いまやっている、このブログとはちがう作業中に、PM510についての瀬川先生の記述を見つけた。
ステレオサウンド 57号である。
この号の特集記事はプリメインアンプ34機種の試聴で、瀬川先生は試聴用のスピーカーとして、
メインはJBLの4343。それにアンプのスピーカーへの適応性をさぐるためにアルテックの620Bも使われている。
少々話ははずれるが、このプリメインアンプ試聴における瀬川先生の「しつこさ」は、
なぜ、ここまでやられるのか? という想いがしてくる。
ACプラグの極性のよる音の差、から、
カートリッジも5機種用意され、そのうちMC型カートリッジの昇圧手段として、
トランスを3種類、適宜つなぎかえられている。
いったいひとつのアンプを聴くに、どれだけ時間を費やされていたのだろうか。
カートリッジを5機種交換して調整して、という手間だけでも、
いくらオーディオ機器の扱いに慣れているといっても、
34機種のプリメインアンプを聴くとなると、それだけでもけっこうを時間になる。
ここの調整がいいかげんであれば、アンプの差を聴いてるのか、
カートリッジの調整のバラつきによる音の差を聴いているのか、はっきりしなくなってくる。
瀬川先生ほどのキャリアがあれば、これほどの時間をかけなくても、編集部が要求してくる原稿枚数を、
編集部が満足するだけの質の高さで書きあげるだけの「もの」はお持ちのはずだ。
なのに、しつこいほどに、アンプを各部、細部にわたり試聴されている。
「なれあうな」という声がきこえてきそうである。
このテストでスピーカーはJBLとアルテックと書いたが、じつは1機種用意されている。
発売になったばかりのロジャースのPM510である。
ただ、これはうまく鳴るであろうと確信をもてるアンプだけで使われている。
なぜかといえば、
PM510が「アンプのクォリティおよびもち味によって、鳴り方の大きく左右される」スピーカーだから、である。
瀬川先生の試聴記には「スピーカーへの適応性」という項目があった。
そこにアルテックについては、すべてのアンプで書かれている。
ところが、PM510がどう鳴ったのかについては、1機種のみである。
最初に確信がもてるアンプだけで鳴らされた、
とあるようにそう多くの機種で試されたわけでないことはわかるが、
それでも試聴記に書けるだけの音で、PM510を鳴らしたのは、その1機種だけということになる。
しかも、そのアンプは、34機種最高価格のものではなかった。108,000円のビクターのA-X7Dなのだった。
ステレオサウンド 56号のPM510の記事を読んで以来、次に買うスピーカーはPM510と決めていた。
そのとき使っていたスピーカーからすると一気にグレードアップすることなる。
それでも途中で段階を踏むよりも、PM510までよそ見をすることなくつき進んだほうがいいと考えたからだ。
PM510を買う、なんて高校生にとっては無謀な計画をたてる一方で、
アンプはセパレートアンプなんてとうてい無理だから、そのとき使っていたサンスイのAU-D907 Limitedか……。
現実的に考えていた。でもPM510と合うかといえば、そぐわない気もしていた。
そこに、A-X7Dの、瀬川先生の試聴記。