Archive for category 電源

Date: 3月 28th, 2025
Cate: 電源

ACアダプターという電源(その8)

富田嘉和氏が、ラジオ技術で1988年ごろの連載で、
興味深いアンプの試作について書かれていたのを記憶している。

差動回路ではなく、真空管アンプの回路をトランジスターに置き換えたといえる回路で、
増幅回路そのものは目新しくはなかった。
古典的といえる回路なのだが、違うのは各増幅段ごとに安定化電源回路が設けられていることだった。

各増幅段ごとに安定化電源を設けるのは、
すでに安井 章氏が発表されていたから、それ自体は目新しくはない。

安井 章氏のローカル電源はシリーズ型だった。
富田嘉和氏のローカル電源は、定電流回路とシャント型を組み合わせたものだった(はずだ)。

手元に、そのラジオ技術がないので記憶に頼って書いているのだが、
その回路はスタックスのスーパーシャントレギュレーターを、
簡略化してローカル電源として各増幅段に設けるというものだった。

かなりの好結果が得られたようで、
確か低音域の解像度がかなり向上したと書かれていたと記憶している。

この回路はアースに流れる電流を常に一定にしようというもので、
アース電位の変動による音質劣化を解消しようというものと、
私は理解している。

もっとも記憶違いも考えられるので、
いま、その回路を見たら違う解釈をするかもしれないが、
大きく外れてはいないはずだ。

この富田嘉和氏の電源に対する答が、
私のなかでは、スーパーシャントレギュレーター回路への関心を、
さらに強めることになった。

Date: 3月 25th, 2025
Cate: 電源

ACアダプターという電源(その7)

roon rockとして使っているNUCの電源として、
スーパーシャントレギュレーターが最良の結果をもたらすかどうかは、わからない。
それでも一度は、その音を聴いてみたい。

となると、市販品ではないし、これから先も登場してくるとは考えられない。
自分で作って試すしかないわけだが、
これでもし非常にいい結果が得られたとして、実際に使うのかとなると、
正直なんとも言えない。

発熱の多さをどうするかだ。
ヒートシンクにかなり大型なモノを使えば、自然空冷でもなんとかなるだろうが、
NUCは常に通電しているから、その電源も常に発熱していることになる。

しかも半端な発熱ではないわけで、
冬ならばまだいいだろうが、真夏になると、NUCを置いている部屋のクーラーはつけっぱなしになるはず。

スーパーシャントレギュレーターによるNUCで楽しみたい気持はかなりあるが、
熱の問題を考えると、二の足を踏む。

NUCの電源としてスーパーシャントレギュレーターは、
馬鹿げているといえば、その通りだ。
それでも聴いてみたい、と思うとともに、
聴いてしまうと後戻りはできないことになるかもしれない──。

そんなことを頭の中だけであれこれ考えていると、
スイッチング電源の存在が大きくなってくる。

Date: 3月 23rd, 2025
Cate: 電源

ACアダプターという電源(その6)

roon rockとして使っているNUCの電源として、
リニア電源を用意するならば、安定化回路はシャント型を、一度は試してみたい。

1978年にスタックスがCA-Xというコントロールアンプを出した。
当時の国産アンプには珍しい外部電源方式で、
電源部はアンプ部よりもはるかに大きく重かった。
ちょっとしたプリメインアンプほどの電源部だった。

スタックスがCA-Xのために開発したのが、
スーパーシャントレギュレーターと名付けられた回路だった。

そのころの安定化電源の回路といえば、大半がシリーズ型だった。
スタックス以前にシャント型を採用していた会社は、どれだけあっただろうか。
しかもスタックスは、スーパーを付けている。

当時のラジオ技術では、このスーパーシャントレギュレーター回路についての記事が、いくつかあった。
そのころのラジオ技術の執筆者の一人、石井義治氏は、
まずコントロールアンプに採用、その後パワーアンプ、
それも出力段までスーパーシャントレギュレーター回路で安定化するという、
なかなかすごい内容の自作アンプ記事が載っていた。

確かA級動作で、出力は15Wだったと記憶している。
出力段の電源まで安定化したアンプは、テクニクスがすでにやっていたし、
マークレビンソンのML2もそうであり、少ないながら前例はあった。

けれどシャント型安定化電源を採用していたわけではなかった。
スーパーシャントレギュレーターは、回路を見ればわかるが、とにかく発熱が大きい。
シャント型はシリーズ型よりも発熱が大きいのだが、
スーパーシャントレギュレーターは、さらに発熱する箇所が通常のシャント型よりも多い。

