Archive for category 新製品

Date: 9月 18th, 2018
Cate: 新製品

新製品(QUADのヘッドフォン)

コンデンサー型スピーカーといえば、
イギリスのQUAD、日本のスタックスという時代があった。

そういう時代にオーディオに関心をもった私にとって、
スタックスはコンデンサー型ヘッドフォンに積極的であるのに、
QUADは……、と思ったことがあった。

QUADの創業は1935年、スタックスは1938年。
スタックスはSTAXで、アルファベット四文字、QUAFDもそうだ。

イギリスと日本、
どちらも島国である。

創業した年が近く、いくつかの共通点があり、どちらもコンデンサー型スピーカーを作ってきた。
けれどQUADには、これまでヘッドフォンはなかった。

QUADの創業者のピーター・ウォーカーの方針だったのだろう。
それでもオーディオマニアとして、QUADのESLを鳴らしてきた者として、
それに修理が必要とはいえESL63 Proをいまも所有している私としては、
出てこないだろう、とわかっていても、どこかでQUADのヘッドフォンの登場、
もちろんコンデンサー型ヘッドフォンの登場を待ち望んでいた。

いまのQUADにピーター・ウォーカーは当然いない。
息子のロス・ウォーカーもいない(はずだ)。

いまのQUADは、昔のQUADではない──、
そんな言い方は確かにできる。
それでもQUADはQUADだ、ということを、
今回のQUAD初のヘッドフォンERA1の記事を読んで、そう感じた。

心が騒ぐからだ。

ここまで書いて、もう一度当該記事を読み返した。
コンデンサー型ではない。
コンデンサー型の技術を活かしたダイナミック型である。

わずか15分くらいのワクワクだった。
それでも、このワクワクは楽しかった。
「QUADがコンデンサー型ヘッドフォンを開発」は、いつか実現するのかもしれない。

その時は、ほんとうのワクワクがあるのだろうか。

Date: 4月 30th, 2018
Cate: 新製品

新製品(その17)

オーディオマニアを自認している人であっても、
製品にまったく興味がない、という人もいるようだ。

どんな理由から、新製品に興味がないのだろうか。
新製品に興味をもたない人人からすれば、
新製品につねにワクワクしている人は、なぜ、あんなに興味をもてるのか──、
そう見られている。

ステレオサウンド 58号、
「タンノイ研究(4)」で菅野先生が最後に、こう書かれている。
     *
 タンノイをこうしてずっと聴いていると、タンノイの世界に入り切り、しばらく他の音を聴きたくないという気持になる。聴いている音に満足させられているという証拠であると同時に、他のスピーカーを聴いて、もし、そっちのほうがよかったら、今の幸せが壊れてしまうという恐しさなのである。
     *
いま聴いている音に満足しているのであれば、新製品に興味はわかないものか。
確かに不満があれば、
不満とまでいかなくても、もう少し……という気持がどこかにあるからこそ、
新製品、もしくは他のアンプなりスピーカーが気になる、とはいえる。

菅野先生は《聴いている音に満足させられているという証拠》と書かれている。
聴いている音に満足している証拠、ではない。

満足させられているから、《今の幸せが壊れてしまうという恐しさ》を感じてしまうのか。
聴いている音に満足しているのか、満足させられているのか。

いま鳴っている音に満足しているから──、という人でも、
満足しているのか、満足させられているのか、
その違いに気づいていないことだってある。

だからこそ、菅野先生はつづけて、
《こういう気持にさせてくれるスピーカーの存在は貴重である》とされている。

Date: 4月 18th, 2018
Cate: 新製品

新製品(テクニクス SP10Rとラックス)

復活したテクニクス・ブランドのアナログプレーヤーには、
まったくときめくものを感じない。
それでも、こんなタイトルをつけて書いているのは、
わずかな可能性に期待することがあるからだ。

