Archive for category 電源

Date: 9月 3rd, 2023
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その10)

別項「ワイドレンジ考(その8)」で書いたことを、もう一度書いておく。

AC電源のオーディオ機器を二台以上接続することで発生する多重ループの問題を低減するのに有効なのは、
バッテリー式電源の採用か絶縁トランスの採用である。
絶縁トランスが効果的だからといって、すべてのオーディオ機器に使用するのは、ひかえたい。

どんなに優れた絶縁トランスでも、固有音が存在する。
この固有音を完全になくすことは不可能であるから、できるだけ使用数を減らしながらも、
より効果的に使うには、中間の機器に採用することである。

CDプレーヤーとプリメインアンプという構成ならば、
迷うことなくCDプレーヤーに絶縁トランスを使う。
CDプレーヤーとセパレートアンプならば、コントロールアンプに使用する。

CDプレーヤーがセパレートで、アンプがプリメイン構成ならば、D/Aコンバーターに、
CDプレーヤーもアンプもセパレート構成なら、CDトランスポートとコントロールアンプに使う、
という具合にだ。

ただし絶縁トランスも完璧な製品は存在しない。
より効果的な使用方法は、絶縁トランスを二段で使用することである。

絶縁トランスのあとにもう一つ絶縁トランスを介することで、
理屈としては、より効果的になる。
といっても、二段構成で絶縁トランスを使った音を聴いたことはない。

トランスをそれだけ用意するのが面倒ということもあるが、
トランスの数が増えていくことで、設置もそれにともない面倒になってくるからだ。

ならばより効果的なのせは、やはりバッテリー電源である。
とはいえバッテリー電源は容量の兼合いがあるし、
それに個人的にはすべてのバッテリー電源がAC電源よりも、
すべての点で優れているとは捉えていない。

絶縁トランスにしてもバッテリーにしても、適材適所である。

Date: 9月 3rd, 2023
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その9)

(その8)を書いたのは2020年11月だから、ほぼ三年前。
(その8)で、アンカーから出ているAnkerのPowerHouse 100に興味がある、と書いた。

購入しよう、と思っていたのに、
ついつい他のモノを優先していたら、製造中止になっていた。
後継機種はPowerHouse 90で、なぜか容量は少しばかり小さくなっていた。
ふつうは大きくなるものだろう──、と思っているから、
90なのか……、と思い、買うのをためらっていた。

もう少し待てば、PowerHouse 120が登場するかもしれない、と勝手に期待もしていた。
結局、PowerHouse 120は登場していない。
これから先、登場するかどうかはなんともいえないが、
そろそろ買おうかな、と思っていたところに、amazonで25%オフで売っていた。

ここで買わなければ、またしばらく買わないだろうからと購入。
届いたPowerHouse 90は写真で想像していたよりも、けっこう大きい。
実物を手にとれば、このサイズになるのもわかるのだが、
写真だけ見ていると、小さく思えてしまう。

PowerHouse 90は、110VのAC出力を持つモバイルバッテリーである。
しかも60Hzである。
PowerHouse 100は、どうだったのだろうか。
100V/50Hzだったのか、それとも110V/60Hzだったのか。

PowerHouse 90は、メリディアンの218用に買った。
218の消費電力は、わずか5W。
PowerHouse 90のAC出力は最大100Wだから、余裕は十分ある。

試しに218に接続してみた。
音の変化は小さくない。

バッテリーからAC出力を作り出しているのが効いているのか、
それとも110V/60Hzだからなのか。

218への給電はルンダールのLL1658を通しているから、
220V/60Hzとなる。

Date: 2月 9th, 2023
Cate: 電源

スイッチング電源のこと(その13)

FPGA(Field Programable Gate Array)が、
オーディオ雑誌の誌面にも登場するようになって数年くらいか。

FPGAを搭載するオーディオ機器の数は、これから増えていくことだろう。
その利用はますます拡大していくのだろうが、
数日前、FPGAのなかには、最大50Aもの電流を瞬時に必要とするモノがあることを知った。

