Archive for category ケーブル

Date: 5月 6th, 2025
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その18)

同軸スピーカーケーブルの逆接続による音の変化を、何度か経験するうちに、
なぜ、こんなふうに音は変化するのかについての、
自分なりの仮説が、二、三浮かんでくる。

その時の仮説とは別に、それから三十年以上経ち、
インターネットが普及し、さまざまな知見が得られるようになってから、
また一つの、新たな仮説が浮かんできた。

ポインティングベクトルである。
ポインティングベクトルについて解説することは、私には無理。

検索してみればわかるが、数式や図式が表示される。
それらを眺めたところで無理。

それでもいくつか眺めている(読んでいるとは言えないレベル)と、
「電流のエネルギーは導体の外側を流れる」という記述が目に入る。

ここで重要なのは、
電流は、ではなく電流のエネルギーは、のところなのだが、
これにしても理論的に理解できているわけではない。

それなのに、ここでポインティングベクトルについて書いているのは、
同軸スピーカーケーブルの逆接続の音は、このことに関係しているように感じているからだ。

もしそうだとしたら、また新たな仮説が浮かんでくるのだが、
実際のところ、どうなのだろうか。

Date: 5月 4th, 2025
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その17)

ここで同軸スピーカーケーブルについて書いていることも、
別項「パッシヴ型フェーダーについて」で書いていることきも、同じことが含まれている。

同軸スピーカーケーブルを使って、ただ単に音がいいとか悪いとか、
音が良くなったとか悪くなったとか、
パッシヴ型フェーダーにした方がコントロールアンプを使うよりもいいとか、
やはりコントロールアンプの方が良いとか、
そういうことではなく、
その使い方を思いつく限り試してみることで見えてくる事柄がある。

このことを言いたいだけである。

Date: 5月 1st, 2025
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その16)

同軸スピーカーケーブルの逆結線(芯線をマイナス、シールド線をプラス側)の効果は大きい。
このことは当時のステレオサウンドにも載っているので、記憶されている方はいるだろうが、
その中で実際に試してみた人は、どのくらいだろうか。

かなり少ないように勝手に思っているし、ここまで読んだ人の中には、
ならば最初から同軸スピーカーケーブルの逆結線にすればいいのでは? と思う人もいるはず。

そう思う人はやってみればいい、としか私には言えないし、
そういう人と私とではオーディオの取り組み方が違うとしか言えない。

段階を踏んでいくことがどれだけ大事なのか、
そのことを理解している人とそうでない人とがいる。
それだけのことなのだろう。

段階を踏むことは、なぜ同軸スピーカーケーブルの逆結線が好結果につながるのか、
そのことへの仮説を生むことにもなる。

ここが大事なことだ。

Date: 4月 30th, 2025
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その15)

同軸スピーカーケーブルを普通に使うと、
つまり芯線をプラス、シールド線をマイナス側として結線すると、ドンシャリ気味になる。

全ての同軸スピーカーケーブルを試したわけではないので断言まではできないが、
その傾向は多少なりともある、とは言える。

特に日立電線のLC-OFCのそれは、もともとのやや硬質な性格と相まって、
ドンシャリが強調されるとも言えなくもない。

けれど、この状態でさらにシステムを追い込んだところで、
井上先生は、同軸スピーカーケーブルの結線を反対にしろ、と言われる。

最初は、どんなふうに音が変化するのか、想像できるなかった。
それでも、井上先生の指示通りに結線をやり直す。

今どきのアンプやスピーカーシステムならば、かなり太いケーブルでも苦労することなく結線できるが、
1980年代当時のスピーカーシステムもアンプも、端子はそうはいかなかった。

日立電線のLC-OFCの同軸スピーカーケーブルは、太かった。正直、結線をやり直すのはやりたくないほどに、面倒だった。

それでも鳴ってきた音を聴くと、驚く。
ドンシャリな完全に抑えられるだけでなく、全帯域に渡って音の密度が増した、と感じられた。

いうまでもなく、アンプ側もスピーカー側も両方とも芯線をマイナス、シールド線をプラス側にしているから、
スピーカーが逆相になるわけではない。

Date: 4月 29th, 2025
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その14)

