Archive for category 電源

Date: 7月 13th, 2019
Cate: 電源

スイッチング電源のこと(その4)

スイッチング電源がオーディオ機器に使われはじめた1970年代後半、
そのころの製品で、スイッチング電源について考えるのに、
対照的なところをもつのがソニーのパワーアンプである。

ソニーはTA-N86、TA-N88でスイッチング電源を採用した。
ソニーは、PLPS(パルスロック電源)と呼んでいた。

TA-N86、TA-N88は、シャーシーの高さ8.0cmの薄型パワーアンプである。
これら二機種の約一年後に登場したTA-N9もスイッチング電源搭載のパワーアンプである。

TA-N9は18.5cmと、TA-N88の二倍以上の厚みになっている。
内部はアンプ部よりも、電源部の占める割合が大きい。
ほぼ三分の二の電源といえるほどである。

しかもTA-N9はモノーラルパワーアンプにも関らず、
ヒートパイプ方式のヒートシンクを二基もつ。
アンプ用とスイッチング電源用である。

TA-N86、N88のスイッチング電源の動作周波数は20kHzである。
ビクターのM7070が35kHzである。
TA-N9は、TA-N86、88と同じ20kHzである。

高校生のころ、TA-N9の内部写真を見て、
スイッチング電源の動作周波数が高くなったのかも……、と最初思った。
動作周波数を高く設定することで、発熱も増えていったのかもしれない。
そのためのヒートシンクなのだろう、と考えたわけだ。

でも動作周波数は変らず、である。
スイッチング電源は、そのころから効率がいい、といわれていた。
効率がいいということは発熱も少ないはずだ。

にも関らずTA-N9のスイッチング電源のヒートシンクは、
450Wの出力をもつアンプ部のヒートシンクと同サイズである。

しかもスイッチング電源部はシールドされているが、
平滑コンデンサーはシールドケース外にあり、
スイッチング電源とは思えないサイズのコンデンサーである。

このことは、スイッチング電源を本気で設計し作るとなると、
同時代の、同じ会社のパワーアンプにおいても、これだけの違いが生じてくる、ということである。

Date: 5月 28th, 2019
Cate: 電源

スイッチング電源のこと(その3)

ビクターのM7070、金田式DCアンプ(聴いたことはなかったが)では、
スイッチング電源に対してネガティヴな印象は持たなかった。

この時代、スイッチング電源はメーカーによってはパルス電源とも言っていた。
テクニクスのコンサイスコンポのパワーアンプSE-C01も、
パルス電源(スイッチング電源)採用だった。

M7070とSE-C01とではサイズも重量も大きく違っていた。
スイッチング電源を採用した理由も、おそらく違っていたであろう。

SE-C01は小型化を優先してのスイッチング電源の採用だったはずだ。
このころから他社からもいくつか登場した。
そして、このころからスイッチング電源は音は悪い、という印象が出てき始めた。

1980年代にはいるころには、スイッチング電源は消えてしまったように思われた。
そして数年が経ち、「スイッチング電源なのに……」というふうに印象を変えたのは、
スチューダーのCDプレーヤー、A730ではないだろうか。

それまでは「スイッチング電源だから……」、
そんなネガティヴな捉え方が一般的になっていた。

M7070は、ステレオサウンド 45号の新製品紹介で、井上先生が担当されている。
     *
 M7070は、モノ構成の完全なDCアンプである。電源関係を重視した設計であるために、A−B独立電源のBクラス動作をするパワー段には、一般の商用電源を一度DCに整流した後に数10kHzのパルスに変換し、高周波用トランスで変換してから再び整流してDC電源を得るDクラス電源に、制御系にPWM方式を用い応答速度を高めた定電圧電源が使用されている。これにより、電源の内部インピーダンスを高域まで非常に低くすることが可能となり、電源のレギュレーションは、理想の電源と言われた蓄電池をしのぐものとしている。
     *
ビクターの謳い文句を信じるのであれば、M7070に搭載されたスイッチング電源は、
従来の電源方式では無理な特性を実現するためであり、
特に応答速度の向上がいちばんの目的だったのではないのだろうか。

Date: 5月 26th, 2019
Cate: 電源

スイッチング電源のこと(その2)

