Archive for category PM510

Date: 5月 8th, 2015
Cate: BBCモニター, PM510

BBCモニター、復権か(LS5/8の復刻・その8)

グラハムオーディオのLS5/8は、ほぼ間違いなくロジャースのPM510ではなく、
チャートウェルのPM450に近い音を出すであろう。

でも、そのことをあれこれ考えて、というよりも、
グラハムオーディオのLS5/8の写真を見た時からわかっていたことかもしれない。

チャートウェルのLS5/8の別の型番はPM450Eであり、
そのパッシヴ型(LSネットワーク仕様)がPM450であるわけだが、
チャートウェルの、このふたつのスピーカーは、実はフロントバッフルの仕上げが違う。

LS5/8はプロフェッショナル用ということもあって、黒の塗装仕上げ、
PM450はグラハムオーディオのLS5/8と同じようにツキ板仕上げである。
PM450は、ウーファーの水平方向の指向特性を改善するために、
ウーファーをフロントバッフルの裏側から取り付け、開口部を丸ではなく矩形にしているのに対し、
グラハムオーディオは矩形ではなく丸である。

ロジャースのモノも初期の製品では矩形だったが、すぐに丸に変更になっている。
ただしいずれもウーファーはフロントバッフルの裏から取り付けている。
つまりウーファーのフレームが露出しておらず、
この部分からの輻射の影響を抑えている。

チャートウェルのPM450の写真は、ステレオサウンド 62号掲載のオーディオクラフトの広告で見れる。
当時のオーディオクラフトの社長であった花村圭晟氏は、チャートウェルのPM450を、
「完全に私の好み」と表現されている。

花村氏のPM450は本来別の人のモノだったが、無理をいって借りて鳴らされていた。
広告にはこう書いてある。
     *
私は森田さんのお宅に伺うたびに、ほれにほれ込んで……といっても絶版ではどうにもなりませんしね。ロジャースの510が登場した時はしめたとばかりに飛びついたんですけどね。しかしオーディオは面白いもんでして、作る人間が変ると同じような技術でも音が違うんですね。確かに同じ系列のスピーカーシステムなんだけど、私はほれた女が悪かった。良すぎたんですね。結局510は現在お蔵入り……。510もいいスピーカーなんですけどね。
     *
花村氏はグラハムオーディオのLS5/8を聴かれたら、なんといわれるだろうか。

Date: 5月 8th, 2015
Cate: BBCモニター, PM510

BBCモニター、復権か(LS5/8の復刻・その7)

頼りになるのは瀬川先生の文章である。
ステレオサウンド 56号でのPM510の記事、
それからステレオサウンド 54号の特集でのLS5/8の試聴記がある。
     *
 たまたま、自宅に、LS5/8とPM510を借りることができたので、2台並べて(ただし、試聴機は常に同じ位置になるように、そのたびに置き換えて)聴きくらべた。LS5/8のほうが、PM510よりもキリッと引緊って、やや細身になり、510よりも辛口の音にきこえる。それは、バイアンプ・ドライヴでLCネットワークが挿入されないせいでもあるだろうが、しかし、ドライヴ・アンプの♯405の音の性格ともいえる。それならPM510をQUAD♯405で鳴らしてみればよいのだが、残念ながら用意できなかった。手もとにあった内外のセパレートアンプ何機種かを試みているうちに、ふと、しばらく鳴らしていなかったスチューダーA68ならどうだろうか、と気づいた。これはうまくいった。アメリカ系のアンプ、あるいは国産のアンプよりも、はるかに、PM510の世界を生かして、音が立体的になり、粒立ちがよくなっている。そうしてもなお、LS5/8のほうが音が引緊ってきこえる。ただ、オーケストラのフォルティシモのところで、PM510のほうが歪感(というより音の混濁感)が少ない。これはQUAD♯405の音の限界かもしれない。
 いずれにせよ、LS5/8もPM510も、JBL系と比較するとはるかに甘口でかつ豊満美女的だ。音像の定位も、決して、飛び抜けてシャープというわけではない。たとえばKEF105/IIのようなピンポイント的にではなく、音のまわりに光芒がにじんでいるような、茫洋とした印象を与える。またそれだから逆に、音ぜんたいがふわっと溶け合うような雰囲気が生れるのかもしれない。
(ステレオサウンド 56号)

