Archive for category 真空管アンプ

Date: 1月 12th, 2021
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その12)

この組合せ、この時の音があまりにも印象的だったこともあり、
私にとってラックスの38といえば、SQ38FDでもSQ38FD/IIではなく、LX38である。

しかも私はウッドケースというのが、あまり好きではない。
LX38はウッドケースがオプションになっていた。

おそらくウッドケースをつけると値上げしなければならなかったため、
なんとか価格も維持するためだったのだろう。

だとしても重いコートを脱ぎ捨てかのようでもあり、私はLX38を好む。
ではLX38の程度のいいのを探してきてコーネッタを鳴らしたいか、となると、
興味がまったくない、とはいわないまでも、それほどではない。

なぜかというと、まず一つはスペンドールのBCIIとコーネッタは、
同じイギリスのスピーカーシステムであっても、ずいぶんと性格が違う。
それに当時はアナログディスクで、カートリッジはピカリングだった。

いまはそうではない。
ピカリングのXUV/4500QのようなCDプレーヤー、もしくはD/Aコンバーターはない。

あのころとずいぶんと、いろんなことが変ってきている。
LX38の出力管、50CA10も、いまでは製造されていない。
探せば、まだ入手できる真空管ではあるが、
なんとなく避けたい気持があったりする。

中国で、さまざまな真空管が製造されているが、
50CA10は、そのラインナップにはない。おそらくこれから先も期待薄だろう。

他にも、こまかな理由がいくつかあって、
LX38で、どうしても──、という気持にはなれないでいる。

やはりKT88のプッシュプルアンプで鳴らしたい、という気持のほうが、強い。
いい音の真空管アンプであれば、なにもKT88のプッシュプルにこだわる必要はない──、
頭では、そう理解していても、一度はKT88のプッシュプルで鳴らしてみたい。

それも自分の手で鳴らしてみたい。

Date: 1月 11th, 2021
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その11)

コーネッタを手に入れたことで、
この項のテーマが微妙にずれてきてしまっている。

だんだんとコーネッタにおける黄金の組合せ的なことを考え始めている。

別項で「黄金の組合せ」について書いている。
黄金の組合せという表現がつかわれるようになったのは、
タンノイのIIILZとラックスのSQ38FDの組合せからであろう。

この組合せの音は聴いたことがない。
それでもなんとなく想像はつく。

IIILZとコーネッタは、基本的には同じユニットといってもいい。
もちろんMonitor GoldとHPD295Aは違うユニットだ、という人もいるのはわかっている。

それでも別ブランドのユニットと比較すれば、どちらもタンノイの10インチ同軸型ユニットである。
ならばコーネッタにもSQ38FDが合うのだろうか。

これも別項で書いているのだが、
ラックスのLX38(SQ38FD、SQ38FD/IIの後継機)で鳴らしたスペンドールのBCIIの音は、
いまでも聴きたい、と思うほどの音だった。

熊本のオーディオ店で、この組合せで、と瀬川先生にいった。
瀬川先生は、なかなかおもしろい組合せだ、といわれた。
接続が終って、音が鳴り始めた。

カートリッジは、ピカリングのXUV/4500Qにした。

スピーカーにしてもアンプにしても、カートリッジもそうなのだが、
どれもはっきりとした個性をもつ音だ。

鳴ってきた音を聴かれた瀬川先生は「玄人の組合せだ」といわれた。
自分で考えた組合せということもあって、
私にとっての「黄金の組合せ」といえば、この組合せの音である。

Date: 12月 22nd, 2020
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その10)

コーネッタを鳴らすKT88のプッシュプルのプリメインアンプについて、
具体的に考えてみる。

出力はどれだけ欲しいのか、となると、50Wは欲しい。
コーネッタは、さほど高能率スピーカーではない。
これは、あくまでも昔の基準でのことであって、
いま市販されているスピーカーシステムとの比較では高能率となる。

それでも私の感覚としては、能率はやや低め、ということになる。

アンプの出力は音場の再現と大きく関っている。
オペラを聴くとよくわかる。

歌手がソロで歌っている。
さほど大きくない音量では、出力の低いアンプであっても、
クォリティの高いアンプであれば、気持よく鳴ってくれるのだが、
そこに合唱が加わって、クレッシェンドしていくと、音場がぐしゃっとくずれることがある。

