Archive for category 真空管アンプ

Date: 6月 17th, 2025
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その36)

昨晩の(その35)に、facebookにコメントがあった。
《伝言ゲームの中で、情報が損失されている印象。》

このことは私も感じていた。
オーディオに限らず、いろんなところにあることだろうが、
特に趣味の世界では、その傾向は強いように感じることがある。

ソーシャルメディアの普及は、特にそうである、とも言える面を持っている。

しかも伝言ゲームは、往々にして大事なところから伝わらなくなる傾向も持つ。

オーディオにおいてそれを正していくのが、オーディオ雑誌の務めなのだと思うのだが、
そんなことを微塵も考えていない編集者もいるように感じている。

Date: 6月 16th, 2025
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その35)

(その34)で終りのつもりだったのだが、そういえば、と思い出したことがあったので、また書いている。

ずいぶん前のことだが、池田 圭氏が
《シングルアンプは電源を作るようなものである》、
そんなことを書かれていた。

その通りである。
なのに、いまではそういうことを書く人は、いるのだろうか。

わかっていても、もう書かなくてもいいだろう、と思っているのか、
それとも、わかっていないだけなのか。

わかっていない人がいるのはわかるのだが、
初心者には五極管のシングルアンプがいい、とすすめる人もまた、このことがわかっていないのだろう。

わからずに初心者にすすめる。そんな時代になってしまったのか。

Date: 6月 12th, 2025
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その20)

ダイナコのSCA35は真空管プリメインアンプだから、専用とはいえウッドケースをつけるのは、
放熱の点では好ましくない。

同時のダイナコの輸入元はハーマン・インターナショナルだった。
なんとなくなのだが、ウッドケースは日本で企画され製造されたものではないだろうか。
そんな気がしてならない。

別にそれでもいいと思っている。
放熱が心配なだけで、問題ないとわかったら、今も欲しい気持は残っている。

私が使っていたのは、信頼できる人が整備してくれたモノで、
出力管の6BQ5は、シーメンスかテレフンケンのEL84になっていた。
真空管の選別をきちんとやれば、SCA35はローコストの真空管プリメインアンプにしては、
なかなか品のある音を出してくれる。

いまの時代、SCA35的なアンプを求めようとなると、何があるだろうか。

Date: 6月 8th, 2025
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その19)

ダイナコにはSCA35と同時代に、PAS3XとPAT5というコントロールアンプがあった。
パネルフェイスはどちらも同じで、PAS3Xが真空管、PAT5がトランジスター式だった。

どちらのコントロールアンプも、基本的なパネルのデザインはSCA35と同じと言える。

どちらのコントロールアンプもSCA35とほぼ同寸法で、専用のウッドケースが用意されていた。

PAS3Xをウッドケースに収めたのも、実際に見たことはない。
このことは実機を見て確かめたいところだが、もう五十年ほど昔のアンプだから、そういう機会は訪れないだろう。

なので写真での比較でしかないなのだが、SCA35にはウッドケースが必需品と感じるのに、
PAS3Xには、そういうことは感じない。

基本的なデザインは同じでも、ツマミの数はPAS3Xの方が多い。
SCA35だとウッドケース無しだと、ちょっとスカスカな印象があるが、
PAS3Xには同じことを感じたことはない。

SCA35は、何か、額縁を求める絵やポスターのような存在のようにも感じる。
ウッドケースという額縁があって完成するフロントパネル。
私にとってのSCA35は、そういう存在であり、そこに魅力を感じているのだと思っている。

Date: 6月 7th, 2025
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その18)

昨夜の投稿を読まれた方の中には、
ダイナコ SCA35と検索された方もおられよう。

ずいぶん昔のアンプである。
1977年で、62,300円のプリメインアンプで、
外形寸法はW34×H10.8×D26.7cm、重量は8.5kg。
使用真空管は12AX7(二本)、7199(二本)、6BQ5(四本)という構成。
出力は17.5W+17.5Wと、決して本格的なプリメインアンプではなかった。

