Abbado 90(その2)
気にはなっていたものの、ステレオサウンドの試聴で初めて聴いたのだから、
それまではクラウディオ・アバドの聴き手ではなかったわけで、
マーラーの第一番を聴いても、熱心な聴き手になったわけでもなかった。
それでもアバドの演奏(録音)は、気になる作品が出ればわりと聴いてきた、と思っている。
思っているだけで、アバドの夥しい録音量からすれば、わずかとかいえないのだが、
それでもアバドが残した演奏(録音)のなかで、いくつかは愛聴盤といえるものがあるし、
ことあるごとに聴いているレコード(録音物)もある。
シカゴ交響楽団とのマーラーの一番に続いて、
ステレオサウンドの試聴ディスクとなったアバドのディスクは、
ベルリオーズの幻想交響曲である。
マーラーの一番は、サウンドコニサーの試聴だけだったが、
幻想交響曲は、いくつかの試聴で使われたから、
聴いた回数はマーラーの一番よりもずっと多い。
マーラーの一番はLPだった。
幻想交響曲は最初はLPで途中からCDにかわった、と記憶している。
マーラーの一番は買わなかったけれど、幻想交響曲はLPを購入した。
シーメンスのコアキシャル・ユニットを、
平面バッフル(1.8m×0.9m)に取りつけて聴いていた時期だ。
ステレオサウンドの試聴室で聴いて、
その音が耳に残っているうちに帰宅してからも幻想交響曲を聴いていた。
アバドの残した録音で、回数的(部分的であっても)には、
幻想交響曲をいちばん聴いているといえるが、だからといって、
アバドの幻想交響曲が愛聴盤というわけではない。
愛聴盤は他にある。
ベルクの「ヴォツェック」だったり、シューベルトのミサ曲、
ポリーニとのバルトークのピアノ協奏曲などがそうである。