Archive for category ケーブル

Date: 12月 1st, 2016
Cate: ケーブル

ケーブル考(雑誌の書名)

1955年に電波新聞社から「電波とオーディオ」が創刊されている。
「電波とオーディオ」の創刊メンバーのひとりが、若き日の菅野先生である。

そのころのことを「僕のオーディオ人生」に書かれている。
     *
 新しい雑誌のタイトルは、僕達の間では「オーディオ」と決まっていた。とはいうものの、この「オーディオ」という言葉は当時全く知られていない言葉であって、専門家ならいざ知らず、一般には通用するはずもなかった。この頃、アマチュアの間で使われていた、レコードとオーディオに関する言葉は「ハイ・フィ」というもので、どういうわけか、「ハイ・ファイ」とは発音されなかった。
 こんな状態だったから、平山社長や、その他会社の幹部の意見では、ハイ・フィかハイ・ファイのほうがよいだろうということだったが、これには僕達が頑強に反対した。ハイ・フィやハイ・ファイは俗語であって、オーディオこそ、我々が真面目に取組もうとしている世界の正しい呼称であると突っぱったのである。もちろん、ハイ・フィやハイ・ファイは当時の辞書には出ていなかったが、オーディオは出ていた。当り前である。しかし、今だったら、雑誌のタイトルとして、辞書に出ている言葉はボツにして、出ていないほうを採るだろうに、当時は、やはり世の中、コンサーバティブであった。結局、タイトルは『電波とオーディオ』と決まったのである。この「電波」がつくことには我々は抵抗したが、電波新聞社の刊行物だからということで押し切られてしまった。しかし「電波」という字はごく小さく、ほとんど「オーディオ」が全面に目立つ題字が選ばれることになったのである。
     *
「電波とオーディオ」の編集を約三年やられて、菅野先生は離れられている。
そのころには電波の文字が大きく、オーディオは小さくなっていたそうだ。

「電波とオーディオ」の書名がいいとは思っていないが、
いまの時代からみれば、時代の先取りともいえそうである。
決して好きな表現ではないが、一周まわって新しい、ということになる。

電波とはテレビ、ラジオ、アマチュア無線などを、ここでは指しているが、
無線という意味で捉えれば、
「電波とオーディオ」はケーブルレス(ワイヤレス)・オーディオということにもなる。

「電波とオーディオ」のころの無線と、いまの時代の無線は技術的には進歩があり違ってきている。
けれど電波を使うことは同じで、機器間の接続をケーブルに頼らずに、という点は同じといえる。

「電波とオーディオ」のころの電波は長い距離の伝搬手段であり、
いまの時代の家庭内での電波は至近距離の伝搬手段である違いはあっても、
「電波とオーディオ」や「無線と実験」といった書名は、
かなり長いこと古くさい印象があったが、いまは必ずしもそうではなくなっている。

オーディオ信号の伝送において、ケーブルなのかワイヤレスなのか。
一刀両断で、どちらかが劣るとは、いまのところいえない。

ワイヤレスなんて……、という人がオーディオマニアに少なくないことは知っている。
なぜ、そんなふうに決めつけてしまうのか。
決めつけてしまうことで、自分を誰かにアピールしたいのか。

すべての技術にメリットとデメリットがあり、
ケーブルにしても無線にしても、どういう規格でどう使っていくのかので、
判断していくものであって、いえるのはどちらが好きか嫌い程度である。

ケーブル伝送は一見簡単そう(単純そう)にえるが、
部品点数においては複雑な構成の増幅よりも、
実のところ難しい面を持っているようにも思えることがある。

Date: 10月 1st, 2016
Cate: ケーブル, ショウ雑感

ケーブル考(ショウ雑感・その2)