5Aではなく50Aである。
FPGAの電源電圧が5Vだとしても、50Aだと瞬間的にとはいえ250Wの電力となる。

50Aといった大電流を必要とするFPGAがオーディオ機器に使われているわけではないだろうが、
より高度な信号処理を行おうとすると、より高性能・高速度のFPGAとなり、
瞬間的な消費電流の大きさは、大きくなるはずだ。

そうなっていった場合、瞬間的な電流供給能力に関しては、
動作周波数の高いスイッチング電源のほうが、いわゆるリニア電源よりも有利なのではないだろうか。

Date: 10月 17th, 2022
Cate: 電源

ACアダプターという電源(GaN採用のアダプター・その4)

GaN採用のACアダプターを使うようになって四ヵ月が過ぎた。
もとのACアダプターに戻そうとは、まったく思っていない。

GaN採用のACアダプターに関しては、中高域の粗さが気になる、
そんな評価も目にしていた。

新品のGaN採用のACアダプターが届いて、とにかく接続する。
最初になってきた音は、良さも感じられるし、
いわれてみれば中高域に粗さがあるといえばある。

でも新品だし、少し様子をみて判断しようということで、
一日、二日、三日と連続して使用していると、気にならなくなっている。

GaN採用のACアダプターに否定的な意見が、いまもあるのは知っている。
GaN採用のACアダプターといっても、いまでも多くの製品が市場に出ている。

いいGaN採用のACアダプターもあれば、そうでないGaN採用のACアダプターもある。
どちらう選んで使っているのか、
そのことを無視しての評価はあてにならない。

それにGaN採用のACアダプターにして、
時間帯による音の違いがかなり減ったように感じられることだ。

もともとついていたACアダプターでは、時間帯によって、
日によって、けっこう音が違うように感じることがままあった。

電源の状態が影響してのことなのかな──、
そんなふうに思っていたものの、特に対策をすることはしなかった。

GaN採用のACアダプターにして、それは明らかに減っている。
なのでGaN採用のACアダプターに、いまのところけっこう満足している。

Date: 6月 1st, 2022
Cate: 電源

ACアダプターという電源(GaN採用のアダプター・その3)

バッテリーは化学反応によって電気を起している。
それが直流であるから、連続した化学反応が起っていると捉えがちだが、
ほんとうにバッテリー内での化学反応は、一つの化学反応が連続しているのだろうか。

実際のところは、無数に近い一瞬一瞬の化学反応が起っているために、
一つの連続した長い時間の化学反応と捉えているだけではないのだろうか。

電子の移動によって電気が起るのだから、
電子の数だけの化学反応が起っていると捉えれば、
スイッチング電源の動作周波数が高くなっていくほどに、
バッテリー内の化学反応の状態に近くなっていくのではないだろうか。

実際のところ、動作周波数がどれだけ高くなれば、そういえるのかはよくわかっていない。
少なくとも20kHzとか50kHzではないだろう。
もっと高い周波数、私はなんの根拠もなしに1MHzあたりを超えたあたりから、
そういえるようになるのではないか──、
そんなふうにスイッチング電源について、ある程度の知識を得たころから、
そう考えるようになっていた。

GaN採用のACアダプター(スイッチング電源)は、1MHzくらいの動作周波数のようだ。
もっと動作周波数は高くなっていくのかもしれない。
2MHz、5MHz、そして10MHzとなっていったとしよう。

どこかにさらに大きく音が変るポイントがあるような気がする。

GaN採用のACアダプターが、理想の電源というつもりはないが、
かなり可能性を感じているし、
リニア電源が必ずしもスイッチング電源よりも優れているとも考えていない。

優れたリニア電源もあるし、優れたスイッチング電源もある。
これからスイッチング電源は、さらに優れたモノが出てくる可能性がある。

Date: 5月 29th, 2022
Cate: 電源

ACアダプターという電源(GaN採用のアダプター・その2)

別項「スイッチング電源のこと(その1)」で書いているように、
私が聴いたアンプのなかでスイッチング電源を搭載したアンプは、
ビクターのパワーアンプ、M7070が最初だった。

