インターナショナルオーディオショウの音(その4)
十数年前のことになる。
オーディオ仲間三人で話していた。
インターナショナルオーディオショウが話題になって、
私が「エソテリックの音は毎年ひどい」と言った。
これに対して、一人が「こいつ何言ってるんだ」みたいな顔をした。
彼は反論しなかったが、その表情は明らかに強い何が込められていた。
その表情から、私だけでなくもう一人も、彼が私の「エソテリックの音は毎年ひどい」に、
承服していないことに気がついて、
「でも◯◯さん、エソテリックの音はひどいし、そう思っている人は多い」、
と言った。
それでも彼は不満げだった。
二人からそう言われて、彼からの反論はなかったけれど、
彼はエソテリックのブースの音をいいと思っていることは伝わってきた。
彼からの反論がなかったので、話題は他のことに移っていった。
ここで勘違いしないでほしいのは、
エソテリックの製品、タンノイ、アヴァンギャルドのスピーカーのことを、
あれこれ言いたいわけではなく、
あくまでもインターナショナルオーディオショウでのエソテリックのブースの音について、である。
エソテリックのブースの音を認めている人が、身近にいた──、
そんな驚きも私にはあった。
音の聴き方も判断も、人それぞれだから、
彼のように、好意的に受け止めている人がいてもいいし、
エソテリックのブースの混み具合からすれば、そういう人の方が多いのだろう。
アーク・ジョイアのブースの音は、それぞれのスピーカーが、
そのスピーカーらしく鳴っていないことによる音の悪さで、
エソテリックでのサー・コリン・デイヴィスのベートーヴェン序曲集のように、
音楽的に歪められたひどさではない。