Abbado 90(その3)
クラウディオ・アバドは、こういう演奏(指揮)もできるのか──、
という意味で、驚いたのはポリーニとのバルトークのピアノ協奏曲であり、
ベルクの「ヴォツェック」である。
いまも、ポリーニとのバルトークのピアノ協奏曲を初めて聴いた時の驚きは、
はっきりと思い出せる。そのくらい凄い演奏と感じたものだった。
あの時代に、この二人が、あの年齢だったからこそ可能だった演奏なのだろうが、
それにしても、思い出していま聴いても、やはり凄いと感じる。
アバドは、こういう演奏(指揮)もできる──、
そうわかって聴いても驚いたのが、「ヴォツェック」だった。
アバドの「ヴォツェック」が登場したころは、
世評高いベーム、ブーレーズのほかに、ドホナーニ、ミトロプーロスぐらいしかなかった、と記憶している。
ミトロプーロス盤が1951年、ベーム盤が1965年、ブーレーズ盤が1966年、
ドホナーニ盤が1979年録音だった。
すべてアナログ録音であり、そこにデジタル録音のアバド盤が登場した。
「ヴォツェック」を積極的に聴いてきたわけではなかった。
ベーム盤を聴いたことがあるくらいだった。
「ヴォツェック」の聴き方が、自分のなかにあったとはいえないところに、
アバドの「ヴォツェック」である。
このときの衝撃は、バルトークのピアノ協奏曲も大きかった。
そういえばバルトークのピアノ協奏曲もそうだった。
自分のなかに、バルトークのピアノ協奏曲についての聴き方が、
ほぼないといっていい状態での衝撃だった。