ラックスのアナログプレーヤーといえば、
私と同世代、上の世代の人たちにとっては、PD121こそが真っ先に思い浮べる存在のはずだ。

よく知られているようにPD121に使われているモーターは、
テクニクスのSP10同等品である。
両機種のターンテーブルプラッターを外してみれば、すぐにわかる。

だからこそ、両機種を並べてみるまでもなく、
これだけ違う仕上がりになるのか、とラックスを褒めたくなる。

ラックスからは、現在PD171Aが出ている。
ベルトドライヴになっている。
PD121とはずいぶん違う仕上がりになっている。

PD171には、ときめくものをまったく感じない。
だから、こんなことを考えてしまうのかも……。

SP10Rのモーターを採用したPD121が登場しないものか、と。

Date: 1月 13th, 2018
Cate: 新製品

新製品(ADCOM LUNA・その2)

(その2)を書くつもりはまったくなかった。
けれど昨晩、iPhoneのGoogleアプリが提示したカードには、
LUNAによく似たスピーカーが新製品として登場するというニュースへのリンクだった。
もちろんそのニュースはLUNAについては触れていない。

LUNAによく似たスピーカーが、Ankerというメーカーから登場する。
LUNA(月)と違い、このModel Zeroは、パッと見た印象としては、
女性用のバッグというイメージがする。

だから、上部のアーチ部分は、バッグの把手のようにも見える。

貫通している部分の形状も、LUNAとは少し違う。
真横から見たシルエットも違う。

細部の違いはいくつもあるから、似ているだけで、そっくりとはいえない。
つまりパクリではない、となるのだろうか。

Date: 1月 9th, 2018
Cate: 新製品

新製品(ADCOM LUNA・その1)

アドコム(ADCOM)というアンプメーカーがあった……、
とつい過去形で書いてしまうが、アドコムはいまもある。

日本にはGFA1というパワーアンプで、登場した。
三洋電機貿易が輸入元だった。

外形寸法W22.2×H16.5×D27.4cm、重量は10.2kgという、
比較的コンパクトな筐体ながら、8Ω負荷で200W+200Wの出力を持っていた。

回路の詳細は明らかになっていないが、高効率アンプという触れ込みだった。
いくつものビスが露出した外観は、魅力を感じさせることはなかった。

アドコムは日本ではあまり話題になることはなかった。
アドコムときいて思い出せるのはGFA1だけで、
他にどんな製品があったのか、まったく知らなかった。

先月、今月とADCOMの製品を目にしている。
日本には輸入されていないモノで、アメリカで購入して持ち帰ったモノである。

まだアドコム、あるんだなぁ……、ぐらいにしか思っていなかったけれど、
先日GFA1以外のパワーアンプを見たので、帰りの電車のなかで、検索してみた。

アドコムは健在だった。
相変らずパワーアンプを作っている。

それだけだったら、ここで取り上げたりはしない。
トップページに、これもアドコムの製品なの? と思わせるモノが登場する。
LUNAである。

スピーカーだった。
デザインはヤコブ・イェンセンである。
2016年のCESで登場しているようだ。

ヤコブ・イェンセンは2015年5月15日に亡くなっている。
LUNAは、ヤコブ・イェンセンの最後のデザインなのだろうか。

Date: 12月 13th, 2017
Cate: 新製品

新製品(TANNOY Legacy Seriesとベストバイ)

ステレオサウンドの定番企画でベストバイは、
35号、43号、47号の三回は価格帯を設けずの選定だった。

51号から価格帯を分けての選択となっていった。
価格帯の分け方は難しい。

たとえば10万円未満と10万円以上のところで線引きしたとする。
99,800円のモノは下の価格帯に、
10万円を1,000円でも超えていれば上の価格帯に、と分けられる。

この二機種の価格差はどれだけあるのか、
そのことによって内容の差がどれだけ生じるのか。
そういう難しさが価格帯の設定にあることは、昔から編集部もわかっていたことだ。

