Archive for category レスポンス/パフォーマンス

Date: 12月 20th, 2016
Cate: レスポンス/パフォーマンス

一年に一度のスピーカーシステム(その9)

ダイヤトーンのDS1000は、レスポンスに優れたという意味では優秀なスピーカーといえる。
クセのまったくないスピーカーとはいわないが、
特に目立った大きなクセはない。

これはレスポンスの良さを追求した結果であろう。
その意味で、DS1000はスピーカーを鳴らす基本を身につけるための道具としては、
相当に優秀といえる。

オーディオマニアとしての腕。
それを身につけ磨くためには、何が必要なのか。
まず道具が要る。
オーディオのシステムである。
特にスピーカーシステムは重要といえる。

そしてひたすら鳴らして込んでいくわけだが、
オーディオはとうしても、いわば独学となってしまうことが多い。

リスニングルームという個室で、ひとりで音を追求していく。
誰かのリスニングルームに行き音を聴き、
自分のリスニングルームに来てもらい音を聴かせる──、
ということをやっても、実際の音の追求はひとりでの作業であり、
その作業において、誰からに見られているわけでもないし、
誰かのその作業をつぶさに見ているわけでもない。

私は使いこなしについてきかれると、
セックスにたとえる。
たとえが悪いと眉をしかめる人もけっこういるが、
どちらも密室での行為である。

誰かのセックスという行為を、
最初から終りまで傍らでじっと見ていたという経験を持っている人は、ごくわずかだろう。
他人のセックスという行為を見る機会はまずない。

アダルトビデオがあるとはいえ、あれは一種の見せ物としての行為であり、
あそこでの行為のすべてを、実際の行為への参考とするわけにはいかない。

結局相手の反応をみながら、身につけていくというところは、
オーディオの使いこなしもセックスも同じ行為と考えている。

つまり、どちらもひとりよがりになる、という点も共通している。

Date: 12月 16th, 2016
Cate: レスポンス/パフォーマンス

一年に一度のスピーカーシステム(その8)

オーディオマニアなのだから、オーディオマニアとしての腕がある。
その腕試しをしたいと思ったときに、好適なスピーカーシステムがダイヤトーンのDS1000である。

程度のいいDS1000を手に入れることができたとしよう。
一年に一度(もしくは数回)、鳴らしてみたくなるのは、
オーディオの腕試しであり、競うためである。

何と、誰と競うのかといえば、去年までの私のオーディオの腕と、である。

ふだんは鳴らしていないスピーカーをひっぱり出してきて、
セッティングを含めて一からやっていくのは、ひとつの確認行為である。

これはオーディオマニアとしての楽しみ方である。
一年のあいだに、オーディオとの怠惰な接し方をしていたのであれば、
去年のDS1000の音は出せないはずだ。

ある期間以上鳴らしていないスピーカーは、それだけで経年変化を起す。
そういうスピーカーを鳴らして、昨年と同じ、さらにいい音で鳴らすことで、
何かを確認したいと思うのは、オーディオマニア以外の何者ではないからだ。

こうやって考えていくと、DS10000は、いわば教習車としての存在である。
車の運転を習う・おぼえるのに、
車好きの人が憧れる、いわゆるスーパーカーは使わない。

私は免許をもっていないから教習所にも通っていない。
実際に使われている教習車がどういう性格の車なのかはしらないから、想像だけで書いている。

はじめて車を運転する者にとって教えてはならないのは、
クセのはずだ。悪いクセを身につけてしまったら、安全な運転はおぼつかなくなる。
そのためにはクセのない(少ない)車が向いているはずだし、
さらには正しい運転技術を身につけることのできる車が望ましいはずだ。

そういう意味で、DS1000を教習車としての存在というのである。

Date: 12月 15th, 2016
Cate: レスポンス/パフォーマンス

一年に一度のスピーカーシステム(その7)

すぐれた人で、即席やお座なりには何もできない人がある。そういう人は性質として、その時々の事柄に静かに深く没頭することを必要とする。そういう才能の人からは、目前必要なものが滅多に得られないので、われわれはじれったくなる。しかし、最も高いものはこうした方法でのみ作られるのである。
(ゲーテ格言集より)
     *
人もスピーカーシステムも同じだと思ってしまった。
そしてゲーテの時代(約200年前)からそうなのだ、と。

その6)を書いてから二年半。
そのあいだに「ゲーテ格言集」(新潮文庫)を買って、気が向いたところを開いては読んできた。

間違っていなかった。

Date: 6月 28th, 2014
Cate: レスポンス/パフォーマンス

一年に一度のスピーカーシステム(その6)

