Date: 8月 25th, 2010
Cate: 音楽性
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「音楽性」とは(その8)

若いひとが、以前に聴いた体験がないにもかかわらず、
真空管アンプ(それも古典的な回路のもの)で鳴らすフルレンジスピーカーの音に、
惹かれるものがある、という話をきく。なつかしい音だ、という。

ほんとうに、それは「なつかしい音」なのだろうか。
たとえば私の幼いころ、実家にあったテレビは真空管式でスピーカーはフルレンジということもわずかだがあった。
それにラジオはもちろん、はじめて自分で小遣いを貯めて買ったラジカセも、スピーカーはフルレンジ型だった。

そういう経験が多少なりともある私の世代、そしてもっと真空管式のテレビやラジオを聴いてきた時間の長い、
私より上の世代、さらにアクースティック蓄音機から聴いてきた、もっと上の世代にとっては、
昔ながらの真空管アンプフルレンジ・スピーカーの組合せの音は、「なつかしい音」である。

けれど、私よりも下の世代で、ラジカセは最初からステレオで、もちろんトランジスター式で、
しかもスピーカーはラジカセだけでなくテレビも2ウェイだった、という経験だけならば、
彼らにとっては「なつかしい音」ではなく、いままで聴いたことのない音のはずだ。
じつのところ、時代の違いによるエキゾティシズムに惹かれているのではなかろうか。

ただ知識として、そういうモノが古いということが頭の中にあるために、
ほぼ条件反射的に「なつかしい音」と判断している──、これを否定できるだろうか。

若いひとのなかに、こういう音に惹かれることがあるのはけっこうなことだと思っている。
ただ、それは古い世代のひとたちが惹かれるのとは、また違う意味がある。そう思う。

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