最初のモデルにくらべると、低音域を少しゆるめて音にふくらみをもたせたように感じられ、潔癖症的な印象が、多少楽天的傾向に変ったように思われる。しかし大すじでの音色やバランスのよさ、そして響きの豊かになったことによって、いわゆるモニター的な冷たさではなく、基本的にはできるかぎり入力を正確に再生しながら、鑑賞者をくつろがせ楽しませるような音の作り方に、ロジャース系の音色が加わったことが認められる。低音がふくらんでいる部分は、鳴らし方、置き方、あるいはプログラムソースによっては、多少肥大ぎみにも思えることがあり、引締った音の好きな人には嫌われるかもしれないが、が、少なくともクラシックのソースを聴くかぎり、KEF105IIの厳格な潔癖さに対して、やや麻薬的な色あいの妖しさは、相当の魅力ともいえそうだ。
(ステレオサウンド 54号)
     *
54号の試聴記で最初のモデルと書かれているのはチャートウェルのPM450E(LS5/8)のことである。
ここでチャートウェルのLS5/8には潔癖症な印象があり、
それがロジャース版では楽天的傾向になり、
さらにPM510では享楽派となっていたことが読みとれる。

チャートウェルとロジャースでは、音が違う。
とはいえLS5/8というBBCナンバーで発売するスピーカーシステムであるのだから、
ロジャース版の開発を担当したリチャード・ロスも、そこから大きく逸脱することはしなかった──、
そう思えるし、そんな縛りのないPM510では、より積極的であったようにも読める。

つまりPM510ならではの、あの音の世界はリチャード・ロスによる独自の音の世界だとわかる。
ロジャースのLS5/8は聴く機会があった。
PM510と直接比較ではなかったけれど、たしかに瀬川先生が書かれているとおりの音の違いがあった。

そうなるとグラハムオーディオのLS5/8に、PM510の音の世界は、あまり期待しない方がいいだろう。
グラハムオーディオの開発スタッフの写真は見ていると、
そこにリチャード・ロス的雰囲気の人はいない。

Date: 5月 7th, 2015
Cate: BBCモニター, PM510

BBCモニター、復権か(LS5/8の復刻・その6)

ロジャースのPM510の記事は、ステレオサウンド 56号が最初だった。
瀬川先生が担当された新製品紹介の記事だった。
夢中になって、何度も何度も読み返した。

チャートウェルのPM450はもう聴けないとわかったので、よけいに読み返していた。
この記事の終りに、こう書かれている。
     *
 同じイギリスのモニター系スピーカーには、前述のようにこれ以前には、KEFの105/IIと、スペンドールBCIIIがあった。それらとの比較をひと言でいえば、KEFは謹厳な音の分析者。BCIIIはKEFほど謹厳ではないが枯淡の境地というか、淡々とした響き。それに対してPM510は、血の気も色気もたっぷりの、モニター系としてはやや例外的な享楽派とでもいえようか。その意味ではアメリカUREIの方向を、イギリス人的に作ったらこうなった、とでもいえそうだ。こういう音を作る人間は、相当に色気のある享楽的な男に違いない、とにらんだ。たまたま、輸入元オーデックス・ジャパンの山田氏が、ロジャースの技術部長のリチャード・ロスという男の写真のコピーをみせてくれた。眉毛の濃い、鼻ひげをたくわえた、いかにも好き者そうな目つきの、まるでイタリア人のような風貌の男で、ほら、やっぱりそうだろう、と大笑いしてしまった。KEFのレイモンド・クックの学者肌のタイプと、まさに正反対で、結局、作る人間のタイプが音にもあらわれてくる。実際、チャートウェルでステヴィングスの作っていたときの音のほうが、もう少しキリリと引緊っていた。やはり二人の人間の性格の差が、音にあらわれるということが興味深い。
     *
チャートウェルのPM450とロジャースのPM510の音の違い、
PM450はキリリと引緊っていて、PM510はモニター計としてはやや例外的な享楽派。
同じスピーカーユニット、同じサイズのエンクロージュア、おそらくネットワークも同じか、
違っていたとしてもそう大きな違いはないと思われるのに、
PM450とPM510には共通した音の性格がありながらも、はっきりとした違いがあることがわかる。

