Archive for category ワイドレンジ

Date: 11月 24th, 2024
Cate: 4343, JBL, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(JBL 4343を聴いて思ったこと・その1)

11月のaudio wednesdayでの久しぶりの4343。
誰かが鳴らした4343の音ではなく、自分で鳴らした4343の音を聴いて、
改めてワイドレンジのことを考えてもいた。

4ウェイ構成の4343は、当時においてもワイドレンジを目指したスピーカーシステムだったが、
いま聴いても、これは軟弱なワイドレンジのことではなく、
しっかりとしたワイドレンジの音だと感じていた。

この時代のJBLの4ウェイ構成を、いまだ誤解している人がいる。
ワイドレンジとはなんなのかについては、
すでに書いているから詳しく繰り返さないが、
単に周波数レスポンスのことではなく、
個々のユニットのパワーリニアリティを含めてのダイナミックレンジ、
そして指向特性の均一性を含めてのことである。

何も4343が、4ウェイとして理想的な形を実現していた──、
とまではいわないが、ワイドレンジを上っ面だけで語り、
誤解している人が、いまでもいることは言っておきたい。

Date: 4月 9th, 2024
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その31)

ここでは、
アルテックの604-8Gを中心としたワイドレンジシステムの構築について書いている。
ウーファーについて書いている。

トゥイーターは、というと、エラックの4PI PLUS.2で決りだな、と、
4月3日のaudio wednesdayの音を思い出しながら、いま書いている。

4PI PLUS.2が終のスピーカーとしてやって来る前から、
604-8Gには4PI PLUS.2が合う、という確信めいたものはあった。

一般的にいわれている(おもわれている)ような604-8Gの音を、私は求めていない。
それだからこそ4PI PLUS.2だ、と目星はつけていた。

同じ同軸型ユニットでも、タンノイよりもアルテックにつけて鳴らしてみたい。
いままでは604-8Gをなんらかのエンクロージュアにおさめて、
その上に4PI PLUS.2を置くことを想像していたけれど、
604-8Gを平面バッフルに取りつけるというのが、大きくなってきている。

今回の会のような置き方でもいけるという手応えが、そうさせている。

それにエンクロージュアの上に4PI PLUS.2というかっこうは、
604-8Gのスタイルとうまく一致しないような気もしている。
単に見た目の問題だけなのだが、604-8Gの精悍な正面をみながら、
その上にきのこスタイルの4PI PLUS.2だと、ちぐはぐでしかない。

サランネットをつければ604-8Gは見えなくなるのだから、
それでいいじゃないか、といわれそうだが、サランネットをつければ、
それですべて解決するようなことだろうか。

サランネットで隠れていようと、
サランネット越しに604-8Gが見えている。
そのくらい焼きついているのだから、サランネットはもう関係なくなる。

Date: 10月 10th, 2023
Cate: ワイドレンジ

JBL 2405の力量(その1へのコメントへの返信)

四日前に(その1)へのコメントがあった。

七年前、四谷三丁目の喫茶茶会記で行っていたaudio wednesdayでのスピーカーに関しての質問だ。
この時は、アルテックのドライバーが不調ということで、私のJBLの2441と2397を持参した。
トゥイーターは、デザイナーの坂野さんから2405を借りての3ウェイ構成である。

ウーファーはアルテックの416-8Cで、これら三つのユニットのなかでは一番出力音圧レベルが低い。
コメント(質問)には、
《2441と416のレベル調整は何か入っているように思いますが》とあるが、
この時、2441へはアッテネーターの類は使用していない。

ではどうしたかというと、これも別項で簡単に触れているように、
マークレビンソンのLNP2の3バンドのトーンコントロールを使って、
なんとかバランスをとっている。

なので完璧なバランスというわけではないけれど、破綻をきたしているバランスではなかった。
バランス重視であれば、アッテネーターを作り、細かく調整していくのだけれど、
この時は時間の余裕もなかったし、2441の実力をストレートに発揮したかったということもあって、
あえてアッテネーターは使わなかった。