出力に余裕のないアンプに起りがちな現象である。

だからコーネッタに50Wの出力というのは、最低限といってもいい。
私の部屋はさほど音量が出せるわけではない。
それでも50Wは欲しい、と考えている。

もっと音量を出せる環境であれば、出力はもっと欲しいところだ。

75Wの出力といえば、マッキントッシュのMC275がそうである。
規模としては、一つの目安となる。

MC275をベースに、ラインアンプ(これも管球式)で、
トーンコントロールを装備したプリメインアンプとなると、かなり大型になる。

自家用として使いたくない大きさになるはずだ。
そこまでなるならば、セパレート形式のほうが、
パワーアンプを目につかないところに設置すれば、ずっとすっきりする。

Date: 12月 18th, 2020
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その9)

(その8)でテープ入出力端子のことにちょっと触れたので、
ここでのテーマとは直接関係ない話なのだが、
プリメインアンプの現行製品で、テープ入出力端子を備えているのは、
どれだけあるのだろうか。

しばらく前からアナログディスク・ブームといわれている。
それからしばらくして、カセットテープがブームになってきた、ともいわれた。
オープンリールテープも、静かなブームだ、ときく。

カセットテープにしろオープンリールテープにしても、
アンプにテープ入出力端子がなければ、けっこう扱い難い。

なのにテープ入出力端子をつけてほしい、という声を、
ソーシャルメディアでもみかけたことがない。

私がフォローしている人たちがツイートしていないだけで、
そういう声はあるのかもしれない。

でも、カセットテープ、オープンリールテープの音に惚れ込んでいても、
再生だけで録音はしていない人が、いまでは案外多いのかもしれない。

録音をしなければテープ入出力端子の必要性は、あまり感じないし、
テープデッキの出力を、アンプのライン入力に接続するだけで事足りる。

テープデッキを再生だけに使うのも悪いことではないし、間違っているわけでもない。
それでも、やっぱり録音器であるわけだから。

でも、何を録るのか、といわれるだろう。
音楽を録ることだけにとらわれすぎていないだろうか。

カメラを買ったからいって、誰もがスタジオを借りて撮影するわけではない。
家族の写真を撮ったり、身近な風景や動物を撮ったりする。

なぜオーディオの録音器だけが音楽だけを録ることにこだわるのか。
スマートフォンのカメラ機能で、気軽に撮るように、
身近にある音を録ってみたらいい。

Date: 12月 15th, 2020
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その8)

ラックスから、今年プリメインアンプのプリメインアンプのL595A LIMITEDが登場した。

今回も往年のラックスのアンプ・デザインの復活であり、
これまで続いてきたずんぐりむっくりからの脱却でもある。

L595A LIMITEDのページには、《一体型アンプの矜持》という項目がある。
L595A LIMITEDはフォノイコライザーはもちろん、
2バンドのトーンコントロールも備えている。

さらに音量連動式のラウドネスコントロールもついている。
テープ入出力端子は、時代の流れからなのか、ないのだが、
プリ・パワーアンプのセパレート機能はついている。

プリメインアンプ全盛時代のプリメインアンプそのまま、といいたくなる内容である。

さまざまな機能を削ぎ落として、音質をひたすら追求しました、
というアプローチのプリメインアンプもあってもいいが、
それならば、いっそのことセパレートアンプにしてしまえばいいのに、と私は考える。

だからL595A LIMITEDは、逆に新鮮にみえてくるところもある。
管球式のプリメインアンプは、いまでも存在している。

けれどほとんどの管球式プリメインアンプは、さまざまな機能を省略しすぎている。
そこに、プリメインアンプの矜恃は感じられない。

なかにはかなり大きな図体の管球式プリメインアンプもある。
それでも機能は最低限度しかついていなかったりする。

音がいいことだけが、アンプづくりの矜恃ではないはずだ。

Date: 10月 15th, 2020
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その26)

私が真空管アンプを自作するのであれば、
出力管のソケットの周囲には放熱用の穴を開ける。

伊藤アンプがそうしているから、その模倣である。
この穴は、出力管の放熱のため、といわれている。
穴以外の手法として、ソケットの取り付けを一段低くする、というものもある。

これらの手法は、ほんとうに出力管の放熱に寄与しているのだろうか。
出力管のほとんどは下部にベースがある。
この部分は熱をもたない。

熱を持つのはガラスのところである。

真空管アンプのシャーシー内に空冷ファンがあって、出力管に向けて送風しているであれば、
ソケットまわりの穴は放熱の役に立つ。

けれど伊藤アンプにも、そのほかのアンプにはファンが内蔵されているモノはまずない。
おそらく穴があろうとなかろうと出力管表面の温度、周囲の温度ともに変化はないはずだ。

