Archive for 1月, 2025

Date: 1月 31st, 2025
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) –第十三夜(FRANCO SERBLIN Ktêmaを鳴らす・余談)

昨晩(1月30日)、Ktêmaを搬入した。
当日搬入だと時間的余裕が少し削られるし、
慌ただしくやりたくないので、早めの搬入となった。

今回お借りしたKtêmaは、シリアルナンバー60番台。
Ktêmaがどれだけ作られているのかしらないが、
初期のKtêmaと言っていいだろう。

初期型がいいとか、後期型がいいとか、そういうことではなく、
フランコ・セルブリンが生きていたころのKtêmaだということだけを言いたい。

元箱に収められたKtêma。
それが新鮮だった。

ステレオサウンドにいたころ新製品としてスピーカーがやって来るわけだが、
箱に入って来ることは、ほとんどなかった。

アンプやプレーヤーに関しても、箱を見たことは、そんなに多くはない。

なので元箱を見ると、それだけでちょっとだけ嬉しくなる。

Date: 1月 31st, 2025
Cate: audio wednesday

audio wednesday (next decade) –第十三夜(FRANCO SERBLIN Ktêmaを鳴らす)

2月5日のaudio wednesdayは、
フランコ・セルブリンのKtêmaを鳴らす。
3月5日のaudio wednesdayも、Ktêmaを鳴らす。

Ktêmaについての説明は、ここを読まれている方には必要ないだろう。
けれどKtêmaが、いい音で鳴っているのを聴いている人はどのくらいいるのか。

別項でも書いているが、私自身、インターナショナルオーディオショウで聴いているだけ。
輸入元のアーク・ジョイアで鳴っていたKtêmaは、お世辞にもいい音とは言えない。

アーク・ジョイアのブースでは、他のスピーカーであっても、
同じような鳴り方をしていて、どのスピーカーであっても、
そのスピーカーらしく鳴っているとは思えない。

Ktêmaは、もっともっといい音で鳴ってくれるはず──、
というおもいをずっと持ってきた。
とはいえ、どこかで素晴らしい音で鳴っているKtêmaを聴く機会は、
発売から十年以上経つけれど、なかった。

そのKtêmaを、今回鳴らすことができる。
しかも2月と3月の二回鳴らせる。

今回は、アナログディスクで鳴らす。

Date: 1月 30th, 2025
Cate: ロングラン(ロングライフ)

ロングライフということ(その2)

オーディオの歴史を振り返ってみると、
モノーラルからステレオの時代へとなっていき、
1982年にはCDが登場し、それから二十年経たないうちにSACDが出た。
さらにストリーミングで聴くことが当たり前になりつつあり、
サンプリング周波数も高くなっていっている。

プログラムソースの変化だけを大雑把にみても、これだけある。

オーディオの変化だけではなく、オーディオを取り囲む環境の変化もある。
インバーター方式に家電製品が登場するようになったのは1980年代からだろう。
これだけでも電源環境は大きく変った(悪くなった)。

それから携帯電話の登場、普及があり、
パソコンの普及も、そこに加わる。
高周波ノイズは、昔とは比較にならないほど増えて大きくなっている。

電源だけを見ても、ノイズの混入は当たり前と思っていた方がいい。
ノイズと書くと、高周波ノイズと受け止められがちだが、
同じくらい厄介なのは直流の混入である。

電源トランスによっては、直流が混入してくると、途端に唸りだす。
かなり大きく唸るトランスもある。

電源トランスの唸りは、それが聞こえない位置にアンプを置けば、
それで解決するものではない。
電源トランスの唸りは、音場の再現性に大きく影響する。
唸り始めたら、音場がこわれるとも言っていいほどだ。

Date: 1月 29th, 2025
Cate: アクセサリー

オーディオ・アクセサリーとデザイン(その7)

エラックのリボン型トゥイーターや、
少し前に書いているトップウイングのOPT ISO BOX、
これらはオーディオ・アクセサリーということになる。

今回、改めてオーディオ・アクセサリーとは、ということを考えたい。

上に挙げた二機種は、どうしてオーディオ・アクセサリーなのか、といえば、
これらがなくとも音は出せるからだ。

audio wednesdayでいくつかのスピーカーとエラックを組み合わせた。
どのスピーカーも単体で、バランスのとれたレンジを持っている。
そこにエラックを足す。