こういう方法をすすめることはしない。
コメントにもあるように、マルチアンプのほうが簡単である。

Date: 4月 22nd, 2022
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その30)

1970年代の終りごろといえば、JBLの4343が爆発的に売れていたころである。
4343に憧れていた私にとって、それは素直にすごいことと受け止めていたけれど、
いまこうやって当時のことをふり返ると、
4343の人気が凄すぎて、その陰に隠れてしまった感のある、
いくつかの特徴的なスピーカーシステムを聴く機会が、
かわりに失われていた──、そういえるような気がしてならない。

当時、東京に住んでいれば、それほどでもなかったのかもしれないが、
田舎暮しの高校生にとっては、
聴きたいスピーカーがあるからといって、都会に出て行くこともできなかった。

ゆえに聴きたいスピーカーシステムはいくつもあっても、
すべてが聴けたわけではなく、聴けたスピーカーの方が少ない。

Concert Master VIは、どんな音がしたのだろうか。

聴けなかったスピーカーシステムがけっこうあると同時に、
ステレオサウンドで働いたおかげで、聴けたスピーカーシステムも多い。

セレッションのSystem 6000をじっくり聴けたことは、
いまふりかえってみても幸運だった、といえる。

しかも当時はSL600を鳴らしていたころでもあったのだから、
よけいに関心は強かったし、いろいろかんがえるところは多かった。

SL600はSL700へとなっていったが、
System 7000は残念なことに登場しなかった。

日本だけでなく、他の国でもSystem 6000はあまり売れなかったのだろうか。
それでもいい。

いまSystem 6000の可能性を捉え直してみると、
さほど大きくない平面バッフルにとりつけた604-8Gに合うサブウーファーは、
こういうところにヒントがあると思ってしまう。

Date: 4月 22nd, 2022
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その29)

ステレオサウンド 48号の特集はアナログプレーヤーだった。
しかもブラインドフォールドテストだった。

第二特集は、サブウーファーだった。
48号のころ(1978年ごろ)は、
サブウーファー新製品として各社から登場しはじめたころでもあった。

52号から連載が始まったスーパーマニア。
一回目は郡山の3Dクラブだった。

いまでこそ3Dといえば映像のほうなのだが、当時は違っていて、
いまでいうセンターウーファー方式を3Dといっていた。

この時代は、ハートレーのウーファーの他に、
エレクトロボイスの30Wも現行製品だったし、
フォステクスから80cm口径のウーファーが新製品として出てきた。

さらにダイヤトーンからは160cm口径の大型ウーファーのプロトタイプが出て、
ステレオサウンドでも取り上げている。

1970年代の終りごろはそういう時代でもあった。
そういう時代を見てきているから、
大口径ウーファーに対してのアレルギーみたいなものはない。

当時ハートレーの輸入元はシュリロ貿易だった。
シュリロから、224HSを搭載したサブウーファーも出てきた。

ハートレー・ブランドで売られていたが、
密閉型エンクロージュアはハートレー指定による国産だった。

このサブウーファー(型番はSub Woofer System)は密閉箱だったが、
当時のハートレーのスピーカーシステム、Concert Master VIは、
224HS搭載なのはサブウーファーと同じなのだが、
エンクロージュアは後面開放型である。

ダリのSkyline 2000は知人が気にいって購入していたから、
かなりの時間を聴く機会があった。

ハートレーは実機を見たことはあるが、音は聴いていない。

Date: 4月 19th, 2022
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その28・余談)

(その28)へのコメントがfacebookであった。

そこには、妄想ではなく猛走とあった。
いわれてみて、たしかに猛走でもあるな、と思った。

妄想(猛走)アクセラレーターと、今後は書いていこう。

Date: 4月 19th, 2022
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その28)