打てば響く、は基本的には褒め言葉である。
返答・反応がはやい人のことも、打てば響く、という。

返答・反応の遅い人よりもはやい人が優れているようにみえる。
遅い人は、鈍重といわれたりする。

実際は、必ずしもそうではない。
単に返答・反応がはやいだけの人がいるのを、知っている。

返答・反応のはやさが、その人自身のパフォーマンスの高さとは、ほとんどの場合関係がないばかりだからだ。

じっくりとつきあうことで、こちらの想像以上のパフォーマンスを発揮してくれるのは、
なにも人ばかりでなくスピーカーシステムも同じだと私は捉えている。

おもしろいもので打てば響く、といわれている人は、
スピーカーシステムとのつき合い方も薄っぺらであるように感じることが、私は何度か体験している。

そんな人のことはどうでもよくて、
スピーカーシステムのレスポンスの良さとパフォーマンスの高さは両立し難いものではないはずなのに、
現実にはそうでないように感じてしまうのはなぜなのか。

Date: 3月 22nd, 2014
Cate: レスポンス/パフォーマンス

一年に一度のスピーカーシステム(その5)

ダイヤトーンのDS1000というスピーカーシステムについて、一言で表現すれば、
いまでは「レスポンスに優れた」という。

帯域バランスがどうなのか、については設置やチューニングでかなり変化してくる。
だからDS1000はこういう帯域バランスといったようなことは言いにくい面をもつ。

耳につく音域がある、という人もいるのは知っている。
けれど、それはほとんどの場合、DS1000を含め、アンプやプレーヤーの設置、調整の不備によるものである。

以前も別項で書いたように、こういった不備に対してDS1000は容赦ないところをもつ。
他のスピーカーシステムだったら、そこまではっきりとは音として提示してこないようなところまで、
聴き手に音で提示してくる。

その不備がどこにあるのかを見極め、少しずつ調整をつめていく作業による音の変化も、
DS1000はきちんと反応し、音として出してくれた。

これほどレスポンスのいいスピーカーシステムは、当時他にはなかった。
つまりDS1000は、打てば響く、といえる。

この面白さは、オーディオの使いこなしのあれこれに目覚めたものにとっては、たまらないものだ。
私は井上先生のDS1000の試聴取材に何度か立会えたことで、その面白さを直に味わえ、その過程に昂奮もした。

にも関わらず、DS1000を欲しい、と思ったことはない。
DS1000が現行製品だったときに、その理由について深く考えることはなかった。

いまになって、理由を考えている。
結局のところ、DS1000はレスポンスに優れたスピーカーシステムではあった。
けれど、音楽を聴くスピーカーシステムとしてのパフォーマンスに優れたスピーカーシステムであったのか、
というと、ここには疑問を感じてしまう。

Date: 3月 20th, 2014
Cate: レスポンス/パフォーマンス

一年に一度のスピーカーシステム(その4)

ダイヤトーンのDS1000の実力を最初から知ること(聴くこと)ができたのは、
ステレオサウンドで働いていたおかげであり、井上先生が鳴らされるのを最初に聴くことができたからである。

もし自分の手でDS1000を鳴らしていたら、
井上先生が鳴らされたDS1000の音を聴いてなければ、
いまここでDS1000をとりあげることはなかったはずだ。

ヤマハのNS1000M。
このスピーカーシステムが登場したときは最新鋭機であった。
そのNS1000MもDS1000が登場するころには、ロングセラーモデルになっており、
最新鋭機とは呼べなくなっていた。

DS1000もまたダイヤトーンが送り出した最新鋭機ともいえよう。
カタログや技術資料をみれば、スピーカーユニットに投入された技術について知ることができる。
ここでは具体的には触れないが、この価格帯のスピーカーシステムにこれだけの内容を……、と感心する。

とにかくDS1000はそういうスピーカーシステムだったゆえに、
ただ設置して接続して鳴らしたときの音は、うまく鳴ることはまずない。
たいていはひどい音がするはずだ。

DS1000はとにかくいろんなことに敏感に反応してくれた。
ケーブルの交換に対しては勿論のこと、アンプやプレーヤーの設置位置の違いにも、
セッティングをつめていくことで敏感に反応していくのが、手にとるようにわかる。

つまりレスポンスのいいスピーカーシステムであった。
そして、このレスポンスについてが、この項を約一年ほったらかしにしていて、思いついたことでもある。

Date: 3月 19th, 2014
Cate: レスポンス/パフォーマンス

一年に一度のスピーカーシステム(その3)

