真空管アンプの存在(と取り巻いていること・その16)
現在、真空管を製造しているのは、中国、ロシア、スロヴァキアで、続いてアメリカ、日本ぐらいだろう。
ポーランドにFezz Audioというブランドがある。
このFezz AudioのFacebookでの告知によると、
EUの助成金を得て、ポーランドでの真空管の製造が始まる、とのこと。
いつごろ、実際の真空管が登場するのかは、まだはっきりとしないが、
新たな真空管が手に入れられるようになることは確かだ。
現在、真空管を製造しているのは、中国、ロシア、スロヴァキアで、続いてアメリカ、日本ぐらいだろう。
ポーランドにFezz Audioというブランドがある。
このFezz AudioのFacebookでの告知によると、
EUの助成金を得て、ポーランドでの真空管の製造が始まる、とのこと。
いつごろ、実際の真空管が登場するのかは、まだはっきりとしないが、
新たな真空管が手に入れられるようになることは確かだ。
PSVANEをはじめ、現行の真空管を管球王国では頻繁に取り上げている。
ここで取り上げられている現行の真空管は、いわゆる新品のはず。
新品の状態で、音質について語られている。
けれど寿命については、語られていない。
片手落ちではないか、と毎回思う。
全ての現行の真空管を、とまでは言わないが、少なくとも試聴結果の良い現行の真空管は、
長期使用において、どのような変化をしていくのか、記事にしていくべきだ。
ただ単に、このブランドの真空管が良かった──、
ここに留まっているのを、これまでずっと続けてきて、
これから先もずっと続けていくつもりなのか。
PSVANE(プスヴァン)は中国のメーカーということで、先入観を持っている人もいるだろうし、
中国からインターネットを通じて買うことに不信感を持つ人もいるはず。
世の中は変ってきている。十年前はそうだったからといって、いまもそうだとは限らない。
中国製オーディオ機器や部品への偏見は捨ててもいいと思っている。
もちろん全ての中国製が安心して使えるとまでは言わないし、思ってもいない。
ピンキリなのは、中国製だけのことではない。
PSVANEのUK-KT88の箱には、貴族之声と大きく印刷されている。
こういうところは中国製だなぁ、と思うしかないが、大事なのは中身(KT88)の品質である。
KT88を四本挿し替えて、バイアスのチェックはしたのかと問われれば、やっていない。
マランツのアンプには、バイアス調整用のメーターと機能が用意されている。
マッキントッシュのアンプも固定バイアスだが、こちらにはない。
ハイGmの出力管6LQ6を四本並列で使用するMC3500には装備されているが、
MC275、MC240などには、ない。
だからチェックの必要はない、とは言わないが、
四本のKT88のうち、大きくバイアスが違う球が混じっていたら、
それは出てくる音を聴けば、もしかすると……と感じるはずだろう。
今回、挿し替えた音を聴いていて、そんな感じはなかったし、むしろいい感じで鳴っている、と感じたほどだ。
ただし、すでに書いているように、この音がずっと持続できるのか、
それとも一年ほどで、音が悪くなってきたな、と感じるようになるのか。
いまは、まだ判断できない。
PSVANEのUK-KT88に交換したばかりのMC275の音は、けっこう違うな、だった。
とはいえPSVANEに挿し替えて電源を入れて数分経っただけの音なのだから、
これがPSVANEのKT88の音は、言い切れるわけではない。
しばらく音を鳴らしながらの音の変化を聴いていく。
最初にかけたのは、バルビローリ指揮ベルリンファルハーモニーによるマーラーの九番。
第一楽章を最後までかけて、もう一度、かける。
明らかにスクラッチノイズの耳につく感じが、いい方向にと変る。
次にかけたのは、チッコリーニによるサティ。このレコードの後半あたりから、また音が変る。
サティのあとにもう一枚(片面)をかけ、別項で触れているフォーレを聴く。
シャルラン レコードならではの音で鳴っている。
