Archive for category 真空管アンプ

Date: 7月 9th, 2023
Cate: 真空管アンプ
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真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その16)

カノア・オーディオのAI 1.10が、けっこう気になっている。
OTOTENで、ジャーマン・フィジックスのHRS130をうまく鳴らしていたということもあるが、
フロントパネルがあるという点も、私にとっては大きい。

その15)で書いているように、
管球式プリメインアンプには、フロントパネルがついていてほしい。

出力管が見えているスタイルのほうが好き、という人もいる。
でも、それは管球式パワーアンプですむ。

管球式パワーアンプ(フロントパネルなし)に、
ツマミを数個つけただけの管球式プリメインアンプには、
その音が魅力的であろうと、個人的にはさほど魅力を感じることはない。

管球式プリメインアンプはこれからも登場するだろうが、
フロントパネルをもつ管球式プリメインアンプは、もう絶滅機種かもしれない──、
と(その15)では書いたけれど、AI 1.10が登場した。

これに続く管球式プリメインアンプが他社からも登場してほしい。

Date: 4月 28th, 2023
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その34)

その1)を書いたのが2015年5月。
書き始めた理由は、そのころソーシャルメディアで、
五極管シングルアンプ製作は、
真空管アンプを製作したことのない人にいちばんすすめられる、と投稿を、
何度かソーシャルメディアでみかけたからだった。

(その1)でも書いているように、私が中学生だったころ、
初心者向けのアンプの自作は、五極管のシングルアンプではなく、
プッシュプルアンプだった。

凝った回路、真空管を数多く使用する回路ではなく、
アルテック(ダイナコ)方式と呼ばれる回路だったものだ。

この項で書いているように、いまでも初めて真空管アンプを作るのであれば、
シングルアンプではなくプッシュプルアンプがいいと考える。

その理由はすでに書いてきているので、ここでは省くが、
ここで考えたいのは、いまの時代に、あえて真空管アンプを作ることについてである。

若い世代の人たちには意外に思われるかもしれないが、
真空管アンプのメーカーは非常に少なくなっていた時代がある。

国内ではラックスと、ほんの数社、
海外でもコンラッド・ジョンソンやプレシジョン・フィデリティなどの、
新世代の管球式アンプメーカーが登場する前は、ダイナコぐらいしかなかった。
オーディオリサーチも、半導体アンプに移行していた時期がある。

そういう時代においては、真空管アンプは自分で作るものというイメージがあった。
いまはどうかというと、そのころよりもメーカーの数はかなり増えている。
かなり高価で大型のアンプが当り前のように存在している。

そして一方では中国製の、自作するよりも安価なアンプがいくつも売られている。
一時期は、外観的には真空管アンプなのだが、
真空管はあくまでも飾りでしかなく、実体は半導体アンプというモノもあったが、
いまではそういうインチキをやっているところはなくなったようである。

自分で作るよりも中国製を買ったほうが安い──、
そういう時代なのだ。

なのに自分で作るということは、どういうことなのか。
何を求めてなのか。

そのへんをはっきりとすることなく、
ただただ、初心者には五極管シングルアンプがおすすめ、と書いてしまう人は、
どういう考えなのだろうか。

Date: 1月 16th, 2023
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(と取り巻いていること・その9)

アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その6)」で書いたことと関係してくるのだが、
真空管アンプも、部屋が冷え切った状態での電源投入は避けるべきである。

真空管のヒーターは温度によって、内部抵抗が変化する。
冷たい時が抵抗値は低く、温まって熱くなってくると、抵抗値は大きくなる。

真空管のヒーターにかかる電圧は、温度が低い時もそうでない時も同じである。
ということは、温度が低いとき、つまり抵抗値が低いときには、
オームの法則からわかるように電流が多く流れる。