いまでは小型軽量化のためにスイッチング電源を使われることが多いが、
M7070はそうではなく、理想の電源を追求した結果としてのスイッチング電源の採用、
少なくともビクターは当時、そう謳っていた。

M7070は、瀬川先生が定期的に来られていた熊本のオーディオ店で聴いている。
国内・海外のいくつかのセパレートアンプとの比較試聴でなかで聴いたM7070。
瀬川先生は、そのとき「THE DIALOGUE」を鳴らされたのだが、
他のアンプでは聴けない、と思わせるほど、パルシヴな音の鋭さは見事だった。

それは聴く快感といえた。
M7070の音でクラシックを聴きたいとはまったく思わなかったけれど、
スイッチング電源というのは、すごい技術なのかも──、と高校生の私に思わせるほど、
強烈な音の印象を残してくれた。

M7070のスイッチング電源の動作周波数は35kHzであった。
同時代のソニーのTA-N86、N88、TA-N9もスイッチング電源搭載だった。
これら三機種の動作周波数は20kHzだったことからも、
当時、このあたりが動作周波数の上限だったのだろう。

より高速な半導体素子が登場すれば、動作周波数は高くできる。
高くなれば電源として高効率となる。

こういう考え方もできる。
スイッチング電源の動作周波数が高くなるということは、
ある意味、バッテリー的動作に近くなっていくのではないのか、である。

Date: 5月 28th, 2022
Cate: 電源

ACアダプターという電源(GaN採用のアダプター・その1)

去年あたりからソーシャルメディアで、
GaN(窒化ガリウム)採用のACアダプターを使うと、いい結果が得られる。
つまり音がよくなる、というのをみかけるようになった。

製品の数も増えてきた。
AppleからもGaN採用のACアダプターが登場した。

製品の数が増えるのは結構なことなのだが、
選択肢が増えすぎると、どれをまず選ぼうか。
そのことで多少迷うことになる。

私のシステムにもACアダプターは複数ある。
GaN採用のACアダプターでいい結果が得られれば、リニア電源を自作することもなくなる。
それもいいかもしれない、と思い、
とりあえず一つ買ってみた。

オーディオに使って割と評判がよさそうな製品があった。
安価である。
とりあえず試してみる分には、ちょうどいい。

まずルーターで試してみたかったので、12Vのトリガーケーブルと一緒に購入。
ルーターで使っていたACアダプターは付属のもの。

ずっと他のACアダプターに交換してみたら──、
そんなことを考えながら、三年ほど使っていた。

結果は、というと、いい感触が得られた。
今回選んだのがよかったのか、
それとももっといいGaN採用のACアダプターがあるのか。
そのへんは、これから試して確認していきたい。

それにトリガーケーブルは、自作するつもりでいる。
トリガーデヴァイス(数百円)を買ってくれば、自作可能である。
ここのところでも、いくつか試してみたいことがあって、自作した方が試しやすい。

Date: 5月 20th, 2021
Cate: 電源

ACアダプターという電源(その2)

ACアダプターとは、いわゆる外付け電源である。
外付け電源といえば、オーディオマニアにとっては、
マークレビンソンのLNP2、JC2が採用したことから、
コントロールアンプの理想の実現のための条件の一つのようにもうつっている。

私も中学生のころは、そう思っていた、というより信じていた。
電源トランスを、アンプ本体と別シャーシーとすることで、
その影響から逃れられる。

けれど少し勉強すればわかることなのだが、
外付け電源にするということは、アンプ本体との接続用ケーブルが必要になる。
このケーブルは外付け電源の設置の自由度を考慮すると、それほど短くできない。

どうしてもある程度の長さは必要となる。
ケーブルは、どんなに良質のものであっても、インダクタンスをもつ。
ケーブルが長くなれば、それだけその値は大きくなる。

マークレビンソンの外付け電源には定電圧回路が内蔵されていた。
定電圧回路の出力インピーダンスは低い。

けれど、それはあくまでも定電圧回路の出力端での値であって、
そこからケーブルを伝わって、別シャーシーのアンプ本体に届くときには、
ケーブルのインダクタンスによって中高域からインピーダンスの上昇が始まる。