リチャード・ロスの写真も、ステヴィングスの写真も見たことがある。
一枚の写真でどれだけのことがわかるのか──、それはなんともいえないけれど、
ロスとステヴィングスの顔つきは、
レイモンド・クックとリチャード・ロスほどの違いはないけれど、やっぱりずいぶんと違う印象を受ける。

となるとグラハムオーディオのLS5/8の音を想像していく上で重要なのは、
開発スタッフの写真ということになる(?)。

Date: 5月 7th, 2015
Cate: BBCモニター, PM510

BBCモニター、復権か(LS5/8の復刻・その5)

私が1982年に購入したロジャースのPM510は、
サランネットを外すにはスピーカー本体を仰向けにして、底板前方にあるネジを二本外さなければならなかった。
いわゆるマジックテープ(面ファスナー)で固定されていたわけではなかった。

今回のグラハムオーディオのLS5/8は写真をみるかぎり、
面ファスナーでサランネットを固定しているようだ。
つまりロジャース時代のLS5/8、PM510はサランネットを装着したままで聴くことを前提としている、
そういう見方ができるのに対し、
グラハムオーディオのLS5/8はフロントバッフルもツキ板仕上げとしていることと考え合わせると、
サランネットなしで聴くことを前提としている、
もしくはサランネットなしで聴くことも想定してある、とみていいのではないか。

もちろんフロントバッフルの仕上げの違いによっても音は変化する。
塗装仕上げとツキ板仕上げでは音は違って当然であり、
サランネット装着を前提としていても、
仕上げによる音の違いを考慮してのツキ板仕上げとも考えられないわけではないが、
どちらかといえばサランネットなしを前提としているように思える。
(このへんは実際に音を聴いてみないことにははっきりとはいえない。)

個人的には音の違いがあったとしても、フロントバッフルは黒で仕上げてほしかった。
これはポリプロピレンという乳白色の半透明の素材であるだけに、
ユニットが取り付けられるバッフルは黒い方が、ポリプロピレンコーンが色気を感じさせてくれる。

そんなふうに見てしまうのは私だけなのかもしれないけれど、
フロントバッフルをツキ板仕上げ(つまり木目)にしてしまうと、
ウーファーがそこだけ浮いてしまうように感じる。

これはPM510のイメージが強く残っているからかもしれない。

Date: 5月 6th, 2015
Cate: BBCモニター, PM510

BBCモニター、復権か(LS5/8の復刻・その4)

チャートウェルのPM450、ロジャースのPM510、そして今回のグラハムオーディオのLS5/8は、
どんな違いがあるのだろうか。

PM450は1978年に登場している。日本への入荷数は数ペアだときいている。
PM510は1980年に登場。こちらは私も購入したくらいだし、けっこうな数が入荷していると思われる。
けれどもう30年以上経過しているスピーカーシステムということになる。

いまもロジャースという会社は残っているけれど、
このころのロジャースとは違ってきている。
PM510のメンテナンスをどうしたらいいのか。悩まれている方も少なくないはずだ。

ポリプロピレンコーンは特許をとっている。
その内容のすべてを知っているわけではないが、そのひとつは接着に関することである。
当時ポリプロピレンの接着は非常に難しかった、ときいている。

最近になってやっと日本の接着剤メーカーからポリプロピレンを接着できる製品が登場している。

余談だが、LS5/8、PM510は、当時のイギリスのスピーカーシステムとしては高耐入力だった。
そのためリアバッフルには”WARNING”と書かれたシールが貼られている。
耳の孔に指を差し込んでしかめっ面をしているイラストの横には、
耳を痛めるほどの大音量再生が可能なので、注意、とある。

山中先生がスイングシャーナルの組合せの取材でLS5/8を使われた。
その取材に立ち会った人から直接きいた話なのだが、
たしかにパワーは入る。それで気持ちよく聴いていたら、
ウーファーのポリプロピレンコーンが溶けてしまったそうだ。