ビクターのM7070の音は、私にはクラシックを聴くための音とは思えなかったが、
だからといって、質が悪いと感じたわけではなかった。

同時代のカートリッジのエンパイアの4000D/III。
このカートリッジに似た印象が、どこかしらあった。

どちらもクォリティの高さをきちんと持っているけれど、
クラシックを聴く者にとっては、その良さがプラスの方向に働いてくれないところがある。

聴く音楽がクラシックでなければ、
4000D/IIIもM7070も、その良さが存分に発揮されるはずだ。

しかも4000D/IIIとM7070をもってきての組合せは、
一度聴いてみたかった、と思わせる。

何がいいたいかというと、M7070の印象が、
私の場合、スイッチング電源の印象につながっている。

次にスイッチング電源を採用したアンプで思い出すのは、
無線と実験での、金田明彦氏の発表されたアンプだった。

私が読み始めたころは、金田式DCアンプには、
タムラ製のトロイダルトランスが使われていた。

それが乾電池に代っていった。
ナショナルの乾電池で、より高い電圧を得るために、
乾電池と増幅部とのあいだにスイッチング電源をいれ、昇圧していた。

そのころの無線と実験はとっくに手元からなくなっていて、
記憶も少し曖昧なところもあるが、
スイッチング電源の周波数の重要性に言及されていた。

どのくらいの値だったのかは忘れてしまっているが、
20kHzよりは高い周波数だった。
M7070の35kHzよりも高かったように記憶している。

より高い周波数で動作させてこそのスイッチング電源なのか、と、
そのころ思っていたし、
M7070の35kHzが70kHz、さらには100kHzになっていたら、
M7070の音はさらに磨かれていくのでは……、そんなことも考えながら、
そのころは金田明彦氏の記事を読んでいた。

Date: 5月 25th, 2019
Cate: 電源

スイッチング電源のこと(その1)

私の記憶の範囲内では、
スイッチング電源を最初に採用したアンプは、ビクターのM7070である。

M7070のスイッチング電源は、アンプ全体を小型軽量化するためのものではなく、
従来の電源方式では得られない供給能力を目指しての才能だった──、
と当時読んでいた電波科学での記事からの印象である。

その記事には、木の板、コンクリートの板、鉄の板のイラストがあった(はずだ)。
それぞれの板に、上からボールを落としているイラストだった。

板の材質が、アンプの電源の容量を表していた。
ひ弱な電源が木の板で、従来の方式でのしっかり作られた電源がコンクリートの板。

ビクターは、スイッチング電源でのみ鉄の板の強度を実現できた、と説明していた。
細部で記憶違いはあると思うが、こんなふうな説明がなされていた。

なるほど、と感心しながら読んでいた。
M7070は、瀬川先生が定期的に来られていた熊本のオーディオ店で聴いている。
瀬川先生は、そのとき「THE DIALOGUE」を鳴らされた。

他のアンプでは聴けないかも……、と思わせるほど、
パルシヴな音の鋭さは見事だった。

音を聴いて、またなるほど、と感心していた。
確かに、これは鉄板の音だ、と感じていたからだ。

M7070の音は、快感ですらあった。
でもクラシックは、このアンプでは聴けないな、とも感じていたけれど、
スイッチング電源の可能性は、小型軽量の方向ではなく、
従来の電源と同程度の容積で構成してこそ良さが活きてくるのかも、と考えた。

スイッチング電源は、なかなか普及しなかった。
M7070のスイッチング周波数は35kHzと、可聴帯域よりもほんのわずかだけ上だった。
当時としては、このへんが上限だったのだろう。

Date: 12月 1st, 2018
Cate: 電源

電源に関する疑問(バッテリーについて・その4)

ステラが輸入販売しているドイツのストロームタンクの製品。
リチウムイオン電池から交流電源を作り出す電源であり、
とにかく大きくて重い。そして高い。

商用電源と比較すると、おそらく大きな音の違いはあるはず。
残念ながらインターナショナルオーディオショウでは、
ストロームタンクから電源をとった音は聴けても、
商用電源との比較試聴はできない。

なのでどれだけの効果なのかは確認できないのだが、
そのことよりも、これだけの大容量のバッテリーであっても、
この項で書いてきていること、
つまり電池の残量によって音が変化してしまうことからは逃れられていないのではないか、
このことの方を確認したくなる。

Date: 4月 5th, 2018
Cate: 電源

電源に関する疑問(バッテリーについて・その3)