電源部とアンプ本体を結ぶケーブルが長くなればなるほど、
インピーダンスの上昇は低い周波数から始まることになる。

つまり可聴帯域において、定電圧回路の出力インピーダンスは、
ケーブル込みのトータルでは、フラットではなくなってしまう。

ではどうすればいいのかというと、ケーブルを短くするのが一つの手である。
マークレビンソンもML6では、かなりケーブル長が短くなっている。
それにマークレビンソンの電源も、途中からリモートセンシングを採用することで、
インピーダンスの上昇を抑えるようになった。

Date: 5月 16th, 2021
Cate: 電源

ACアダプターという電源(その1)

昔と今、いろいろ変化はあるのだが、
ACアダプターの数は、確実に増えてきている。

四十年前に、東京で独り暮しを始めた。
そのころはACアダプターは、一つもなかった。
ACアダプターを必要とする製品を使っていなかった。

私が東京で最初に使ったACアダプターは、
ポータブルCDプレーヤー用のそれだった。

このころのACアダプターは、まだ大きく、けっこう重かった。
そのころまでは、ACアダプターは、がつくて重いものという印象だった。

それがスイッチング電源のACアダプターが主流となり、
ACアダプターを必要とする機器も増えてきた。

オーディオと関係ないところで、iPhoneやiPod、iPad、
PowerBookにMacBook Proがあることで、ACアダプターはいくつもある。

オーディオもアナログディスクとCDの再生だけであれば、
ACアダプターを必要とすることはなかった。

けれどネットワークオーディオ、PCオーディオと呼称される領域となると、
ACアダプターを必要とする機器を使うことにもなる。

ほんとうに身の回りにACアダプターがころがっている、
そういいたくなるほど増えてきている。

そして、オーディオの世界では、高音質を謳うACアダプターが登場している。
スイッチング電源のモノもあるし、
リニア電源と呼ばれる、トランス、ダイオード、コンデンサー、定電圧電源の組合せによる、
いわゆる昔ながらの構成のモノもある。

Googleで検索すれば、ACアダプターを製品化しているブランドは、少なくない。
それらの製品のほとんどはローノイズを謳っている。

Date: 12月 10th, 2020
Cate: 電源

スイッチング電源のこと(その12)

メリディアンの218を、200Vで使っていることは、
ここでも書いているし、別項でも触れている。

audio wednesdayにも、200V用トランス(ルンダールのLL1658)は持参していた。
けれど10月からは持っていっていない。
218は100Vで鳴らしていた。

200Vの音に飽きたとか、100Vのほうがいいと感じるようになったわけではなく、
別項で書いているグリッドチョーク的ケーブルを持っていくようになったためである。

このケーブルには、タムラのA8713を使っているから、重い。
ライントランスが二つついている。

それに200V用のトランスが加わると、
その他にも持参するモノがいくつかあって、けっこうな重量となる。

行きはまだいいが、帰りは夜遅くなったうえに空腹なことも加わり、
けっこうしんどく感じる。
それで200V用のトランスは持っていかなくなった。

12月2日のaudio wednesdayは最後だから200Vの音を聴いてもらおう、と最初は考えていた。
けれどiPhone 12 ProとMatrix AudioのX-SPDIF2との組合せで音が鳴らないために、
Mac miniを代りに持っていくことになった。

X-SPDIF2が増えて、そこにMac miniが加わって、
グリッドチョーク的ケーブルと合せると、一つのバッグには納まりきらず、
二つになっただけでなく、いままでいちばんの重さになってしまった。

200V用のトランスを入れるスペースの余裕はあったが、
重量の余裕は、ほぼなかったため、100Vのままの音を聴いてもらっていた。

グリッドチョーク的ケーブルと200Vでの218の音は、
いまのところ誰にも聴いてもらっていない。

Date: 11月 26th, 2020
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その8)

