Archive for category ショウ雑感

Date: 11月 13th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その17)

今年のインターナショナルオーディオショウで、
同じ曲を対照的な音で聴くことができた。

フェーズメーションとオルトフォンジャパンのブースで、
石川さゆりの「天城越え」である。

初日の金曜日、オルトフォンジャパンのブースで、
年内発売予定のオルトフォンのSPU GTEでの「天城越え」だった。

私がオルトフォンジャパンのブースに入った時は、
発売予定のMASTERCUT RECORDSがかかっていた。

そのあとで、SPU GTEに切り替った。
できればMASTERCUT RECORDSをSPU GTEでかけてほしかったけれど、
レコードは別のものだった。
そのうちの一枚が石川さゆりの「天城越え」だった。

このアナログディスクは、ステレオサウンドから発売されている45回転のLP。
誌面でも巻末の広告でも取り上げられているから、ご存知の方、
すでに入手して聴いている、という方も少なくないだろう。

私はまったく関心がなかったので、
あっ,これがあのディスクか、という程度だった。

それでも鳴ってきた音は、
なんといおうか、どこかのナイトクラブで石川さゆりが歌っている──、
そんな光景が浮んでくる鳴り方だった。

オルトフォンジャパンのブースは、どちらかといえば暗くしているブースだった。
スピーカーシステムはTAD、パワーアンプはアキュフェーズ。

国産ブランドの組合せで、こんな雰囲気を感じさせる音が聴けることも意外だった。
その意味で、私にとって、今回のインターナショナルオーディオショウで聴いた音で、
いちばん印象に残っている。

オルトフォンジャパンの音がいちばんよかった、というわけではなく、
印象に残っている、ということだ。
MASTERCUT RECORDSの音(カートリッジはMC Diamondだったはず)よりも、
SPU GTEでの「天城越え」のほうが、私にとってはそうだった。

Date: 11月 7th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その16)

「告白」を聴いたのは初めてだった。
だから冒頭で電話のベル音が鳴るのを知らなかった。

Audio Necの電話のベルは、どきっとするほどリアルに感じられた。
そして聴いているうちに、録音スタジオのマスタリングルームでは、
こんな感じで鳴っているのではないだろか──、
そんなことをおもっていた。

モニターオーディオのPlatinum 300 3Gでのベル音は、
二度目ということもあって、どきっとすることはなかった。

順番だけのことではないはずだ。
Platinum 300 3Gで「告白」を聴いて、Audio Necで聴けば、
やはりAudio Necのベル音にどきっとしたように思う。

Platinum 300 3Gは、家庭での良質の音という感じを受けていた。
どちらが優れているスピーカーシステムということではなく、
家庭で音楽を聴くということ、
そのことをあらためて考えさせられる対照的な鳴り方をしていた。

「五味オーディオ教室」で読んだことも思い出す。
     *
 音を聴き分けるのは、嗅覚や味覚と似ている。あのとき松茸はうまかった、あれが本当の松茸の味だ——当人がどれほど言っても第三者にはわからない。ではどんな味かと訊かれても、当人とて説明のしようはない。とにかくうまかった、としか言えまい。しかし、そのうまさは当人には肝に銘じてわかっていることで、そういううまさを作り出すのが腕のいい板前で、同じ鮮魚を扱ってもベテランと駆け出しの調理士では、まるで味が違う。板前は松茸には絶対に包丁を入れない。指で裂く。豆はトロ火で気長に煮る。これは知恵だ。魚の鮮度、火熱度を測定して味は作れるものではない。