インターナショナルオーディオショウでのテクニクスのブース。
SL1200Gについての説明と音出しが行われていた。

SL1200Gは電源コードと信号ケーブルを交換できる。
もちろん製品にはどちらも同梱されている。

が、この日の音出しは、説明もされていたが、
電源コードはアキュフェーズ、信号ケーブルはゾノトーンのモノを使っていた。

話に聞けば、テクニクスの試聴室でも信号ケーブルはゾノトーンとのこと。
いわばテクニクスにとって、信号ケーブルはゾノトーンが標準といえる。

だからそのケーブルを、インターナショナルオーディオショウでの音出しでも使う。
そういう理解もできるわけだが、
それではなんのために信号ケーブルと電源コードを同梱しているのか。

SL1200Gは330,000円(税抜き)するアナログプレーヤーである。
このクラスのモノを買う人が、なんのケーブルも持っていないとは考えられない。
ならばSL1200Gは、最初から信号ケーブルも電源コードもなしでもいいという考えもできる。

それでもテクニクスはケーブルをつけている。
どんなグレードのモノなのかはしらないが、
つけておけばいい、という考えによるモノではない、と思う。

あまりにも安っぽいモノを、330,000円のモノにつけるだろうか。
きちんとしたケーブルがついてくるのではないだろうか。
だとしたら、それはSL1200Gにとって、
標準といけえる信号ケーブルと電源コードといえるわけである。

でも、それらのケーブルを使ったSL1200Gの音を、オーディオショウで聴かせない。
テクニクスの試聴室においても、そうであろう。

ここで井上先生の言葉を憶いだす。

Date: 10月 1st, 2016
Cate: ケーブル, ショウ雑感

ケーブル考(ショウ雑感・その1)

井上先生は、製品に同梱されているケーブルで接続した音を、
まず聴くことの重要性を、くり返しいわれていた。
瀬川先生も同じことをいわれていた、と聞いている。

昨今のオーディオ機器は信号ケーブルだけでなく、
電源コードも交換できるようになっている。

アメリカやイギリスなどの海外製のアンプはかなり以前からそうだったのに対し、
国産のオーディオ機器は電源コードを交換できるようにはなってなかったが、
いまでは交換できないモノの方が少ないようだ。

電源コードが交換できるオーディオ機器にも、電源コードは付属してくる。
その電源コードが、いわば標準となる。

オーディオショウでは各ブースで、さまざまなケーブルが使われているのを目にする。
少しでもいい音を出したい、ということからのケーブルの選択であるはずだ。

いま信号ケーブル、電源コードが付属されているオーディオ機器は、
どのくらいの比率なのだろうか。
電源コードはおそらく100%同梱されているはず。
信号ケーブルは、そうではないだろう。

オーディオショウでは、このあたりはどうしているのだろうか。
信号ケーブルが付属していないのであれば、どのケーブルを使ってもいい、といえる。
電源コードはどうだろうか。

付属のコードをではなく、別の電源コードに換えてしまう。
その音を聴かせることを、出展社のスタッフはどう考えているのか。

Date: 9月 17th, 2016
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(その18)

変換効率が低い、つまり出力音圧レベルが低いスピーカーであれば、
同じ音圧に得るのには、より大きなパワーを必要とする。

低能率のスピーカーにつながれているスピーカーケーブルにかかる電圧は、
高能率のスピーカーよりも高くなるし、
電流に関しても多くなる。

しかも高能率時代のスピーカーのインピーダンスは、
多くが16Ω、32Ωというものもあった。

アンプがソリッドステートになり、スピーカーのインピーダンスは8Ωが主流になった。
その後、6Ωのモノも増えてきた。
最近では4Ωのモノも当り前のようにある。

低能率で低インピーダンスとなると、
電流はさらに増えることになる。

電力の伝送においては、
ケーブルに起因するロスをできるだけ減らすために、
同じ電力であれば電圧を高くして、電流を抑える。
逆に、電圧を低くして、電流を増やしてしまうと、ロスが増えてしまうことになる。