アンカーからAnker PowerHouse 100が発売になった。

モバイルバッテリーなのだが、Anker PowerHouse 100は、
DC出力以外にAC100V(正弦波)の出力もそなえている。

バッテリーからAC100Vを作り出して供給する製品はすでにいくつもあり、
昨年はホンダがLiB-AID E500 for Musicという製品も出してきている。

Anker PowerHouse 100は、ずっとコンパクトである。
メリディアンの218に使うには十分な容量である。
しかも手頃な価格におさまっている。

できれば200V出力を、といいたいところだが、
とにかく試してみたい、と思っている。

Date: 4月 7th, 2020
Cate: 電源
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スイッチング電源のこと(その11)

アムトランスにルンダールのLL1658を注文した二日後に、
Mさんという、218ユーザーの方からメールがあった。

リン用に是枝重治氏が製作されたものを使って、218を240Vで使っている、とあった。
小椋佳の「彷徨」(MQA-CDで出ている)が、
広がりと密度が共存する音場で聴けるようになった、とも書いてあった。

やっぱりそうなのか、と思いつつ読んでいた。
スイッチング電源搭載のオーディオ機器を、
200Vもしくは240Vで駆動させている人はいる。

どのくらいいるのかまではわからないが、
自分の耳で、電源電圧の違いによる音の変化を体験している人は、いるわけだ。

Mさんのように自身のシステムで、という人もいるし、
たとえばMさんやすでに実践している人のところで聴いて、
音の変化を体験している、という人もいることだろう。

私が聴いているのは、いまのところ、メリディアンの218での音の変化だけだ。
ほかの機種でも音は変化するが、その変化の仕方がどの程度なのかまでは、
いまのところなんともいえない。

それでも小さくない音の変化はある、とはいえる。
そうなると、200V、240Vでの音を聴いている人たちは、
オーディオ雑誌に掲載されている試聴記事を、どう捉えていることだろうか。

私は218を使っているから、
218は200Vで聴いてほしい、と思ってしまう。

是枝氏はリン用に製作されていたわけだから、
リンの製品を、240Vで使っている人もいる。
その人たちも、そう思っているのかもしれない。

ここは日本なのだから、100Vでの音が、そのオーディオ機器の音とはいえる。
けれど内部の変更なしに、200V、240Vにも対応しているのだから、
200V、240Vでの音が、そのオーディオ機器の本来の音といえるのではないか。

Date: 4月 5th, 2020
Cate: 電源

スイッチング電源のこと(その10)

AC 200Vにしたメリディアンの218については、
書きたいことはけっこうあるが、
5月6日のaudio wednesdayまでは、このへんにしておく。

今回の218の音の変化を聴いた後では、
オーディオ雑誌での試聴は、AC 100Vの音だけで判断していいものだろうか、と思うようになった。

従来の電源トランスを使用した場合は、
AC入力は100Vに限定されている。

国産製品は当然だし、海外製品も100V仕様になっている。

輸入製品のなかには、内部のタップを切り替えることで200Vに変更できたりするが、
それでもユーザーが勝手にやっていいことではなく、
あくまでもAC 100Vで使用するのが前提である。

ところがスイッチング電源を搭載したオーディオ機器のなかには、
これまで書いてきているように、商用電源の電圧に幅広く対応できるモノがある。

そういう製品の場合、
100Vだけで聴くのか、それとも200Vでも聴くのか。

200Vの音を聴かずに、その製品の音を判断していいのだろうか。

一般家庭の多くは、100Vである。
だから100Vの音だけでいいじゃないか──、そういわれそうだが、
たとえばメリディアンの218の消費電力は、カタログによれば5Wである。