昨晩(4月4日)のaudio wednesdayは、アンプのトラブルにみまわれたわけだが、
音がまったくなかったわけではない。

デザイナーの坂野博行さんが、あるスピーカーをもちこんでくれたおかげである。

CONSONO(コンソーノ)という、桐製Bluetoothスピーカーである。
このスピーカーについては、いずれ書く予定。

CONSONOの音を聴いては、あれこれ話していた。
一時間以上経ったころだろうか、音はあきらかに変化した。
いわばアンプのウォーミングアップが終ったような音の変化である。

音がやっと目覚めてきた、という感じの音へと変った。
内蔵のアンプのウォーミングアップが終ったのかと、最初は思ったが、
内蔵アンプはDクラスで、そこに使われているチップは小指の爪よりも小さなサイズ。
このサイズのアンプのウォーミングアップとは思えなかった。

となるとバッテリーなのか。
CONSONOのなかには、電源としてモバイル用バッテリーがある。
このバッテリーのウォーミングアップを経ての音の、明らかな変化だったのか。

バッテリーにウォーミングアップがあっても、別に不思議ではない。
それによる音の変化が生ずるのも避けようのないこと。

それにしても、かなりの音の変化である。

Date: 2月 12th, 2018
Cate: 電源

電源に関する疑問(バッテリーについて・その2)

一ヵ月ほど前、古くからの友人のKさんと電話で話していた。
その時、バッテリーのことが話題になった。

Kさんが立ち会ったある録音現場でのこと。
ノイマンのコンデンサーマイクロフォンの電源を、
本番の前に、フル充電のバッテリーに交換しておこう、としたら、
止められた、とのこと。

バッテリーの残りは、約半分。
そのくらいからが音がいいから、そのままの状態で、ということだったそうだ。

40年くらい前の話である。
そのころから、録音の現場(すべてではないだろうが)では、
電池の残りが少なくなってきたほうが、音がいいということは常識であった。

つまり一次電池、二次電池、どちらも同じなのだ。

AC電源かDC電源か。
どちらが音がいいのかは、人によって違っている。
絶対的に電池(DC電源)だ、という人もいるし、
いや、AC電源(商用電源)の方がいい、という人もいる。

電池といっても、さまざまな種類があるから、
どの電池でも音がいい、というわけではないし、
商用電源は外部からの影響を受けるから、これも一概にはいえない。

私としては、電池ならば、音がいい悪いよりも、
常に安定した状態の音が得られる、と期待していた。

つまり商用電源のように、どこかにつながっているわけではないから、
外部からの影響はない。
これは、ひとつの安心感である。

もちろん電池の劣化はあるものの、
商用電源が外部からうける影響の度合と変化にくらべれば、
それはある程度コントロールできる範囲でもある──、
そう思っていた。

けれど電池は減ってきた状態の方が、音がいい──、
このことは電池もまた別の意味で不安定な電源である。

Date: 2月 11th, 2018
Cate: 電源

電源に関する疑問(バッテリーについて・その1)

電源部から供給されるDC(直流)を、
信号に応じて変調して出力しているのが、アンプであるからこそ、
電源の質はそのまま出力の質でもある。

アンプの電源として、理想はバッテリー(電池)だと、
ずっと昔からいわれ続けてきている。

実際の製品でも、バッテリーを搭載したアンプはいくつか登場してきた。

MC型カートリッジのヘッドアンプは、以前から電池使用のモノがあった。
マークレビンソンのJC1は、AC電源仕様とDC電源仕様とがあった。

日本のメーカーからも、海外のメーカーからも、登場してきているし、
消費電力の少ないコントロールアンプだけでなく、
パワーアンプにもバッテリー電源を採用したモノもあった。

電池といっても、充電が行えるタイプ(二次電池)もあればそうでないタイプ(一次電池)もある。
電解液を個体に染み込ませた乾電池もあれば、液状のままの湿電池もある。

電池こそが理想の電源と主張する人たちであっても、
湿電池のほうがいい、という人もいれば、いや乾電池(一次電池)がいい、という人もいる。

さらに、それぞれの種類の中でも、このメーカーの電池が音がいい、
そういうことになっていく。

確かに電池の種類で音は少なからず変化する。
私がポータブルCDプレーヤーを買ったのは、28年前だった。
いくつかの電池を買ってきては、どのくらい音が違うのか、やってみた。

音は変る。
けれど、電池の銘柄による音の違いよりも、
同じ電池でも、使っているうちに音が変化することのほうが気になった。

買ってきたばかり(未使用)の電池が、音もいい、と、
最初は思い込んでいた。
しかし聴いているうちに、そうではないことに気づく。

電池が減ってきた、と表現するような状態での音の方がいいのだ。

Date: 12月 19th, 2017
Cate: 電源

実感した電源ノイズ事情(その3)