同時代の、ほぼ同価格の国産アンプにはサンスイのAU607があった。

SCA35を検索して、その写真を見た人は、こんなデザインなのか……、期待はずれだ、と思われたかもしれない。

ダイナコの製品はローコスト機であった。キットも用意されていた。SCA35も、その例に漏れず、お金のかかった作りではない。

おそらく市販のツマミを買ってきてフロントパネルに配置した、それだけのデザインと言えそうな出来だ。

高級感があるわけではない。
そんなプリメインアンプなのだが、専用のウッドケースDW2(7,500円)に収めた姿は、なかなかいい。

私はどちらかというとウッドケースは好まない。
そんな私でもQUADの33とFM3を専用のウッドケースに収めたのと、
このSCA35は例外といえ、SCA35に関してはウッドケース込みでのデザインで受け止めている。

とはいえ実際にDW2に収まったSCA35は、写真でしか知らない。
SCA35は、一時期使っていた。シーメンスのコアキシャルを鳴らしていた。
DW2無しだった。

Date: 6月 6th, 2025
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その17)

その16)にコメントをもらっていた。

そのコメントの最後に《宮崎さんの思う真空管プリメインアンプのベスト・デザインを、ぜひ教えてください。また、その理由についてもお聞かせいただけると嬉しい限りです!》とある。

真空管プリメインアンプのベストデザイン、これがけっこう難しい。
あれこれ、いろんなプリメインアンプの顔を思い浮かべていたのだが、
これこそベストデザインというアンプはない──、
それがいまのところの結論となる。

ベターデザインならば、いくつかある。
その中で、いま手元に置きたいモノというふうに考えてみた。

私が初めて聴いた真空管プリメインアンプは、ラックスのLX38。
熊本のオーディオ店に瀬川先生が来られた時に聴いている。この時、私のリクエストで、スペンドールのBCIIとピカリングのXUV/4500Qとの組合せで、もう一度鳴らしてもらった。
この時のことは別項で書いているので詳細は省くが、瀬川先生から「玄人の組合せ」とお褒めの言葉をいただいた。

だからLX38には思い入れがある。そのデザインもベターデザインとは思っているけど、
ベターデザインと感じているモノの中から、一つだけ選ぶとなるとは、LX38ではない。

ベターデザインの感じているモノの中から一つだけ、ということが、
いわば準ベストデザインとなるのではないか──と考えると、
選ぶのはダイナコのSCA35である。

Date: 3月 20th, 2025
Cate: 真空管アンプ
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シーメンス Eurodynと真空管OTLアンプ(その4)

黒田先生がフルトヴェングラーについて書かれている。
     *
 今ではもう誰も、「英雄」交響曲の冒頭の変ホ長調の主和音を、あなたのように堂々と威厳をもってひびかせるようなことはしなくなりました。クラシック音楽は、あなたがご存命の頃と較べると、よくもわるくも、スマートになりました。だからといって、あなたの演奏が、押し入れの奥からでてきた祖父の背広のような古さを感じさせるか、というと、そうではありません。あなたの残された演奏をきくひとはすべて、単に過ぎた時代をふりかえるだけではなく、時代の忘れ物に気づき、同時に、この頃ではあまり目にすることも耳にすることもなくなった、尊厳とか、あるいは志とかいったことを考えます。
(「音楽への礼状」より)
     *
私にとってのシーメンスのEurodynは、まさにフルトヴェングラー的存在である。
少しもスマートなスピーカーではない。
造りも音も、佇まいもそうである。

スピーカー本体としてはそれほど大きくもないし、重くもないが、
この劇場用スピーカーは、平面バッフルとして、2m×2mほどの大きさを要求するし、当然部屋の広さも、それに見合うほどを要求する。

何もかもがスマートではない。

けれど、Eurodynがきちんと鳴った音を聴けば、《時代の忘れ物》に聴き手は気づくはずだ。

気づかない人もいよう。そういう人はフルトヴェングラーの演奏を聴いても、そうなのだろう。

とにかくEurodynは、そういうスピーカーだから、
アンプを選ぶともいえる。

そんなEurodynにアインシュタインのOTLアンプを接いだ音に、
私は違和感を覚えることなく音楽を聴けたし、
この組合せで、クナッパーツブッシュの「パルジファル」、
それもMQAで、さらにはメリディアンのULTRA DACで聴けたらな──、
そんなことまで想っていた。

