同軸型はトーラスなのか(その23)
フィードバックとフィードフォワードの違いを一言で表わすならば、割り算と引き算ということになる。
アンプの出力端には、信号の他に、歪と雑音が加わっている。
この歪と雑音と同じレベルの、そして逆相の歪と雑音を加えて打ち消そうというフィードフォワードは、
つまり引き算によって歪、雑音をなくそうという発想から生れている。
フィードバックは、歪、雑音の除去よりも増幅度の安定を図った系であり、
そのことはNFBをかけたアンプの増幅度をもとめる式からもうかがえる。
反転アンプを例にとれば、NFBをかけたオーバーオールのゲインは、
NFBの抵抗値を入力に直列に挿入された抵抗値で割った値である。
NFBの抵抗値が10kΩ、入力抵抗が1kΩだとしたら、10kΩ/1kΩなので増幅度は10、つまり20dBとなる。
増幅度がフィードバックをかける前から減るのと同時に、歪、雑音も低下することになる。
つまり増幅度が割り算によって決定されるように、歪、雑音も割り算によって減少する。
フィードバックとフィードフォワードはどちらも歪、雑音を減らす効用があるが、
理論的に歪、雑音をゼロにできるのはフィードフォワードである。
割り算ではどんなに分母を大きくしていこうと、値をゼロにすることはできない。
ゼロに限りなく近づけることはできたとしても、そのときは増幅度も同じように限りなくゼロに近づいている。
その点、フィードフォワードは引き算ゆえに、まったく同じ値を逆相にして加える(つまりマイナス)ことで、
ゼロを実現することは計算式の上では可能となっている。
サンスイのスーパー・フィードフォワードは、割り算(フィードバック)だけでは除去できない歪、雑音を、
引き算(フィードフォワード)で打ち消すという、割り算と引き算を組み合わせた系である。
割り算(除算)、引き算(減算)のほかに足し算(加算)、かけ算(乗算)があるように、
割り算とかけ算を組み合わせた系が、テクニクスのリニアフィードバック回路である。