Archive for category トランス

Date: 8月 15th, 2016
Cate: トランス

トランスから見るオーディオ(その27)

アンプは増幅器と呼ばれている。
この「増幅」という言葉が、アンプが不平衡でも成り立つことの理解を阻んでいた。
あくまでも私の場合ではあるが。

増幅ということは、入力された信号が大きくなっていくことだと、まず思った。
増幅の原理がわからなくとも、無線と実験やラジオ技術に載っている回路図を見ては、
入力信号が出力されるまで、回路をどう経由していくのかはわかる。

初段のトランジスター(FET)でまず増幅される。
二段目でも増幅される。
いかにも入力信号が初段でまず大きくなり(増幅され)、
二段目でも大きくなるように理解してしまった。

初段の増幅率が10倍、二段目も10倍だとすれば、
この回路の増幅率は10×10で100倍である。
ということは出力信号の1%は入力信号である──、
でもこれは間違っている。

増幅とは、入力信号に応じて直流を変調していることに気づく必要があった。

Date: 8月 12th, 2016
Cate: トランス

トランスから見るオーディオ(その26)

アンバランスという言葉を使ってしまったが、
当時はそんな言葉は知らなかった。
ただただ二本ある信号線の片側が接地(アース)されているのが理解できなかった。

大学で電子工学を学んでからオーディオマニアになった人ならば、
こんなことに疑問を抱かないであろうし、
まわりにオーディオに詳しい年上の人がいれば、
私の疑問に答えてくれたかもしれない(たぶん無理だと思う)。
そのころにインターネットがあれば、誰かに質問して答を求めたかもしれない。

そういう環境ではなかった。
中学校で習うのは理科である。物理ではなかった。
理科の知識では、片側接地の理由がわからなかった。

だからカートリッジでスピーカーを鳴らすというモデルを考えるしかなかった。
ただ運が良かったとでもいおうか、
これがCD全盛のころだったら、そういう考えも起きなかったかもしれない。

1970年代はアナログディスク全盛の時代である。
だからこそカートリッジでスピーカーを鳴らすというモデルの発想ができた、ともいえる。

オーディオ機器のさまざまな動作原理を理解するのに必要な知識が、まだ身についていなかった。
にも関わらず疑問を抱き、その疑問に対して答を求めようとするとき、
こういう極端なモデルの想像は、意外にも、というかかなり役に立つことがある。

Date: 8月 12th, 2016
Cate: トランス

トランスから見るオーディオ(その25)

トランスはプリミティヴなパーツである。
にも関わらず理想に近いトランスの実現は不可能であり、
トランスほど、優れたモノとそうでないモノとの差は大きい。

抵抗やコンデンサー、コイルといったパーツよりも、その差は大きい。
しかもきちんと使いこなすためには、意外にもノウハウが必要となる。

それに良質のトランスは昔から高価でもあった。
真空管アンプの出力インピーダンスをただ単に下げるだけなら、
ライントランスを使うよりも終段の真空管をカソードフォロワーにしたほうが、
コスト的に安くなるし、性能的にも優れたなのになる。

それでもあえてトランスを選択する人がいる。

オーディオに興味をもった40年前。
最初に疑問に感じたのは、なぜアンプにしても、すべてのオーディオ機器はアンバランスなのか、
ということだった。

オーディオ信号は交流である。
交流はプラスとマイナスが反転する。
ということはプラスとマイナスは同条件の必要がある。
そうでなければ行って帰ってくることができないのではないか。

まだアンプの動作に関しても何も知らない13歳の私はそんな疑問をもった。

そして次に考えたのは、もっともわかりやすいモデルを考えた。
つまりカートリッジがスピーカーをドライヴすると、という最も単純なモデルである。

イコライザーカーヴがあるのは知っていたけれど、ここでは単純化のために無視する。
とにかくカートリッジが非常に高能率で、スピーカーも同じように高能率である。
カートリッジの出力をそのままスピーカーにつなげば、きちんとした音量と音質が得られる。
そういう、現実には在りえないモデルを想像したうえで、あれこれ考えていった。