オーディオ愛好家は、耳で考える
 ヨーロッパの(英国をふくめて)音響技術者は、こんなベテランの板前だろうと思う。腕のいい本当の板前は、料亭の宴会に出す料理と同じ材料を使っても、味を変える。家庭で一家団欒して食べる味に作るのである。それがプロだ。ぼくらが家でレコードを聴くのは、いわば家庭料理を味わうのである。アンプはマルチでなければならぬ、スピーカーは何ウェイで、コンクリート・ホーンに……なぞとしきりにおっしゃる某先生は、言うなら宴会料理を家庭で食えと言われるわけか。
 見事な宴席料理をこしらえる板前ほど、重ねて言うが、小人数の家庭では味をどう加減すべきかを知っている。プロ用高級機をやたらに家庭に持ち込む音キチは、私も含めて、宴会料理だけがうまいと思いたがる、しょせんは田舎者であると、ヨーロッパを旅行して、しみじみさとったことがあった。
     *
たしかに、この二つのスピーカーの音には、このことを思い出させる違いがあった。
どちらが優秀ということではなく、どちらが好ましいのか。
そういう聴き方もある。

Date: 11月 7th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その15)

ナスペックのブースで、
モニターオーディオのPlatinum 300 3G担当の女性スタッフの方は、
最初に「私の好きな曲ばかりかけます」と前置きされた。

ジブリ作品が大好きということで、「もののけ姫」も鳴らされたし、
推しということで、福山雅治の歌もかけられた。

そんなふうに進んでいった。
別項で「好きという感情の表現」を書いているけれど、
そのことを考えていた。

ナスペックの男性スタッフも、他の出展社のスタッフも、
基本的には好きな音楽をかけているのではないのか。

好きな音楽のなかから、
そこでのアンプやスピーカーなどの特色を活かしてくれそうな曲を選ぶ──、
そうおもいたいけれど、実際にはほんとうに、このスタッフは、この曲が好きなのだろうか、
と疑問に感じることが多い。

好きという感情をストレートに出すことにためらいがあるのか。
だとしても、なんらかの感情は伝わってきそうなものな……。

男性らしさ、女性らしさ、などという。
でも人それぞれなのだから、男性(女性)らしさということよりも、
性別に関係なく、人はみな違うということであっても、
オーディオショウでの選曲においての女性らしさとは、
好きという感情を素直に出してくれるところにある、と私は思っている。

この女性スタッフは途中で、竹内まりやの「告白」を鳴らされた。
「告白」はAudio Necでのプレゼンテーションで最後にかけられた曲であり、
アンプ、CDプレーヤーなどがまったく同じ条件で、
スピーカーシステムだけがAudio NecからPlatinum 300 3Gに替わったのだから、
比較試聴という意味での選曲だった。

「告白」を鳴らし終ったあと、「やはりずいぶん違いますね」といわれた。
価格がPlatinum 300 3GとAudioNecとではずいぶん違う。
だから、かなりの違いがあって当然なのだが、
とはいえAudio Necの鳴り方が、必ずしも好ましいとはいえないところも感じていた。

Date: 11月 6th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その14)

私が聴いたタイムロードの時間帯は、タイムロードのスタッフの方による選曲だった。
別の日、別の時間帯ではオーディオ評論家によるデモが行われ、
そこではそのオーディオ評論家による選曲になるのだが、
両方聴いた人の感想だと、スタッフの選曲のほうが断然面白かったとともに、
オーディオ評論家の選曲はつまらなかった、とのこと。

そのオーディオ評論家が誰なのかは、私にとってどうでもいいことであって、
さもありなん、と思うだけだ。

こういう場に出会したり、こんな話を聞くと、
オーディオ評論家って、いったいなんなのだろうか、と疑問がわく。

オーディオ評論家は、オーディオショウにおいて、
出展社のスタッフによるプレゼンテーションを聴くことはしないのか。

参考にならない、そんなことは恥ずかしい──、
そんなふうに思っているのか。
自分の方が上だ、とも思っているのか。

ナスペックのブースには土曜日の午後から入っていた。
Audio Nesのスピーカーが、ちょうど鳴っているところだった。

同社独自の発音構造のスピーカーは、聴いてみたかったモノの一つ。
といっても、その時間帯はAudio Necのプレゼンテーションではなく、
アンプ・ブランドのPILIUMのそれであり、たまたまスピーカーがAudio Necだったようだ。