Date: 3月 1st, 2025
Cate: 真空管アンプ

シーメンス Eurodynと真空管OTLアンプ(その3)

オーディオ雑誌の組合せ記事では、現行製品同士の組合せがまず前提となる。
実際のオーディオマニアのシステムは、というと、
オーディオ雑誌の記事そのままと言える組合せの人もいるけれど、
オーディオのキャリアが長くなれば、いくつかの世代のオーディオ機器が集まり、
それらの機器での組合せが作られている。

古い世代のスピーカーに新しい世代のアンプ、
反対に新しい世代のスピーカーに古い世代のアンプ、と言った組合せがある。

前者の組合せでは、古い世代のアンプでは感じとれなかった魅力を、
発見することもあり、そう珍しいわけでもない。

今回のシーメンスのEurodynとアインシュタインのアンプの組合せは、
古い世代のスピーカーと新しい世代のアンプの組合せとなるわけだが、
Eurodynとアンプの時代の違いは、かなり大きい。

Eurodynの原型からするとほぼ半世紀ほどの開きがある。

古い世代のスピーカーと新しい世代のアンプの組合せは、
うまくいくこともあれば、そうでないことももちろんある。

同世代のアンプでは聴きとり難かった音が聴こえたら、
このスピーカーにはこんな良さ(魅力)があったのか、とかんじながらも、
どこかに、何となくではあるものの違和感的なものを感じたりすることもままある。

アインシュタインのアンプで鳴らすEurodynの音に違和感がない、
と書いたのは、そういうことである。

だからといって、その音に新しい発見や魅力を見出せなかったわけではない。

Date: 2月 28th, 2025
Cate: 真空管アンプ

シーメンス Eurodynと真空管OTLアンプ(その2)

アンプにしてもスピーカーにしても方式や素材によって、
出てくる音の全てが決定づけられるわけではないことは、
もちろんわかっている。

それでも「真空管OTLアンプ」は、それだけで少し特別な存在なのは、
私ひとりだけではないはずだ。

オーディオに興味を持ち始めたころ、
無線と実験、ラジオ技術で、真空管OTLアンプの製作記事や、
それに関する記事を読むと、いつかは自作してみたい、とも思うようになる。

そのころ、真空管OTLアンプの火を灯し続けていたのは、日本だった。
カートリッジに関しても海外メーカーがMC型から徹底していく中で、
ずっと作り続けてきたのは、日本のメーカーであり、
真空管OTLアンプについても同じと言えた。

とはいえ、そのころの日本の真空管OTLアンプを聴く機会はなかった。
マックトン、エトーン、マクソニックなどがあった。

私が聴いた真空管OTLアンプといえば、
カウンターポイントのSA4、フッターマンのシリーズ全機種であり、
フッターマンのOTL4の音には、かなり惹かれるものを感じたし購入を迷いもした。
けれど購入にいたらなかったのは、
ステレオサウンドでの試聴の準備中に平滑コンデンサーが爆発したことがあったからだ。

SA4は、ステレオサウンド試聴室に常備されていて、
かなりの回数、いろんなスピーカーで聴いている。
いいアンプだと感じつつも、欲しい、とまでは至らなかった。

アインシュタインが真空管OTLアンプを出していることは知ってはいても、
聴く機会はなかったし、日本での取り扱いを、輸入元は辞めてしまった。
そのアインシュタインのThe Final Cut MK70を聴いた。
シーメンスのEurodynで聴いた。

違和感のない音が、聴けた。

Date: 2月 27th, 2025
Cate: 真空管アンプ

シーメンス Eurodynと真空管OTLアンプ(その1)

シーメンスのEurodynという劇場用スピーカーを、私はステレオサウンドで働いていた関係で、
何度か聴く機会があった。

これまで聴いてきたEurodynは、どれも真空管アンプで鳴らされていた。
伊藤先生の300Bシングルアンプでも聴いているし、
海外ブランドの真空管アンプでも聴いている。
トランジスターアンプでの音は聴いたことがない。