ロスが増えるということは、ケーブルの影響をより大きく受けている、ともいえる。

低能率・低インピーダンスのスピーカーにつながれるケーブルは、
その意味で太くならざるをえない。
導体が太くなるということは、静電容量も増えがちになる。

静電容量を抑えるには、線間をできるだけ確保するのが効果的である。
そうなるとケーブルは太くなる。

同時に導体そのものの振動も増える。
この影響も、もしかすると低能率スピーカーで聴くほうが、顕著に聴きとれるかもしれない。
増えた振動を抑える対策によって、ケーブルはまた太くなる。

Date: 9月 17th, 2016
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(その17)

スピーカーの変換効率を向上させていく。
現時点では1%以下の変換効率のスピーカーが大半になってしまっているが、
それを理想といえる100%までもっていく技術が開発されたと仮定する。

そうなったときにスピーカーの音色の違いはなくなるのだろうか。

私が生きているうちには、そんなことはやってきそうにないけれど、
それでも考えてみた。

100%の変換効率をもっていたら、
スピーカー間の音色の違いはほとんどなくなる、といえるかもしれない。

100%の変換効率を実現するスピーカーの方式とは、
いったいどういうものになるのか、それはわからない。

たとえばステレオサウンド 50号に長島先生が書かれていたような、
スピーカー周辺の空気を磁化し、振動させるという方式で100%の変換効率が実現できたとしたら、
振動板がないわけだから、少なくとも振動板の素材がもつ固有音は排除できる。

少なくともなんらかの素材を振動板にするかぎりは、変換効率を100%にすることはできないはずだ。

──そんなことを考えていたこともある。
実際にはありえない100%の変換効率のスピーカーだと、
スピーカーケーブルの違いをどう表現するのか、とも考えた。

ケーブルの違いが、
いまわれわれが聴いているスピーカーとは比較にならないほどはっきりと聴きとれるのか。
そうだとしたらケーブルメーカーは、さらにあの手この手でさまざまな新商品を出してくるんだろうか。

こんなことも考えていた。
同時に、1%以下の変換効率のスピーカーシステムで、
ケーブルの違いが音として聴きとれる、という不思議さに気づいた。

ただ、すぐさまむしろ逆なのかもしれない、とも気づいた。
むしろ変換効率が低いからこそ、ケーブルの違いが音として出てきている、といえる面もあるのではないか。

Date: 8月 18th, 2016
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その6)

SMEの3012-Rの最初の広告には「限定」の文字があった。
SMEもそれほど売れるとは考えていなかったのかもしれない。
けれど3012-Rは高い評価を得た。

特にステレオサウンド 58号の瀬川先生による紹介記事を読んだならば、
このトーンアームを買っておかなければ、と思ってしまう。
私もそのひとりである。

3012-Rはかなり売れたのだろう。
いつのまにか「限定」の文字がなくなって、販売は継続されていった。
それだけでなく、さらなる限定モデルとして金メッキを施した3012-R Goldを出す。

その後3012-R Proも出してきた。
このトーンアームの内部配線も銀線であり、
ピックアップケーブルも銀線になっていた。

ステレオサウンド試聴室では、
マイクロのSX8000IIに、この3012-R Proを取り付けて、
ケーブルも付属の銀線をリファレンスとしていた。

つまりこのアナログプレーヤーにオルトフォンのSPU-Goldを取り付ければ、
発電コイルから出力ケーブルまで銀線で揃えられる。
いうまでもなくオルトフォンもSMEも、当時はハーマンインターナショナル扱いブランドだった。

ちなみにケーブルの両端についている保護のためのコイルスプリングは外していた。
この部分にアセテートテープ貼ってみる。
これだけでも音は変化する。
さらにこれを取り除くと、その変化はもっと大きくなる。

このコイルスプリングは鉄でできている。
機械的共振と磁性体を取り除くことになる。

銅線でもそうだが、銀線では特に、
このコイルスプリングがあると良さが出難くなる印象を持っている。

Date: 8月 17th, 2016
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その5)