アルテックの604-8Gを中心としてワイドレンジ化をねらったシステム。
システムの規模をまったく考慮しないのであれば──、と考えたプランもある。

604-8Gは15インチ口径の同軸型ユニットだから、
その下にもってくるウーファーのサイズとなると、
同じ15インチのダブルではつり合わない。

私の感覚では18インチのダブルか、その上の24インチ口径となる。
ハートレーのウーファーがある。
224HSが24インチ口径で、ぴったりである。

224HSは、マーク・レヴィンソンがHQDシステムに採用していた。
西海岸のアルテック、東海岸のハートレー、
組合せとしてうまくいくのかどうかはやってみないことにはわからないのだが、
クラシックを聴きたい私にとっては、決して悪くない結果を生むだろう、という期待はある。

けれど、このシステムの規模は私には大きすぎる。
ならば、どんなシステムを構想できるのか。

604-8Gをさほど大きくない平面バッフルに取り付けて、ということであれば、
まず私の頭に浮んだのは、ダリのSkyline 2000である。

このころのダリは、いまのダリとはずいぶん違うスピーカーシステムをつくっていた。
スピーカーシステムの完成度としては、いまのダリの製品のほうが上だろうが、
スピーカーシステムの魅力は、Skyline 2000の方が私にとってはずっと上である。

こんなふうに書いていると、ダリは少しばかりB&Wに似ているのかもしれない。
B&Wはずっと以前は、いろんなタイプのスピーカーシステムを手がけていた。

あのころといまのB&Wとでは、完成度の高いシステムを実現しているのは、
いまのB&Wである。誰もがそういうはずだ。

でも完成度の高さばかりがスピーカーの魅力なわけではない。
このことに触れはじめると、大きく脱線していくのではこのへんにしておくが、
ダリのSkyline 2000後面開放型のエンクロージュアのスピーカーシステムだった。

Date: 3月 26th, 2022
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ
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同軸型ユニットの選択(その27)

ステレオサウンド 50号のマイ・ハンディクラフト、
別冊「HIGH-TECHNIC SERIES 4」、
同じく別冊「SOUND SPACE 音のある住空間をめぐる52の提案」、
これらの記事を何度もくり返し読んできた私にとっては、
アルテックの604-8Gと平面バッフルとの組合せが鳴らす音と響きは、
私自身が心から求める世界とは違っていることはわかっていても、
思いっきり鳴らしてみたい世界でもある。

でるだけ大きな面積の平面バッフルこそが、
こういう音を求めるには最良の結果をもたらすことぐらいはわかっていも、
現実に5.5畳ほどのワンルームに、1.8m×0.9mの平面バッフルを無理矢理入れて、
シーメンスのコアキシャルを取り付けて聴いていた私は、
いかにも大きすぎることを感じていた。

私の感覚からすれば、自分の身長よりも高いスピーカーはあまり使いたくない。
それは広いリスニングルームがあったとしてもだ。

このへんのことは、人それぞれの感覚があってのことだから、
どんなに背の高いスピーカーであっても、音が良ければまったく気にならない、
そういう人もいれば、私のような人もいる。

さほど大きくない平面バッフルに604-8Gを取り付けて、
サブウーファーはエンクロージュアにおさめる。

こんな構想を考えながら思い出しているのは、
ダルクィストのスピーカーシステムDQ10のことだ。

いまではDQ10といっても、どんなスピーカー?
ダルクィスト? という人のほうが多数だろう。

あえてQUADのESLのアピアランスに似せたDQ10は、
私は聴く機会はなかったけれど、
ハイエンドスピーカーの流れに連なっていく音だったのではないだろうか。

DQ10はウーファーだけがエンクロージュアに収まっていた。
他のユニットは最小限のバッフルに取り付けられていた。

サランネットを外した姿、いわば裸のDQ10はバラックのようでもあった。

Date: 3月 25th, 2022
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その26)

