコマグネットも復活させている。

それからユニットフレームのアースをとれるようにしたり、とか、
そう、オーディオマニア心をくすぐっている。

GRF Memoryから始まったPrestigeシリーズは成功を収めている。
これからも手を抜くことがなければ、順調なのだろうに、
今年(2017年)、タンノイはLegacyシリーズを出してきた。

なぜ今年なのか、と、まず考えた。
Ardenらが登場したのは1976年である。
去年(2016年)にLegacyシリーズの復活というのであれば、40年目ということになる。

でも今年なのだ。
41年目なのだ。
何か、別の理由があるのか、と考えた。

40年以上むかし、50年前、60年前……、
70年前の1947年、デュアルコンセントリックが誕生している。

Date: 6月 30th, 2017
Cate: 新製品

新製品(TANNOY Legacy Series・その16)

いぶし銀という、音の表現がある。

いぶし銀そのもののではないが、
ほぼ同じ意味合いの表現が、五味先生の「西方の音」に出てくる。
     ※
アコースティックにせよ、ハーマン・カードンにせよ、マランツも同様、アメリカの製品だ。刺激的に鳴りすぎる。極言すれば、音楽ではなく音のレンジが鳴っている。それが私にあきたらなかった。英国のはそうではなく音楽がきこえる。音を銀でいぶしたような「教養のある音」とむかしは形容していたが、繊細で、ピアニッシモの時にも楽器の輪郭が一つ一つ鮮明で、フォルテになれば決してどぎつくない、全合奏音がつよく、しかもふうわり無限の空間に広がる……そんな鳴り方をしてきた。わが家ではそうだ。かいつまんでそれを、音のかたちがいいと私はいい、アコースティックにあきたらなかった。トランジスターへの不信よりは、アメリカ好みへの不信のせいかも知れない。
     ※
《音を銀でいぶしたような》、まさしくいぶし銀である。
そして「教養のある音」が、いぶし銀と表現できる音といえる。

おそらく、いぶし銀という表現はだんだんと使われなくなっていくだろうし、
たとえ使われたとしても通用しなくなってもいくであろう。

そのいぶし銀のような音の代表が、タンノイの音でもある。
もちろんうまく鳴らした時のタンノイの音のことである。
ヘタに鳴らしたタンノイの音が、いぶし銀なわけではない。

Prestigeシリーズに共通するサランネットの鍵穴。
実は、この鍵穴がいぶし銀といえる音を大きく疎外している。

ステレオサウンドの試聴室で、井上先生がある指示を出された。
すぐにできることであり、すぐに元に戻せることである。

タンノイのサランネットの鍵穴に、ある細工をした。
井上先生のこの手の指示通りにやった音には、いつも驚かされる。
この時もそうだった。

誇張なしに、「たったこれだけで……」と思う。
これならば丁寧に鳴らして、ながくつきあうことでいぶし銀といえる音が出せるはず、
そう思わせる音の片鱗が鳴ってきた。

別の言い方をすれば、それだけサランネットについている鍵穴が、
ひどく音を濁していることを確認したに過ぎない。

1988年に、Canterburyが出てきた。
ひさびさのアルニコマグネットの同軸型ユニットを搭載したモデルだ。

多少気になる点はあるものの、タンノイ的装飾も受け入れやすくなった。
心が動いた、欲しいと思ったのに買うまでの決心がつかなかったのは、
鍵穴が、このスピーカーにもあったからだ。

本気で鳴らそうと思ったタンノイのスピーカーに、
穢く音を濁す鍵穴がついている。
ならばサランネットを外して聴けば……、といわれそうだが、
私にとってタンノイのスピーカーはサランネットをつけた状態で聴くものであり、
この点に関しては絶対に譲れない。

なのに鍵穴が……、なのだ。

Date: 6月 30th, 2017
Cate: 新製品

新製品(TANNOY Legacy Series・その15)

GRF Memoryが登場するまでのタンノイのイメージは、
オートグラフとABCシリーズ(その中でもArdenとEaton)によってつくられていたからこそ、
GRF Memoryのタンノイ的装飾は、好意的に受け止めることはできなかった。