それがわかっていても、自作するのであれば穴をあける。
伊藤アンプのように開けていくのは手間であるし、
穴をあければそれだげシャーシーの強度は低下する。

それでもあける理由は、あいていないとたたずまいが悪いからだ。
以前、伊藤先生の300Bシングルアンプとそっくりのアンプを、
あるオーディオ雑誌で見たことがある。

けれど、なんだかしまらない印象を受けた。
穴があいていないのだ。
外観上の違いは、穴の有無だけである。

なのに印象はずいぶん違う。
だから穴をあけるわけだが、
この穴は、デザインなのだろうか、デコレーションなのだろうか。

Date: 8月 27th, 2020
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その25)

「聴感上のS/N比がよくなるって、どんな感じですか」と問われたことが数回ある。
音を鳴らしている場であれば、実際に音を聴いてもらえば、わかってもらえるかもしれない。

何度聴かせても分かってもらえない人がいることも、体験上知っている。
時に言葉で説明した方が伝わることがないわけでもない。

おかしいなことだ、と思うところもあるが、結局のところイメージの問題なのかもしれない。
訊いてきた人のなかに、まったくイメージがなければ、
音を聴いてもらってもダメなことなのかもしれない。

そしてイメージのきっかけでも与えることができれば、
音を聴いてわかってもらえるようになる。

オーディオでは、昔から、百読は一聴に如かず、という人がいる。
オーディオ評論家が書いたものをどれだけ読んだところで、
一回音を聴いたほうがよくわかる的な使われ方がされるし、
絶対的な感じで、これをいう人もいる。

聴いた方がはやい、という場合は確かに多い。
でも、上に書いているように、必ずしもそうでないこともある。
そのことをわかんていない人ほど、百読は一聴に如かずを使いたがる。

そしてオーディオ評論家不要論を、そのあとに続ける。
そんな人はどうでもいいのだけれど、
「聴感上のS/N比がよくなるって、どんな感じですか」という質問に、
前回書いたもやしのヒゲのことを答えたことがある。

ヒゲを取ったもやし炒めを食べてみれば、
聴感上のS/N比がよくなる、というどんな感じなのか、
そして雑共振が音に与える影響についての、なんらかのイメージは掴めるのではないだろうか。

ヒゲを取ってみたら、というと、決って返事は、
そんな面倒なことするんですか、である。

面倒なことかもしれないが、難しいことではない。
もやしのヒゲを取るだけである。
ただ本数が多いだけのことだ。

それなのに、やりもしないで、面倒だ、と決めつける人がいる。
もやし一袋のヒゲを取るのに、一時間くらいかかるのであれば、
私だってそんなにやらないし、人にすすめたりもしない。

でも、やってみると、そんなに時間はかからない。
くり返すが難しいことは何もない、このことをやらない人は、
アンプの自作はやらないほうがいい。

Date: 8月 25th, 2020
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その24)

アンプの自作が初めて、という人にいいたいのは、
一時間自炊のすすめ、である。

これは伊藤先生から30年以上昔にいわれたことだ。
別項「伊藤喜多男氏の言葉」で書いている。

一時間自炊といっても、なにか特別なものを作って、ということではない。
特別な食材、高価な食材を用意しての自炊ということではない。
それこそ冷蔵庫の中にある食材を使って自炊、
近所の店で食材を買ってからの自炊である。

一度も自炊をしたことのない人が、
一流の高級料理店で出される料理をつくろうとするだろうか。

たぶんやらないだろう。
なのに趣味の世界となると、
オーディオの世界となると、
初心者がいきなり300Bのアンプを作ろうとしたりする。

それも高価な部品をたっぷりと使って、である。

趣味の世界だから、という一言で片づけてしまえるところもあるといえばある。
でも趣味の世界だからこそ、段階を踏んでこそ、ではないだろうか、と思う。

五極管で真空管アンプを作ってみよう、と思う人がいるかもしれない。
そういう人は、まず自炊をしてほしい。
ありふれた食材での料理から始めてみる。

たとえば肉ともやしの炒め物。
もやしは安価だし、特に難しいわけではない。

誰にでもできる料理といえば、たしにかそうなのだが、
変に凝る人は、味つけに変った調味料を使ったりするかもしれない。

そんなことをしてほしいのではなく、
ごく当り前の味つけであっても、炒める前にもやしのヒゲをきれいに取っていく。

一手間かけるだけである。
これだけのことなのだが、ヒゲを取ったのを味わうと、次からもそうしたくなる。

Date: 8月 24th, 2020
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その23)