数は少ないものの、以前から同軸タイプのスピーカーケーブルがある。
おそらくモガミが最初に製品化したはずだ。
1980年代には日立電線からLC-OFCを採用した同軸スピーカーケーブルがあった。

いまもモガミには同軸スピーカーケーブルが数種出ているし、
ドイツのゴッサムからも出ている。

同軸スピーカーケーブルを使う場合、芯線をプラス、シールド線をマイナス側として使うのが、
一般的というか、ほとんどそのはずだ。

ステレオサウンドの試聴室には、日立電線のLC-OFCのモノがあった。
硬く径も太かったので、取り回しはやや面倒だったし、
この頃のステレオサウンドのメインのオーディオ評論家のあいだでは、
LC-OFCのケーブルは全般的に不評だった。
まして同軸スピーカーケーブルとなると、使う人は井上先生だけだった。

その井上先生も、常に使われているわけではなかった。
いくつかの条件が重なっていく過程で、日立電線の同軸スピーカーケーブルにしよう、と言われる。

最初は芯線をプラス、シールド線をマイナス側として接続する。
この状態で、システム全体を追い込んでいくと、接続を変えるように言われる。

芯線をマイナス、シールド線をプラス側として使う接続である。

Date: 5月 5th, 2024
Cate: オーディオの科学, ケーブル

オーディオケーブルの謎(金田・江川予想とその周辺)

オーディオケーブルの謎(金田・江川予想とその周辺)」が、再頒布されている。
どういう内容なのか、入手方法はリンク先にアクセスしてほしい。

ケーブルをかえることで音は変ることを経験していても、
ではなぜ音は変化するのか、そのことについて説明することはかなりの困難である。

128ページの冊子「オーディオケーブルの謎(金田・江川予想とその周辺)」は、
サウンドロマンの1977年6月号から1978年10月号までの14回の連載記事に、
無線と実験の1981年9月号掲載の記事、
1987年の世界のステレオ掲載の記事をまとめたもの。

濃い内容だ。
リンク先にも、こう書いてある。
     *
この冊子は、この商品としてのオーディオケーブルが産まれた時代に 日本のオーディオメーカーの技術者が自社開発品の技術的根拠、 開発意図を説明したオーディオ雑誌などの記事を題材に、 (常識的な電気工学者としての)私が書いてみた記事をまとめたもので、 技術者以外の個人、商店、商社などによるオーディオアクセサリー開発者の 魔術的信仰と主張については触れていません。私にはまったく理解できませんから。

当初の構想では、電気音響工学の対象となる、 周波数特性(振幅・位相)以外に、 非直線性やCDなどの量子化(デジタル・オーディオ)の問題、 後に江川三郎さんが傾倒した「純度(私には理解できない)」の問題、 理論家にとって重要な「なぜ一部の人が電気計測では識別できない (オーディオケーブルなどの)音の違いを認識できるのか」 という原理的問題について書く予定だったのですが、 雑誌自体が休刊になったため、連載も打ち切りになりました。

というわけで、当時の歴史的記述としても完全ではありませんが、 オーディオケーブルが話題になった当時、 どんな主張があり、真実はどうだったのかといったことはわかると思います。
     *
在庫がなくなると頒布も終了となるようなので、
ケーブルについて理解したい方はお早めに。

Date: 10月 26th, 2022
Cate: ケーブル

ケーブル考(銀線のこと・その19)

以前から考えていて試してみたいことのひとつに、
真空管アンプのヒーター用配線を銀線にしたら、どういう音になるのか、がある。

銀線は高い。
信号系もすべて銀線にしたい、ということももちろん考えているけれど、
それ以上に、ヒーターのみ銀線というのは、どうなのか、
銀線ならではの音が、ヒーター用配線であっても、やはり聴こえてくるものなのか。

別項で書いている50CA10の単段シングルアンプでは、
50CA10へのヒーター配線は銀線にする。

Date: 11月 20th, 2021
Cate: ケーブル

ケーブル考(その11)

ケーブルにはインダクタンス成分が必ずある。
そのため電源部の出力インピーダンスがどんなに低くても、
アンプ部に供給するための配線がもつインダクタンスによって、
中高域からインピーダンスは上昇することになる。