マニア心をくすぐる──、
そんな表現が使われていた、と記憶している。
けれど、そのマニア心とは、オーディオマニア心なのだろうか、とも疑問に感じることもある。

たとえばサランネットに設けられた鍵穴。
GRF Memoryでは鍵を使ってサランネットを着脱するようになった。

ここに魅力を感じる人もいれば、無関心の人もいるし、
私のように、ないほうがいいのに……、という人もいる。

出っ張りすぎたひさしとうつる天板とサランネットの鍵穴。
私にとって、このふたつはGRF Memoryにおけるタンノイ的装飾の象徴といえる。

オートグラフにもABCシリーズにも、タンノイ的装飾は感じなかった。
なかったところに、いきなりあらわれたものだから、よけいに気になっていた。

タンノイのGRF Memoryにかける意気込みのようなものは頭で理解できても、
心情的にも、直感でも受け入れ難いアピアランスであった。

けれどGRF Memoryは成功した。
続いてEdinbargh、Stirlingが登場する。
いまに続くPrestigeシリーズの始まり、といえるだろう。

でも、ほんとうにタンノイ的装飾のスピーカー、
Prestigeシリーズがタンノイを代表するスピーカーシステムといえるのだろうか。

Date: 6月 27th, 2017
Cate: 新製品

新製品(TANNOY Legacy Series・その14)

タンノイのGRF Memoryの外形寸法は、というと、W80.0×H110.048.0×Dcm。
耽能居 S385Aより横幅が10cm広く、奥行きが2cm短い。

けれどGRF Memoryは天板がひさし的である。
けっこう出っ張っている、と写真を見て、そう感じた。
なので、タンノイ的装飾と感じる。

この点は、菅野先生も、
ステレオサウンド 60号「現代に甦るタンノイ・スピリット〝GRF MEMORY〟登場」で述べられている。
     *
 こんなわけで、大金を投じて買った高級スピーカーシステムにふさわしい、所有の充足感とでもいった気分を満してくれるものは今後、ますます少なくなりそうな気配である。こうした背景の中で登場した今回の〝ガイ・R・ファウンテン・メモリー〟は、たしかに目を引く存在感のあるシステムだと思う。かといって、芸術的な工芸品と呼ぶには、いささか、プロポーション、仕上げ感覚に注文をつけたい点もあるし、やや不自然ともいえる意識の出過ぎに、わざとらしさも感じられる。本物はもっと、巧まざる自然の姿勢から生まれなければいけないとは思うのだが、それにしても、現時点でこれだけのものを作り上げたタンイの情熱と力には敬意を表したい。
 SRMシリーズやバッキンガムがスタジオモニターとして作られたのに対し、このGRFメモリーは純粋にホームユースの高級システムとして作られたものであることは明白である。しかし、モニターとはいいながら、SRMやバッキンガムのエンクロージュアのつくりも、間違いなく現代第一級のレベルにあることを認めるし、このGRFメモリーには現代版としては、特級の折紙をつけざるを得ない。これだけ手のこんだエンクロージュアは、条件つきとはいえ、その美しさと風格を含めれば、少なくとも80年代の新製品では他にはないものだから。
 では、このGRFメモリーについて、少し詳しく述べることにしよう。横幅も充分にある縦型プロポーションのシステムの仕上げはオイルフィニッシュのウォルナットであり、背面などの構造材には25ミリ厚の硬質パーティクルボードが使われている。トップボードがひさしのように張り出しているのが大きな特長といえるが、私の個人的なバランス感覚では、やや出っ張り過ぎのように感じてならない。
     *
この出っ張りすぎのひさし(天板)がなかったら、
GRF Memoryと耽能居 S385Aの横幅は、ほぼ同じになるであろう。

エンクロージュアの形状といい、プロポーションといい、
あまりにも、このふたつのエンクロージュアは近い、といわざるをえない。

GRF Memoryから装飾的要素を外してみれば、耽能居 S385Aとどれだけ違うだろうか。
バスレフポートは違うといえるが、ここまで同じになってしまったのは、本当に偶然なのだろうか。

GRF Memoryの登場時、
ArdenはArundelに、BerkleyはBalmpralになってしまっていたし、
ユニットも同時にアルニコからフェライトマグネット変更になっていたこともあって、
ものたりなさ、ある種のさびしさのようなものを感じていた。
それだけにGRF Memoryの登場は歓迎すべきことだと思うし、
菅野先生の60号での文章も、そういう意図が感じられる。

でも、耽能居 S385Aの存在を知る者には、素直にそうなれないのだ。

Date: 6月 27th, 2017
Cate: 新製品

新製品(TANNOY Legacy Series・その13)