ボイスコイルが発する熱がポリプロピレンコーンに伝わりそうなったらしい。

話を戻そう。
PM450にしてもPM510にしても新品同様のモノはもう存在しない。
充分に使い込まれ、鳴らし込まれたモノである。
そういうスピーカーシステムと、
でき上ってきたばかりのグラハムオーディオの LS5/8を並べて聴く機会が仮に得られたとしても、
参考程度にはなっても正確な比較試聴は無理である。

比較は想像の上でしか成り立たないのである。
ならば……、と想像してみよう。

Date: 5月 5th, 2015
Cate: BBCモニター, PM510

BBCモニター、復権か(LS5/8の復刻・その3)

チャートウェルのPM450からロジャースのPM510にも、外観上の変更点はあった。
PM450は型押ししたフォーム・プラスチックで、縦に三本のラインがアクセントになっていたのに対し、
PM510では平織りの一般的なサランネットになっていた。アクセントとなる縦のラインもない。

LS5/8はプロ用モニターということもあって、
エンクロージュア両サイドに持ち運びを容易にするための把手があった。
PM450よりもPM510は把手がすこし下がった位置になっている。

今回のグラハムオーディオのLS5/8にも、
トゥイーターのレベルコントロールの他にいくつかの外観上の変更点がある。
まず把手が省かれている。
それからフロントバッフルがツキ板仕上げとなっている。

チャートウェルもロジャースのLS5/8、それに他のBBCモニターも、
フロントバッフルは黒の塗装仕上げである。
このことは、サランネットを装着した状態で聴くことを前提としている。

ところがグラハムオーディオのLS5/8(LS5/9もそうだが)、
フロントバッフルを外の面と同じに仕上げてあるということは、
サランネットを外した状態を、標準としていると見ていいだろう。

それとスペックをみて気づくのは出力音圧レベルに違いがある。
PM510はカタログ発表値は94dB/W/m、グラハムオーディオLS5/8は89dB SPL (2.83V, 1m)とある。
インピーダンスは8Ωだから、測定条件は同じといえるわけだから、
このふたつの発表値を信じるのであれば、5dBほど能率が低くなっている。

このことはトゥイーターのレベルコントロールの増設は関係しているような気がする。

Date: 5月 5th, 2015
Cate: BBCモニター, PM510

BBCモニター、復権か(LS5/8の復刻・その2)

ということはグラハムオーディオのLS5/8は、
チャートウェルPM450、ロジャースPM510の復刻といえるのかというと、
写真をみると、そうともいえない点がある。

グラハムオーディオのサイトには、今日の時点ではLS5/8のことは公開されていない。
だがグラハムオーディオのfacebookには、LS5/8の情報と写真がいくつか公開されている。
それを見ると、フロントバッフルには、LS5/8、LS5/9と同じタイプのトゥイーターのレベルコントロールがある。

PM450、PM510にはこのレベルコントロールはない。
つまり今回のLS5/8は、PM450、PM510のLS5/9的モデルとでもいおうか、
BBCモニター的仕様とでもいったらいいのか、
とにかくLS5/8の正確な復刻モデルとも、PM450の正確な復刻モデルともいえない。
その中間に位置するような復刻である。

とはいえ、私は今回のLS5/8は聴いてみたい、と思っている。
LS5/8そのままの復刻でもないし、PM510そのままの復刻をめざしたモノでないからこそ、
聴いてみたい気持にさせてくれる。

グラハムオーディオのLS5/8は、
チャートウェルのPM450に、より近いスピーカーシステムのような気がするからである。

チャートウェルのPM450は、ステレオサウンド 49号に登場している。
瀬川先生が書かれている。
     *
おそらくバイアンプのせいばかりでなく、LS5/1Aよりも音のひと粒ひと粒を際立たせるような解像力のよい、自然な、しかしイギリスの良質のスピーカーに共通のどこか艶めいた美しい音は、聴き手をひき込むようなしっとりした雰囲気をかもし出す。
     *
チャートウェルのPM450E、PM450は、元PM510ユーザーとして、いまでも一度聴いてみたいスピーカーなのだ。

Date: 5月 5th, 2015
Cate: BBCモニター, PM510

BBCモニター、復権か(LS5/8の復刻・その1)