604-8Gのシステム構想をあれこれ練るのは楽しい。
どんなシステムにするのかは、どんなエンクロージュアにするのかに大きくかかっている。

まず浮ぶのは、
ステレオサウンド 51号のマイ・ハンディクラフトに登場した
ジェンセンのバス・ウルトラフレックス型である。

604-8Gだけを鳴らすのであれば、このエンクロージュアがいい、といまでも思っている。
けれど、ここで考えているのは、6041を超えるシステムであり、
ワイドレンジを狙ったものであるから、トゥイーターとウーファーを足すことが前提となる。

バス・ウルトラフレックス型エンクロージュアに604-8Gをおさめ、
サブウーファーは別エンクロージュアにする、
トゥイーターはバス・ウルトラフレックス型エンクロージュアの上にのっける。

かなりおおがかりになるけれど、失敗することはあまりない、ともいえる。
けれど、ここで大事なのは6041を超えるということであり、
一つのスピーカーシステムとしてまとめることである。

そうなるとエンクロージュアをどうするのかが、とても難しく重要となってくる。
6041のエンクロージュアは内部で二分割されていた。
サブウーファーと604-8Gのクロスオーバー周波数は350Hzである。

個人的には604-8Gはもう少し下の帯域まで使いたい(鳴らしたい)。
そのためには604-8Gのバックキャビティはどのくらいにするのか。

それよりも604-8Gをとにかく朗々と鳴らしたい、という欲求が頭を擡げてくる。
バス・ウルトラフレックス型エンクロージュアという選択も、
そのことがあってのものだ。

となると平面バッフルに604-8Gと取り付ける、という方法を考えることになる。

Date: 3月 20th, 2022
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その25)

アルテックの6041は、アルテックが自発的に開発したシステムとは、
当時高校生だった私でも、素直にそうとは思えなかった。

JBLの4343をそうとうに意識したスピーカーシステムだったし、
日本の輸入元の意向がそうとうに取り入れられたような気もしていた。

実際にそうだった、ようだ。
ステレオサウンドで働くようになって、
編集部の先輩から、そう聞いている。
6041のトゥイーターが日本製だということも、その時聞いている。

だからといって、私にとっての6041の魅力が半減したわけではなかった。
急拵えだったのだろう、おそらくは。

それでも瀬川先生が、あれだけ評価されているのだから、
じっくりとアルテックが本腰をいれて改良モデルを発表していけば、
ロングセラーモデルになったのかもしれない。

当時、アルテックの輸入元とピラミッドの輸入元は同じだった。
だからこそ6041にピラミッドのT1を──、ということを考えてしまうわけだ。

T1はペアで40万円ほどする非常に高価なトゥイーターだった。
6041に搭載されるには、高価すぎるトゥイーターではあった。
それでもステレオサウンド別冊「HIGH-TECHNIC SERIES 3」を読みふけっていた私には、
6041+T1の音は、素晴らしく魅力的なのでは、と思い描かせるだけの力量があったはずだ。

「HIGH-TECHNIC SERIES 3」では、4343の2405のかわりに、
T1にした音について、井上卓也、黒田恭一、瀬川冬樹の三氏が語られている。

T1の音は、JBLよりも明らかにアルテック寄りの音だったはずだ。
この高価なリボン型トゥイーターを聴く機会はなかった。

こんなおもいが、あの当時からある。
なので、いま604-8Gにトゥイーターを足すのであれば、
T1と同じリボン型のエラックの4PI PLUS.2が第一候補にくる。

Date: 3月 17th, 2022
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その24)

その1)を書いたのは、2009年12月2日である。
この日に、私のところにアルテックの604-8Gが届いた。

その2)で、
《タンノイとアルテック、ふたつとも手に入れてシステムを組むというのは、いまは無理だ》
とも書いている。

なのに、2020年夏にタンノイのコーネッタを手に入れたことで、
アルテックとタンノイ、両方所有することになった。
といってもアルテックの604-8Gは元箱に入ったまま。