そんなスーパーシャントレギュレーター回路を、大電流を扱うパワーアンプの出力段に採用することは、
スタックスでもすぐにはやらなかったことである。

そんなことをこの時代のラジオ技術は自作アンプ記事として掲載していた。

石井義治氏の記事はスーパーシャントレギュレーター回路の設計方法まで載っていた。

Date: 2月 25th, 2025
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その26)

充電式、乾電池含めて、昔からバッテリーが電源としては理想とは言われている。
実際に充電式バッテリーを採用したアンプは、
日本製にも海外製にもいくつか登場してきている。

自作アンプでは、無線と実験の金田明彦氏のアンプも、
1980年代から乾電池を電源に採用している。

メリットは確かに多い。けれどメリットだけのものは、この世には存在しない。
バッテリーのデメリットは消耗することだが、それだけだろうか。

音質面でのデメリットはないのだろうか。

考えるに、電流変動の大きなアンプやその他の電子機器への供給は、
デメリットが生じやすいのではないのか。

電流変動が小さい、つまり消費電力の変動があまりない機器への供給の方が、
バッテリーの音質的なメリットは活きてくるはずだ。

バッテリーは化学反応だから、
タイプによっては負荷となる機器の消費電力の変動への対応が追従できないこともあるかもしれない。

この辺のことは、自分で何らかの方法で試してみたいことだが、
どういう結果が得られるにしても、
バッテリーを全面的に採用することで、電源に起因する事柄全てが解決するわけではない。

Date: 11月 23rd, 2024
Cate: 電源

ACアダプターという電源(GaN採用のアダプター・その6)

やっと日本を含むアジアでの発売が開始になったroonのNucleus One。
今回の発売で注目したいのは、
Nucleus One with Linear Power Supplyというモデルも用意されているところ。

通常のスイッチング電源仕様のNucleus Oneだけでなく、
文字通りのリニア電源仕様のNucleus Oneもある。

価格差は600ドルほど。
roonがリニア電源を用意したことで、
スイッチング電源否定派の人たちは、
やっぱりリニア電源なんだよ、と喜ぶだろう。

まだ聴いていないのだから、
どの程度の音の違いがあるのかについては何も言えない。

すでにリニア電源仕様のNucleus Oneを注文した人がいるので、
近々聴かせてもらえる。

その際、私が手を加えたGaNのスイッチング電源を持っていく予定なので、
比較試聴ができる。どれだけの違いがあって、
その結果を、私自身、どう受け止めることになるのか。

楽しみしているところ。

Date: 10月 22nd, 2024
Cate: 電源

ACアダプターという電源(GaN採用のアダプター・その5)

窒化ガリウムのACアダプターについて、音が悪いと否定的な人もいる。
その人たちが間違っているとは言わないが、
その人たちは、どんな窒化ガリウム(GaN)のACアダプターを、
どう使って、どのくらい使っての、そういう評価なのか、という疑問は残る。

今回、野口晴哉氏のウェスターン・エレクトリックの594A用として選択したのは、
私がroon rock用に使っているモノの出力電圧違いのモノ。

これよりももっといいモノがあるかも知れないが、
だからといってGaNのACアダプターを手当り次第試すわけはいかない。
少なくとも、今回使ったモノは、悪くはないという感触は得ている。

GaNのACアダプターは、594Aに接いだばかりの音は、
悪い評価をしている人たちが指摘するところがある。
そのことは自分で使っているから、最初からわかっていたことで、
しばらく使っていくことで、かなり収まっていくことも体験していた。

今回、594Aの電源として使って、
ノイズ対策を施し、さらにアンカーのポータブル電源と組み合わせることで、
かなりのポテンシャルがあることを、再確認できた。

この組合せによる電源のクォリティがひどいものだったら、
日曜日(10月20日)、多くの人が594Aの音に聴き入ることはなかったはず。
そのことだけは、はっきりといえる。

Date: 10月 20th, 2024
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その25)

今日(10月20日)は、野口晴哉音楽室 中秋会。
ウェスターン・エレクトリックの594Aを中心としたシステムで鳴らしている。

594Aの電源は、すでに書いている通り、
窒化ガリウムのスイッチング電源を使っている。

重厚長大の594Aに軽薄短小といえるスイチッング電源の組合せ。
ノイズ対策をいくつか施しての音は、なかなかのものだ。

そして今回は、アンカーのポータブル電源の521も組み合わせている。
Powerhouse 90では容量が足りないため、長時間の使用は無理。
その点、521は余裕がある。