今年の一月だったか、そのくらいの時期、
BBCモニターのLS5/9を復刻したイギリスのグラハムオーディオがLS5/8も復刻する予定だと知った。

LS5/8には日本はチャートウェル・ブランドとロジャース・ブランドのふたつが輸入されている。
前者のLS5/8の輸入量はごくわずかである。
チャートウェルそのものがロジャースに買収されてしまったためだ。

LS5/8は他のBBCモニターと違う点がある。
それまでのBBCモニター、LS3/5AにしてもLS3/6、LS5/5にしても、
BBCがプロトタイプを開発して、それを民間のオーディオメーカーにライセンス料を聴取してつくらせていた。

LS5/8はチャートウェルが独自開発したモデルをBBCが、
LS5/8というスタジオモニターとして採用した初めての例である。
それゆえにLS5/8は、チャートウェルのPM450Eという型番も持っていて、
日本にはノアがPM450Eとして輸入していた。

LS5/8(PM450E)は、QUADのパワーアンプ405のシャーシないのわずかな隙間に、
エレクトロニッククロスオーバーを組み込み、バイアンプ駆動するというシステムだ。

チャートウェルにはこのPM450Eの他に、PM450もあった。
こちらは内蔵ネットワーク仕様モデルである。

これらがロジャース・ブランドの LS5/8、PM510となっていく。
グラハムオーディオがLS5/8を復刻すると知って、この点をどうするのかが気になっていた。
オリジナルのLS5/8を受け継いでバイアンプ駆動とするのか
(当然アンプは405が製造中止なので他のアンプに変更されるだろうが)、
それともPM450(PM510)のように内蔵ネットワークとするのか。

製品として売れるであろうと思えるのは、内蔵ネットワーク仕様である。
けれど仮にもLS5/8を謳っている以上は、バイアンプ仕様とするのか。
この点が気になっていた。

結果、登場したLS5/8は内蔵ネットワーク仕様である。

Date: 10月 31st, 2014
Cate: BBCモニター, PM510, Rogers

BBCモニター、復権か(その3)

PM510をいいスピーカーと認めている人は確かに少ない。
それでもいいじゃないか、と思うのだが、
PM510をいいスピーカーとしながらも、PM510IIを改良型として高く評価している人をみると、
この人が感じているPM510の良さと私が感じているPM510の良さは違っているんだな、と思ってしまう。

PM510はロジャースのLS5/8の内蔵ネットワーク版である。
LS5/8は型番が示すようにBBCモニターであり、
QUADのパワーアンプ405にデヴァイディングネットワークを内蔵しバイアンプ駆動するというシステム。
ユニット構成、エンクロージュアはLS5/8、PM510は同じである。

このLS5/8はロジャース(スイストーン)が買収した会社チャートウェルが開発したモノだ。
チャートウェル時代の型番はPM450E(LS5/8)、PM450(PM510)だった。
もちろんチャートウェルのLS5/8も存在している。

ロジャース製とチャートウェル製は、若干音のニュアンスが違う、といわれている。
そうだろう。
同じ規格で作られているLS3/5Aが、各社、音のニュアンスが微妙に違うのと同じである。
チャートウェル製も聴きたいという気持はあるけれど、
ロジャースのPM510に惚れ込んでいたのだから、
どちらがいいのかを判断するようなことは、いまではどうでもよくなっている。

ロジャースからはLS5/8に続いて、中型モニターのLS5/9が登場する。
ちょうどステレオサウンドにいたころだった。
聴く機会は何度もあった。

でもLS5/8とLS3/5Aの間に位置するサイズ。
このサイズにした理由をついあれこれ考えてしまうくらいに、
私には中途半端な大きさに思えたし、そうなると出て来た音もなんとなくそう感じられてしまう。

でもPM510の低音をぶよぶよじゃないか、という人はLS5/9の方を高く評価していた。

Date: 10月 12th, 2012
Cate: PM510, Rogers, オリジナル

オリジナルとは(チャートウェルのLS3/5A)