(その1)を一年前に書いた。
(その1)を書いたとき考えていたのは、ダイヤトーンのDS1000のことを書こう。
つまりは私にとってDS1000がどういう位置づけのスピーカーシステムであったのかについて書いていこう──、
その程度のことを思いついて、忘れないうちにとにかく(その1)を書いておこう、ということだった。

そんな思いつきからの(その1)だったから、
(その2)以降をどう書いていこうか、と少し思案していた。

私の中に、DS1000を一年に一度でいいから鳴らしたい、という気持はある。
これはDS1000がよく鳴っている音を聴きたい、というわけではない。
あくまでも自分の手でDS1000をセッティングして、細かなチューニングをして、
納得のいく音が出るまで鳴らしてみたい、ということである。

いわば腕試しでもあり、自分の鳴らす技術の確認という意味合いも、ここにはある。

では、なぜそんなことを考えるのか。
それはDS1000というスピーカーシステムの性格にあるように感じている。

DS1000をステレオサウンドの筆者で高く評価されていたのは、井上先生だけ、といっていい。
ステレオサウンド以外のオーディオ雑誌では、はっきりとは憶えていないけれど、悪い評価ではなかったはず。
高性能なスピーカーシステムとして、高い評価を得ていたのではなかろうか。

だが、あの当時DS1000を高く評価していた人のどれだけが、
本当のDS1000の音を聴いていたのか、
表現を変えれば、どれだけの人がきちんとDS1000を鳴らしていたのか、
甚だ疑問である。

Date: 3月 18th, 2014
Cate: レスポンス/パフォーマンス

一年に一度のスピーカーシステム(その2)

タイトルに「一年に一度の」とつけてしまったからではないのだが、
その1)を書いたのが昨年の三月。

続き(その2以降)を書こう書こうと思いつつ、すっかり忘れてしまっていて、一年が経ってしまった。
このテーマ自体も「一年に一度」になろうとしている。

私が「一年に一度」のスピーカーシステムとして、
この項で書いていくのはダイヤトーンのDS1000である。

DS1000は型番についている1000という数字があらわしているように、
ダイヤトーンがヤマハのベストセラーモデルNS1000Mのライバル機種として、
世に送り出した(問うた)スピーカーシステムである。

NS1000Mと同じ3ウェイのブックシェルフ型。
ウーファーの前面に保護用の金属製ネットはないし、
エンクロージュアの仕上げもNS1000Mのブラック塗装に対して、木目となっているにもかかわらず、
見た印象は、NS1000Mよりも新しいスピーカーシステムとしての精悍さが、それなりに感じられる。

ダイヤトーンは、DS1000にどれだけ力を入れていたのかは、実機を前にすると伝わってくる。
時代が違うとはいえ、よくこの値段で、これだけのスピーカーシステムをつくれるものだ、と感心する。

いま、DS1000を一から開発するとしたら、どういう価格設定になるのか。
ずいぶん高価なスピーカーシステムになると思う。

そういうDS1000なのだが、決して評価が高いわけではなかった。
スピーカーとしての高性能ぶりは認めるものの……、という評価が少なくなかった。

Date: 3月 5th, 2013
Cate: レスポンス/パフォーマンス

一年に一度のスピーカーシステム(その1)

ワイドレンジ考の(その79)で、
こう書いた。

そうはいいながらも、ウェストミンスターを年に1回でいい、聴いていきたい、とも思う。
ウェストミンスターの音・響きにストレスにはまったく似合わない。
ストレス・フリーでウェストミンスターをうまく歌わせることができる人のところで、
ブラームスのレコードを1枚でいいから聴きたい。
いまはそう思っている。

タンノイのウェストミンスターだけではない、
他にも、実はいくつか一年に一度、その音を聴きたいと思っているオーディオ機器、
といってもおもにスピーカーシステムなのだが、それはいくつかある。

それがなんなのか、ひとつひとつあげていくことはしないけれど、
同じ一年に一度、と思いながらも、
少し違う意味の「一年に一度」のスピーカーシステムがある。

そのスピーカーシステムを自分のモノにしたい、とか、
そのスピーカーシステムの音を、
ウェストミンスターのようにブラームスのレコードを聴きたい、というふうに、
音楽と結びついての「一年に一度」ではなく、
自分のオーディオの腕を確認するためのスピーカーシステムとして、
一年に一度、自分での手で鳴らしてみたいスピーカーシステムがある。