この時間帯はナスペックの男性のスタッフによる進行・選曲だった。
その後、スピーカーがモニターオーディオのPlatinum 300 3Gに替わった。

席を立とうかな、と思ったけれど、少しだけ聴いていこう気になったのは、
二日目だったこともある。
初日ならば、できるだけ多くのブースの音を聴いておきたいけれど、
二日目だから、時間的余裕はある。ひさしぶりに聴くモニターオーディオのスピーカーの音を、
少しは確認しておきたかった。

同じスタッフの方がやると思っていたら、女性のスタッフへと交代。
このスタッフの選曲が面白かった。

Date: 11月 4th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その13)

ていねいに聴いていこうと思えば、三日間では足りない。
それぞれのブースでも、時間帯によって鳴らすスピーカーやシステムが替わる。

それらをすべて聴いていこうとしたら、三日間では無理なほど、
それぞれのブースは、すこしでもいろんな音を聴いてもらおうとしている。

十年以上前は、三日間、朝から最後までいたこともあったが、
いまやるのは、ちょっとしんどく感じるようになってきた。

今年も聴きたい音(ブース、時間帯)があったけれど、すべてはまわれなかった。
明日は用があって行けない。

どうしても聴けない音がある。
聴きたいのに聴けない音がある。

体は一つだから、時間帯がかぶってしまうと、どちらかを選ぶしかない。
それにそんなに長くいるつもりはなくて入ったブースで、
しっかり、じっくり聴いてしまうということもあるから、聴き逃した音の方が多いといえよう。

そんななかで、今回印象に残ったブースについてふれていく。
私にとって鳴っている音も大事なのだが、どういう選曲なのかも同じくらい楽しみにしている。

今年、選曲で面白いと感じたのはタイムロードとナスペックである。
他にあったのかもしれないが、あくまでも私が聴いた範囲では、この二つである。

タイムロードは昨年もそう感じていたことを、今年、音を聴いていて思い出した。
スピーカーはNODEのHYLIXAだ。
イギリスの、卵形状のエンクロージュアのモデルである。
アンプは同じイギリスのChordのプリメインアンプ、Ultima Integrated。

クラシック、クラシックっほい選曲はそうは感じないのだが、
それ以外の選曲は、個人的に面白いと感じている。

今回聴いた上記のシステムの音の特徴によくあう曲を選んでいたように思う。
それにそういう曲は、あまり私が聴かないジャンルであったり、
まったく知らない曲であったするのだから、iPhoneで何の曲かを検索したりする。

タイムロードはNODE以外のブランドのスピーカーも扱っている。
別のスピーカーでの選曲がどうだったのかは知らないが、
まったく同じ曲をかけているとは思わない。

Date: 11月 4th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その12)

インターナショナルオーディオショウは、毎年三日間だ。
この三日間をちょうどいいと感じるか、短い、もしくは長いと感じるのか。

毎年のことなのだが、ブースにちょっとだけ入ってすぐに出て行く人はいる。
今年もいる。写真だけを撮って出て行く人も少なからずいる。

オーディオ雑誌の編集者なのかと思って、首からさげている入場証は一般参加である。
この人はなにをしに来ているのか?

人が多いよりも少ない方が聴く側からすればいいことなのだが、
ソーシャルメディアにアップするためだけに来ているのだろう。

写真を撮ってすぐ、という人もいれば、ちょっとだけ聴いてすぐに出て行く人は、
ソーシャルメディア以前からいる。

そういう人は、いい音かどうか、一瞬でわかるから、長居は無用と自慢気に言う。
実際にそういう人を数人知っている。

そして、こういう人たちは決って、どこもまともな音で鳴っていなかった、ともいう。

確かに、毎年ひどい音でしか鳴らしていないブースがあるのは事実だ。
広いスペースを毎年使っていて、鳴らしている機器も高価なモノばかりなのに、
毎年毎年、貧相な音しか出していない。

私だけがそう感じているのであれば、私の聴き方が悪い、特殊とか、そういうことになのが、
私の周りの人たちも、同意見だ。
ほんと、毎年ひどいよね、と口にする。

ここよりも、ずっときちんとした音を鳴らしているのに、人の入りが悪いブースもある。
結局、扱っているブランドの知名度なのか。

Date: 11月 4th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その11)