初心者が真空管アンプを作りたい、というのであれば、
私は五極管のシングルアンプではなく、プッシュプルアンプをすすめる。

位相反転回路にP-K分割を採用すれば、真空管の数も抑えられる。
よほどまずい配線をやらないかぎり、ハムの心配もない。

シングルよりもプッシュプルのほうが、当然だが出力はとれる。
大型の出力管を最初から使わなくても、よほど低能率のスピーカーでないかぎり、
実用的な出力は、十分とはいわないまでも確保できる。

とにかくポピュラーな出力管を使ったほうがいい。
EL34もいい球だし、ラジオ球とバカにする人もいるようだが6V6もいい球だ。

これらの球ならば、インターネットで検索すれば、製作例はけっこう見つかる。
回路は自分で設計するのもいいが、最初は基本的な回路のほうがいい。

まずは一台をきちんと作ってからのことだ。
創意工夫していくにしても、もっと大がかり、本格的なアンプに挑戦するにしても、だ。

EL34、6V6のプッシュプルアンプでは、
《他人(ヒト)とは違うのボク》を満足させられないかもしれない。

だからといって、変に凝ったレイアウトにはしないほうがいい。
オーソドックスなレイアウトでやったほうがいい。

使用する部品に関しても、オーディオ用を謳っているモノは使わない方がいい。
信頼性のある部品を、まず使ってみることだ。

オーディオ用を謳っている部品のなかには、サイズがかなり大きかったりする。
このくらいのサイズなら……、と楽観しない方がいい。

極端に小さな部品も作業がしにくいが、大きい部品もけっこう苦労する。

こうやって書いていると、
ますます《他人(ヒト)とは違うのボク》を満足させるところからは遠ざかる。

それでいい、と私は考えている。
一台目の真空管アンプを、佇まいを多少なりであっても感じさせることができれば、
それで十分《他人(ヒト)とは違うのボク》であるからだ。

プリント基板は使わない方がいい。
初心者だからといって、プリント基板に頼ることだけは止した方がいい。

Date: 8月 14th, 2020
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その7)

その1)を書いたのは、二年前。
そのころはタンノイを買うことになるとは、ほとんど思っていなかった。

なので、ここでのサブタイトル、「KT88プッシュプルとタンノイ」は、
タンノイの特定のモデルではなく、あくまでもタンノイの同軸型スピーカー全般のことだった。

それが今年6月にコーネッタを手に入れた。
そうなってくると、「KT88プッシュプルとタンノイ」のタンノイとは、
コーネッタということに、意識しなくてもそうなりつつある。

最初のころのKT88プッシュプルとは、KT88のプッシュプルのパワーアンプのことを想定していた。
それがコーネッタ以降、プリメインアンプも含めてのことになってきている。

KT88プッシュプルのパワーアンプということならば、
コントロールアンプは別個に考えればいいわけで、
トーンコントロールのことは考えていなかった。

コーネッタとの組合せを、この項でも意識する。
そうなるとプリメインアンプ、それもトーンコントロール付きかどうかが気になる。

コーネッタを鳴らしてみたいプリメインアンプとして、イギリスのCHORDのモデルがある。
ソリッドステートアンプなので、この項とは直接関係ないわけだが、
それでもコーネッタとの組合せは、かなりいいように想像している。

そのCHORDのプリメインアンプは、
輸入元タイムロードでは、現在プリメインアンプは取り扱っていない。

CHORDのサイトをみると、製造中止になったわけではなく、
現行製品であることがわかる。

CHORDのプリメインアンプは日本ではあまり人気がないようだが、
私はけっこう気に入っているが、トーンコントロールに関しては、不満がある。

トーンコントロールがついていないだけでなく、
テープ入出力端子をもたないから、そのへんの拡張性はまったくない。

このことはCHORDのプリメインアンプに限ったことではなく、
ほかのブランドのプリメインアンプでもそうなのだ。

Date: 8月 13th, 2020
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その6)

ステレオサウンド 55号と59号の中間、57号の特集はプリメインアンプだった。
ケンウッドのL01Aも取り上げられている。

瀬川先生の、57号での評価は高いものだった。
音の躍動感に、やや不足するものがあるのは読みとれるが、
《音の質の高さは相当なものだと思った》とある。

しかも、瀬川先生が熊本のオーディオ店に来られたときに、
サンスイのAU-D907 Limitedを買ったことを話した。
瀬川先生は、L01Aのほうがあなたの好みだよ、といわれた。