コモンモードノイズ対策をした電源ケーブルは、先週木曜日に作っていたけれど、
金曜、土曜は都合がつかず、ギャラリー・ルデコにもっていく時間がとれなかった。

日曜日は持っていけたけれど、月曜日に会う約束をしていたので、昨日手渡した。
といってもギャラリー・ルデコは月曜日は休館日であり、
実際に、ML7Aの電源コードを交換して、どの程度の効果があるのかを、
自分の耳で確認しているわけではない。

今日昼ごろ、電源コードを交換したら、ノイズがそうとうに減った、という連絡があった。
完全に取り除くことはできなかったようだが、
壁のコンセントから直接取ったときのノイズの多さ(ひどさ)を聴いているだけに、
あれだけのノイズが、すんなりなくなるとは考えていなかったが、
そうとう減った、ということは、簡単な工作であっても効果が得られる。

磁性体のコアを使うわけだから、そのことによるデメリットは確実にあるが、
メリットがそれを上回っていれば、どちらを選択するかは、使う人次第だ。

少なくとも電源からのノイズがはっきりとスピーカーから出てくる。
それがサーッと拡がり、音楽が鳴り出すと耳につきにくくなる性質のノイズならば、
まだいいが、今回のノイズはそうではなく、質の悪いノイズであり、耳障りでもある。

ならば何らかの対策は必要となる。

Date: 12月 13th, 2017
Cate: 電源

実感した電源ノイズ事情(その2)

実は今日の昼も行ってきた。
片チャンネルから出ていたノイズを抑えるためであり、
この点に関しては、あのへんに原因があると思えたし、
事実そのとおりで、うまくいった。
昨晩やらなかったのは、ML7Aの天板を開けることができなかった(工具がなかった)から。

ただ、今度はノイズフィルターを通していても、両チャンネルからノイズが出る。
壁のコンセント直よりは、ノイズの質はまだいいし、量も少ないが、はっきりと出る。

電源のノイズが昨晩とはまた違っているためであろう。

山手線内の繁華街、
こういう場所の電源の汚れ(ひどさ)は、私の想像を超えている。

ノイズ対策は、音との兼合いがある。
ただただノイズをなくしていく手法だけでうまくいくとはいえない面がある。

とはいえ、今回のような状況では、
そうとうに積極的に電源からのノイズを抑えていく必要がある。

今度はコモンモードノイズ対策をした電源ケーブルを、近日中に持っていく。
どの程度の効果があるのか、
それに持っていった日の電源からのノイズは、また変化している可能性もある。
つまりノイズが出なくなっていることもあれば、
同じかもしくはひどくなっていることだって考えられる。

とにかく試してみるしかない。
どの程度ノイズを抑えられるのか、
うまく抑えられたとして、音への影響はどう出てくるのか。

こういう環境だからこそ確かめられる。

Date: 12月 13th, 2017
Cate: 電源

実感した電源ノイズ事情(その1)

私が勤めていたころのステレオサウンドは、
窓から顔を出せば東京タワーがはっきりと見える場所にあった。
井上先生が、そのころよくいわれていたのは、ノイズ環境のひどさだった。

スイングジャーナルは東京タワーの、ほぼ真下といえるところにあったから、
ステレオサウンドの試聴室の方が条件としては悪い(ひどい)、といわれていた。

いまから約30年前の話だ。
いまやノイズ環境はひどくなるばかりといっていい。
デジタル機器が氾濫しているし、電源の状態も悪くなることはあっても、
もうよくなることはないであろう。

昨日、渋谷の明治通り沿いにあるギャラリー・ルデコでの写真展(4F)に行っていた。
マークレビンソンのML7A、No.27、スピーカーはアンサンブルのReferenceという組合せで、
音楽が流されている空間だった。

片チャンネルからバズのようなノイズが出ていた。
ノイズがどう変化するのかいくつか試したなかで、
ML7Aの電源コードを、壁のコンセントから直に取るようにしたところ、
両チャンネルから、ノイズが出るようになった。

いままでのノイズにプラスして、である。
ML7AはADCOM製のノイズフィルター内蔵のACタップから取られていた。
元に戻すと、片チャンネルだけのノイズになる。

つまり電源からのノイズが、音として聞こえてきたわけである。

ステレオサウンドの1981年の別冊「’81世界のセパレートアンプ総テスト」では、
コントロールアンプの測定で、パルス性のノイズを電源に加えた場合に、
出力に表れるかどうかということをやっている。