定電圧回路を採用して電源部の出力インピーダンスを低くしたところで、
アンプ部までの配線が長くなれば、中高域でのインピーダンスの上昇も大きくなる。

このことに言及したのは、無線と実験において、安井 章氏が最初だったはずだ。
電源インピーダンスのフラット化。
そのことを追求され始めたのは、1980年ごろからだった、と記憶している。

定電圧回路の誤差増幅には、OPアンプが使われることもあった。
オープンループ時のゲインが高いOPアンプを使えば、
インピーダンスはかなり低くできるものの、
その定電圧回路のインピーダンスは、
使用したOPアンプのオープンループの周波数特性をなぞるカーヴとなる。

つまり中高域(可聴帯域内)でインピーダンスが上昇してしまうし、
そこからアンプまでの配線があれば、さらに上昇することになる。

安井 章氏は、だからOPアンプを定電圧回路に使われなかったし、
定電圧回路とアンプ部との配線を極力短くするために、
それぞれのアンプ部に対してローカル電源回路を用意されるようになっていった。

外部電源を採用するコントロールアンプが増えたのは、
マークレビンソンの登場以降である。

そのマークレビンソンのアンプも、
外部電源からアンプ本体へのケーブルの影響を無視できなくなったのか、
リモートセンシングを採用したり、ML6AとML6Bでは、
アンプ本体のスペースに電解コンデンサー・バンクを備えるようになった。

Date: 10月 27th, 2021
Cate: ケーブル

ケーブル考(その10)

マークレビンソンのML12とML11のペアは、
はっきりとローコスト化を謳っていたし、そのための電源共通化でもあった。

その印象がなんとなくではあっても、
パワーアンプからコントロールアンプへ電源を供給する方式を採用している製品は、
どこか妥協しているような感じを受けなくもない。

特に、それまでのマークレビンソンの製品ラインナップからすれば、
ML12とML11は商業主義に堕落した──、そう受けとられても仕方なかった。

それでも、いまここで書いている視点からML12とML11を眺めてみれば、
一転して興味深い存在となる。

欲しい、とはおもわないにしても、
もし聴ける機会があるのなら、ケーブルに関する実験をあれこれやってみたい。

これでケーブル交換にともなう音の変化量が、仮に小さくなったとしよう。
どうなるのかは、やってみないことにはわからないにしても、そうなったとしよう。

その結果をどう受け止めるか。
ML12とML11は、マークレビンソンの製品としては安価なのだから、
性能もそこそこであろう、だからケーブルの音の違いが出にくい──、
そういう捉え方もできる。

コントロールアンプの電源をパワーアンプから供給する製品は、国産にもあった。
ラックスキットのコントロールアンプA3300である。
1976年当時、45,800円だった。

A3300の電源は、同じくラックスキットのパワーアンプ、A2500かA3500から供給できる。
A3300を含めていずれも管球式で、
A2500は6RA8のプッシュプルアンプで出力は10W+10W、価格は42,100円、
A3500はEL34のプッシュプルで出力は40W+40W(UL接続)で、価格は64,500だった。

A3300がマークレビンソンのML12と違う点は、外部電源A33が別売で用意されていたことだ。
つまりA2500もしくはA3500から電源を供給した状態でのケーブルの比較、
A33を使って電源を独立させた状態でのケーブルの比較、この実験が行なえる。

この二つの比較試聴で、どういう結果が得られるのか。

Date: 10月 26th, 2021
Cate: ケーブル

ケーブル考(その9)

三筐体という構成ではなくとも、
電源をコントロールアンプとパワーアンプで共通にしている製品は、
古くからいくつか存在していた。

真空管アンプ時代にもいくつかあった。
有名なのはQUADの22とIIのペアである。

22には電源が搭載されていない。
対となるパワーアンプのIIから供給される。
IIはモノーラル仕様だから、どちらか片側のIIからということになり、
私がここで述べようとしている三筐体の構成とは少し違ってくるけれども。

QUADは昔すぎる。
もう少し最近(といっても40年ほど前)の例では、
マークレビンソンのML12とML11のペアがある。

マークレビンソンの製品としては、比較的ローコストをめざしたものとして開発され、
コントロールアンプのML12は電源を持たない。
パワーアンプのML11との組合せが前提となる。ML12の単独使用はできない。