私はそう感じながら聴いていたし、このフォーレは聴いている人の心をなんらかのかたちで捉えたようだ。
そういう音で鳴ってくれたのだから、PSVANEのUK-KT88の選択は間違いではなかった。
正しかったと書きたいところだが、寿命の点は、これから先確認していくことだから、
いまのところ、そこまでは言えない。
ここでの寿命とはヒーターが切れるまでのことではなく、
しばらく使っていくうちにノイズが増えたり、音が悪い方向に変っていくなどの意味での寿命だ。
真空管の品質に関わることだ。
一年後、二年後、PSVANEにしてよかった、といえるのかどうか。
こんなふうに音が変化していくのは、新品であればよくあることだし、
鳴らしはじめから、いい音がするわけないのだから、その時の音は聴かないというオーディオマニアもいる。
そんな発言をインターネットやら雑誌で見かけると、
なぜ聴かないのか、と逆に思う。
自分の装置なのに──、とも思う。
どんなふうに変化していくのか、自分の装置だこらこそ、そういうことまで把握しておきたいし、
音の変化きちんと聴いていくことは、経験へとつながっていくからだ。
現在、一応入手可能なKT88は、スロバヴァキア製、ロシア製、中国製となる。
ブランドはいくつかある。材質も内部構造も少しずつ違ったりする。
もちろん基本はKT88なのだが、どのKT88を選んだらいいのか、迷う人もいる。
現在製造されているKT88全てを聴いたことがある人は、
オーディオ関係者ぐらいだろう。
自身でいくつかのKT88を試した、オーディオ仲間のところで聴いた人でも、
何種類のKT88を聴いているのだろうか。
その中で、人は、このKT88がよかった、あのKT88はダメだった、という。
インターネット上に溢れている、そんな情報(もどき)をどこまで信用するのか。
それも人それぞれとしか言いようがない。
今回、最初からPSVANEにすることだけは決めていた。
そのPSVANE製のKT88の中から、どれにするのかは、ほぼ直観だ。
実物を手にしての直観ではなく、写真を見ただけの直観だ。
このKT88だったら、MC275に挿しても見た目がおかしくは感じないだろう。そういう直観である。
なんといいかげんな選び方と言われようが、全てのKT88を聴いて選ぶことは、まず無理。
数種類のKT88の中から選ぶにしても、その数種類のKT88を選ぶのは、何のか。
直観ではないのか。
中国製真空管を、どう捉えるか。
真空管全盛期からストックを十分すぎるほど揃えている人は、
中国製真空管なんて、と関心すら持たないだろうが、
そうでない人もいるし、
現在使っている真空管アンプのメーカーが、補修パーツとしてストックを十分に持っているのどうか、
そんなことでも中国製真空管への関心は変ってくる。
昨日、マッキントッシュのMC275のKT88を交換してきた。
PSVANEのUK-KT88にした。
予算と時間の余裕があれば、GECもしくはGoldLionのKT 88にしたいところだが、四本特性を揃えてとなると、結構な金額になる。
どうにかそれらのKT88を手に入れたとして、あとどのくらい使えるのか。
保証はあるようでない。
残念ながら、真空管は消耗品でもある。
ならば割り切って、という考えもある。
PSVANEのUK-KT88は、特性の揃った四本で26,000円を少し切るぐらいだ。
PSVANEのKT88にはいくつかの種類があって、今回はUK-KT88を選んだ。これが一番いい選択なのかは、いまのところなんとも言えないが、
昨日の感触では、失敗ではない、とははっきりといえる。
そのシャルラン レコードのLPを、昨日(7月26日)、やっと聴くことができた。
野口晴哉氏のリスニングルームで、聴いていた。
野口晴哉氏のレコードコレクションの中に、シャルラン レコードは、きっとあるはず、と確信していたけれど、
かなりの数のコレクションゆえ見つけるのは大変かも……と思うだけだった。
昨日は、オーディオの会とは関係ない少人数の集まりで、
私はマッキントッシュのMC275用のKT88が届いたとのことで、