それは規定値よりも大きな電流である。
ラッシュカレントが生じることになる。

これが真空管のヒーターに大きなダメージを与える。
何回もくり返せば、ヒーターの寿命は短くなる、といっていい。

昔から、機器の金属部を触ってひんやりしていたら、
まず部屋を十分に暖めること、といわれていた。
いまはどうなのだろうか。

「アナログプレーヤーのセッティングの実例と老い(その6)」では、
10度よりも低い温度でアナログプレーヤーを使用する人がいることに触れている。

そんなに低い温度では、レコードそのものがまず硬くなっているし、
カートリッジのダンパーやスピーカーのエッジ、ダンパーなどもそうである。
そういう状態で満足な動作は期待できない。

そのことがわからない使い手が増えてきているのだろうか。
同じように低い温度で、真空管アンプの電源を投入すれば、
その度に真空管のヒーターに規定値よりも大きな電流が流れることも、
いまでは忘れられつつあるのだろうか。

とにかく真空管を大事に使いたければ、部屋の温度が十分高くなってから電源投入したほうがいい。

Date: 11月 29th, 2022
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(と取り巻いていること・その8)

昨晩の(その7)に、facebookでコメントがあった。
そこには、近年のスロバキア、ロシア、中国製のKT88は、
寿命も短く、すぐにパチパチといったノイズが出たり、振動、衝撃にも弱い、とあった。

やっぱりそうなんだ、が、コメントを読んでの私の感想だ。

おそらくこのことは電圧増幅管のほうが、より深刻なのかもしれない。
大量に電圧増幅管を集めて、測定してローノイズ管を選別したとする。

けれど、そのローノイズがどれだけの期間、維持できるのか。
意外と短いのではないだろうか。

いまでこそマッキントッシュは真空管アンプを積極的に製品化している。
けれどゴードン・ガウが健在だった時代は、
マッキントッシュは真空管アンプを復活させなかった。

日本から、そのリクエストはあった、ときいている。
けれど、ゴードン・ガウは真空管の品質の問題を理由に、
頑として首を縦にふることはなかった、そうだ。

ゴードン・ガウは真空管の全盛時代を知っている。
その時代にアンプ開発を行ってきているからこそ、
もうすでにそのころの真空管の品質には満足できなかっただけでなく、
信用もしていなかったのではないだろうか。

最初は、いい音、いい性能が得られても、それを持続できなければ、
マッキントッシュのアンプとして製品化はできない。
そういう確固たるポリシーが、ゴードン・ガウにあった、と思っている。

Date: 11月 28th, 2022
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(と取り巻いていること・その7)

300Bという出力管がある。
本家のウェスターン・エレクトリックから復刻されているだけでなく、
各国各社からのさまざまな300Bがある。

これらの300Bの試聴記事を、管球王国ではたびたび行っている。
試聴結果に対しては、とやかくいわないが、
これは現行の300Bに関しては、新品の球での試聴なのだろう。

それで、けっこういい音がする300Bがあったりする。
値段も、本家のウェスターン・エレクトリック製よりも安価である。

そういう300Bを購入する。
たしかに、試聴記事にあったような音がする。
いい買物をした、ということになる。

けれど、ここで私が懐疑的になるのは、その音がどれだけの期間維持できるのかだ。
フィラメントが切れるまで、ほとんど新品のときと変らぬ音を出してくれるのか、
それとも割と早い時期から音に変化があらわれてくるのか。

そのへんのことは管球王国の試聴記事からは読みとることは無理である。
音についての記事も読みたいのだけれど、
経年変化にともなう音の変化についても知りたい。
そう思っているのは私だけだろうか。

(その6)で書いている「寿命」とは、このことである。
真空管そのものの寿命ではなく、その真空管の音の寿命である。

このことは出力管よりも、電圧増幅管のほうがシビアなような気がしている。

Date: 11月 27th, 2022
Cate: 真空管アンプ

真空管アンプの存在(と取り巻いていること・その6)