L01Aは聴いたことがなかった。
それでも気になっているプリメインアンプだった。

それでもAU-D907 Limitedは175,000円、
L01Aは270,000円だった。

当時高校生だった私に、この価格差はそうとうに大きく、手の届かない製品であった。
でも、その時の口ぶりからもL01Aを高く評価されていることは伝わってきた。

なのに59号での結果である。
当時も、なぜだろう? とおもったものだ。
答はわからなかった。

いま、その理由を考えると、L01Aにはラウドネスコントロールはついていても、
トーンコントロールはなかった。

しかも57号に、
《ファンクションにはややトリオ独自の部分があり、例えば、テープ端子のアウト/イン間にイコライザーその他のアダプター類を接続できない回路構成》
とある。

瀬川先生は、59号でサンスイのAU-X11には1点をいれられている。
AU-X11にもトーンコントロールはついていない。
けれどテープ入出力端子に、トーンコントロール、イコライザーなどの周辺機器を接続できる。

このあたりに、L01Aへの0点の理由が隠れているような気がしてならないし、
AU-X11にトーンコントロールがついていたら、2点以上になっていたであろう。

Date: 8月 13th, 2020
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その5)

聴いてみたかったKT88のプッシュプルアンプといえば、
ユニゾンリサーチのプリメインアンプP70である。

でもエレクトリはユニゾンリサーチの取り扱いをやめてしまっている。
しかもユニゾンリサーチも、P70、P40(EL34のプッシュプル)の製造をやめている。

P70を聴く機会はなかった。
エレクトリがとりあつかいをやめた理由も、ウワサではきいている。

どんな音だったのか。
周りに聴いている人もいない。

でも、P70のアピアランスは、気に入っている。
優れたデザインとは言い難い。
それでも、コーネッタを接いで鳴らすには、いい感じじゃないだろうか。

そう思いながらも、P70にはトーンコントロールがなかったなぁ……、となる。
1970年代後半ごろから、トーンコントロールをパスするスイッチが、
プリメインアンプにつくようになってきた。

さらにはトーンコントロールを省く製品も出てくるようになった。
いまではトーンコントロールがついている製品のほうが、
高額な価格帯になるほどに少数となってくる。

プリメインアンプにはトーンコントロールは要らないのか。

ステレオサウンド 55号の特集ベストバイで、
瀬川先生はケンウッドのL01Aを、プリメインアンプのMy Best 3の一つにされている。

55号のベストバイでは、誰がどの機種にどれだけ点数を入れたのかまったくわからない。
51号もそうだったのを反省してなのか、55号では各製品ジャンルのMy Best 3が載っている。

瀬川先生のプリメインアンプのMy Best 3は、L01Aの他に、
サンスイのAU-D607とラックスのL58Aである。

ところが59号のベストバイで、瀬川先生はL01Aには一点も入れられていない。

Date: 8月 8th, 2020
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その4)

真空管パワーアンプの音が、出力管だけで決るわけがないことは百も承知だ。
この項で挙げている四機種のKT88のパワーアンプは、どれも音が違う。

それでも、そこに何か共通項のようなものを、少なくとも私の耳は感じている。
もっと厳密にいえば、タンノイのスピーカーで聴いた時に、そう感じている。

「五味オーディオ教室」を読みすぎたせい──、とはまったく思っていない。
マッキントッシュのMC275がKT88のプッシュプルだから、ということではない。
私の場合、タンノイで聴いたKT88のプッシュプルアンプは、MC275が最初ではないからだ。

KT88のプッシュプルアンプは、他にもいくつもの機種がある。
それらでタンノイを鳴らしたことはない。
もしかすると、私が聴いたことのないKT88のプッシュプルアンプで、
タンノイを鳴らしてみると、KT88にこだわることはないな、と思うかもしれない。

KT88のプッシュプルアンプのなかにも不出来なアンプは少なからずある。
そのこともわかっている。
それでも、タンノイを、真空管アンプで鳴らすのであれば、
まずKT88のプッシュプルアンプということを、頭から消し去ることができないままだ。

真空管パワーアンプの音が、出力管だけで決るわけがないのだが、
だからといって、出力管の銘柄、型番が音に関係ないわけではない。
鳴ってくる音のどこかに、出力管に起因するなにかが存在しているのかもしれない。