OPT ISO BOXにしてもそうだ。
OPT ISO BOXがなくとも音は出せる。

そんなふうに考えると、ケーブルはオーディオ・アクセサリーなのか。

ケーブルがなければ音は出ない。
つまりスピーカー、アンプ、プレーヤーと同じコンポーネントの一つである。

雑誌のオーディオアクセサリーでは、ケーブルはアクセサリー扱いだ。
オーディオアクセサリーだけではなく、
他のオーディオ雑誌でも、この点は同じだ。
なんとなくアクセサリーとして扱っているのだろうか。

とはいえ、ケーブルがなければ音は、どうやっても出せない。
なのに、なぜアクセサリーとして扱うのか、といえば、
ケーブルも二組(二本目)からは、アクセサリーとなっていく──、
そういう捉え方ができる。

Date: 1月 28th, 2025
Cate: ロングラン(ロングライフ)

ロングライフということ(その1)

別項で書いているように、12月上旬から声がほとんど出なくなっていた。
喋るのが、こんなに大変なことなのか、と思うほどに声が非常に出し辛く、
忘年会の参加をキャンセルしたほどだった。

1月も半ば過ぎになって、なんとか声が出るようになってきた。
それでもまだまだなのだが、普通に話す分には苦労しなくなった。

先週土曜日に、人と会っていた。
14時30分から22時過ぎまで、話していた。
オーディオメーカーにいたことのある人だ。

井上先生の話になった。
その人に、
「ユーザーが、この製品を何年使うのか、そのことも考えろ」
と言われたとのこと。

半年や一年程度で、ポンポンと買い替える人もいるが、
そんな人はそんなに多くない。
多くの人は長いこと使う。

ソーシャルメディアを眺めていると、
まだ、この製品を使っている人がいる──、
そういうことが当たり前にある。

五年、十年は使われる、と考えていた方がいい。
さらには、もっと長く使う人もいる。

オーディオメーカーは、何を考えなければならないのか、
井上先生が言わんとされたことは、この点にある。

信頼性の高い製品を作れ、とか、
アフターサービスの態勢をきちんとしろ、とか、
そういう当たり前のことではなく、
五年、十年、もしくはそれ以上の期間、
オーディオの状況が、どう変っていくのか、
それに対応するには、どういうことが必要なのか。

そのことをメーカーとして考えろ、ということだ。

Date: 1月 27th, 2025
Cate: 技術

捲く、という技術(その4)

昨晩、浦谷エンジニアリングという会社を知った。
コイルの製造会社だ。

ウェブサイトを見て、すぐさますごいと思った。
ほんとうにすごい。
こんなコイルができるのか、という驚き。

これでネットワークのコイルを作ったら──、
そんなことも想像したりする。

ネットワークのコイルだけではない。
これだけの技術があるのだから、
私がオーディオメーカーのエンジニアならば、
こんなこともできるのではないか、と思うし、
すぐさま連絡をとるだろう。

世の中には、私が知らないだけで、素晴らしい技術を持つ会社がある。

Date: 1月 26th, 2025
Cate: 新製品

TOPWING OPT ISO BOX

昨日、昨年末に発売になったトップウイングのOPT ISO BOXの試聴の機会があった。

どういう製品なのかは、リンク先を参照してほしいし、
この手の製品に関心のある方ならば、すでに情報は得ているだろうし、
すでに購入済みの人も少なくないだろう。

OPT ISO BOXは、39,600円。
この手の機能を持つモノとしては、安価といえよう。
それにトップウイングのウェブサイトを見ると、デモ機の貸し出しもあるから、
試聴しての購入もできる。

39,600円でデジタル信号伝送の問題全てが解決するわけではないが、
試してみる価値はあると感じた。

インターネットで検索すると、個人によるレヴューもある。
いくつか読んでみた。

OPT ISO BOXはスピードの切替スイッチがある。
10M、100M、1Gの三段階。出荷時は100Mになっている。

個人レヴューのいくつかでは10Mの音が断トツ優れている、とあった。

昨日の試聴に限って言えば、1Gが良かった。
この辺は、ネットワーク環境にもよって左右されるようだから、
全ての場合において1Gがいいとは言えないようであるが、
10Mの音は、明らかにわかりやすい音になる。
特に音像定位がそうだ。
わかりやすい定位になる。

それだけを持って音が良くなるとは言えないし、
そのことがどういう意味も持つのかも、考えてほしい。

どのスピード設定するか、それから電源アダプターをどうするか。
OPT ISO BOXでは、価格を抑えるために必要最低限の電源が付属しているが、
OPT ISO BOXに関心を持つ人は、すぐにでも他の電源に交換するだろう。