昨年6月に、ロジャースのLS3/5Aが、創立65周年記念モデルとして復刻されたことは、
BBCモニター考(LS3/5Aのこと)のところでふれている。

輸入元のロジャースラボラトリージャパンで見ることのできる写真、
昨年、無線と実験7月号に掲載された写真を見るかぎり、
ひじょうに出来のよい復刻と判断できた。

この復刻LS3/5Aが中国製なのは、昨年も書いているし、
そのことが気にくわない、という人がいても不思議ではない。

まだ実物をみる機会はないけれど、この写真のままの出来で量産されているのならば、
見事な復刻だといいたくなる。

とにかく写真から伝わってくる雰囲気は、LS3/5Aそのものであるからだ。

にもかかわらず発売から1年以上経つのに、まだ聴いていないのは、ただ私の無精ゆえなのだが、
今月発売の無線と実験をみていたら、今度は、チャートウェル・ブランドのLS3/5Aが復刻され、
その紹介・試聴記事が掲載されていた。
輸入元はカインラボラトリージャパンとなっている。
今日現在、カインラボラトリーのサイトをみても、このチャートウェルについての情報はなにもない。

これもまたロジャースの65周年記念モデル同様、
あくまでもカラー写真で判断するかぎりなのだが、見事である。
これもまた、LS3/5Aの雰囲気をまとっている。
ここで紹介されているのが量産モデルなのか、どうかははっきりしないものの、
おそらくそうなのだろう、と思うし、思いたい。

この雰囲気のままのチャートウェル・ブランドのLS3/5Aは、
オリジナルのチャートウェルのLS3/5Aを聴く機会はなかっただけに、よけいに聴いてみたい。
そして、これがほんとうに写真から期待できるクォリティを有しているのであれば、
高く評価されてほしい、と思ったりする。

そう思う、というか、願うのは、
このチャートウェル・ブランドのLS3/5Aがそこそこにヒットすれば、
それに気を良くした会社は、LS3/5A以外のスピーカーシステムも復刻してくれるかもしれない、
というかすかな期待を、もうすでに私は抱いている。

PM450を、このLS3/5Aと同じレベル、もしくはそれ以上のレベルで復刻してほしい、と。

チャートウェルは経営難に陥りロジャース(スイストーン)に吸収され、
PM450はロジャース・ブランドのPM510に、
QUAD405を組み込んだマルチアンプ仕様のPM450EはLS5/8として、世に出た。

PM450はPM510の原型である。

Date: 7月 3rd, 2011
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(ロジャース PM510・続補足)

アルテックの620Bの組合せの中に、そのことは出てくる。

620Bの組合せをつくるあたって、
机上プランとしてアルテックの音を生かすには新しいマッキントッシュのアンプだろう、と考えられた。
このころの、新しいマッキントッシュとはC29とMC2205のことだ。
ツマミが、C26、C28、MC2105のころから変っている。
C29+MC2205の組合せは、ステレオサウンドの試聴室でも、瀬川先生のリスニングルームでも、
「ある時期のマッキントッシュがもっていた音の粗さと、身ぶりの大きさとでもいったもが、
ほとんど気にならないところまで抑えこまれて」いて、
マッキントッシュの良さを失うことなく「今日的なフレッシュな音」で4343を鳴らしていた。

なのに実際に620Bと組み合わせてみると、うまく鳴らない。
「きわめてローレベルの、ふつうのスピーカーでは出てこないようなローレベルの歪み、
あるいは音の汚れのようなもの」が、620Bでさらけ出されうまくいかない。

瀬川先生も、4343では、C29+MC2205の
「ローレベルのそうした音を、♯4343では聴き落して」おられたわけだ。

620Bの出力音圧レべは、カタログ上は103dB。4343は93dB(どちらも新JIS)。
聴感上は10dBの差はないように感じるものの、620Bは4343よりも高能率のスピーカーである。
ロジャースのPM510は、4343と同じ93dBである。

つまり4343では聴き落しがちなC29+MC2205のローレベルの音の粗さの露呈は、
スピーカーシステムの出力音圧レベルとだけ直接関係しているのではない、ということになる。