1970年代後半、他の国はどうだったのかは知らないが、
少なくとも日本では銀線という文字を、オーディオ雑誌で見かけることが急に増えてきた。

広告では、新藤ラボラトリーが、
ウェスターン・エレクトリックも銀線を使っていた、と謳っていた。

それから木製ホーンで知られていた赤坂工芸は、
オルトフォンのSPU-AEのコイルを銀線に巻き直すサービスを行っていた。
オルトフォンが銀線コイルを使用したSPU-Goldを出すよりも以前のことである。
赤坂工芸の広告には、50ミクロンの銀線を使用、とあるだけで、
詳細はお問い合わせ下さい、とのこと。

どのくらいの価格でやってくれるのかは、なので知らない。
いったんカーリトッジをバラしてコイルをほどき、巻き直すわけだし、
しかもひじょうに細かな作業だから、それほど安くはなかっただろう。

《その結果は、まさに筆舌につくしがたいというところです。ただ聴きほれるだけです》
と広告には、そう書いてあった。

この広告から二年半後に、オルトフォンからSPU-Goldが登場している。
なので当時は勝手に想像していた。
赤坂工芸の銀線SPUの音を聴いた人が、オーディオ関係者にいたのかもしれない。
それでオルトフォンに……、そんなふうに想像できなくもなかった。

SPU-Goldはステレオサウンド 61号で、山中先生が紹介されている。
     *
在来のSPUに比べてわずかながら音の鮮度と低域の分解能が向上し、よりアキュレートな音になっているのが新しい魅力である。
     *
この項の(その1)で引用したことと、
SPU-Goldの音の印象は重なってくるし、そのことで銀線のイメージができあがりふくらんでいった。

Date: 12月 13th, 2015
Cate: ケーブル

ケーブル考(コネクターのこと)

1977年にマークレビンソンのコントロールアンプLNP2とJC2は、
入出力端子にCAMAC規格のLEMOコネクターを採用した。

それまではスイッチクラフト製のRCAコネクターだった。
LEMOコネクターの採用により、変換アダプターかLEMOコネクターを使った専用ケーブル、
そのどちらかが必要となる。
面倒であり制約のあるコネクターなのは、これを選んだマーク・レヴィンソン自身がよくわかっていたはずだ。
それでも、信頼性ということで、レヴィンソンはLEMOを選んでいる。

LEMOコネクターは抜き差しの際、ホット側が先に外れるし、アースが先に触れる構造である。
つまりアンプのボリュウムを上げたまま、入力ケーブルの抜き差しをやっても、
スピーカーからショック音は出てこない。

オーディオマニアならば、一度は、ケーブルを何かの拍子に抜いてしまって、
ものすごい音をスピーカーから出してしまった経験があると思う。

これはRCAコネクターの構造上、抜く場合にはアース側が先に外れ、
差す場合にはホット側に先に接触してしまうからである。

アース側が接触していれば、ホット側の抜き差しでの音は発生しない。
だからステレオアンプの場合、たとえばCDプレーヤーとの接続をケーブルを交換する際、
左右チャンネルのどちらかのケーブルを抜く際には、音は発生しない。

なぜならば、アンプの内部で左右チャンネルのアースは接続されているから、
片側のケーブルを抜いても、もう片方のケーブルが接続されているからアースは接続されていることになる。
これで安心してしまって、残りのケーブルを抜いてしまうと、ショック音は出る。

LEMOコネクターでは、そんな心配は関係なくなる。
バランス接続に使われるXLRコネクター(いわゆるキャノンコネクター)も問題はない。

いちばん普及しているRCAコネクターだけが、構造上の欠陥をいまも抱えたままである。

この問題点はずっと以前から指摘されていた。
マークレビンソンのLEMO採用以前からの指摘である。
にも関わらず、いまもそのままになっている。

使い手が気をつけていれば問題ない、とはいえる。
けれど時として不注意で……、ということはある。
しかもいまは大出力のアンプが当り前のようにある。

ケーブルの値段の上限は、まるでないかのようである。
コネクターも高価なものがいくつもある。
それでもRCAコネクターのままである。

いったいいつまでRCAコネクターのままなのだろうか。

Date: 10月 6th, 2015
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(その16)