コーネッタに搭載されているのはHPD295Aである。
マグネットは、ウーファーとトゥイーターで兼用されている。
アルテックの604は、いうまでもなく独立している。

タンノイもウーファーを足して3ウェイにしたモデル、
さらにトゥイーターも足して4ウェイにしたモデルでは、
ウーファーとトゥイーターのマグネットは独立している。

このことからいえるのは、ウーファー、トゥイーターを足して、
ワイドレンジ化をねらうのなら、マグネットは独立していたほうがいいのかもしれない。

となると604-8Gではシステムでは、やはりワイドレンジをめざしたい。
6041への想いも、そこにはあるからだ。

アルテックのスピーカーシステム、6041は、別項で書いているように、
可能性としては面白くなりそうではあったものの、
結局、アルテックは完成度を高めていくことができなかった。

トゥイーターひとつとっても、6041搭載のトゥイーターがそれほど優れていたとは思えない。
瀬川先生はステレオサウンド53号で、
《♯6041用の新開発といわれるスーパートゥーイーターも、たとえばJBL♯2405などと比較すると、多少聴き劣りするように、私には思える。これのかわりに♯2405をつけてみたらどうなるか。これもひとつの興味である》
と書かれていた。

2405がついた6041の音は、どんなふうに変化しただろうか。
いい結果が得られたような気がするけれど、
実際の製品として、アルテックのスピーカーシステムにJBLのユニットが搭載されることは、
まずない、というよりも絶対にないことだ。

あの当時、6041のトゥイーターとしてベストだったのは、
ピラミッドのリボン型トゥイーターT1だっただろう。

Date: 11月 17th, 2021
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(ジャズにとって、クラシックにとって・その15)

このことはどこに書こうか、少し考えたけれど、結局、ここに書くことにした。

最近、ソーシャルメディアを眺めていると、爆音という表現がけっこう出てくる。
爆音と表現された、その音を私は聴いているわけではないから、
そこで鳴っていた音が、ほんとうに爆音なのかどうかはなんともいえないが、
ただ私が思っている爆音と、ソーシャルメディアに爆音と書き込んでいる人たちの爆音とは、
どうも違うような気がしてならない。

鼓膜を圧するほどの大音量が、爆音なのではない。
いうまでもなく爆音とは、辞書には、
飛行機・オートバイなどのエンジンの発する大きな音、
火薬などが爆発する音、とある。

私にとっての爆音とは、菅野先生が表現された岩崎先生の音のことだ。
その2)で、そのことについて書いている。

「よくマンガであるだろう、頭を殴られて目から火花や星が飛び出す、というのが。」
こんな出だしで、菅野先生が話してくださったのは岩崎先生の音について訊ねたときのことである。

「岩崎さんの音をはじめて聴いた時、ほんとうに目から火花が出たんだ。まるでマンガのようにね」と続けられた。
そのくらいの衝撃が、岩崎先生の音にはあったということだ。

大音量で知られる岩崎先生。
ただ大きなだけではない。
菅野先生が表現されているような音だからこその爆音だ。

岩崎先生が求められていた爆音とは、これも(その2)で書いているが、
こういうことだと思っている。
     *
アドリブを重視するジャズにおいては、一瞬一瞬の情報量という点で、ジャズほど情報量の多いものはない。一瞬の波形そのものが音楽性を意味し、その一瞬をくまなく再現することこそが、ジャズの再生の決め手となってくる。
     *
爆音という表現を使っている人たちで、
こういう音を聴いている(出している)人がどれだけいるのだろうか。

Date: 11月 12th, 2020
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(ジャズにとって、クラシックにとって・その14)

2016年のaudio wednesdayから音を鳴らすようになった。
2017年10月のaudio wednesdayで、アルテックの2ウェイ+グッドマンのDLM2という構成から、
アルテックの2ウェイ+JBLの075という構成へと変った。