これはスピーカーシステムの不感応領域の話になってくる。
表現をかえれば、ローレベルの再現能力ということになる。

PM510は4343ほど、いわゆるワイドレンジではない。
イギリスのスピーカーシステムとしてはリニアリティはいいけれど、
4343のように音がどこまでも、どこまでも音圧をあげていけるスピーカーでもない。
どちらが、より万能的であるかということになると4343となるが、
4343よりも優れた良さをいくつか、PM510は確かに持っている。

このあたりのことが、927Dst、A68、A740の再評価につながっているはずだ。

Date: 7月 3rd, 2011
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(ロジャース PM510・補足)

レコード芸術では、4343をスチューダーA68やルボックスのA740で鳴らすと、
4343の表現する世界が、マーレレビンソンの純正組合せで鳴らしたときも狭くなる、と発言されている。

このことだけをとりあげると、ロジャースのPM510の表現する世界も、4343と較べると狭く、
だから同じ傾向のA68、A740とうまく寄り添った結果、うまく鳴っただけのことであり、
スピーカーシステムとしての性能は、4343の方が優れている、と解釈される方もいるかもしれない。

4343とPM510では価格も違うし、ユニット構成をふくめ、投入されている物量にもはっきりとした違いがある。
PM510はイギリスのスピーカーシステムとしては久々の本格的なモノであったけれど、
4343やアメリカのスピーカーシステムを見慣れた目で見れば、
あくまでもイギリスのスピーカーにしては、ということわりがつくことになる。

だがスピーカーシステムとしての性能は……、という話になるとすこし異ってくる。

BBCモニター考」の最初に書いたことだが、
私の経験として、4343では聴きとれなかった、あるパワーアンプの音の粗さをPM510で気がついたことがあった。

「BBCモニター考」ではそのパワーアンプについてはっきりと書かなかったが、
このアンプはマッキントッシュのMC2205だった。
MC2205以前のマッキントッシュのパワーアンプならまだしも、MC2205ではそういうことはないはず、
と思われるかもしれない。私もMC2205にそういう粗さが残っていたとは思っていなかった。

しかもそのローレベルでの音の粗さが4343では聴きとれなかったから、
PM510にしたとき、MC2205の意外な程の音の粗さに驚き戸惑ってしまった。

そのときは、だれも気がついていないことを発見したような気分になっていた。
でもいま手もとにある、ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’80」の中で、
瀬川先生がすでに、MC2205のローレベルの音の粗さは、すでに指摘されていた。

Date: 7月 2nd, 2011
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(続々続々ロジャースPM510)

ロジャースのPM510も、スペンドールのBCII、KEFのLS5/1A、105、セレッションのDitton66、
これらは大まかにいってしまえば、同じバックボーンをもつ。
開発時期の違いはあっても、スピーカーシステムとしての規模もそれほどの違いはない。

なのにBCII、Ditton66、それにLS5/1Aだけでは……、
PM510が登場するまではEMTの927Dstを手放そう、と思われたのはなぜなのか。
スチューダーのA68にしてもそうだ。
PM510が登場してきて、A68の存在を再評価されている。
なぜ、LS5/1A、BCII、Ditton66といったスピーカーシステムでは、
そこまで(再評価まで)のことを瀬川先生に思わせられなかったのか。

一時は手放そうと思われた927Dst、
アメリカのアンプばかりメインとして使ってこられた瀬川先生にとってのA68、
このふたつのヨーロッパ製のオーディオ機器の再評価に必要な存在だったのがPM510であり、
実はこのことが、瀬川先生に「PM510を『欲しい!!』と思わせるもの」の正体につながっているはずだ。

そして、このことは、このころから求められている音の変化にもつながっている、と思っている。

Date: 7月 2nd, 2011
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(続々続ロジャース PM510)

瀬川先生はスピーカーに関しては、システム、ユニットどちらもヨーロッパのモノを高く評価されている。
それに実際に購入されている。

音の入口となるアナログプレーヤーもEMTの930stを導入される前は、
トーレンスのTD125を使われているし、カートリッジに関してもオルトフォン、EMT、エラックなど、
こちらもヨーロッパ製のモノへの評価は高い。