Date: 12月 2nd, 2013
Cate: トランス

トランスから見るオーディオ(その24)

理想トランスが実在していたとする。

この理想トランスの二次側は開放(つまりなにも接続しない)の状態で、
一次側のインピーダンスはどういう値を示すか。

巻線比が1:1であっても、1:2であっても、1:10でも、
巻線比に関係なく無限大の値を示す、のが理想トランスというものである。

理想トランスの二次側に負荷を接続する。
負荷となる機器の入力インピーダンスが理想トランスの二次側をターミネイトすることになり、
この二次側の負荷の値と巻線比によって一次側のインピーダンスが測定できるようになる。

だが現実に存在しているトランスはすべて理想トランスとは呼べない。
二次側をターミネイトしなくても、開放した状態でも一次側のインピーダンスを測れば、
無限大ということは絶対にあり得ない。

実際のトランスはどんなに良質の材料を使って、
どれだけ注意をはらってつくっても、巻線の直流抵抗をゼロにはできないし、
インダクタンスを無限大にもできない。
コアの磁束密度にしても同様だ。

Date: 11月 29th, 2013
Cate: トランス

トランスから見るオーディオ(その23)

トランスのことを書いていて、
トランスを信号系に挿入することの、音の上でのメリットについて書こうとしたときに、
頭に浮んできたのは、音に関する形容詞ではなく、
ついこのあいだのインターナショナルオーディオショウで聴いてきたVOXATIVのスピーカーのことだった。

VOXATIVのスピーカーもそうなのだが、優れたトランス(性能が優れているという意味ではない)には、
池田圭氏が盤塵集に書かれているように、音の味と表現したくなるところがある。

音の色ではなく、やはりここでは音の味と表現したくなる要素が、
VIXATIVのスピーカーにも優秀なトランスを正しく使ったときに得られる音にもある。
そして、この良さというのは、いつのまにか忘れられつつあるのではないだろうか。

Date: 11月 26th, 2013
Cate: トランス

トランスから見るオーディオ(その22)

この、少し変ったトランスの使い方の効用について、池田圭氏は次のように書かれている。
     *
このところ、アンプの方ではCR結合回路の全盛時代である。結合トランスとかリアクター・チョークなどは、振り返っても見られなくなった。けれども、測定上の周波数特性とかひずみ率などの問題よりも音の味を大切にする者にとっては、Lの魅力は絶大である。
たとえば、テレコ・アンプのライン出力がCR結合アウトの場合、そこへ試みにLをパラってみると、よく判る。ただ、それだけのことで音は落着き、プロ用のテレコの悠揚迫らざる音になる。
     *
どんなに優秀な特性のトランスであっても、
トランスは何度も書いているようにバンドパスフィルターであるから、
測定上の周波数特性に関しては、トランスがないほうが優秀である。

それにインピーダンス変換ということについても、真空管アンプならばカソードフォロワーにするとか、
トランジスターアンプならばバッファーアンプを設けるなどすれば、
出力インピーダンスは低くすることができる。

コスト的にみても、優秀なトランスを採用するよりも、カソードフォロワーのほうが安く仕上るだろう。
コストを抑えられて性能も優れているとなると、トランスの出番は少なくなってくる。
しかもトランス・アレルギーの人が少なからずいるのだから。

録音系・再生系の信号ラインからトランスを排除していく。
それで、音が良くなるのだろうか。

池田圭氏も書かれているように、トランスには「音の味」が、
個々のトランス固有のものとしてあるし、トランスに共通していえるものとしてもあるように、
私も感じている。

Date: 11月 25th, 2013
Cate: トランス

トランスから見るオーディオ(その21)

盤塵集をお持ちの方は、読み飛ばしていただくとして、
盤塵集は1981年に発行された本だから、この本の存在も知らない人が多くても不思議ではないから、
要約して書いておこう。