パルス性ノイズがそのまま出てくるアンプもあった。
ML7は優秀で、まったく出てこなかった。

それだけ現在の電源ノイズは、ある意味、すごい(ひどい)といえる。

Date: 7月 8th, 2016
Cate: 電源

ACの極性に関すること(その5)

ステレオサウンド 57号で井上先生がいわれているのは、
レコードにもACの極性が存在するということである。

ステレオサウンドは55号から「オーディオ・ジョッキー」という短期連載が始まった。
ACの極性に関する試聴記事が一回目(55号)で、
放送局、PA、スタジオなどのプロの現場でのAC極性のコントロールについての取材が二回目(56号)で、
レコードにもACの極性があることにふれたのが三回目(57号)である。

記事は井上先生と黒田先生の対談形式。
この記事から井上先生の発言をいくつか拾っておく。
     *
 今回は、オーディオのプログラムソースで一番重要なレコード自体にも、AC極性があるということをとりあげてみたい。レコードは、録音からカッティングに至る制作過程で数多くの機材を使用します。当然、これら機械類はAC電源を必要としますから、出来上ったレコード自体にもAC極性があるのではないかということでいろいろチェックしてみると、これが明らかにあるのですね。
(中略)
 これまでにもACのコントロールをしていって、おかしいなと感じたことはあったのです。うまく鳴ってくれるレコードと、うまく鳴ってくれないレコードとがある。機器間の極性は合っているはずなのに、何とはなしモタモタするとか、妙にコントラストがついてくっきりしすぎちゃって、うるさい感じになる。
(中略)
 簡単にいうと、発端はテープレコーダーなんです。AC極性を合わせた再生システムにテープレコーダーを加えると、テープレコーダーの極性を変えることによって2種類の音が録音できるでしょう。さらに極性を変えながらこのテープを再生すると、また2種類できる。録音再生で4通りの音になるわけです。それなら、レコードが極性によって鳴り方が変っても当然じゃないかということで……。
(中略)
 昔から、ACのことをよくわかっている人でもどうも昨日の音とは違う、特に,マルチアンプの場合にはかなり細かくレベル調整をしてバランスをとっていくと、あるレコードはいいのだけれどあるレコードではダメということがあったでしょう。これはACをひっくり返すと直っちゃうんです。この事も一つのきっかけといえます。
     *
レコード制作側が、録音・カッティングなど、
レコードが出来上るまでのすべてのプロセスにある機材のACの極性を合せていれば、
本来ならば起らない問題なのだが、現実には、そうではないことがわかる。

このレコードにおけるAC極性の問題を、黒田先生はオスとメスがある、という表現をされている。
ほとんどのレコードはオスであっても、少数ではあるがメスのレコードがある。

つまりACの極性を合せる、の「合せる」の意味に少し違う意味が加わってくることになる。

Date: 7月 7th, 2016
Cate: 電源

ACの極性に関すること(その4)

ACの極性をかえることで音が変化するのはいまや常識である。
ACの極性合せはどうやるのかについては、(その2)で書いている。

アース電位をデジタルテスターで測る。
このときすべての接続をはずしておく必要がある。
他の機器とケーブルでつながっていてはだめである。

そうやってアース電位を測る。
コントロールアンプが、仮に5Vと10Vだったとする。
通常であれば5Vの方を、ACの極性が合っているとする。

けれどパワーアンプのアース電位が12Vと20Vだったとする。
こちらは12Vが合っているとなる。

コントロールアンプは5V、パワーアンプは12Vだとアースの電位差は7Vということになる。
ここでコントロールアンプのACの極性をあえて反対にする。
つまり10Vにすることで、パワーアンプとのアースの電位差は2Vと小さくなる。

こういう考え方もできるのではないか。
だとしたら、どちらを選択すればいいのか。
これは、聴いて判断するしかない。

ACの極性合せを聴感で行う場合、
注意点としては音の入口側からやっていくことである。
CDプレーヤーをまずやり、次にコントロールアンプ、パワーアンプとやっていく。

ACの極性があえば、音場が拡がる。
音楽が演奏される場が、どんなイメージで鳴ってくるか。
たとえば狭い兎小屋で演奏しているかのような窮屈な鳴り方なのか、
それともホールで演奏しているように響いてくれるのか。