今年のインターナショナルオーディオショウの客層は、これまで明らかに違っていた。
いい方向だけに違っていたら喜ばしいのだが、
マナーのなっていない人も、今年は増えていたように感じた。

みんなが聴いているのに、なぜかスピーカーの前に行き、
スピーカー、パワーアンプを眺めている人(写真を撮る)が何人かいた。

なぜ、いま眺めるの?、と言いたくなる。
どんなスピーカーなのか、どんなパワーアンプなのか、じっくり見たいのはわかる。
けれど、それは音が鳴っていない時にやればいいことであって、
それぞれのブースの人がまじめに音を出している時、
多くの人がまじめに、その音を聴いているのに、
なぜそんな無神経なことができるのか。

こんな人たちを、今回はじめてオーディオショウに来た人たちは、どうおもって見ていたのだろうか。

こういうひどいマナーのなっていない人もいたけれど、
スマートフォンでニュース動画を見ながら、という人もいたし、
音を聴くよりも、スマートフォンでやりとりしている人もいた。

私がみた範囲では、若い人ではなく、私よりも上の世代の人たちだった。
誰かの邪魔になっているわけではないとはいえ、
この人たちは家でもそういう聴き方をしているのだろうか。

家での聴き方は、その人の自由だから、なにかをしながら聴いても、
他人の私がとやかくいうことではないのはわかっているが、
その習慣を、こういうショウの会場でもやってしまうのか。

これも老いからくることなのか。

Date: 11月 4th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その10)

昨日(3日)から開催中のインターナショナルオーディオショウ。
ソーシャルメディアに、老人しか来ていない──、
そんなことを今回も書きこむ人がいるのどうか。

昨日と今日、行ってきた。
まず感じたのは、若い人が増えていること。
それに女性の方も、あきらかに多かった。

男性に連れられて、という感じの方もいたけれど、
女性だけで来られている人が少なくなかった。

今日、入場受付をしていたら、隣りでは、
女性三人が受付中だった。

小さな女の子、その子の母親、そして祖母、
親子三代(みな女性)だった。

客層が明らかに変ったことを今年は感じた。
これが今後も続いていき、よい方向に結びついていってほしい。

昨日は、11時30分ごろに会場に着いた。
六階でエレベーターを降りたところで、
二人組の男性とすれ違った。

彼らの話し声が耳に入ってきた。
「このフロアは制覇したな」。そう言っていた。

開場は10時からだから、一時間半で彼らは六階の出展社をすべてまわってわけだ。
その時間の長さをいいたいのではなく、
「制覇した」という表現である。

「このフロアはとりあえず聴いてまわったな」だったら、わかる。
まずは各出展社をざっとまわったうえで、あとからじっくりということなのだろうから。

けれど「制覇した」である。
私は違和感をおぼえていた。

Date: 6月 27th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その9)

オーディオショウは、いまや老人しか来ない──、
こんな投稿も、ソーシャルメディアでは毎回目にする。

こんな書き込みをしている人は、ほんとうに会場まで行ったのだろうか。

私が今年のOTOTENに行ったのは日曜日で、滞在時間は三時間もいなかった。
けれどインターナショナルオーディオショウよりも、全体的に若い人が多くいるな、と感じていた。

ヘッドフォン祭のように、若い人のほうが圧倒的に多いわけではないが、
老人しかいない、というのは事実ではないと思っている。

そんなことを書きこんでいる人が行ったときには、若い人がほとんどいなかったのかもしれない。
それは否定できないけれど、
(その8)で書いたような人、何も得るものがない──、という人、
老人しかいない──、という人、
こういう人たちはオーディオ界を憂えている、みたいな感じを漂わしがちだが、
でも、こういう人たちがいるから、オーディオ界の未来は明るくはならないのではないか。

Date: 6月 27th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その8)