MC275のチェックとセッティングの用事だった。
シャルラン レコードは、やっぱりあった。数枚あった。おそらく丹念に見ていけばもっとあるだろう。
野口晴哉氏のコレクションにあったシャルラン
レコードは、トリオレコードが取り扱っていたもので、
フランス直輸入盤である。
この盤がシャルラン レコードの初期盤なのかは私は知らないが、
とにかくフランス盤で聴ける──、そのことで充分だ。
聴いたのは、ティッセン・ヴァランターン(ピアノ)とRTF弦楽四重奏団によるフォーレ。
一緒に聴いていた数人の方たちは、オーディオに関心のある人たちではないのだが、
シャルラン レコードから鳴ってきた音というより響きに、
驚かれていたようだった。
シャルラン レコードがどういうモノなのかを知らない人たちだったからこその反応だったのだろう。
シャルラン レコードについて、何度か書いている。アンドレ・シャルランについても書いているけれど、
シャルラン レコードの音を聴いた、とははっきり言えないのは、
アナログディスクで聴いていないからだった。
CDでは聴いている。
けれどシャルラン レコードのマスターテープはもう存在しないのだから、
復刻CDの音だけを聴いてアンドレ・シャルランの意図するところを聴いたとは言えないのはことはないが、
それでも……である。
私がオーディオに興味を持ち始めたころは、まだトリオレコードが取り扱っていたから、
手に入れようと思えば買えたわけだが、
中学生にとって、買いたいレコードは山ほどあって、
シャルラン レコードは後まわししていた。そうやって手に入れる機会を逃す。
当時は、アンドレ・シャルランについての情報は乏しかった。
いまでもそれほど多くあるわけではないが、インターネットのおかげで、知ることができたことはいくつかある。
そうなると、よけいに聴きたくなる。
8月6日のaudio wednesdayの告知を、DJのさそうあきら氏がX(旧twitter)でされています。
野口晋哉氏の全生新舎のXでも告知されてます。
(その1)の最後に、
聴き手に届く音とそうでない音は何が違うのか。
輝きである。
と書いた。
ここでの輝きとは、中高域が張り出してブライトな音のことではない。
昔からのオーディオマニアだと、古いアルテックのスピーカー、
604シリーズをあまりうまく鳴らせなかった時のような音を想像されるかもしれない。
くり返すが、ここでいう音の輝きは、そういう音のことではない。
あまりこういう表現は使いたくないのだが、
オーラを感じさせる音を、私は聴き手に届く音と捉えているし、音の輝きとは、そういうものである。
つい先ほどまで、8月6日のaudio wednesdayで鳴らすスピーカーを決めるために、
さそうあきら氏にシーメンスのオイロダインとウェストレックス・ロンドンを聴き比べをお願いしていた。
厳密な比較試聴ではなく、おおまかな、二つのスピーカーの音の傾向を知ってもらうための試聴で、アキュフェーズのA 20Vに、
iPhoneとD/Aコンバーター兼ヘッドフォンアンプを接続して行った。
一曲ごとにスピーカーを切り替えて聴いてもらった。
8月6日に鳴らすスピーカーは、ウェストレックス・ロンドンに決まった。
当日は、ウェストレックス・ロンドンにエラックのリボン型トゥイーター、4PI PLUS.2を足して鳴らす。
SUMOのTHE GOLDと同時期にアキュフェーズからP400が登場した。
200W+200Wのパワーアンプで、コントロールアンプC240とペアとなるモデルだ。
P400には、ヤマハのプリメインアンプ同様、A級動作への切り替えが可能だった。
その場合、出力は50W+50Wと四分の一となり、パイオニアのExclusive M4と同じ規模のアンプとなる。
P400のA級動作時の音は、短い時間しか聴いていない。Exclusive M4のライバル機だと感じていたし、
Exclusive M4が作ったA級アンプの音のイメージの中での、
パイオニアの音、アキュフェーズの音というふうにも捉えることができる。