伊藤先生のアンプは当然だが、これまでEurodynに接がれて鳴っていたアンプは、
全て出力トランスを背負っていた。

それらの音に不満があったわけではない。
伊藤先生の300BシングルアンプでのEurodynの音は、
本当に素晴らしかった。

それでもオーディオマニアとして、真空管OTLアンプで鳴らしたら、
Eurodynは、どんなふうに鳴ってくれるのか。
このことには強い関心、興味があった。

けれど、そんな機会は得られなかった。

今日、3月5日のaudio wednesdayで鳴らすアインシュタインのアンプを搬入していた。

貸し出してくれたOさんが、チェックしたいということで、
Eurodynに接いで鳴らすことになった。
Eurodynの音を聴いて四十何ちょっと、ようやく真空管OTLアンプでの音を聴くことが叶った。

Date: 7月 9th, 2023
Cate: 真空管アンプ
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真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その16)

カノア・オーディオのAI 1.10が、けっこう気になっている。
OTOTENで、ジャーマン・フィジックスのHRS130をうまく鳴らしていたということもあるが、
フロントパネルがあるという点も、私にとっては大きい。

その15)で書いているように、
管球式プリメインアンプには、フロントパネルがついていてほしい。

出力管が見えているスタイルのほうが好き、という人もいる。
でも、それは管球式パワーアンプですむ。

管球式パワーアンプ(フロントパネルなし)に、
ツマミを数個つけただけの管球式プリメインアンプには、
その音が魅力的であろうと、個人的にはさほど魅力を感じることはない。

管球式プリメインアンプはこれからも登場するだろうが、
フロントパネルをもつ管球式プリメインアンプは、もう絶滅機種かもしれない──、
と(その15)では書いたけれど、AI 1.10が登場した。

これに続く管球式プリメインアンプが他社からも登場してほしい。

Date: 4月 28th, 2023
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その34)

その1)を書いたのが2015年5月。
書き始めた理由は、そのころソーシャルメディアで、
五極管シングルアンプ製作は、
真空管アンプを製作したことのない人にいちばんすすめられる、と投稿を、
何度かソーシャルメディアでみかけたからだった。

(その1)でも書いているように、私が中学生だったころ、
初心者向けのアンプの自作は、五極管のシングルアンプではなく、
プッシュプルアンプだった。

凝った回路、真空管を数多く使用する回路ではなく、
アルテック(ダイナコ)方式と呼ばれる回路だったものだ。

この項で書いているように、いまでも初めて真空管アンプを作るのであれば、
シングルアンプではなくプッシュプルアンプがいいと考える。

その理由はすでに書いてきているので、ここでは省くが、
ここで考えたいのは、いまの時代に、あえて真空管アンプを作ることについてである。

若い世代の人たちには意外に思われるかもしれないが、
真空管アンプのメーカーは非常に少なくなっていた時代がある。

国内ではラックスと、ほんの数社、
海外でもコンラッド・ジョンソンやプレシジョン・フィデリティなどの、
新世代の管球式アンプメーカーが登場する前は、ダイナコぐらいしかなかった。
オーディオリサーチも、半導体アンプに移行していた時期がある。

そういう時代においては、真空管アンプは自分で作るものというイメージがあった。
いまはどうかというと、そのころよりもメーカーの数はかなり増えている。
かなり高価で大型のアンプが当り前のように存在している。

そして一方では中国製の、自作するよりも安価なアンプがいくつも売られている。
一時期は、外観的には真空管アンプなのだが、
真空管はあくまでも飾りでしかなく、実体は半導体アンプというモノもあったが、
いまではそういうインチキをやっているところはなくなったようである。

自分で作るよりも中国製を買ったほうが安い──、
そういう時代なのだ。

なのに自分で作るということは、どういうことなのか。
何を求めてなのか。

そのへんをはっきりとすることなく、
ただただ、初心者には五極管シングルアンプがおすすめ、と書いてしまう人は、
どういう考えなのだろうか。

Date: 1月 16th, 2023
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(と取り巻いていること・その9)

アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その6)」で書いたことと関係してくるのだが、
真空管アンプも、部屋が冷え切った状態での電源投入は避けるべきである。