スピードの切替え、電源の交換、
それからOPT ISO BOXをどこに挿入するのか、
OPT ISO BOXは遊べるし、楽しい製品だ。

Date: 1月 25th, 2025
Cate: スピーカーとのつきあい

FRANCO SERBLIN Ktêma(その4)

フランコ・セルブリンのKtêmaが、いい感じで鳴っているのを、
実をいうと聴いているわけではない。

Ktêmaを聴いたのは、インターナショナルオーディオショウのアーク・ジョイアのブースで、二回ぐらいだ。
はっきり書くが、アーク・ジョイアのブースでは、
どのスピーカーであっても、よく鳴っていると感じたことはない。

いつも冴えない音で鳴っている。
もっと美しい響きを聴かせてくれるであろうに……、と思うばかり。
Ktêmaもそうだ。

もっとよく鳴ってくれる、というよりも、全く鳴っていないに近い。
いつも残念に感じるブースの一つである(ほかのブースでも同じようなところはある)。

にも関わらずKtêmaは、鳴らしてみたいスピーカーである。
鳴ってくれると信じられる何かを感じているからだ。

Date: 1月 25th, 2025
Cate: スピーカーの述懐

あるスピーカーの述懐(その54)

ステレオサウンドがながいことリファレンススピーカーとして使っているB&Wの800シリーズ、
このスピーカーシステムに惚れ込んでいる人は、
ステレオサウンドに書いている人にいるのだろうか。

私は、いないと思っている。

惚れ込んでいる人がいないからといって、
B&Wのスピーカーの音が悪いということではないし、
その優秀性を否定するわけでもない。

ただ、ステレオサウンドの執筆者の中にはいないというだけのこと。

昔は、どうだったか。
瀬川先生は4343に惚れ込まれていた。
そのことが、書かれたものから伝わってきていた。

4343の前には4341、その前はJBLのユニットによる3ウェイ。
そこには瀬川冬樹のJBLへの惚れ込み方があった。
それだけでなく菅野沖彦のJBLの惚れ込み方があった。
岩崎千明のJBLの惚れ込み方があった。
それぞれのJBLの惚れ込み方があった。

それぞれの惚れ込み方であり、その人ならではの惚れ込み方でもあった。
だからこそ、音が聴こえてこない誌面からでも伝わってくるものがあった。

そういう時代を、私は生きてきた。

Date: 1月 24th, 2025
Cate: 終のスピーカー

エラック 4PI PLUS.2のこと(その13)

4月、アポジーのDuetta Signatureに、
5月、Western Electricの757Aレプリカに、
7月、メリディアンのDSP3200に、
12月、BOSEの901 Series Vに、
今年1月、JBLの4343に、
これまでこれらのスピーカーとエラック 4PI PLUS.2と組み合わせてきた。

まだまだ組み合わせてみたいスピーカーはある。
そんななかでいちばん聴いてみたいのが、JBLのParagonとの組合せである。

Paragonの両端に、4PI PLUS.2を置くことになるが、
その姿を、どう感じるだろうか。

その印象も出てくる音次第のところもある。
うまく鳴ってくれれば、いい感じじゃないか、と思うだろうから。

Paragonと4PI PLUS.2、どういう音を聴かせてくれるのか。
いまのところ想像するしかない。

Date: 1月 23rd, 2025
Cate: High Resolution

TIDALという書店(その38)

TIDAL、Qobuzといったストリーミングによる音楽鑑賞を、
瀬川先生は、どう言われただろうか。
     *
 レコードのジャケットに、適合カートリッジや最適針圧をメモしていて、一枚ごとにカートリッジを変え、針圧を再調整して聴くというマニアも知っている。その人はそういう作業がめんどうなのでなく逆にとても楽しいらしい。

一枚かけるごとに、針先のゴミをていねいに除き、レコードのホコリを拭きとり、まるで宝ものを扱うようにレコードをかける愛好家もおおぜい知っている。だが私はおよそ逆だ。もしもそういう丁寧な人たちが私のレコードをかけるところをみていたら、びっくりするかもしれない。
 レコードをジャケットからとり出す。ターンテーブルに乗せ、すぐに針を降ろす。レコードのホコリも、針先のゴミも拭いはしない。聴きないと思ってジャケットを探し出したとき、心はもうその音楽を聴きはじめている。そういう人間にとっては、ホコリをていねいに拭くという仕事自体、音楽を聴く気持の流れを中断させるような気がする。
     *
ステレオサウンド別冊「続コンポーネントステレオのすすめ」で、瀬川先生は、こう書かれていた。