いま書店に並んでいるステレオサウンドをパラパラと見てきた。
タンノイのLegacyシリーズが気になったからだ。

ベストバイにもLegacyシリーズは登場している、
つまりベストバイ・コンポーネントとして選ばれている。

けれどArden、Cheviot、Eatonが、同じ価格帯にいる。
タンノイのLegacyシリーズのために価格帯の線引きを考え直せ、なんてことはいわない。

けれど、この時代、価格帯を分けることの無理な面が露呈してきつつあるのではないか。

タンノイのArden、Cheviot、Eatonは、43号からベストバイに登場している。
もちろん今回のArden、Cheviot、Eatonは復刻版なのはわかっていても、
同じ型番、ほぼ同じ外観のArden、Cheviot、Eatonが、
同じ価格帯のベストバイ・コンポーネントであることには、どうしても違和感をおぼえる。

Date: 11月 26th, 2017
Cate: 新製品

新製品(TANNOY Legacy Series・余談)

タンノイのABCシリーズは1976年に登場している。
その二年後に、タンノイからはABCシリーズとは別系統のTシリーズが発表された。
日本でも発売されているが、ABCシリーズの陰にかくれてしまった感があるし、
私も実物を見たことは一度もない。

TシリーズはABCシリーズ同様、同軸型ユニット採用だが(ローコストモデルだけ違う)、
このユニットの振動板には紙ではなく、高分子系のものを採用、
ABCシリーズ搭載のHPDがまだアルニコマグネットだったが、
Tシリーズのユニットはフェライトマグネットだった。

Tシリーズのタンノイなんて、記憶にない……、という方もいるはず。
日本ではT225、T185、T165、T145、T125の型番ではなく、
Mayfair、Dorset、Chester、Ascot、Oxfordの型番で発売されていたからだ。

型番上では五機種だが、実質は三機種である。
Mayfair(T225)とDorset(T185)、
Chester(T165)とAscot(T145)は、
エンクロージュアの仕上げが異なるモデルである。

Dorset、Chester、Oxfordは、いわゆる一般的な木製のエンクロージュアである。
Mayfairの天板にはガラスが使われていて、
このガラスを外すと、レベルコントロールのツマミが現れる。
サランネットの形状もDorsetとは違う。
Ascotはフロントバッフルにプラスチックの成型品を使っている。

実はこのTシリーズの開発には、アーノルド・ウォルフが参画している。
このころのタンノイはハーマン参加だったし、
アーノルド・ウォルフもJBLの社長を辞めていた時期でもある。

アーノルド・ウォルフがどこまで関っているのかまでは知らないが、
関係していることは確かだ(ステレオサウンド 48号に載っている)。

Date: 11月 20th, 2017
Cate: 新製品

新製品(ソニーのマイクロフォン)

先日開催されたInter BEEで、
ソニーが26年ぶりにマイクロフォンを発表したことがニュースになっている。

ソニーは1977年の広告に、こう謳っていた。
     *
「オーディオの原器。」
考えてみてください。
レコード、テープ、放送……どのオーディオをとってみても、
オーディオの出発点にマイクロホンが存在することを。
     *
ソニーはコンシューマー用とプロフェッショナル用を手がけていた。
今回のマイクロフォンの新製品はプロフェッショナル用である。

文字通りの「オーディオの出発点」といえよう。

今回のマイクロフォンの開発に携わった人たちが、
1977年の広告を知っているのかどうかはわからない。
マイクロフォンを「オーディオの出発点」と考えているのかどうかもわからない。

1977年ごろのソニーと現在のソニーは同じなのか、違うのか。
そのことについてはあえて触れないが、
今回のマイクロフォンの新製品を、
ソニー・オーディオの、これからの出発点としてほしい。

Date: 11月 8th, 2017
Cate: 新製品

新製品(ダイナベクター DV1)