けれどアンプとなると、すこし様相は違ってくる。
アンプは自作するもの、という考えでそれまでこられていた瀬川先生が最初に購入された既製品・完成品のアンプは、
マランツのModel 7であり、その#7の音を聴いたときの驚きは、何度となく書かれている。
このとき同時に購入されたパワーアンプはQUADのIIだが、こちらに対しては、わりとそっけない書き方で、
自作のパワーアンプと驚くような違いはなかった、とされている。

そして次は、JBLのプリメインアンプSA600の音の凄さに驚かれている。
SA600を聴かれたの、ステレオサウンドが創刊したばかりのことだから、1966年。
このとき1週間ほど借りることのできたSA600を、
「三日三晩というもの、仕事を放り出し、寝食を切りつめて、思いつくレコードを片端から聴き耽った」とある。

このSA600のあとにマッキントッシュのMC275で、アルテックの604Eを鳴らした音で、
お好きだったエリカ・ケートのモーツァルトの歌曲を聴いて、
この1曲のために、MC275を欲しい、と思われている。

それからはしばらくあいだがあり、1974年にマークレビンソンのLNP2と出合われた。
そしてLNP2とSAEのMark2500の組合せ、LNP2とML2の組合せ、ML6とML2Lの組合せ、となっていく。
SAEが出るまでは、パイオニアのExclusive M4を使われた時期もある。

瀬川先生のアンプの遍歴のなかに、ヨーロッパ製のアンプが登場することはない。
KEFのLS5/1Aの音に惚れ込みながらも、
ことアンプに関しては、惚れ込む対象となるヨーロッパ製のアンプはなかったとしか思えない。

Date: 7月 1st, 2011
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(続々ロジャース PM510)

ステレオサウンド 56号、レコード芸術11月号(1980年)のころ、
瀬川先生は世田谷・砧にお住まいだった(成城と書いている人がいるが、砧が正しい)。

その砧のリスニングルームには、メインのJBL4343のほかに、
瀬川先生が「宝物」とされていたKEFのLS5/1A以外にもイギリスのスピーカーシステムはいくつかあった。
スペンドールのBCII、セレッションのディットン66、ロジャースのLS3/5A、
写真には写っていないが、ステレオサウンド 54号ではKEFの105を所有されていると発言されている。

それにスピーカーユニットではあるが、グッドマンのAXIOM80も。
イギリス製ではないけれどもドイツ・ヴィソニックのスピーカーシステムも所有されていた。

これらのスピーカーシステムを鳴らすときに、どのアンプを接がれて鳴らされたのか。
ステレオサウンド別冊「続コンポーネントステレオのすすめ」に掲載されているリスニングルームの写真では、
アンプ関係は、マークレビンソン、SAE・Mark2500、アキュフェーズC240、スチューダーA68がみえる。

アナログプレーヤーは、EMTの930stと927Dst、それにマイクロのRX5000+RY5500。
アナログプレーヤーは、マイクロがメインとなっていたのか。

ステレオサウンド 56号、レコード芸術11月号を読んでいると、そんなことを思ってしまう。
もうEMTのプレーヤーもスチューダーのパワーアンプも、もう出番は少なくなっていたのか、と。

ロジャースのPM510は、EMTの魅力を、ヨーロッパ製のアンプの良さを、
瀬川先生に再発見・再認識させる何かを持っていた、といえまいか。

聴感上の歪の少なさ、混濁感のなさ、解像力や聴感上のS/N比の高さ、といったことでは、
EMTでは927Dstでも、マイクロの糸ドライヴを入念に調整した音には及ばなかったのかもしれない。
アンプに関しては、アメリカ製の物量を惜しみなく投入したアンプだけが聴かせてくれる世界と較べると、
ヨーロッパ製のアンプの世界は、こじんまりしているといえる。

そういう意味では開発年代の古さや投入された物量の違いが、はっきりと音に現れていることにもなるが、
そのことはすべてがネガティヴな方向にのみ作用するわけでは決してなく、
贅を尽くしただけでは得られない世界を提示してくれる。

なにもマークレビンソンをはじめとする、アメリカのアンプ群が、
贅を尽くしただけで意を尽くしていない、と言いたいわけではない。
中には意を尽くしきっていない製品もあるが、意の尽くした方に、ありきたりの表現になってしまうが、
文化の違いがあり、そのことは音・響きのバックボーンとして存在している。