だからストリーミングで音楽を聴くことを、少なくとも否定はされなかったはずだ。

Date: 1月 22nd, 2025
Cate: 異相の木

「異相の木」(好きな音と正しい音・その4)

「オーディオは趣味だから、好きなようにやればいい」、
「オーディオは趣味だから、好きな音を出したらいい」、
他にもいくつもあるけれど、ソーシャルメディアでよく目にするのは、
「オーディオは趣味だから」で始まることだ。

共通しているのは、好きにしていい、ということのようだ。

けれど、本当にそれでいいのか。
そんなふうに疑問を持つことすらしないのか──。

美は結論である。
己の結論に節制をもつことが、オーディオマニアとしての「美」である、
と何度も書いている。

「オーディオは趣味だから」で始まることには、
どうにも節制がないように感じる。

昨年も、そんな音を聴いた。
そんな節制のない音を聴きながら、以前聴いた音を思い出していた。

別の人が鳴らしている音だったが、低音の鳴り方が共通していた。
相当に似ていたというより、本質的なところが同じだったのだろう。

Date: 1月 21st, 2025
Cate: 「ネットワーク」

オーディオと「ネットワーク」(SNS = SESか・その24)

兵庫県で、ここ一年ほどのあいだに起こっている事象は、
悪意をベースにしたSES(Social Experiment System)のように思えてしかたない。

SNS(Social Networking Service)を中心とした実験場で、
何かが浮き彫りになるのだろうか。

Date: 1月 20th, 2025
Cate: ディスク/ブック

Sylvia Sass sings Dramatic Arias(その3)

シルヴィア・シャシュのLPは、あのころ、
いくつかのシステム(けっこういろんな音)で聴いているが、
いまも強く印象に残っているのは、
ステレオサウンドの試聴室で、
サウンドコニサーの取材でのアクースタットのコンデンサー型スピーカー、
Model 3で聴いたのが、まず挙げられる。

この時のこと、音は別項で書いているし、
別冊サウンドコニサーを読んでもらえればわかる。

もうひとつは、スーパーマニアの取材で、
先輩編集者のNさんに連れて行ってもらったオーディオマニアのお宅での音。

その方は、ウェストレックス・ロンドンのスピーカーユニットを、
国産エンクロージュアに収められていた。

その時も、いま思い出しても、そのウェストレックス・ロンドンが十全に鳴っていたとは思っていない。
それでもシルヴィア・シャシュのLPをかけられた時、
シャシュの声(歌)が鳴ってきた時、その実体感に驚かされた。

Model 3でのシャシュとウェストレックス・ロンドンでのシャシュ。
どちらがいい音とか、そういうことではなく、
左右のスピーカーの中央に定位するシャシュのボディが、厚い。

音像が肥大しているのではなく、シャシュのボディが前後に厚いのだ。
厚みのあるボディから声が発せられている感じが、見事だった。

日本人とは骨格からして違うのか、と思わせるほどの胸の厚み。
この厚みを、鳴ってくる音から感じとることができるかどうか。
他の人にとっては、どうでもいいことなのかもしれないが、
私はそうではない。

Date: 1月 19th, 2025
Cate: アナログディスク再生

Wilson Benesch Circle(その3)

もう数年以上前のことになる。
あるレコード店にいた。個人経営の店で、アナログディスクだけでなく、
カートリッジやシェルリード線など、周辺アクセサリーも取り扱っていたので、
こだわりのレコード店ということなのだろう。

ここでシェルリード線の比較試聴が行われたのだが、
ひとつ気になったことがあった。

オーディオ機器はラックに収められていて、
上段にプレーヤー、その下の段にプリメインアンプ。

一般的な設置なのだが、アンプやプレーヤーの電源コードが、
プレーヤーからの出力ケーブルとくっつくように結線されていた。

こういうケーブルの取り回しの理由を聞いてみると、
プレーヤーからのケーブルはシールドされていて、スピーカーケーブルはシールドされていないから、
電源コードはスピーカーケーブルから遠ざけて、
プレーヤーからのケーブルにくっつくようにした、とのことだった。

人によって考え方は違うことはわかっていても、
こうも違うのか、と少し驚いたものだった。