私にとってダイナベクター(Dynavector)は、
質量分離型のトーンアームDV505が、なんといっても代表的な製品として、
いまでもすぐに頭に浮ぶ。

それからルビー、ダイアモンドをカンチレバーに採用したMC型カートリッジ、
真空管アンプなどが浮ぶ。

いずれの製品も、型番はDVから始まる。

自転車への興味がなかったころは、
ダイナベクターはオーディオメーカーという認識だった。
一時期は輸入業務も行っていた。

1990年ごろから自転車に興味を持つようになって、
驚いたのはアレックス・モールトンの輸入元がダイナベクターだったことである。

DV505とモールトンのフレームが、イメージとして重なってきて、
そこに共通するものが見出せそうにも思えてくる。

そのダイナベクターから新製品としてDV1が発表になった。
といってもオーディオ機器ではなく、自転車のフレームである。

ベースとなっているのはアレックス・モールトンである。
モールトンのフレームは、イギリスのパシュレーが、一時期ライセンス生産していた。

今回のDV1は、ライセンス生産ではなく、
ダイナベクターによる開発である。

いま書店に並んでいるCyclo Graph 2017(ホビージャパン)に、
DV1の詳細が載っている。

Date: 11月 5th, 2017
Cate: 新製品

新製品(Martin Logan・その3)

弦楽四重奏は弦楽三重奏か、という表現は少し強すぎたかな、と思わないわけでもない。
それでもCLSはアクースティック楽器のもつ胴(ボディ)の存在をなくしてしまうような、
そんな感じがどうしてもつきまとってしまうこと、
そしてそのことをどうしても払拭できなかったから、購入を諦めた。

ブーミングは、オーディオの世界では悪い意味で使われることが多い。
けれど良い意味でのブーミングは不可欠な要素であり、
アクースティック楽器の再生において、楽器のブーミングの再現は重要である。

CLSの音に、私はアクースティック楽器のブーミングを感じとれなかった。
だからチェロにおいては、ボディがない(とまで書くと少し行き過ぎ表現だが)。

弦だけで弦楽器は成り立っているわけではない。
ボディの存在を無視したような、弦だけで音が鳴っているような感じを、
《その音の粒立ちの良さ、軽々と漂う響きのしなやか》と表現することはできないわけではない。
が、それでも音の聴き方、判断というよりも、音の表現は人によって違う、ということを、
「オーディオ名機読本」を読むと、改めて実感する。

CLSに惚れ込んだAさんは、オーディオ店でもいい音が聴けたことがない、といっていた。
それでも彼はCLSを買っている。
ここが私と違うところで、たいしたものだと素直に思う。

そういうAさんとマーティンローガンの話をしていて、
そういえば、マーティンローガンという会社もいまも存在しているのか、と思った。

日本にはいま輸入しているところはない。
輸入されなくなって久しくすると、存在も忘れがちになってしまう。
昔なら、そこでまた忘れてしまうところだが、
いまはインターネットと、優れた検索機能、それにスマートフォンがあるおかげで、
帰りの電車のなかで検索してみたら、マーティンローガンは健在だった。

CLSはなかった。CLSの後継機もない。
けれどCLX ARTがあった。

Date: 11月 4th, 2017
Cate: 新製品

新製品(Martin Logan・その2)

