Westrex 10Aのこと(その7)
ウェストレックスの10A、ノイマンのDSTほどではないが、
オルトフォンのSPUやEMTのTSD15も、ローコンプライアンスのカートリッジである。
軽針圧(ハイコンプライアンス)のカートリッジの音にまったく惹かれないわけではないが、
SPUやEMTの音を聴くと、やっぱりこっちだな、とひとり納得するばかりである。
なぜなのか、と昔から疑問に思っていたし、その理由を考えてもいた。
理屈から言えばハイコンプライアンスの方が、カートリッジの在り方としては正しい、とも言える。
そんなことは昔からわかっていることでも、肝心なのは音であって、
例えば別項「2023年ショウ雑感(その17)」で書いたことも関係してくる。
2023年のインターナショナルオーディオショウでのオルトフォンジャパンのブースで鳴っていた二つの音。
一つはオルトフォン最新・最高級のMC Diamond、
もう一つは、SPU GTE、
どちらも石川さゆりの「天城越え」を鳴らしていた。
どちらの音が、より正しいのか、と問われれば、MC Diamondだ、と答える。
MC Diamondでの音は、スタジオで石川さゆりが歌っているかのように聴こえたからだ。
一方のSPU GTEの音は、石川さゆりがナイトクラブで歌っているかのように、私の耳には聴こえた。
スタジオで録音しているのだから、MC Diamondの聴こえ方の方が正しいとは、私でも思う。
それでも……である。
わかった上で、どちらをとるかである。