真空管アンプにとって、真空管はこういっていいならば消耗品である。
ヒーターが切れてしまえば、交換するしかない。

真空管全盛時代ならば、切れたら新品を買ってきて交換。
五味先生のように、MC275用のKT88を何本も買ってきて選別する人もいた。
     *
 もちろん、真空管にも泣き所はある。寿命の短いことなどその筆頭だろうと思う。さらに悪いことに、一度、真空管を挿し替えればかならず音は変わるものだ。出力管の場合、とくにこの憾みは深い。どんなに、真空管を替えることで私は泣いてきたか。いま聴いているMC二七五にしても、茄子と私たちが呼んでいるあの真空管──KT88を新品と挿し替えるたびに音は変わっている。したがって、より満足な音を取戻すため——あるいは新しい魅力を引出すために──スペアの茄子を十六本、つぎつぎ挿し替えたことがあった。ヒアリング・テストの場合と同じで、ペアで挿し替えては数枚のレコードをかけなおし、試聴するわけになる。大変な手間である。愚妻など、しまいには呆れ果てて笑っているが、音の美はこういう手間と夥しい時間を私たちから奪うのだ。ついでに無駄も要求する。
 挿し替えてようやく気に入った四本を決定したとき、残る十二本の茄子は新品とはいえ、スペアとは名のみのもので二度と使う気にはならない。したがって納屋にほうり込んだままとなる。KT88、今一本、いくらするだろう。
 思えば、馬鹿にならない無駄遣いで、恐らくトランジスターならこういうことはない。挿し替えても別に音は変わらないじゃありませんか、などと愚妻はホザいていたが、変わらないのを誰よりも願っているのは当の私だ。
 だが違う。
 倍音のふくらみが違う。どうかすれば低音がまるで違う。少々神経過敏とは自分でも思いながら、そういう茄子をつぎつぎ挿し替えて耳を澄まし、オーディオの醍醐味とは、ついにこうした倍音の微妙な差異を聴き分ける瞬間にあるのではなかろうかと想い到った。数年前のことである。
 以来、そのとき替えた茄子はそのままで鳴っているが、真空管の寿命がおよそどれぐらいか、正確には知らないし、現在使用中のテープデッキやカートリッジが変わればまた、納屋でホコリをかぶっている真空管が必要になるかもしれない。これはわからない。だが、いずれにせよ真空管のよさを愛したことのない人にオーディオの何たるかを語ろうとは、私は思わぬだろう。
     *
「五味オーディオ教室」に、そう書いてあった。
MC275はプッシュプルアンプだから、特性の揃っているKT88を四本選ぶわけだが、
ここでの特性の揃っている、は、単に測定器での数値が揃っている、という意味ではないはずだ。

《より満足な音を取戻すため——あるいは新しい魅力を引出すために──スペアの茄子を十六本》、
五味先生の時代、十六本の中から四本を選ぶことができたといえるのだが、
いまの時代はどうなのだろうか。

十六本よりももっと少ない数のなかから満足できる四本を選べるのか、
それとももっと多くの本数でなければ満足できる四本が選べないのか。

そしてもうひとつ思うのは、そうやって選んだ四本の寿命である。
ここでの「寿命」はヒーターが切れるまでの寿命のことではない。

Date: 11月 4th, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(50CA10単段アンプ・その16)

すでに書いているように、50CA10単段シングルアンプのシャーシーは、
タカチのSRDSL8である。

いつかは作る、と決めている300Bプッシュプルアンプとなると、
シャーシーから、どこかに発注したいと思っている。

昔と違い、いまではシャーシーの特註に応じてくれる会社は、
インターネットで検索すればいくつも見つかる。
見つかりすぎて、どこに決めようか迷うほどである。

予算が潤沢であれば、いくつかのところに発注して、という手あるが、
そんな余裕はないわけで、ほぼほぼ直観で、ここ! と決めるしかない。

かなり先のことになりそうなのだが、
300Bプッシュプルアンプのシャーシーは、野方電機工業に依頼しようと思っている。

周りの誰かが、野方電機工業に発注したことがあるわけでもない。
ただたんに野方電機工業のウェブサイト、それからtwitterを見ていたら、
かなりいい感じがしただけである。