高音域が、そのことによって拡がった(ワイドレンジになった)とはいえないが、
「いろ(ジャズ)」のワイドレンジに向った。

2020年7月のaudio wednesdayから、タンノイのコーネッタを鳴らしている。
ユニットはHPD295Aだから、ワイドレンジとはいえないが、
かといってナロウレンジのユニットでもない。

良質のトゥイーターを、ほんのちょっとだけ、かなり上の帯域でつけ足したい気持もあるが、
どのトゥイーターをもってきたとしても、
コーネッタのエンクロージュアの上において、しっくりおさまるかということになると、
まったく思えない。

音的にはうまくいくだろうが、見た目が……、となることだろう。

コーネッタは、いまの尺度からすれば、もうナロウレンジになるであろう。
それでも「かたち(クラシック)」のワイドレンジということでは、
ナロウレンジではない、とはっきりといえる。

Date: 11月 11th, 2017
Cate: ワイドレンジ

ワイドレンジ考(ジャズにとって、クラシックにとって・その13)

「いろ(ジャズ)」のワイドレンジと、
「かたち(クラシック)」のワイドレンジとがある、と(その1)から書いてきている。

10月のaudio wednesdayで、グッドマンのDLM2からJBLの075へと変更した。
音が大きく変化したことは、
別項『アンチテーゼとしての「音」(audio wednesdayでの音)』で書いている。

075にして、心地よい朝日のような明るさを感じた、とも書いた。
そのことと密接に関係しての「いろ(ジャズ)」のワイドレンジだと感じた。

明るくなることではっきりとしてくる色がある。
DLM2の音は見えにくかった(聴こえにくかった)、
もしくは見えてなかった(聴こえてなかった)色が、075は提示してくれる。

それは、昔からいわれているようにトゥイーターを替えれば、
トゥイーターの受持帯域だけでなく、中域も低域も変ってくる。

だから色が見えはじめてくる。
まだまだ十分な「いろ(ジャズ)」のワイドレンジではないが、
075によって、ひとつの手応えを得ることができた。

Date: 2月 11th, 2017
Cate: ワイドレンジ

JBL 2405の力量(その5)

ここでのタイトルは「JBL 2405の実力」ではなく、力量としたのは、
2405を単体のユニットとして使った経験のある方ならばわかっていただけよう。

JBLのスピーカーシステムにおいても、2405の受持帯域は1オクターヴくらいである。
8月3日に行った「新月に聴くマーラー(Heart of Darkness)」では、
カットオフ周波数は約15kHzだから、もっと狭い。
(もっともスロープ特性は6dB/oct.だから単純比較はできないが)

それでも2405があるとないとでは音は、大きく違ってくる。
もちろんどんなトゥイーターであれ、あるとないとでは音ははっきりと違うわけだが、
単に高域のレンジを延ばすだけのトゥイーターだと、
多くの場合、音が薄くなることが生じてしまう。

昔からよくいわれてきたことだ。
トゥイーターの帯域の音だけが薄くなるわけではない。
下の帯域までも薄くなってしまう。

これもよくいわれるたとえなのだが、
餅をのばすと薄くなるのと同じだ、と。

けれど餅のたとえは正確ではない。
いまある餅に別の餅(トゥイーター)を新たにつけているのだから、
もともとある餅をのばしただけではない。

それでもこのたとえが通用するくらいに、安易にトゥイーターをつけると、
そんな印象になってしまいがちだ。

2405だとそういうことがない。
少なくとも私の経験上ない。
もっとも下の帯域にウェスターン・エレクトリックの594Aを使っていたりすれば、
2405でも音が薄くなるということになるかもしれないが、
パーマネントマグネットを使用したユニットを使っているかぎり、
2405をつけ足して音が薄くなる、ということはないのではないか。

もちろん合う合わないという問題は別にあっても、
2405の音(高域)には、芯がしっかりとある。

結局芯のないトゥイーター、そこまで行かなくとも芯がぼやけてしまっているトゥイーターだと、
音が薄くなってしまうのかもしれない。

こういうことをふまえての「2405の力量」である。