CLSが登場した頃の東京には、
CLSに惚れ込んだ人が店主のオーディオ店があった。

Aさんはそのオーディオ店に行き、音を聴いている。
私はステレオサウンドで働いていたから、試聴室で聴いている。

音を聴くとがっかりする。
Aさんもそうだった、ときいた。

それでもAさんはCLSを買っている。
自分のモノとして鳴らせば……、というおもいがあったからだ。

私も、きちんと鳴らせば、きっといい音が出てくるはずだ、とおもっていた。
それでもステレオサウンドの試聴室で、一度として満足な音では鳴ってくれなかった。

諦めきれなかった。
絶対にいい音で鳴るはず、そんな思い込みさえ持っていた。

とにかくCLSは低音が、ない。

傅信幸氏が「オーディオ名機読本」に、CLSの音について書かれている。
     *
良質で駆動能力の高いアンプで駆動してやると、おそろしく音の透明度が高く、晴れやかで、虫眼鏡で覗いたように音の細部を鮮明に提示する。ローレベルへの深い深い音の表現力にかけては絶品で、ヴォーカルの息遣いなどぞくぞくとさせられるリアルさである。
 左右のCLSの間には、広く深いサウンドステージが展開される。その音場の見透しのよさは清々しく、まるでCLSの周囲の空気がきれいになった感じさえする。そうしたサウンドステージに、楽器がリアルに浮かび上がる。
 大音量で体ごと振動する聴き方をしたいというのは無理だ。オーケストラを堂々と咆哮させ、往年の4ビートのジャズをねっちこい音でバリバリと鳴らすのには向かない。
 しかし、弦楽四重奏やバロックアンサンブル、ギターによる小品を聴くと、その音の粒立ちの良さ、軽々と漂う響きのしなやかさに、うっとりさせられる。
     *
残念ながら、こういう音で鳴っているCLSは聴いたことがない。
弦楽四重奏は弦楽三重奏かといいたくなるような鳴り方だ。
バロック音楽でも通奏低音はどこに? といいたくなる。

低音がいない音だと、
ヴォーカルの息遣いにぞくぞくとさせられることもない。

ステレオサウンドの試聴室だから、アンプは駆動能力の高いモノで鳴らしている。
しかも一度だけではない。
もちろん《大音量で体ごと振動する聴き方》は求めていない。

CLSにはうるおいがなかった。
これも低音がないためなのだろうか。

このうるおいのなさが、私にヴォーカルの息遣いを生々しく感じさせてくれない。
買う一歩手前だったから、CLSを諦めるのに時間がかかった。
そのくらい思い入れをもっていた。

Date: 11月 4th, 2017
Cate: 新製品

新製品(Martin Logan・その1)

昨晩(11月3日)も、友人のAさん(オーディオマニア)と飲んでいた。
知り合って12年。ふたりとも1963年生れ。
彼も私も4343に憧れていた。

音楽の好みは違う。
音の好みも同じところもあれば違うところもある。
にも関らず、思い入れをもってきたスピーカーには、いくつか同じモノがあったりする。

昨晩もそんな話をしていた。
1980年代中頃にマーティンローガンのCLSが日本に入ってきた。

いまマーティンローガンの輸入元はないから、
忘れられつつあるブランドと、日本ではなりつつあるのかもしれない。

けれどCLSを、あの時代に接した者は、そう簡単に忘れることはできない。

CLSはフルレンジのコンデンサー型スピーカーである。
湾曲した黒のパンチングメタルが二枚。
これが固定電極であり、その間に振動膜(フィルム)があるわけだが、
これが他のコンデンサー型スピーカーとは異り、透明だった。

フィルム単体で見れば、ほんのり色がついているのがわかるとのことだが、
スピーカーシステムとして二枚のパンチングメタルに挟まれた状態では、透明である。

後の壁がスピーカーを通して見ることができる。
こんなスピーカーは、それまでなかった。

当時20代前半だった私は、CLSに一目惚れだった。
Aさんもそうだった(ときいている)。

そうだろう、そうだろう、と思う。
話は続く。
CLSの音の話になっていく。

Date: 10月 15th, 2017
Cate: 新製品

新製品(TANNOY Legacy Series・その19)

2017年のインターナショナルオーディオショウで見たかったモノのひとつが、
タンノイのLegacyシリーズだった。

正直、エソテリックのブースの音は期待していない。
あそこで聴いた音で、製品の音は参考程度にもならないと個人的にはずっと以前から思っている。
なのでLegacyシリーズの実物を見たかった、見て確かめたかったことがあった。

私がショウに行ったのは初日の夕方以降の数時間だけ。
エソテリックのブースにも、もちろん行った。
Legacyシリーズによる音出しではなかった。
運が良かった、と思った。

あてにならないとわかっていても、
鳴っている音を聴いてしまうと、なんらかの判断をしてしまいがちである。
だからLegacyシリーズが鳴ってなくてよかった、と思ったわけだ。