ソーシャルメディアをながめていたら、
OTOTENに行ったけれど、何も得るものがなかった──、
そんなことをコメントしている人がいた。
それに同調する人もいた。

今回のOTOTENだけのことではない、
インターナショナルオーディオショウでも、毎年、
これと同じようなことを投稿する人は、必ずいる。

得るものがなかった、ではなく、何も得ることできなかった、というべきだろう。
会場に行き、きちんと聴いていれば、得られるものは少なからずある。

こういうことをいう人は、自身のオーディオのキャリアを自慢したいのかもしれないが、
むしろ逆だろう。

キャリアをほんとうに長く積んできた人ならば、行けば必ず得られるものはある。

Date: 6月 26th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その7)

来年のOTOTENで、ひとつ、とても期待していることがある。
タクトシュトックは、カノア・オーディオの取扱いを拡大していく、とのこと。

カノア・オーディオのサイトをみると、
現在、タクトシュトックが取り扱っているモデル以外にも、けっこうある。
今回のOTOTENでも、D/Aコンバーターなどが参考展示されていた。
今年後半以降から取り扱いをはじめるとのこと。

D/Aコンバーターは、DAC 2.10という。
このDAC 2.10というモデル、MQAフルデコード対応である。

来年のOTOTENでのタクトシュトックのブースでは、
このDAC 2.10の音が聴けるはず。
その時、スピーカーがジャーマン・フィジックスであれば──、
そのことをついつい期待してしまう。

MQAとベンディングウェーヴのスピーカーこそ、
ごく私的な黄金の組合せ、と以前書いた。

これは、ほんとうに、その音を聴いて実感を深めている。
けれど、このごく私的な黄金の組合せの音は、どれだけの人が聴いているのだろうか。

ジャーマン・フィジックスを鳴らしていて、MQAも、という人は、
どれだけいるのだろうか。

とにかく、多くの人に聴いてもらいたい、ごく私的な黄金の組合せの音。
来年のOTOTENでは、オーディオショウとしては初めて、この組合せの音が鳴るのかもしれない。

Date: 6月 25th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その6)

ジャーマン・フィジックスの十一年間の不在。
やる気のない、そして愛情のない輸入元にかわってしまったことの不幸が、
日本では続いていた。

2022年から、やっとタクトシュトックが新しい輸入元となり、
輸入が再開された。

タクトシュトックの人たちがどういう人たちなのかはまったく知らない。
けれど今日のOTOTENでのスタッフの人の話は、愛情がきちんとあった。

いい輸入元にめぐりあえたな、と実感できるほどだ。
それは話だけではなく、
HRS130のデモンストレーションが始まる前、
それまで鳴っていたスピーカーシステムと入れ替えるわけで、
その時、エンクロージュアに手が触れることになる。

HRS130の仕上げだと、どうしても手の跡が残ってしまう。
タクトシュトックのスタッフの人は、柔らかい布できちんと拭き取っていた。
それを見ているだけで、ゼファンからタクトシュトックになって良かった、と思えた。

このことが今年のOTOTENでの最大の収穫だったし、
そしてカノア・オーディオのアンプが、かなり気になっている。

これも別項で書いていることなのだが、
タンノイにはKT88のプッシュプルが合う、というのが、私の経験則だ。

もちろんすべてのKT88のプッシュプルアンプが合うというわけではないのだが、
カノア・オーディオのKT88のアンプ、タンノイをどう鳴らすのか。
それもとても興味深いと思わせてくれた。

Date: 6月 25th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その5)

タイムロード時代のインターナショナルオーディオショウでの音、
タイムロードの試聴室での音、
菅野先生のリスニングルームで鳴っていた音、
知人のリスニングルームでの音、
サウンドクリエイトでの音、
それから秋葉原のオーディオ店での音、
そして私の部屋で鳴っている音。

これらのジャーマン・フィジックスの音は、デジタルでの音だった。
CD、SACD、TIDALなどによる音だった。

今回はじめてアナログディスクの音で、ジャーマン・フィジックスを聴いたことになる。
予想していたとおり、スクラッチノイズの質がいい。
耳につかない、気にならない。

一時間ちょっとHRS130の音を聴いていて思っていたことがある。
いま別項で「終の組合せ」を書いている。
ウーファーをどうしようか、と書いているけれど、
HRS130とカノア・オーディオのアンプの組合せ──、
これでいいんじゃないか、という気持が芽ばえてきた。