QUADのペアもマークレビンソンのペア、どちらも聴いている。
とはいえ、当時はここで書こうとしていることを考えていなかった。

なのでケーブルを交換して聴いたわけではない。
マークレビンソンのペアで、ラインケーブルをいくつか交換しての試聴は、
どういう結果を示しただろうか。

いまになって、そんなことを思っても仕方ないのだが、
試聴の機会があったときには、あれこれ試してみるべきである。

その時には、意味もわからずなのかもしれないが、
時間がある程度経過してから気づくことがきっとある。

Date: 10月 24th, 2021
Cate: ケーブル

ケーブル考(その8)

ケーブルによる音の違いをあれこれ経験していくうちに、
増幅よりも伝送のほうが難しいのではないのか。

難しい、という表現が適切でないとしたら、
不明なことが多いのではないか、と20代のころから考えるようになってきた。

回路図上では、ケーブルは線で表現される。
実際のケーブルは同じようなモノといえる。

細い金属線で接続しても音は出る。
アンプはそうはいかない。

トランジスター一石のアンプであっても、
トランジスターのみで構成できるわけではない。
抵抗、コンデンサーといった受動素子も必要だし、設計も必要となる。
それに電源がなければ動作しないから、ここをどうするかのかも考えなくてはならない。

それでも伝送のほうが増幅という動作よりも、実のところ、
よくわかっていないのではないのか。

そんなことを以前から考えていた。

これはアンプを自作するしか試せないのだが、
コントロールアンプとパワーアンプの電源を共通とすることで、
ケーブルによる音の変化量と幅は、かなり抑えられるようになるのではないか。

これが私の仮説の一つである。

プリメインアンプは筐体が一つである。
それがセパレートアンプにすることで、
筐体はコントロールアンプとパワーアンプの(最低でも)二つとなる。
パワーアンプがモノーラル仕様なら三筐体になる。

私がいま考えているのは、そして実験してみたいのは、
コントロールアンプ(増幅部のみ)、パワーアンプ(増幅部のみ)、
それに共通電源部という三筐体という構成である。

セパレートアンプとすることで、
コントロールアンプとパワーアンプの電源が独立できているのを、
何も共通にすることはクォリティの低下を招くのではないか──。

Date: 10月 23rd, 2021
Cate: ケーブル

ケーブル考(その7)

接続ケーブルを、別のケーブルに交換すれば音は変化する。
その変化量が大きいか小さいかは別として、
そしてその変化量が聴きとれるかどうかも別として、音は必ず変化する。

その変化を楽しいと捉えることもできれば、面倒な、と思うことだってある。
ケーブルが同じであっても、コネクターの接点の状態によっても、音は変化する。

こんなことで変化しないでほしい──、というのが本音でもある。
それでも音は変る。
何をやっても音は変る。

それにしても、なぜここまで音の変化があるのだろうか──、と思う。
これは疑問である。

その理由を考えている。
いくつかの仮説は、私なりに持っている。

その一つについて、ここで書いておきたい。
ここで触れるのはラインケーブルについて、である。

CDプレーヤーとコントロールアンプもしくはプリメインアンプ、
コントロールアンプとパワーアンプ、そのあいだを接続するケーブルのことだ。

何をやったのかは詳しくは触れないが、ずっと以前にあることを試したことがある。
その時の音の変化は、予想よりも小さいものだった。

あれっ? と思ったものの、当時は、その理由について深く考えることはなかった。
それから二十年以上が経ち、ふと、あれって、もしかするとそういうことなのか──、
と思い出していた。

どういうことなのかと簡単にいえば、
それぞれの機器の電源が分かれているからなのではないか、である。

つまりCDプレーヤーにはCDプレーヤーの電源、
プリメインアンプにはプリメインアンプの電源、
コントロールアンプにはコントロールアンプの電源、
パワーアンプにはパワーアンプの電源が、
それぞれ独立してあることに起因している、という仮説である。

Date: 3月 19th, 2021
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その13)

部屋を横長に使うのか、縦長に使うのか。
私は、ほとんどの場合、横長に使う。

長辺側にスピーカーシステムを設置して、
左右のスピーカー間をできるだけ離せるようにするためだ。

それよりもスピーカーを後の壁から離すことのほうが重要と考える人もいて、
そういう人は縦長に部屋を使う。

人それぞれだから、
それにそれぞれに事情があって、
そこにしかスピーカーが置けない、ということだってあるから、
どちらがいい(悪い)とは決めつけないが、
私が望む音は、横長で使うほうが出てくることが多い。