別項で書いたマークレビンソンのLNP2のゲイン切り替えの音の違いと、
基本的には同じともいえる。

他にもチェックポイントはあるけれど、まずは音楽が演奏される場としての音場であり、
つまりは聴感上のS/N比をあげることである。

そうやってシステム全体のACの極性を合せた上で、
個々のオーディオ機器の極性がどうなっているのかをチェックしてみることである。

単体で測ったアース電位が低い方がいいのか、
それとも接続する機器同士のアース電位差が小さい方がいいのかははっきりする。

まれにではあるが、聴感で合せたACの極性が、
テスターで測って合せた極性で、すべて逆の場合がないわけではない。

これについては、ステレオサウンド 57号で、井上先生が解説されている。

Date: 4月 23rd, 2013
Cate: 50E, QUAD, 電源

電源に関する疑問(QUAD 50E・その6)

オートバランス回路による位相反転にはこういうところがあり、
このことが理論に忠実であろうとすればするほど、納得のいかない回路であるし、
オートバランスを採用するのであれば、カソード結合のムラード型にするとか、
さらには徹底して入力トランスを用いて、電圧増幅段、出力段ともにプッシュプルとしたほうが、
性能的にも優れ、音質的にもよい結果が得られる──、
私もそう考えていた時期があった。

伊藤先生による349Aプッシュプルアンプ、
これもオートバランス回路を使っている。
だから、このアンプの音に惚れながらも、
349Aのプッシュプルアンプを作るのであれば、オートバランス以外の位相反転回路を採用するか、
ウェスターン・エレクトリックの349Aアンプ、133Aの回路をそのままで作ろうと考え、
前段に使われている348A、それもメッシュタイプのモノを探し出してきたこともある。

133Aの回路のほうが、伊藤先生の349Aアンプ(元はウェストレックスのA10)よりも、
回路の平衡性ということでは理論上優れていることになる。

とにかく最高の349Aのアンプが欲しかった私は、
最初は伊藤先生のアンプのデッドコピーをしよう、から、ここまで変化していった。

なのに主要パーツが集まり、あとはシャーシーの設計と発注の段階まできて、また考えが変っていた。
オートバランスのもつ、
私が気付くような欠点はウェスターン・エレクトリックやウェストレックスの技術者はとうに知っていたはず。
伊藤先生もそうであったはず。
にも関わらず、オートバランスを位相反転の回路として採用していることには、
電源回路に1kΩの抵抗を直列に挿入するのと同じように、
私が気付いていない意味があるはずだと考えるようになったからである。

Date: 4月 17th, 2013
Cate: 50E, QUAD, 電源

電源に関する疑問(QUAD 50E・その5)

位相反転にオートバランス回路を採用しているのは、
伊藤先生による349Aプッシュプルアンプもそうである(つまりウェストレックスのA10、A11も、である)。

伊藤先生の349AではここにE82CC(A11では6SN7)を使われている。
E82CC、6SN7、どちらも三極管である。
QUAD IIにはEF86、五極管で、回路を比較していくと、
単に三極管と五極管の違いだけとはいえない違いがあるのに気がつく。

2本のEF86のスクリーングリッドがコンデンサー(0.1μF)で結ばれている。
いうまでもなく三極管にはスクリーングリッドはないわけで、
伊藤先生の349Aアンプには、この0.1μFに相当するコンデンサーは存在しない。

オートバランスの位相反転回路の動作からいって、このコンデンサーの必要性はない。
にもかかわらずQUAD IIには使われている。

オートバランスという位相反転回路は、プッシュプル回路の上下(+側と−側)において、
信号が通る真空管の段数に違いが生じる。

通常回路図は左端が入力で横方向に信号が流れるように描かれることが多い。
プッシュプル回路の場合、上下に真空管が配置されることになる。
それで上の球、下の球という表現がなされるわけで、
ここでも上の球、下の球という表現を使って説明していく。

QUAD IIでは入力信号はまず上側のEF86で増幅される。
この出力は上側のKT66に接続される一方で、抵抗ネットワークによって分割・減衰された信号が、
下側のEF86に入力される。
つまり上側のEF86での増幅された分を抵抗ネットワークで減衰させ、
上側のEF86に入力された信号レベルと同じにするわけだ。

下側のEF86で増幅された信号は下側のKT66へと行く。
つまり上側のKT66にいく信号はEF86を一段のみ通っているのに対し、
下側のKT66への信号はEF86を二段(プラス抵抗)を通っていることになる。