それがタンノイのスピーカーと組み合わされた時に、
私の耳は無意識のうちに嗅ぎ分けているのかもしれない。

コーネッタを鳴らすのに、真空管アンプを作るのであれば、
デッカ・デコラのパワーアンプ、EL34のプッシュプルのコピーにしようか、と思っている。
いい感じに鳴ってくれるだろうな、と夢想しながらも、
それでもKT88のプッシュプルアンプ、と思ってしまう。

しかも、ここがわれながら不思議なのだが、
KT88のプッシュプルアンプを自作しようという気は、ほとんどない。
市販品のなかから、いいモノがないか、と思ってしまうのは、なぜなのか。

Date: 8月 4th, 2020
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その3)

今日、東京は暑かった。
出掛ける用事がなくて、よかった、と思うほどに暑かった。

そんな暑い日中に、コーネッタをKT88のプッシュプルアンプで鳴らしてみたいなぁ、と思っていた。

私がタンノイに接いで聴いたことのあるKT88のプッシュプルアンプは、
マッキントッシュのMC275、マイケルソン&オースチンのTVA1、
ウエスギ・アンプのU·BROS3、ジャディスのJA80の四機種だけであることは、(その1)で書いたとおり。

いずれも、いまとなっては30年、40年ほど前のアンプだから、
いまでは新品で手に入れることはできない。

ジャディスのJA80は、いまMKIIになっているが、
いま日本に輸入元はない。

話はそれるが、この十年ほど、こういうことが増えてきた。
以前は輸入されていて、ある程度知れ渡っていた海外のブランドが、
いまではすっかり忘れられてしまっている、という例が意外とある。

そのブランドがなくなってしまったわけではなく、
単に日本に輸入されなくなっただけの話だ。

しかもアジアの他の国には輸入元がある。
日本にだけない、という例が具体的には挙げないが、まだまだある。
しかも増えてきているように感じる。

それらのブランドは、なんらかの理由で日本の市場から淘汰されただけなんだよ、
そんなことをいう人もいるけれど、ほんとうにそうなのだろうか。

そういうブランドもあるだろうけど、なにか日本だけが取り残されつつあるよう気もする。

話を戻すと、コーネッタは比較的新しいトランジスターアンプで鳴らしたい、という気持に変りはないが、
それでも、こんなふうにふとKT88のプッシュプルアンプで鳴らした音を聴きたい、と思う。

なにもこんな暑い日に、こんなことを思わなくてもいいだろうに……、と自分でも思いながらも、
なぜKT88なのだろうか、とも考えていた。

Date: 1月 14th, 2020
Cate: 真空管アンプ

Western Electric 300-B(その27)

励磁型用の電源については書きたいことはまだまだあるが、
ここでは真空管アンプのこと、
ウェスターン・エレクトリックの300Bのプッシュプルアンプのことがテーマなので、
このへんにしておくが、真空管アンプにおいての固定バイアスの電源も、
励磁型の電源と同じところがある。

凝ろうとすれば、いくらでも凝れる。
電源トランスから別個にして、というのが理想に近い。

それから非安定化なのか安定化なのか。
安定化ならば──、励磁型の電源について書いたことと同じことがいえる。

凝れば凝るほど大掛りな電源となっていく。
場合によっては屋上屋を重ねることにもなりかねない。

電源トランスから独立させた固定バイアスの真空管アンプの音は聴いたことがないが、
その効果は音にはっきりとあらわれることだろう。

けれどバイアス用電源にそこまで凝る、ということは、
アンプ全体の電源に関しても、そういうことになる、ということだ。

バイアス用だけでなくヒーター用の電源トランスも独立させることになる。
そうなるとモノーラル構成でも、電源トランスは最低でも三つになる。

最低でも、としたのは、もっと凝ることもできるからだ。
各増幅段用に電源トランスを独立させていく──、
こんなことをやっていると、シャーシーの上にはトランス類がいくつ並ぶことになるだろうか。

トランスの数が増えれば、相互干渉の問題からトランス同士の距離も確保しなければならない。
振動の問題も、トランスが増えれば増してくるし、
重量の問題も大きくなってくる。

真空管アンプ一台の重量は、モノーラルであっても50kgを優に超えるであろう。

電源はエスカレートしやすい。
それは江川三郎氏がハイイナーシャのアナログプレーヤーの実験と同じようで、
ここまでやれば、という限度が見えてこないのかもしれない。