タンノイだけに限らない。
海外の著名なブランドのエンクロージュアだけを国産にして、
できるだけ安く仕上げよう、という考えた人は昔はけっこういた。

ユニットが単体で販売されていたし、
エンクロージュア専門メーカーもいくつもあった。
関税も高かったころの話だ。

そのころからエンクロージュアはオリジナルに限る、といわれてきた。
「五味オーディオ教室」にもそう書いてあったし、
瀬川先生もそういわれていた。

タンノイのオートグラフは途中から輸入元ティアック製造のエンクロージュアに切り替った。
いまも名器として扱われているのは、イギリスで製造したエンクロージュア、
ようするにオリジナル・エンクロージュアのオートグラフである。

JBLもアルテックもヴァイタヴォックスなどもそうである。
オリジナル・エンクロージュアに限る、といえる。

それでもオリジナル・エンクロージュアだけが最善のモノと考えているわけではない。
タンノイのユニットとネットワークをそのまま使用し、
エンクロージュアを独自の設計としたロックウッド、
12インチ口径のデュアルコンセントリックを、
フロントショートホーン付きコーナー型エンクロージュアにおさめたステレオサウンド企画のコーネッタ、
録音の現場で評価の高いMANLEYのML10など、
成功例はたしかにある。

アルテックでも、UREIという例があるし、
JBLのユニットはウェストレークがそうである。

そのブランドのエンクロージュアをそのままコピーするのではなく、
独自のエンクロージュアを手がけることで成功する。
ならば、そういうブランドが日本から出てきても不思議ではない。

サワダオーディオの耽能居は聴けなかった。
成功例なのかはどうかはなんともいえないが、
ステレオサウンドの広告を見ては、いちど聴いてみたい、と思っていた。

そのサワダオーディ耽能居 S385Aの外形寸法はW70.0×H110.0×D50.0cm、
エンクロージュアの形状は立方体ではなく、
フロントバッフルの両サイドを乞うほうにかけて斜めに切り落としたかっこうで、
真上からみれば、台形の下に長方形を置いたかたちになっている。

単に四角い箱をつくるよりも、手のかかる形状になっていた。

Date: 6月 27th, 2017
Cate: 新製品

新製品(TANNOY Legacy Series・その12)

1981年秋に登場したGRF Memoryは、
ハーマンインターナショナル傘下時代のタンノイのラインナップ、
つまりABCシリーズの不満、もしくはものたりなさをおぼえていた人たちからは、
好意をもって迎えられた、といえる。

でも私は、ある疑問を感じていた。
1970年代後半のステレオサウンドの広告をきちんとみていた人なら、
サワダオーディオの名に記憶があるだろう。

堺市・沢田電機工業所内にあったサワダオーディオは、
ウエスギアンプの代理店でもあったし、サワダオーディオ・ブランドで、
スピーカーシステムを出してもいた。

当時のサワダオーディオの広告には、
「東方の音 地上で聴ける最上の音。」というコピーがあった。

その下にスピーカーの写真があった。
スピーカーの手前には、小さな女の子がLPのダブルジャケットを広げている。

サワダオーディオのスピーカーシステムは、耽能居という。
タンノイの当て字だ。

耽能居は、三種類あった。
耽能居 S295A、耽能居 S315A、耽能居 S385Aである。
エンクロージュアだけも売られていた。

耽能居 S385Aの形状、それに寸法が、
GRF Memoryとほぼ同じなのだ。
耽能居 S385Aが数年前に登場しているのだから、
GRF Memoryが耽能居 S385Aにそっくりといえるわけだ。

耽能居 S385Aにタンノイ的装飾を施したのがGRF Memory、
そういってもいいように感じた。

Date: 6月 14th, 2017
Cate: 新製品

新製品(Backes & Müller・その5)

ステレオサウンド 117号の特集の座談会で、
山中先生はBM30の音について、
《これまでのドイツのスピーカーに聴かれたカチッとしたところに、しなやかさも加わっているのが魅力のポイント》
と語られている。

45号の新製品紹介のページで語られていることと基本的に同じである。
117号の座談会を読むと、
山中先生も45号でB&Mのスピーカーをシステムを試聴されていることを忘れられているようだが、
それでも音の印象に関しては、変っていないところが興味深い。