Date: 10月 9th, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(50CA10単段アンプ・その15)

(その4)に書いているように、
シャーシーは、タカチのSRDSL8である。
SRDは鈴蘭堂の略で、鈴蘭堂のSL8の復刻版である。

伊藤先生のEdプッシュプルアンプに憧れてきた私にとって、
鈴蘭堂のSLシリーズのシャーシーで不満なのは、
天板の長辺二辺を折り曲げていること。

フラットな天板に、なぜしないのか、とみるたびに思う。
ああいうふうに曲げることで、天板の剛性を確保していることはわかっている。
それでも、垂れ下がっているように感じてしまうから、
天板に関しては、アルミ板を別途購入し、加工するつもりだ。

それにしても、なぜ曲げるのか。
剛性ばかりではないようにも思っている。

マッキントッシュの管球式パワーアンプの影響があってのこと、とも思っている。
MC275もMC240も、天板のこの部分を折り曲げている。

もっともマッキントッシュの場合は、
入出力端子が取りつけられている部分もいっしょに折り曲げていることもあって、
鈴蘭堂のシャーシーに感じるような不満はない。

Date: 10月 4th, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(50CA10単段アンプ・その14)

50CA10の単段シングルアンプを自作するにあたって、
小さなところではあるが、無視というか、妥協したくないのがソケットである。

50CA10はコンパクトロン管で、12ピンである。
いまでも12ピンのソケットは新品で入手できるけれど、
積極的に使いたいと思わせないモノばかり。

個人的に真空管のソケットは、
マイカ・フェルド・フェノリックで作られているのがいい。

真空管のソケットの色を気にするなんて、といわれそうだが、
黒とか白とかのソケットだと、それがメーカー製のアンプならば、
それほど気にならなくても、自分で作るとなると違ってくる。

ソケットをどうするか。
そんなことをなんとなく思っていたら、ヤフオク!で、
12ピンのソケットが出品されていた。

アメリカ製である。
しかもおもっていたよりも安価で出品されていて、
誰も入札していなくて、即決価格が設定されていたから、すぐさま落札。

今日、そのソケットが届いていた。
ゆっくりではあるが、確実に進んでいる。

Date: 9月 19th, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(50CA10単段アンプ・その11へ、さらに補足)

武末数馬氏のECC81、上杉先生のECC82、
どちらも八本のプッシュプルのパワーアンプに以前から関心を持ちながらも、
今回50CA10の単段シングルアンプを優先して作るのには、
手元に来たある人の50CA10のシングルアンプという、いわば素材となるアンプがあるからだ。

それでもECC81、ECC82の八本パラレル・プッシュプルアンプを作ろうと思えば、
ある程度の部品は揃っている。

なのに単段シングルアンプにこだわるのは、
信号経路をかなり短くできるということが、もう一つの理由といえなくもない。

真空管のパワーアンプで信号経路を極力短くすることに、どれだけの意味があろうか。
出力トランスの巻線の長さを考えれば、
入力から出力トランスの一次側巻線までの信号経路を短くしても、
割合で考えればあまり意味のある、効果のあることではないのではないか。

そうは思いながらも、単段シングルアンプならば入力端子から出力トランスまでの信号経路は、
わずかばかりで仕上げることはできるわけでは、
例えばシェルリード線を交換した時の音の違いの大きさを思い浮べたりもする。

カートリッジ内の巻線、トーンアーム内の配線、トーンアームからアンプまでのケーブル、
これらトータルの長さからすればシェルリード線の割合はわずかだ。
なのにシェルリード線を交換すると、少なからぬ音の違いが生じる。