しかも充電しながらの使用も可能。
とはいえ充電用のACアダプターを外すと、音は少なからず変化する。

とにかく今日の音は、アンカーの521あっての音ともいえる。

これを読んで、アンカーの521と窒化ガリウムのスイチッング電源を組み合わせてみようと、
思う人もいるかもしれない。

ノイズ対策を自分できちんとやれる人ならば、試してみてほしい。

Date: 10月 13th, 2024
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(番外)

アメリカ・ビクターの蓄音器、ビクトローラ・クレデンザは、
手巻きゼンマイ型と電動モーター、二つのタイプがある。

どちらのクレデンザを選ぶか。
いまならば手巻きの方だが、ずっと以前ならば、
SP盤をかけるたびにゼンマイを巻くのが億劫という理由で、
電動モーターのクレデンザを選んだ人もけっこういたと思う。

クレデンザに搭載されているモーターは、
二極インダクション型で、
2.00 AMPERES 105 TO 120 VOLTSという表記がある。
電源周波数は40Hzから60Hzまで、となっている。

この時代のモーターの寿命がどの程度なのかは知らないが、
トルクが不足するようになった──、
そんな話を聞いていたので、今日、その方のところに、
試しで、アンカーのPowerHouse 90を持ち込んでみた。

カタログスペック的には容量不足になるが、
60Hzがうまく効くかもしれないし、なんとか使えるかもしれない。
まずは試してみて、そこでの結果から次の検討ができる。

結果は、うまく使えた。
容量的にはダメかな、と思いもしたが、やってみるものである。
ただしバッテリーの減りは早い。
電動モーターのクレデンザの消費電力は、けっこう大きい。

音も変った。いい方向へと変った。

Date: 10月 12th, 2024
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その24)

前回、アンカーの521 Portable Power Station (PowerHouse 256Wh)を聴いてきた、
と書いたが、スピーカーでもアンプでもない製品だけに、
その音を聴いたというよりも、その効果(変化)を聴いてきた。

521のサイズは、あらかじめチェックしていたが、
実物は幾分小さく見える。いいことだ。

バッテリーからAC電源を作り出す製品は、他にもあるし、
オーディオ専用と謳っている、かなり高価で大型のモノもある。

そういう製品からすると、アンカーの521は小さく軽いし、安価であり、
もうそれだけでオーディオに使えるシロモノじゃない──、
そんな判断もされるだろう。

それでも音だけは聴いてみるしかない。
聴いたうえで、あれこれいうのはかまわないが、
価格や大きさ、重さ、それにブランドだけで判断して聴かずじまいで、
あれこれ言ったところで何も始まらない。

今回はメリディアンのDSP3200を中心としたシステムで聴いた。
聴きながら、この音は、来年のaudio wednesdayで聴いてもらいたい、
そう思っていた。

Date: 10月 8th, 2024
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その23)

五年前に、ホンダからLiB-AID E500 for Musicが発表された。

リチウムイオンバッテリーを搭載したポータブル電源で、
AC 100Vをオーディオ機器に供給するというモノ。

関心を持った人もけっこういたと思う。
私もそうだったけれど、三十万円近い価格に、
二百台という限定発売ということで、関心を持つだけで終ってしまった。

実際のところ、どうだったのだろうか。

同種のポータブル電源は、いまではけっこうな数が市場に出ている。
この項で取り上げているアンカーのPowerHouse 90も、
そういう製品の一つである。

アンカーからも同種の製品はいくつかある。
今日、あるところでアンカーの521 Portable Power Station (PowerHouse 256Wh)を聴いてきた。

PowerHouse 256Whとついていることからもわかるように、
PowerHouse 90の上級機だ。
といってもそれほど高価ではなく、三万円もしない。

PowerHouse 90ではパワーアンプへの供給は無理があるが、
PowerHouse 256Whならば、出力(消費電力)次第では、
パワーアンプでも使えたりする。

アクティヴ型スピーカーシステム搭載のパワーアンプは、
放熱の関係とあって、アイドリング電流をたっぷり流すモノはほぼない。
ならばPowerHouse 256Whでアクティヴ型スピーカーへの電源の供給は可能だし、
60Hzにもなる。効果は期待できる。

Date: 6月 10th, 2024
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その22)