117号では、井上先生による新製品紹介の記事も載っている。
     *
 同社がアクティヴスピーカー用に開発したPHASEIIプリアンプを専用コードで接続した時の音は、ゆったりとした余裕がありながら、一種独特な雰囲気で整然と音楽が鳴るキャラクターがある。いかにも、MFB型システムといった誇張感が感じられないことが、このシステムの最大の特徴である。レベル調整によるバランス変化は顕著で、リモコンでの操作に違和感が少ないのは気持ちが良い。
 プリアンプを本誌試聴室でリファレンスに使用しているアキュフェーズC290にすると音の性格が一変して、シャープで見通しがよく、音場感情報が豊かな、ほどよくコントラストが付いた整然とした見事な音に変わかる。しかし、サウンドバランスの調整は必要で、低域から中低域のレベルアップでバランスは修正され、質的に高い見事な音が楽しめる。使い手に、かなりの経験と力量を要求するシステムである。
     *
ここから読みとれるのも、
B&Mのスピーカーシステムの基本的な音の傾向は、変っていないということ。
一貫した音のポリシーが、B&Mのスピーカーははっきりと流れていることがわかる。

ということは、現在のB&Mのスピーカーシステムもそうである、と思っていいだろう。
現在のフラッグシップモデルであるLine 100の構成は、Monitor 5ともBM30とも大きく違う。
MFB採用は同じであるが、
MFBの技術はMonitor 5の時代よりも、BM30の時代よりも進歩しているはずである。

何も知らない人に、Monitor 5、BM30、Line 100を見せたら、
同じメーカーのスピーカーシステムとは思わないだろう。
それでも、黙って音を聴かせたら、同じメーカーのスピーカーシステムと感じるのではないだろうか。

だからこそLine 100を聴いてみたい。

Date: 4月 24th, 2017
Cate: 新製品

新製品(TANNOY Legacy Series・その11)

I believe in intuition. I think that’s the difference between a designer and an engineer – I make a distinction between engineers and engineering designers. An engineering design is just as creative as any sort of design.
     *
ジャック・ハウ(Jack Howe)が、こういっている。
これがいつごろのことなのかまでは、いまのところわからない。

engineering designers、engineering designといった言葉が、
ここにはある。

これを言っていた人が、
《私は、私の全才能をこのスピーカーで世に問うつもりだ》ともいってデザインしたのが、
1976年登場のABCシリーズである。

今回のタンノイのタンノイのLegacy Series、
なぜ”Legacy”なのかは、ここに理由があるような気もする。

Date: 3月 24th, 2017
Cate: 新製品

新製品(TANNOY Legacy Series・その10)

今回のタンノイのLegacy Series、
その中でもEatonに、私は強く関心をよせているけれど、
音を聴く前から、ひとつ不満なのはユニットのフレームの形状である。

15インチ、12インチと共通のフレーム形状になっている。
つまり円である。

1976年登場のABCシリーズのEaton、
つまりタンノイの10インチ口径の同軸型ユニットのフレームの形状を知っている、
もっといえば馴染んでいる者にとっては、なにかいいたくなってしまう。

10インチの同軸型ユニットのフレームは、これじゃダメなんだ。
写真を見ては、心でそうつぶやいている。

ステレオサウンド 40号掲載のタンノイの広告。
そこには、こうある。
《私は、私の全才能をこのスピーカーで世に問うつもりだ。》

《私》とは、ジャック・ハウ(Jack Howe)である。
といっても、当時の私は、ジャック・ハウについて何も知らなかった。

いまもそんなに知っているとはいえない。
インターネットで調べられるくらいのことしか知らない。

広告には《イギリス王立工業デザイナー会員。国際的なデザイナーとして有名である。》、
そしてジャック・ハウの横顔のイラストがあるだけだった。

由緒正しい人がデザインしたのか、
そのころの私は、そのぐらいの認識しかなかった。

Date: 3月 23rd, 2017
Cate: 新製品

新製品(Backes & Müller・その4)

ステレオサウンド 117号の特集の座談会がこんなふうになってしまったのは、
B&Mの輸入元バルコムのいうことをそのまま信用してしまった、というところだろう。

これは別項で書いている技術用語の乱れと根は同じように感じる。
ほんのわずかな手間を惜しむ。
そのことをずっと続けてきたことが、誌面に残っていく。

しかも117号の座談会は、一年の締括りともいえるコンポーネンツ・オブ・ザ・イヤーである。
賞である。
その賞の権威(ほんとうにあるといえるのかはここでは問わない)を、
自ら貶めることをステレオサウンド編集部は知らず知らずにやっている、ともいえよう。