左右にできるだけスピーカーを離す。
そんなことをすれば、中抜けが起るのではないか、という人がいる。

中央に定位する音が稀薄になるのは、私だってイヤだ。
イヤどころか、中央に定位する音は、しっかりあってほしい。

オーディオに興味を持ち始めた中学二年のころ、
ハイ・フィデリティよりもハイ・リアリティこそ望むことではないのか、
そんなことを考えていた。

スピーカーをできるだけ離して、しかも中央に定位する音がハイ・リアリティであってほしい。
そのための必須条件が、分離してはいけないアースの一本化である。

Date: 10月 1st, 2020
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その12)

アースは重要だ、という人はけっこういる。
そんな人のなかには、今回私が書いていることに否定的な人もいるかもしれない。

けれど一言でアースといっても、
リターンのためのアースとグラウンドとしてのアースはわけて考える必要があり、
すでに別項「サイズ考」で書いているので詳細は省略するが、
徹底して分離しなければならないアースと、
分離してはいけないアースとがある、ということだ。

知人宅の音は、驚くほど変った──、
とやった本人がいったところで、自画自賛としか受けとらない人がいるのはわかっている。

知人宅には数日後、オーディオ店の人が来ている。
その日もたまたま私もいた。

その人は、知人宅の音を知っている。
同じシステムの以前の音を聴いているわけで、
その日の音は、ケーブルのところ以外、何ひとつ変っていないにもかかわらず、
音の変化が大きかったから、「何をやったんですか」と知人に訊いていた。

そのくらいに、分離してはいけないアースを一本化することの音の変化は大きい。
audio wednesdayでも、一年以上、
メリディアンの218とマッキントッシュのMA7900との接続、
それ以前はMCD350とMA7900の接続は、
ここに書いている方法でやっている。

以前、audio wednesdayで鳴らしている音を宮﨑さんの音と思っている、
といわれたことがあり、即座に否定したことがある。

なぜかといえば、愛情をこめて鳴らしているわけではないからだ。
それでも一つだけ、私の音といえるところがあるとすれば、
それはセンター定位のリアリティである。

それはしっかりと音にあらわれているわけで、
常連のかた数人から、そのことについて訊かれたこともある。

Date: 9月 30th, 2020
Cate: ケーブル

結線というテーマ(その11)

バランス伝送の場合も同じである。
XLRプラグを開け、1番ピンの接続を片側だけ外す。
そしてアース線を用意して接続する。

一度知人宅で試したことがある。
知人宅のリスニングルームは広かった。

コントロールアンプをリスニングポイントの目の前に、
パワーアンプはスピーカーの中央に、という置き方だった。

コントロールアンプとパワーアンプ間はバランスケーブルで、
7mは優にこえていた、と記憶している。
上記のような最短距離での配線でも、これだけの長さが要るほどの広い空間だった。

ラインケーブルにおける左右チャンネルのアースの共通化(一本化)は、
ケーブルが長くなればなるほど効果的であることは理屈からいってもそうである。

それでも私が自分のシステムでやっていたときは部屋が狭いこともあって、
ケーブルが目につかないように部屋の端っこをはわせても、
せいぜいが3m程度であった。それでもはっきりと効果は聴きとれる。

それが倍以上の長さになると、どの程度の変化量となるのか。
その時知人が使っていたアンプはクレルだった。
おもしろいことにパワーアンプにもアース端子が備わっていた。

なので実験は、より簡単に行える。
知人にケーブルに手を加えることの了解を得て、
アース線には、一般的なスピーカーケーブル(太くない)を引き裂いて使った。

10分もかからずにできる。
そんな作業にも関らず、出てきた音の変化の大きさには、二人とも驚いた。
ケーブルの長さに比例して、というよりも、
二乗とまではいいすぎだろうが、それに近いのでは、と思うくらいの変化量だった。

1990年ごろの話で、いまほど高価すぎるケーブルはほとんどなかった時代だが、
知人が使っていたのは、当時としては高価な部類のケーブルであった。

つまり、どんなに高価なケーブルであっても、ここでやっていることは、
アースの明確化であって、それにはこういう方法をとる以外にない。