ケーブル考(その11)
ケーブルにはインダクタンス成分が必ずある。
そのため電源部の出力インピーダンスがどんなに低くても、
アンプ部に供給するための配線がもつインダクタンスによって、
中高域からインピーダンスは上昇することになる。
定電圧回路を採用して電源部の出力インピーダンスを低くしたところで、
アンプ部までの配線が長くなれば、中高域でのインピーダンスの上昇も大きくなる。
このことに言及したのは、無線と実験において、安井 章氏が最初だったはずだ。
電源インピーダンスのフラット化。
そのことを追求され始めたのは、1980年ごろからだった、と記憶している。
定電圧回路の誤差増幅には、OPアンプが使われることもあった。
オープンループ時のゲインが高いOPアンプを使えば、
インピーダンスはかなり低くできるものの、
その定電圧回路のインピーダンスは、
使用したOPアンプのオープンループの周波数特性をなぞるカーヴとなる。
つまり中高域(可聴帯域内)でインピーダンスが上昇してしまうし、
そこからアンプまでの配線があれば、さらに上昇することになる。
安井 章氏は、だからOPアンプを定電圧回路に使われなかったし、
定電圧回路とアンプ部との配線を極力短くするために、
それぞれのアンプ部に対してローカル電源回路を用意されるようになっていった。
外部電源を採用するコントロールアンプが増えたのは、
マークレビンソンの登場以降である。
そのマークレビンソンのアンプも、
外部電源からアンプ本体へのケーブルの影響を無視できなくなったのか、
リモートセンシングを採用したり、ML6AとML6Bでは、
アンプ本体のスペースに電解コンデンサー・バンクを備えるようになった。