わずかな消費電力であれば、
200Vへの昇圧トランスもそれほど大型のモノを用意せずにすむ。

私が使っているルンダールのLL1658は、重量1.35kgである。
それでも218よりも重いのだが。

オーディオ雑誌の試聴の際には、
200Vをどうやって得るのかは、問題となる。

昇圧トランスを、消費電力に応じていくつか用意するのか。
同じ容量のトランスでも、トランスによって音は違ってくるし、
トランスを使うデメリットも生じる。

そのデメリットを、少しでも小さくするために、
LL1658には、少しばかり手を加えているが、
そういうことをオーディオ雑誌の編集者がやるのか。

試聴室だから、壁コンセントのどれかを200Vにしておくのがいい。
昇圧トランスを使っての200Vとは条件が違う、
だから読者の参考にはならない──、
そんな言い訳も出てきそうだが、現実に私以外にも、
218を200Vもしくは240Vで鳴らしている人はいる。

218だけに限らない。
スイッチング電源を搭載したオーディオ機器を、
そうやって使っている人はいるわけだ。

Date: 4月 5th, 2020
Cate: 電源

スイッチング電源のこと(その9)

別項で書いているように、
メリディアンの218は、ルンダールの絶縁トランスLL1658を介して、
AC 100Vを200Vにしている。

ほぼ一週間この状態で聴いている。
もう元(AC 100V)に戻す気はない。

どんなふうに音が変化したのかは、
4月1日にやる予定だったaudio wednesday終了後に書くつもりでいた。
audio wednesdayに来てくれた人に、何の先入観もなしに聴いてもらいたいと考えたからだ。

4月1日にやる予定だったテーマ、218+αは、5月6日に行う。

LL1658を使っての最初の音は、よかった。
それでも新品ということもあって、多少は馴らし運転の時間も必要だろうと、
一枚目と二枚目のディスクは、それぞれ二回ずつ聴いていた。

約三時間聴いたあとに、
バーンスタイン/ベルリンフィルハーモニーによるマーラーの九番を鳴らした。
MQA-CDである。

これまで通常のCD、SACD、MQA-CDで聴いてきている演奏(録音)だ。
にもかかわらず、こんなにも背景雑音が多かったことに気づいた。
バーンスタインらしき声も、そうだ。

これらはそれほど小さな音なわけではない。
これまで聴いていたときも、耳には入ってきていたはずだ。

ライヴ録音なのだから、これらの背景雑音があるのはわかっていた。
これまでも気づいていたけれど、これほどとは感じていなかった。

つまり、今回改めて気づいた背景雑音を含めて、すべてが生々しい。
だからこそ、これまで耳に入ってきていても、
気にも留めることがなかった音が、はっきりと聴きとれる。

Date: 3月 29th, 2020
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その7)

DC 5Vの出力のモバイルバッテリーが手元に三つあるわけだが、
低電流モードに対応しているのは一つだけだから、そればかり使っている。

残り二つのうち一つは、auの長期利用者ということで、
十年ほど前に貰ったものだ。

もう一つが、低電流モード対応の製品の二日前に買っている。
これを無駄にしておくのはもったいない、と考えていたら、思いついたことがある。

モバイルバッテリーは充電しなければならない。
これまではiPhone用のアダプターを使って充電していた。
つまりAC電源をスイッチング電源でDC 5Vにしての充電である。

バッテリーとは化学反応だ。
充電する電源の質(ノイズの多い少ない)によって、なんらかの影響を受けるのか。

なので試してみた。
低電流モード非対応のバッテリーから低電流モード対応のバッテリーに充電した。
モバイルバッテリーからモバイルバッテリーへの充電である。

非対応のバッテリーのほうが容量が小さいため、
低電流モード対応のバッテリーをフル充電するには、
非対応のバッテリーを、ACアダプターで二回充電しなければならなかった。

それにせっかくだから、低電流モード対応機バッテリーも、
できるかぎり使い切って充電にしたかったので、試すにもけっこうな時間がかかる。

試みようと思って実際に音が聴けるようになるまで、一日半ほどかかった。
そういう事情があってのことだから、
比較試聴というには、あいだが開きすぎている。

厳密な比較試聴とはとうていいえないのだが、
音は変ったように聴こえたのかといえば、けっこう変ったように感じた。

追試をするにも、また時間がかかる。
バッテリーへの充電はバッテリーから、と断言はしないが、
モバイルバッテリーを複数持っている人ならば、試してみてもいいのではないだろうか。