金子ケーブルが最終的にどういうモノになっていったのかは知らない。
ただかなり太くなっていったのではないかと思う。
その音は、推測するにスタティックな印象のケーブルであったのではないだろうか。

金子ケーブルは振動を徹底的に抑えるために太くなっていった、と私はとらえている。
もっとも、これだって、図書館に行きステレオのバックナンバーを丹念に読んでいけば、
もしかすると違っているのかもしれないが、極端に違っていることはないはずだ。

この金子ケーブルのアプローチは、
いわばケーブルは必要悪という考え方からのものといえる。
金子ケーブルだけでなく、多くの日本製のケーブルはそういうところがある。

つまり理想のケーブルはとはケーブルが存在しないことである。
けれどそれは現実としては無理なことであり、
ならば10mケーブルよりも1mのケーブル、1mケーブルよりも10cmのケーブルの方が、
音がいい、言い換えれば理想のケーブルのあり方にすこしでも近づける、ということになる。

日本のケーブルは、材質の純度を極端に高める方向に向って行った。
これなどは、まさしくケーブルの存在をゼロにちかづけたいがためであり、
ゼロにできなければケーブルの存在を稀薄にしていきたい、
ケーブルとは、音の上で透明な存在であるべき、ということになる。

これに対して海外製のケーブルの多くは、
ケーブルのキャラクターを積極的に認めているのではないか、と思えるところがある。
ケーブルも、オーディオコンポーネントのひとつであり、重要なアクセサリーでもある。

ケーブルとしての理想を追求はするけれども、
ケーブルの理想のあり方としてイメージしているところが、
日本のケーブルメーカーと海外のケーブルメーカーとでは違っているのではないか。

こう考えた場合、同じようにケーブルが太くなっていくとしても、
日本のメーカー的考えによるものと海外のメーカー的考えによるものとでは、
ひとまとめに考えるわけにはいかなくなる。

Date: 9月 23rd, 2015
Cate: ケーブル

ケーブル考(その5)

ケーブルは関節だということに気づいてみると、
そういえは関節は英語では jointであり、
Jointには、関節の他に、接合個所[点、線、面]、継ぎ目、継ぎ手、という意味がある。

ジョイントケーブルという言い方があるのも思い出す。
ジョイントケーブルといっても関節ケーブルという意味ではなく、接続ケーブルという使われ方ではあるわけだが、
ケーブルをオーディオ機器同士の関節として捉えることは、
あながちおかしなことでもないし、目新しいことでもないのかもしれない。

たまたま私が読んできたオーディオ関係の本に、そういったことが書かれていなかっただけだったのか。

人間の身体に関節はいくつもある。
指にもあるし、手首(足首)にもあり、肘(膝)、肩(股)などがある。
これらの中では膝の関節が複雑だと聞いたことがあるが、
だからといって膝の関節がもっとも優れた関節であり、
他の関節も膝と同じ構造の関節になれば、身体能力が向上する、というものではないはず。

それぞれに箇所に適した関節であるからこそ、バランスが成り立っているのかもしれない。

オーディオ機器に使われるケーブルにも、いくつか種類がある。
もっとも短くて、だから価格も安く手軽に交換できる箇所としてシェルリード線、
トーンアームからの出力ケーブル(低容量と低抵抗タイプとに以前はわけられていた)、
チューナー、CDプレーヤーなどをアンプに接続するラインケーブル、
スピーカーに接続されるスピーカーケーブル、
それからそれぞれのオーディオ機器に電源を供給する電源コードがある。