トランスには一次側と二次側のインピーダンスが同じモノもあるが、
一般的には一次側と二次側のインピーダンスは違う設計となっている。

管球式のコントロールアンプの出力に挿入されることがあるライントランスは、
一次側のインピーダンスが10kΩ、20kΩと高く、二次側は600Ωと低くなっている。
こういうライントランスが手元にあったならば、
トランジスター式のコントロールアンプの出力に接続する。
接続するといっても、トランスの基本的な接続とは少し違う。

二次側は開放とする。
一次側だけをコントロールアンプの出力に対して並列に接続する。
二次側の巻線の片側だけはアースに落しておく。
つまりライントランスのインピーダンスの高い巻線をコントロールアンプの負荷とするわけである。

ライントランスなどは持っていないという人も、
MC型カートリッジの昇圧トランスをひとつぐらいは持っているだろう。
それがあれば、ライントランスとは違い、二次側を同じようにコントロールアンプの出力に並列に接続する。
一次側巻線は開放で、巻線の片側だけをアースに落す。

これだけのことである。
アンプを改造したり昇圧トランスを改造したりすることなく実験できる。
コントロールアンプ・パワーアンプ間のケーブルは手を加える必要がある。
その結果が気にくわなければ、すぐに元に戻せる。

Date: 11月 25th, 2013
Cate: トランス

トランスから見るオーディオ(その20)

トランスはバンドパスフィルターである。
どんなに広帯域のトランスであったとしても、バンドパスフィルターであことには変りはない。

トランスというモノを頭から否定する人は、まずこのところが気にくわないらしい。

それから一次側(入力)と二次側(出力)にそれぞれコイルがあり、
それが鉄芯に巻かれている。そしてふたつのコイルは電気的には絶縁されている。
このこともトランス否定の人は気にくわないようだ。

トランス・アレルギーの人はいる。
でも不思議なのは、そういうトランス・アレルギーの人が、
トランスをいくつも経て録音されたディスクを、いい音だと評価していることてある。
ほんとうにトランス・アレルギーであるのなら、
トランスを使っていた時代の録音は、すべて気にくわないはずなのに。

トランス・アレルギーの人は、再生系のどこかにトランスがひとつでも入っていればすぐにわかる、という。
音が悪くなるからだ、と。
そんなトランス・アレルギーの人でも、トランスを使っていた時代の録音をいいと感じるものがあるのなら、
すくなくとも池田圭氏が、盤塵集に書かれている使い方を試してみてはどうだろうか。

Date: 11月 23rd, 2013
Cate: トランス

トランスから見るオーディオ(その19)

トランスそのものはバンドパスフィルターである。
低域も高域も適度なところから下もしくは上の帯域はなだらかにカットされる。

伊藤先生の300Bシングルのアンプに搭載されていたトランスは、後期のモノはパートリッジ製を、
BTS規格のケースにおさめたものだが、
それ以外はマリック製のトランス(日本製)だった。

マリックのトランスを設計しつくられていた松尾氏は、
トランスはフィルター理論によって設計されなければならない。
けれど日本のトランスの多くは、そうではない。
そう言われていた、ときいている。

松尾氏が亡くなられて、伊藤先生の300Bシングルはトランスが変ったのである。

トランスはフィルター理論で設計。
つまりはロスを少なくしていくとトランスの通過帯域は狭くなる。
帯域を広くしていくと、ロスは増えていく。

いわば山の形をしている、どの部分を使うかによって通過帯域が決ってくるし、
その山の中心周波数がどの値に設定されているかも重要である、と。

伝聞とはいえ、信用できる人からの話なので松尾氏の考えとはそう大きくは違っていないはずだ。

そして中心周波数は、いわゆる630Hzあたり。
20Hzと20kHzを掛け合わせた値、40万。その平方根の値を中心周波数としなければならない、ということだ。

Date: 9月 25th, 2013
Cate: トランス

トランスからみるオーディオ(その18)

