ACアダプターという電源(その8)
富田嘉和氏が、ラジオ技術で1988年ごろの連載で、
興味深いアンプの試作について書かれていたのを記憶している。
差動回路ではなく、真空管アンプの回路をトランジスターに置き換えたといえる回路で、
増幅回路そのものは目新しくはなかった。
古典的といえる回路なのだが、違うのは各増幅段ごとに安定化電源回路が設けられていることだった。
各増幅段ごとに安定化電源を設けるのは、
すでに安井 章氏が発表されていたから、それ自体は目新しくはない。
安井 章氏のローカル電源はシリーズ型だった。
富田嘉和氏のローカル電源は、定電流回路とシャント型を組み合わせたものだった(はずだ)。
手元に、そのラジオ技術がないので記憶に頼って書いているのだが、
その回路はスタックスのスーパーシャントレギュレーターを、
簡略化してローカル電源として各増幅段に設けるというものだった。
かなりの好結果が得られたようで、
確か低音域の解像度がかなり向上したと書かれていたと記憶している。
この回路はアースに流れる電流を常に一定にしようというもので、
アース電位の変動による音質劣化を解消しようというものと、
私は理解している。
もっとも記憶違いも考えられるので、
いま、その回路を見たら違う解釈をするかもしれないが、
大きく外れてはいないはずだ。
この富田嘉和氏の電源に対する答が、
私のなかでは、スーパーシャントレギュレーター回路への関心を、
さらに強めることになった。