真空管のヒーターは温度によって、内部抵抗が変化する。
冷たい時が抵抗値は低く、温まって熱くなってくると、抵抗値は大きくなる。

真空管のヒーターにかかる電圧は、温度が低い時もそうでない時も同じである。
ということは、温度が低いとき、つまり抵抗値が低いときには、
オームの法則からわかるように電流が多く流れる。

それは規定値よりも大きな電流である。
ラッシュカレントが生じることになる。

これが真空管のヒーターに大きなダメージを与える。
何回もくり返せば、ヒーターの寿命は短くなる、といっていい。

昔から、機器の金属部を触ってひんやりしていたら、
まず部屋を十分に暖めること、といわれていた。
いまはどうなのだろうか。

「アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その6)」では、
10度よりも低い温度でアナログプレーヤーを使用する人がいることに触れている。

そんなに低い温度では、レコードそのものがまず硬くなっているし、
カートリッジのダンパーやスピーカーのエッジ、ダンパーなどもそうである。
そういう状態で満足な動作は期待できない。

そのことがわからない使い手が増えてきているのだろうか。
同じように低い温度で、真空管アンプの電源を投入すれば、
その度に真空管のヒーターに規定値よりも大きな電流が流れることも、
いまでは忘れられつつあるのだろうか。

とにかく真空管を大事に使いたければ、部屋の温度が十分高くなってから電源投入したほうがいい。

Date: 11月 29th, 2022
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(と取り巻いていること・その8)

昨晩の(その7)に、facebookでコメントがあった。
そこには、近年のスロバキア、ロシア、中国製のKT88は、
寿命も短く、すぐにパチパチといったノイズが出たり、振動、衝撃にも弱い、とあった。

やっぱりそうなんだ、が、コメントを読んでの私の感想だ。

おそらくこのことは電圧増幅管のほうが、より深刻なのかもしれない。
大量に電圧増幅管を集めて、測定してローノイズ管を選別したとする。

けれど、そのローノイズがどれだけの期間、維持できるのか。
意外と短いのではないだろうか。

いまでこそマッキントッシュは真空管アンプを積極的に製品化している。
けれどゴードン・ガウが健在だった時代は、
マッキントッシュは真空管アンプを復活させなかった。

日本から、そのリクエストはあった、ときいている。
けれど、ゴードン・ガウは真空管の品質の問題を理由に、
頑として首を縦にふることはなかった、そうだ。

ゴードン・ガウは真空管の全盛時代を知っている。
その時代にアンプ開発を行ってきているからこそ、
もうすでにそのころの真空管の品質には満足できなかっただけでなく、
信用もしていなかったのではないだろうか。

最初は、いい音、いい性能が得られても、それを持続できなければ、
マッキントッシュのアンプとして製品化はできない。
そういう確固たるポリシーが、ゴードン・ガウにあった、と思っている。

Date: 11月 28th, 2022
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(と取り巻いていること・その7)

300Bという出力管がある。
本家のウェスターン・エレクトリックから復刻されているだけでなく、
各国各社からのさまざまな300Bがある。

これらの300Bの試聴記事を、管球王国ではたびたび行っている。
試聴結果に対しては、とやかくいわないが、
これは現行の300Bに関しては、新品の球での試聴なのだろう。

それで、けっこういい音がする300Bがあったりする。
値段も、本家のウェスターン・エレクトリック製よりも安価である。

そういう300Bを購入する。
たしかに、試聴記事にあったような音がする。
いい買物をした、ということになる。

けれど、ここで私が懐疑的になるのは、その音がどれだけの期間維持できるのかだ。
フィラメントが切れるまで、ほとんど新品のときと変らぬ音を出してくれるのか、
それとも割と早い時期から音に変化があらわれてくるのか。

そのへんのことは管球王国の試聴記事からは読みとることは無理である。
音についての記事も読みたいのだけれど、
経年変化にともなう音の変化についても知りたい。
そう思っているのは私だけだろうか。

(その6)で書いている「寿命」とは、このことである。
真空管そのものの寿命ではなく、その真空管の音の寿命である。

このことは出力管よりも、電圧増幅管のほうがシビアなような気がしている。