だからいまでもシェルリード線は各社から発売されている。
この経験があるからこそ、その先に長いもの(出力トランス)が存在していても、
そこまでの配線をできるかぎり短くすることが、決して無意味とは思えないし、
シェルリード線のように、割合からするとかなりの音の違いになってあらわれるかもしれない。

ECC81、ECC82八本パラレルのアンプも単段構成にすることはできる。
それでも信号経路は、どうしても長くなってしまう。

長くなってしまうことよりも、短い信号経路は長い信号経路が混在することになる。

Date: 9月 13th, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(50CA10単段アンプ・その11の補足)

その11)でも、別項でも、
武末数馬氏のECC81の八本並列接続のプッシュプルアンプについて触れている。

武末数馬氏が、このアンプをラジオ技術に発表されたのは1981年ごろである。
こういう構成のアンプは、武末数馬氏が最初だと思っていた。
わりと最近までそう思っていたが、
先日、上杉先生の「管球式ステレオアンプ製作80選」の目次を、
インターネットで眺めていたら、
そこに12AU7の八本並列のパワーアンプの記事があるのに気づいた。

「管球式ステレオアンプ製作80選」は古い本で、いま復刻版が入手できる。
手元にないので、12AU7のパワーアンプの記事がいつ発表されたのかははっきりとしないが、
武末数馬氏のアンプよりもずっと前のはずだ。

12AU7はECC82。
武末数馬氏はECC81。

上杉先生のアンプは、初段で位相反転しているようだ。
武末数馬氏のアンプは入力トランスで対応している。

そういう違いはあるが、八本並列というところは同じである。
ECC81、ECC82八本並列プッシュプルアンプも面白いと感じているが、
それ以上に、オーディオの歴史をふり返えると、もっともっと面白いことに気づく。

そんなこと、いまのオーディオ(技術)には、ほとんど関係ない──、
そんなふうに切り捨てることは誰にでもできようが、果たしてそうだろうか。

Date: 9月 9th, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(50CA10単段アンプ・その13)

50CA10のヒーターは、50V、0.175Aという規格だから、
オームの法則で抵抗値は285.7Ω程度である。

この値はヒーターが十分に熱くなってのことだ。
冷めた状態では、テスターで測かると、約40Ωである。

つまり50CA10を二本直列にすると、40Ω+40Ωで約80Ωしかない。
ここに100Vの交流電圧がかかるわけだから、最大で100V/80Ωで、
約1.25Aの電流が流れることになる。

1.25Aは0.175Aの七倍ほどである。
ヒーターの温度の上昇に伴い抵抗値も増えていくので、
十分に熱くなれば、0.175Aに落ち着くわけだが、それまでの時間、
短い時間であっても、50CA10のヒーターには規格値よりもかなり大きな電流が流れる。

白熱電球のフィラメントが切れるのは、スイッチを入れた時である。
このことは真空管のヒーターと同じである。
冷めた状態ではフィラメントの抵抗値が低いから、過大な電流が流れるからだ。

50CA10がいまでも新品が安価に入手できるのであれば、そういう使い方でもいい。
けれど、何度も書いているように50CA10は、そうではなくなっている。

なので私は50CA10と直列に285Ω程度の抵抗を入れる。
こうすれば、50CA10のヒーター温度が低い状態でも、
285Ω+40Ωで、約325Ωになるから、電源を入れた直後でも、100V/325Ωで、約0.3A。

50CA10直列接続よりもかなり低い値に抑えられる。
これだけでも、50CA10の寿命をのばせるはずである。

こういう場合、セメント抵抗を使う人が割と多い。
セメント抵抗の音の悪さは、けっこうなものである。

いや、セメント抵抗も使い方次第、という人もいるようだが、
私はたとえヒーター回路であっても使いたくない。

Date: 9月 5th, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(50CA10単段アンプ・その12)