カノア・オーディオのアンプは、管球式プリメインアンプだ。
KT88のA級プッシュプルで、出力に余裕を持たせるために今回は二台用意しての音出しだった。

カノア・オーディオのプリメインアンプは、百万円を超えるものの、
むちゃくちゃ高価なアンプではない。

なのに、これだけ鳴ってくれる(HRS130を鳴らしてくれる)。
ウーファーで苦労することはない。

そう考えると、かなり心がぐらっとしたのはほんとうだ。
それでも──、と次の瞬間、そう思ってしまう。

やっぱりTroubadour 40を中心とした組合せを構築しよう、と。
そう決心しながらも、経済的に余裕があれば、
HRS130とカノア・オーディオのアンプ、それにMQAを組み合わせれば──、
その音を想像してしまう。

Date: 6月 25th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その4)

ジャーマン・フィジックスのHRS130は、
輸入元タクトシュトック取扱いの製品で鳴らされた。

アナログプレーヤーはヴァルテレのスラッグシップモデル。
アンプはスロヴァキアのカノア・オーディオ。

ヴァルテレは、ロクサンのプレーヤーは聴いたことはあるけれど、
それからずいぶん時間は経っているし、モデルのランクも違っているから、
初めてのモデルといえるし、
カノア・オーディオに関しては、
タクトシュトックが取り扱いを始めてたのは知っている程度でしかなかった。

どういう音が鳴ってくるのか。
音は鳴ってみるまで(聴いてみるまで)わからない。

開始時間は13時30分からなのだが、
セッティングができた13時15分くらいから、HRS130の音が鳴り始めた。

国際フォーラムでひさしぶりに聴くジャーマン・フィジックスの音。
タイムロードが取り扱っていた時代は、インターナショナルオーディオショウで聴いていた。

輸入元がゼファンになってからは、
取扱いブランドの多さからなのだろうが、ジャーマン・フィジックスが鳴らされる時間は短かった。
ゼファン時代のジャーマン・フィジックスの音は、
インターナショナルオーディオショウでは聴く機会がなかった。

タイムロード時代のジャーマン・フィジックスと、
タクトシュトック時代のジャーマン・フィジックスは、けっこう違っている点もある。

鳴らすアンプも違う。
タイムロード時代はCDだったのが、
今回のタクトシュトックはLPのみだった。

そういう違いがあっても、鳴ってきた音を聴いた瞬間、
なんの異和感もなく、いい音だ、と思える。

Date: 6月 25th, 2023
Cate: ショウ雑感

2023年ショウ雑感(その3)

タクトシュトックでジャーマン・フィジックスの音を聴いたあと、
すぐに会場を出たので、滞在時間は二時間半ほどだから、
他に、いい音で鳴っていたブースもあるかもしれないと思いつつも、
ジャーマン・フィジックスのHRS130の音は、
今年のOTOTENで、聴いておくべき、と断言したくなるほどに、うまく鳴っていた。

昨年9月に、銀座のサウンドクリエイトでHRS130を聴いている。
その音と、今回のタクトシュトックのブースでの音を比較してあれこれ言うのは、
控えたいと思いながらも、それでも今回の音はうまく鳴っていた。

ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットならではの音が鳴っていた。

HRS130は、サウンドクリエイトに今年から常設されているはずだから、
昨年の音よりもよく鳴っていることだって考えられる。

なので、ここではあくまでも約一年ほど前の音との比較なのだが、
今回のHRS130の音を聴いた人のなかには、なにか感じるものがあった人がきっといるだろう。

タクトシュトックのスタッフが話していたのは、十人、この音を聴いたら、
九人が不思議なスピーカーと感じ、のこり一人が、この魅力から離れられなくなる、と。

十人中一人。
一割。

私の感覚では、これまでは、もっと少ないように感じていた。
一割いたのであれば、ジャーマン・フィジックスは輸入が止ることもなかっただろう。

けれど、十一年、輸入元がなかったのが現実である。