別のスピーカーが鳴っていたから、
Legacyシリーズの実物をじっくり見ることができた。

インターネットでの写真を見たときから気になっていたのが、
全体に漂う質感の違いだった。

1976年登場のArden、Cheviot、Eatonの、記憶にある印象からすると、
妙に滑らかに過ぎる質感のように感じていた。

それが写真の撮り方によるものか、それとも実際そうなのか、
それを確認したかった。

Legacyシリーズは、ジャック・ハウのデザインを忠実に再現したと謳っているが、
細部に違いはある。
レベルコントロールのパネル、バスレフポートの開口部の形状などは違っている。

けれど私がおぼえた違和感にも近い感覚は、そのへんの違いゆえとは思えなかった。
全体の仕上げが、当時とは違っていることによるものではないのか。

写真で見たとおりの感じを受けた。
Legacyシリーズの仕上げを基準とすれば、
以前のABCシリーズの仕上げは、やや粗さを残している、ともいえるし、
ABCシリーズの仕上げを基準とすれば、Legacyシリーズは滑らかすぎる、と感じる。

もしかすると私の記憶の中にあるABCシリーズの印象が、
すでに色褪てきているから、そう感じたのかもしれない、と思いつつも、
Legacyシリーズの仕上げの質感は、手触りのぬくもり的なものが薄くなっている。

Date: 8月 1st, 2017
Cate: 新製品

新製品(その16)

川崎先生のブログでは、
川崎和男のデザイン金言 Kazuo’s APHORISM as Designも更新されていく。

川崎先生のfacebookから川崎先生のブログへアクセスする人の中には、
この川崎和男のデザイン金言 Kazuo’s APHORISM as Designを読んでいない人もいるようだ。

もったいないことだ。

7月29日の川崎和男のデザイン金言 Kazuo’s APHORISM as Designは、
新製品について考えるうえで、多くの人に読んでほしい、と思っている。

短い文章だから、引用はしない。
読みながら、新製品の性能、効能、機能についての大きなヒントだ、と直感した。

Date: 7月 22nd, 2017
Cate: 新製品

新製品(TANNOY Legacy Series・その18)

《伝統のあるオーディオメーカーって止まってしまっているところが多いでしょう。クラシカルなものに淫しているように思う。》

田中一光氏のことばだ。
1993年ステレオサウンド別冊「JBLのすべて」の中で語られている。

S9500のデザインについて語られたあとに、こういわれている。
どのオーディオメーカーとはいわれていない。

私は、タンノイのことだと思った。
タンノイのPrestigeシリーズのことだと思った。
いまもそう思っている。

タンノイのPrestigeシリーズのすべてのモデルがそうだとはいわないが、
《クラシカルなものに淫している》、そういう雰囲気が全体にある。

《クラシカルなものに淫している》、
うまい表現だと思ったし、
こういう表現は自分には無理だな、ともその時思った。

Prestigeシリーズを見て感じていたけれど、
うまく言葉にできずに、ノドの奥にひっかかったままだったものこそが、
《クラシカルに淫している》だった。

クラシカルなデザインが、悪いわけではない。
クラシカルなものに淫していると感じさせてしまうPrestigeシリーズ。

Prestigeシリーズこそタンノイらしい、とおもう人がいる。
だが私は、クラシカルなものに淫しているPrestigeシリーズのデザインは、
タンノイの本来的な音にそぐわない、と感じている人間である。

それともPrestigeシリーズの音も、
クラシカルなものに淫しているのだろうか。
いぶし銀もいまでは、クラシカルなものに淫した音の代名詞となってしまうのか。

Prestigeシリーズの音をすべて聴いているわけではないが、
そうではないと思っている。

Prestigeシリーズ以外のスピーカーシステムもあった(ある)のはもちろん知っている。
でも、どこかPrestigeシリーズに比べると……、というところを感じてしまう。

そこにようやくクラシカルなものに淫していないシリーズが登場した。
Prestigeシリーズに比べると……、と思わずにすむモノが、
Legacyシリーズとして、41年前のArden、Cheviot、Eatonが現代のモデルとして復活する。