45号と117号のあいだでも、こういうことが起る。
ステレオサウンドは昨年、創刊50周年を迎えた。
200号をこえている。

こういうことは、これから先、もっと起る、といえる。
少なくともいまのままでは。

45号と117号を読んでいて感じたのは、
そして書きたかったことは他にある。

B&Mの音についてだ。
45号では、こんなふうに紹介されている。
     *
井上 このスピーカーは音を聴いてみてびっくりしましたね。かなりしなやかで滑らかな音が出てきた。こういう音を出すドイツのスピーカーを聴くのは初めてです。
山中 今までのドイツのスピーカーの音というと、硬質な音というのが基調になっていたと思いますが、この場合はもっとやわらかい、あたたかい雰囲気をもった音といっていいですね。やはりバイエルン地方の風土によるものかも知れません。
井上 音のクォリティの高さも相当なものですね。こういうしなやかな音はなかなか出ない。かなり注目できる製品だと思います。
     *
45号でのMonitor 5と117号でのBM30とでは、
スピーカーシステムとしての在り方が、MFBという共通項はあるものの、
ある意味大きく変っている、ともいえる。

それでも音に関しては一貫しているように読みとれる。

Date: 3月 23rd, 2017
Cate: 新製品

新製品(Backes & Müller・その3)

BM30のMFBについても、朝沼、長島の二氏が、
全帯域にわたってMFBがかけられたスピーカーは初めてだ、というふうに語られている。

あまり例がないのは確かだが、くり返すがB&MはMonitor 5で実現している。
B&Mは1975年創立だそうだから、
Monitor 5以前にも実現していた可能性もある。

いまのところはっきりといえるのは、1977年のMonitor 5もそうである、ということ。
ただMonitor 5のウーファーは四発使われているが、
ひとつひとつのウーファーユニットに専用アンプが用意されていたのかどうかは、
ステレオサウンド 45号の記事からは読みとれない。

45号は1977年12月発売の号、
117号は1995年12月発売の号。
まる十八年経っているわけだが、
編集部の誰一人、45号にMonitor 5が登場していることを思い出さなかったのだろうか。

人は忘れるものである。
ど忘れということだってある。
座談会の時点では、そういうことだったのかもしれない。

けれど座談会を収録したテープを文字起しして、まとめる過程で、
B&Mが過去に紹介されたことがなかったのか、
全帯域にMFBがかけられたモデルが過去になかったのか、
いっさい調べなかったのだろう。

だから117号の記事になってしまっている。

Monitor 5がステレオサウンドでなく、
他のオーディオ雑誌に紹介されただけというのならば、まだ理解できないこともないが、
十八年前のステレオサウンドにしっかりと載っている。

私はステレオサウンドの編集者は、
ステレオサウンドの愛読者であるべき、という認識をもっている。
現実はそうではないようだ。

Date: 3月 23rd, 2017
Cate: 新製品

新製品(Backes & Müller・その2)

Backes & Müller(B&M)のスピーカーは、
ステレオサウンド 117号の表紙を飾っている。
BM30というモデルで、’95-’96コンポーネンツ・オブ・ザ・イヤー賞を受賞している。

横幅は41.0cmながら、高さは178.0cmというプロポーションをもち、
ウーファーは25cm口径、ミッドバスは20cm口径、ミッドハイは13cm口径のコーン型を、
それぞれ二発を使用し、トゥイーターは3.7cm口径、スーパートゥイーターは1.9cm口径のドーム型。
5ウェイ8スピーカーという構成である。

八つのユニットには、それぞれ専用のパワーアンプが、
つまり八台のパワーアンプが搭載されている。

ウーファー、ミッドバス、ミッドハイはユニットを並列接続してやれば……、
と考えがちだが、ここまで徹底したマルチアンプ構成にしているのは、
すべてのユニットに対しMFBをかけるためのはずだ。

ステレオサウンド 45号の新製品紹介の記事でも、そのことにはふれられていた。
3ウェイで、すべてのユニットにMFBがかけられている、と。

通常MFBはウーファーだけにかけられる。
インフィニティのIRSシリーズでも、MFBはウーファーにのみ採用されている。
それをB&Mは1970年代後半ごろから、全帯域(すべてのユニット)にかけている。

ステレオサウンド 117号の座談会も、そのことから始まっている。
ただ、この座談会がおかしいのは、B&Mが日本に紹介されるのは初めてだと書いてあることだ。

菅野、山中、朝沼の三氏が、このB&Mを知らなかった、と発言されている。
でも……、と思う。

確かに45号ではB&Mとして紹介されている。
117号ではバックス&ミューラーとして紹介されている。

輸入元もシュリロ貿易からバルコムへと替っている。
それでも日本に紹介されるのは初めて、といってしまうのは、どうだろうか。

それはB&Wがバウワース&ウィルキンス、
B&Oがバング&オルフセンとして紹介されたら、日本に初めて紹介された、というのと同じことである。

Date: 3月 22nd, 2017
Cate: 新製品

新製品(Backes & Müller・その1)