スピーカーケーブルに求められる条件とシェルリード線に求められる条件とは違ってくる。
スピーカーケーブルではさほど重量が問題となることはないが、
シェルリード線では、あの狭いスペースであり、トーンアームの先端部分に位置するのだから、
太さと重さには制限がある。

ただし、この制約は高価な素材を使ううえでは有利ともなってくる。

Date: 6月 2nd, 2015
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その4)

KEFのModel 105というスピーカーシステムは、
同時代の同じイギリスのスピーカーシステムであるスペンドールとくらべると、
音の性格そのものが本質的なところで違っている。

BCIIもBBCモニターの流れを汲むスピーカーとはいえ、
その音の本質は、聴き手に緊張を強いるところは排除されているといえるほど、
全体に艶のあるたっぷりとした響きをともなって聴かせる。

ゆえに瀬川先生はBCIIは、アキュレイトサウンドという括りをされているが、
《厳密な意味では、精確な音の再生と快い音の再生との中間に位置する》と、
「続コンポーネントステレオのすすめ」の中で指摘されている。

Model 105には、そういう面はない。
瀬川先生は《厳格な音の分析者》と表現されている。
そういう性質のスピーカーであり、
このスピーカーシステムの特徴でもあるインジケーターランプを使い、
KEFの指示通りのセッティングを行えば、冷静な音を聴き手の前に展開してくれる。
こういう鳴り方だと、聴き手はやや緊張が強いられるところもなくはない。

瀬川先生はステレオサウンド 45号の試聴記に、
《かなり真面目な作り方なので、組合せの方で例えばEMTとかマークレビンソン等のように艶や味つけをしてやらないと、おもしろみに欠ける傾向がある。ラフな使い方では真価の聴きとりにくいスピーカーだ。》
と書かれている。

そうなのだ、艶、色気がたっぷりしていなくともいい。
そこまでいったらもうKEFのModel 105とはいえなくなる。
だが、わずかな艶とか色気といった、
いわば、それはスピーカーでの演出ということになるのだが、そういった要素を求めたくなる。

そのことが、私の中では銀線と結びついていった。

Date: 4月 29th, 2015
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その3)

マークレビンソンML7に銀線が使われていることを知ったのは、
ステレオサウンド 76号の特集、コントロールアンプの総テストだった。

この特集では試聴だけでなく測定も行い、
さらに各社から回路図も提供してもらい、長島先生による技術解説もやっている。
このときにML7の回路図を見ることができ、”Silver Coax”の文字に目が留ったのだった。

そして思い出したのが、KEFのModel 105のことだった。
マーク・レヴィンソンは、Model 105に銀線を使うつもりだったのだろうと思っていた。

ステレオサウンド 50号に「マーク・レビンソンのニューライン完成間近」という2ページ見開きの記事がある。
1979年2月、マーク・レヴィンソンが来日して、都内のホテルでデモンストレーションを行っている。
そのときに開発中の製品として発表された中に、KEFのModel 105をベースとしたモデルがある。

このとき発表された製品には、パワーアンプのML3、コントロールアンプのML6の他に、
マークレビンソンとしてはローコストなコントロールアンプML4、
スチューダーのマスターレコーダーA80のトランスポートを使い、
エレクトロニクスをマークレビンソン製におきかえたML5があり、
さらにピラミッドのリボン型トゥイーターT1をベースに、
インピーダンスを4Ωに変更し、振動板にも若干の変更が加えられたモノ、
そしてKEFのスピーカーシステムModel 105をベースに、
ネットワーク、内部配線をモディファイしたというML10がある。

ML4、ML10、ピラミッドのT1は製品化されることはなかった。
ML10の型番は、ML4とは別のローコストなコントロールアンプに使われている。

この時発表されたモノで、私が興味をいちばんもったのはML10だった。
このML10のことを、ML7に銀線が使われているのを知って思い出したのだった。

Date: 4月 29th, 2015
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その2)