その5)と別項「電源に関する疑問(バッテリーについて・その2)」で書いていること。

乾電池、充電式バッテリーを含め、
電池の類は残量と音に関係性があって、
どうも残り少なくなってきてからのほうが好結果が得られる、という感触を持っている。

5月のaudio wednesdayでも、
6月のaudio wednesdayでも、
残量がかなり減ったところでかけた曲の鳴り方は見事、というか凄かった。

5月の時は、カザルスとゼルキンによるベートーヴェンのチェロ・ソナタ、
6月の時は、フルトヴェングラーによるブラームスの交響曲第一番、
どちらも残量はわずかだった。

Date: 6月 7th, 2024
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その21)

6月5日のaudio wednesdayでは、(その20)で書いているとおり、
メリディアンのULTRA DACの電源は、
アンカーのモバイルバッテリー、PowerHouse 90から供給した。

正確に時間を計ったわけではないが、四時間ほどは大丈夫だった。
フルトヴェングラーのブラームスのときは、PowerHouse 90を使っている。

ULTRA DACのほかに、roonのNucleusにも使っている。
PowerHouse 90が二台あったからだ。

消費電力はNucleusのほうが大きいようである。
Nucleusに使ったPowerHouse 90は、本番が始まる四十分ほど前に、
いったん外して充電を行っている。
ULTRA DACで使っていたモノよりも早く、残量表示のLEDが減っていった。

PowerHouse 90は、どちらとも前日にフル充電している。
とはいえ、PowerHouse 90はどうもロットによって多少違いがあるように感じる。
なので、どちらの消費電力が大きいとか、はっきりしたところまではいえない。

もし三台揃っていたら、スイッチングハブにも使っていた。

とにかくPowerHouse 90でULTRA DACが四時間ほど使えるというのは、
十分実用になる、といえる。

PowerHouse 90ではなく、もっと大容量のバッテリー電源を使えば──、
とは私も思っているが、静かで持ち歩けて、というPowerHouse 90はなかなか魅力的だ。

実際に比較試聴してみないとなんともいえないのだが、
バッテリーの容量が大きくなり、それに伴いサイズも大きくなることは、
音質的にほんとうに有利に働くのだろうか。
そんな疑問もある。

実際のところ、どうなんだろうか。

Date: 5月 29th, 2024
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その20)

メリディアンの218に最初に使った。
次は、サウンドラボのコンデンサー型スピーカーに使ってみた。
そしてマランツのModel 7にも、
アンカーのモバイルバッテリー、PowerHouse 90を使った。

いずれも好結果が得られた。
ならば次に試したいのは、6月5日のaudio wednesdayでのメリディアンのULTRA DACだ。

ULTRA DACのリアパネルには、“40W max”とある。
たぶん使えるはずである。

どれだけの時間使えるのかは、なんともいえないので、
まず開始前にどういう変化が得られるのかを確認したうえで、
三時間すべてPowerHouse 90を使うのではなく、残り一時間ほどで使ってみたい。

Date: 5月 27th, 2024
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その19)

昨晩の野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会では、
マランツのModel 7の電源はアンカーのモバイルバッテリー、PowerHouse 90から供給した。

PowerHouse 90についている残量計はあまり当てにならないという意見もあるが、
とりあえず信用することにして、一時間半の使用ではまったく問題なく、
おそらく倍の三時間は余裕で使えそうな感じを受けた。

それでも、このへんのことは実証してみないとなんともいえないが、
Model 7の消費電力が35Wだとすれば、実用になる容量といえる。

壁のコンセントからの供給とどれだけ音が違ってくるのか。
ケース・バイ・ケースとしかいいようがない。

50Hzの地区か60Hzの地区かでも違ってくるし、
電源ラインに混入してくるノイズの量によっても違いは生じる。

それでもPowerHouse 90は高価なモノではないし、
あまり音質に寄与しないという結果になったとしても、
オーディオとは関係ないところではきちんと使えるのだから、
まずは使ってみたら、といいたい。

私の周りでは二人が購入。二人とも満足している、とのこと。

Date: 5月 25th, 2024
Cate: 電源

モバイルバッテリーという電源(その18)

明日(5月26日)の野口晴哉記念音楽室レコード鑑賞会でも、
アンカーのモバイルバッテリー、PowerHouse 90を、
マランツのModel 7に使ってみようと考えている。

いうまでもなくModel 7はアメリカのアンプだから、
50Hzではなく60Hzにしたいし、電源電圧も100Vではなく110Vにしたい。

Model 7の消費電力は35Wとなっている。
PowerHouse 90で、どのくらいの時間持つのか、
音はどう変化するのか、試してみないことにはなにもいえないが、
明日の楽しみの一つである。