ドイツのスタジオモニターは、昔からアンプ内蔵のモノが多い。
シーメンスのオイロフォン(Europhon)もそうだし、
K+Hのスピーカーもそうである。

ドイツにBackes & Müller(B&M)というメーカーがある。
1970年代後半ごろ、バイエルン地方に創立されたメーカーで、
日本にはシュリロ貿易からMonitor 5というモデルが輸入された。
1977年ごろである。

Monitor 5もドイツのスタジオモニターの例にもれずアンプを内蔵していて、
マルチアンプ仕様となっている。
さらに当時としては、他のアンプ内蔵型から一歩進んで、MFBをかけていた。

ウーファーは13cm口径コーン型を四発、
スコーカーは4.1cm口径、トゥイーターは2.7cm口径の、どちらもソフトドーム型。

ユニット構成からわかるようにそれほど大きなサイズではない。
中型のモニターシステムといったところだが、
アンプ内蔵、MFB採用ということもあって、価格は50万円(一本)していた。

ステレオサウンド 45号の新製品紹介に登場している。
ドイツ製のスピーカーとは思えないしなやかな音を出す、という評価だった。

聴いてみたい、と思ったが、機会はなかった。
ステレオサウンドで働いていたときも聴く機会はなかった。

先日、facebookに、なつかしいスピーカーのことが話題になっていた。
K+HのO92である。
それでB&Mのこと、Monitor 5のことを思い出した。

いまもあるのだろうか、と検索してみたら、すんなり見つかった。
PrimeシリーズとLineシリーズのスピーカーを、いまもつくっている。
創立40周年をむかえた、とある。

日本に輸入元がながいことなかっただけのようだ。
だから新製品とはいかないけれど、
ひさしぶりに見るB&Mのスピーカーシステムは、Monitor 5とはずいぶん違っていた。

そっけない外観のMonitor 5のイメージは、まったくない。
それでもアンプ内蔵であるのは同じだ。

そして現代の製品らしく、FPGA(field-programmable gate array)を使い信号処理を行っている。
かなりおもしろそうなスピーカーだと感じたので、
あえて新製品として、ここで書いている。

特にLine 100の存在感は、すごい。
Line 100だけ、専用のウェブサイトが用意されている。
私が言葉で説明するよりも、まずリンク先のサイトをみてほしい。

Date: 3月 17th, 2017
Cate: 新製品

新製品(TANNOY Legacy Series・その9)

Eatonは、聴く前から欲しい、と思っていた。
理由は、瀬川先生のフルレンジから発展する4ウェイのシステム構築案を読んでいたからだ。

このブログでも何度か書いているので詳しくは書かないが、
フルレンジから始めて、次にトゥイーターをつけて2ウェイにして、その次はウーファーを足して3ウェイ、
最後にミッドハイ(JBLの175DLH)を加えての発展型4ウェイである。

もちろん一度にすべてのユニットを揃えて4ウェイを構成してもいいけれど、
学生の私にとってフルレンジから、というのはそれだけで魅力的にうつった。

オーディオのグレードアップには無駄が生ずるものだ。
けれど、この案ならば無駄がない。
スピーカーというものを理解するのにも、いい教材となるはず、と思っていた。

Eatonから始めれば、フルレンジといっても同軸型2ウェイだから、
周波数レンジ的にも不満はでない。
つぎにウーファーをたして3ウェイにして、最後にスーパートゥイーターをつければ、
瀬川先生の4ウェイ案と同じになる。

人によってはウーファーよりもトゥイーターを先に足すだろうが、
私はウーファーを先に足すタイプである。

4343のミッドバスの2121とHPD295Aはどちらも10インチ口径。
4343のミッドバスとミッドハイを同軸型ユニットに受け持たせることで、
ここのスピーカーユニットが距離的に離れることもある程度抑えられる。

Eatonという完成したシステムが中核になるわけだから、
自作にスピーカーにおこりがちな独りよがりなバランスになる危険性も少なくなるはず。

同口径のユニット搭載のStirlingでも、同じことはやれる、といえばやれるけれど、
Eatonとはエンクロージュアのデザインの違いがあることが大きい。
特に現在のStirlingは、こういう使い方には完全に向かないデザインになっている。