銀線の良さを認める人がいる一方で、否定的な人がいる。
銀線といっても、さまざまなことを考えれば、あたりまえのことである。

銅線にしてもタフピッチ銅と無酸素銅があり、純度に関しても大きな違いがあり、
熱処理、線径の太さなど、すべてが音に関係しているのだから、
銅線の音に関しても、いわゆるピンキリの状態である。

銀線も、銅線ほどあれこれ選べるわけではないけれど、同じであるのだから。

五味先生が感心された岩竹氏によるマッキントッシュのMC275には、
どの程度の銀線が使われたのかはわからない。
それでも、五味先生が「冴え冴えと美しかった」と書かれているのだから、
銀線の可能性に大きく期待して当然だろう。

もちろん銀線だけで音が決定されるわけではない。
それにマークレビンソンにしても銀線をアンプ内配線に使ったのはML6だけだろう、という反論がある。
確かに銀線使用を大きく謳ったのはML6だけである。

ML7以降は、アンプ回路の設計者も変り、モジュール構成も大きく変更され、
銀線は使われていない、と私も思っていた。

けれどML7のブロックダイアグラムをみると、ML7にも銀線が使われいてることがわかる。
インプットセレクターからボリュウムへの配線に、”Silver Coax”と表記してある。
ブロックダイアグラムに、ふつうそういった仕様に関することは書きこまないにもかかわらず、
そう書きこんであるのだ。

Date: 4月 28th, 2015
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その1)

銀が銅よりも導体抵抗が低いことは知っていたけれど、
銀のケーブルがあることを知ったのは、すてサウンドに載っていた新藤ラボラトリーの広告だった。
ウェスターン・エレクトリックに銀のケーブルがあった、とそこには書かれていた。

ちょうど同じころ、マークレビンソンが内部配線材に銀を採用したML6が登場した。
マークレビンソンも銀なのか、その偶然にも驚いていた。

しかもである。ステレオサウンド 52号掲載の五味先生のオーディオ巡礼にも銀線のことが出てくる。
       *
たとえばピックアップコードを通常の銅線から銀線に代えると、高域の伸びは輝きをまし、低域もずいぶんレンジの伸びたふくらみを聴かせてくれるのは、今では大方の人が実験しているだろうが、私の知るかぎり、最初にこれを試みたのは岩竹氏であった。
     *
その岩竹氏のMC275を借りて五味先生は鳴らされている。これも52号に書かれている。
     *
拙宅のマッキントッシュMC275の調子がおかしくなったとき、岩竹さんがアンプ内の配線すべて銀線に替えられたアンプを所持されると聞き、試みに拝借した。それをつなぎ替えて鳴らしていたら娘が自分の部屋からやってきて「どうしたの?……どうしてこんなに音がいいの?」オーディオに無関心な娘にもわかったのである。それほど、既製品のままの私のMC275より格段、高低域とも音が伸び、冴え冴えと美しかった。
     *
もうこれだけで充分である。
銀線の音など聴いてもいないのに、銅線よりも銀線となっていた。

Date: 3月 12th, 2015
Cate: ケーブル

ケーブル考(その4)

中学、高校のころはケーブルは人の体にあてはめれば、
血管、神経というふうに考えていた。

たしかに血管でもあり神経でもある。
電源ケーブル、アンプ、チューナー、CDプレーヤーなどの内部配線における電源ラインは、
血管にたとえたほうがいいと思う。
信号ラインは、だから神経にあてはまる。

でも、ここで考えたいケーブルは、あくまでもオーディオ機器同士を接続するためのケーブルである。
アンプなどの内部配線ではなく、
その外側にあるケーブルであり、これらのケーブルの両端にはコネクターが存在する。
このコネクターは接点と言いなおしてもいい。

CDプレーヤーとアンプを接続するケーブルは、神経ともいえる。
アンプとスピーカーを接続するケーブルは、神経でもあり血管ともいえる。

そういうことは承知のうえで、ケーブルとは何かを考えるようになると、
あえて人の体にあてはめるのであれば、関節ということに行き着く。