50CA10のヒーターは、50V、0.175Aとなっている。
これは50CA10を二本直列にすることで、AC100Vに直接接続できる。

電源トランスから出力管用のヒーター巻線を省ける。
そういうメリットがある。

50CA10の単段シングルアンプでは、50CA10を左右チャンネルで二本使うわけだから、
その二本を直列にすればいいわけだが、
ではどちらを上にするのか、という問題が生じる。

50CA10のプッシュプルアンプならば、四本になり、
二本、二本の直列接続は、左チャンネルの二本、右チャンネルの二本とわけることで、
左右チャンネルを同条件にできる。

それでもプッシュプルの上の球を、ヒーターの配線ではやはり上にするか、
それとも意図的に下にもってくるのか──、
まだ試していないが、それによる音の違いはあるはずだ。

それがシングルアンプとなると、片方の50CA10を上にするということは、
どちらかのチャンネルの50CA10を上にするわけで、
どちらを上にするか(下にするか)は、左右チャンネルの音に影響をもたらす。

50CA10のシングルアンプで、ヒーター配線をどう処理するか。
私は抵抗を介しての接続を考えている。

こうすることで、ヒーターの寿命も多少はのびるはずだからだ。

Date: 8月 31st, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(50CA10単段アンプ・その11)

真空管アンプの自作に強い関心をもつようになったのは、
無線と実験に載っていた伊藤先生のEdの固定バイアスのプッシュプルアンプである。

このアンプは、
ラジオ技術、初歩のラジオ、無線と実験などに掲載されていた真空管アンプとは、
とにかく佇まいがまるで違っていた。

伊藤先生以外の真空管アンプの記事は、
真空管、真空管アンプの勉強のために読んでいた、ともいえるが、
伊藤先生の記事だけは違って、これをそのまま作りたい、と初めて思ったほどだった。

つまり武末数馬氏の記事も、私にとっては、勉強のための記事であった。
武末アンプを作りたい、と思ったことはない。

その8)の最後に書いた、
武末数馬氏のアンプに憧れたことは一度もなかった──、
とはこういう意味を含めてである。

それでも武末数馬氏の記事は割と熱心に読んでいた。
ECC81のパワーアンプは、いまでも追試してみたいと思っている。

ECC81を複数本並列接続しての出力5W+5Wのパワーアンプは、
どんな音がするのか、なかなか想像がつかない面もある。

こういっていいのなら、私は武末数馬氏のアンプの音には関心がなかった。
勉強にはなる記事とは思っていたけれど、
だからといって、そのアンプが私の求める音、満足する音を聴かせてくれるようには、
なんとなくではあったけれど感じられなかった。

別に武末数馬氏のアンプだけではない、
ほとんどの自作アンプの記事が、私にはそうだった。

それでもここで武末数馬氏の名をあげているのは、
勉強になったからである。

Date: 8月 30th, 2022
Cate: 真空管アンプ

五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(50CA10単段アンプ・その10)

50XA10の単段シングルアンプをつくるにあたって、
こういう音を目指す、というようなことは何ひとつない。

ただただ単純に、50CA10の単段シングルアンプを作る材料が、
主にトランス類が揃っているということ、
それに50CA10の音を、自分の手で確認しておきたい──、
そのくらいの動機である。

真空管も最初から50CA10だし、
トランス類もすべて決っている。

私が選択するのは抵抗とコンデンサーぐらいであるが、
それだって、単段シングルアンプだけに使用する部品数は極端に少ない。

あれこれいじって音作りをしようという目的には、あまりそぐわない。
だからといって、とりあえず音が出ればいいや、という気持で取り組むわけではない。

作る以上は、自分で使う気になるモノでなければならない。
音が求めるクォリティに達していなければ、すべて無駄とはいわないものの、
六十を目前の男が作る意味はない。

十代のオーディオに興味を持ったばかり、
真空管アンプの音に興味があって、自分で作ってみたい──、
もうそういうこととはなにもかもが違う。