こうやって振り返ってみると、
Exclusive M4、P400、ヤマハのプリメインアンプのA級動作の音は、
あくまでも日本のA級アンプの音だったことに気づく。
そして、いまアキュフェーズのA20Vを聴くと、もうそこには日本のA級アンプの音のイメージはない。
中には、いまでも感じられるという方もいるかもしれないが、
私の耳には、そうは聴こえない。
Exclusive M4、P400の音は、古き良き時代の日本のA級アンプの音なのだろう。
audio wednesdayを再開して一年半ほど経って改めて思うのは、
音を出して、誰かに聴いてもらうのは、まず音を出す自分が楽しんでいることが、大事だということ。
これはオーディオショウでも同じはずだ。
それぞれのブースで音を出している人が楽しんでいなければ、来て聴いている人が楽しむことはない。
オーディオショウでは、仕事だから、そんなふうに楽しめない──、そんな意見もあるかもしれないが、
仕事と割り切って出ている音を、楽しんで聴いてくれる人はいないはず。
私がパイオニアのExclusive M4を初めて聴いた時、
すでにマークレビンソンのML2は市販されていたが、
ML2を聴いたのは、その一年ほど後だった。
ML2に関する記事は、ほぼ全て読んでいた。
どんなにすごい音が聴けるんだろか──、
試聴記を何度も読み返しては想像していた。
こんなことをやっていると一方的に期待が膨らみすぎて、実際に、その音を聴くと、こんなものなのか……、と思うこともある。
ML2の音は違った。
ステレオサウンド 45号にあった新製品紹介記事の通りだ、と感じたし、
そのころは瀬川先生による文章もいくつかあって、これらにも頷いた。
Exclusive M4とは、まるで違う。
違って当然なのであって、A級アンプということにとらわれすぎていたともいえる。
アンプの動作方式だけで、そのアンプの音がおおかた決まるわけではない。あくまでも一要素に過ぎないのはわかっていても、
オーディオマニアにとって、管球式OTLアンプとA級アンプは、
どこか特別な響きを持っている。
ML2の二年ほど後に、今度はSUMOのTHE GOLDが登場した。
A級で、出力は125W+125W。ML2が25Wだったのに対し、五倍の出力を持つ。
THE GOLDは、私にとっては特別な存在のアンプだ。このことは、以前別項で触れているので省略するが、
THE GOLDを手に入れたことで、アンプに対する考えは、かなり変っていった。
もちろんML2も、特別な存在ではあるけれど、個人的な思い入れが、THE GOLDに加わってくる。
とにかくML2とTHE GOLDによって、少なくとも私の中にあったA級アンプの音のイメージは、完全に消え去った。
パイオニアのExclusive M4と同時代のスタックスのA級アンプは、三機種、どれも聴く機会はなかった。
1980年代にスタックスが出してきたタワー型のDA100Mは、
ステレオサウンドの試聴室で、まだ試作機の段階のモノから製品化されてからも、
何度か聴いている。
けれど、このアンプの音が、それ以前の三機種の音を受け継いでいるのかは、なんとも言えない。
まず私が聴いていないこともあるが、DA100Mはスタックスの創始者によるモデルではなく、
二代目の方によるモデルという印象が、当時からかなり強く感じていた。
DA80、DA300の音は、当時の試聴記を読んで想像するしかない。
A級アンプという括りでアンプの音が決まるわけではないことは承知の上で、
いま読み返してみると、私としてはけっこう面白く感じている。
パワーアンプとしては、パイオニアとスタックスだけどいえる状況だったが、
プリメインアンプではヤマハがA級動作への切り替え機能を搭載していた。
私は聴く機会がなかったが、どのくらいの人がスタックスの音を聴いているのだろうか。
少なかったのだとしたら、
日本において、A級アンプの音のイメージを作ったのは、
やはりExclusive M4だろうし、
そこにヤマハのプリメインアンプも加わっていた。