理屈はともかくとして、聴感的・感覚的には周波数特性をひろげると、
つまりワイドレンジにすれば、音の密度が全体に薄まってしまうことが多い。

実際には音の密度が、ワイドレンジにすることで薄まるとは考えられない。
それでも人間という聴き手にとっては、音の密度が薄まる。

このためもあって、いまでも昔のナロウレンジのスピーカーシステムを高く評価する人がいる。

とはいえ、ワイドレンジが間違っているわけではない。
ほんとうにみずみずしい音を出すには、やはりワイドレンジでなければならないし、
ナロウレンジが得意とすると一般には思われているやわらかい音に関しても、
ほんとうのワイドレンジでなければ、
倍音が豊かにきちんと再生されたうえでの、ほんとうのやわらかい音は、まず出ない、ともいえる。

それにしても、なぜナロウレンジでの密度の高い音は、ワイドレンジでは得にくいのだろうか。
たとえばワイドレンジと呼ばれている音、
しかも密度の薄いと感じられる音を、意識的に帯域を狭くしてみる。

たとえば抵抗とコンデンサーでローパスフィルターとハイパスフィルターを形成し、
周波数帯域を適度なところでカットしてみたところで、音の密度が高くなることはない。
密度の薄いままナロウレンジになり、
ナロウレンジの良さのない、ただナロウレンジなだけの音になってしまうことが多い。

Date: 9月 23rd, 2013
Cate: トランス

トランスからみるオーディオ(その17)

池田圭氏は「盤塵集」に、こうも書かれている。
     *
アンプが広帯域であればあるほどいいという根拠があるかどうかも知らない僕が、その是非を論ずるのも当を得ない話であるが、最近超広帯域形アンプの二、三を使ってみたが、どうにも納得が行かない。使っているうちにこれまでお話した方法でLを使って、狭帯域にして使うことになる。相当数の人がこの方法で実験された話を聞くと、音に落ち着きがでるとか、迫力を生じて音が前へ出る……ということは音量を絞って満足感が得られる。苛立たしさがなくなる。やわらかい味を増す。軽く澄んでしかも深い音になる。騒々しさがなくなって明瞭度が上る。……など、とり止めもなく書くとこうなる。
     *
もちろんこれらの結果は、池田圭氏の使われていたスピーカーでの結果であるし、
同じ方法で試された方が、どういうスピーカーなのかはわからないものの、
「盤塵集」は30年以上前の本だし、いまどきのスピーカーではないから、
ここでの結果と同じ結果、同じような結果が得られる保証はない。

それでもトランスをうまく使うこと──、
池田圭氏の「これまでお話した方法」というのは、トランスをトランスとして使うのもあれば、
鉄芯入りのコイルとしての使用方法も含まれている。
トランス嫌いの人でも、池田圭氏の方法のひとつは、
それほどアレルギー的なことを感じずに実験できることでもある。

トランスはバンドパスフィルターであるから、信号系のどこかに挿入すれば、帯域幅は狭くなる。
それは池田氏も「狭帯域にして使うことになる」と書かれているとおりである。
ならば、トランスを使わずにコンデンサーと抵抗によるフィルターで、
トランス使用時と同じ特性をつくり出して狭帯域にすれば、もっといいのではないか、と思うかもしれない。

Date: 9月 23rd, 2013
Cate: トランス

トランスからみるオーディオ(その16)

トランスは、真空管アンプルには付きモノである。
コントロールアンプでも600Ωのライン出力にするには、
カソードフォロワーという手もあるけれど、やはりライントランスを使う。

そしてパワーアンプでは、一部のOTLアンプをのぞけば、
真空管式であるならば必ず出力トランスをしょっている。

真空管アンプを自作する人の中にも、出力トランスを嫌い、
OTLアンプに挑戦する人はいる。
私などは昔の記事を読んで知っているだけであるが、
真空管アンプ全盛時代には、真空管のOTLアンプに合せてインピーダンスの高いスピーカーユニットも、
特注で存在していた。

トランスは高価だし、大きいし重い。
出力トランスがなくなれば、ステレオアンプではその分だけ軽く、そしてコンパクトに作ることができる。
これだけでも自作をする上では、けっこう楽になる。
真空管のOTLアンプは、また別の難しさはあるけれども。

出力トランス、ライントランスを省ければ、アンプ製作のコストは下る。
良質のトランスは安くはない、だいたいが高価だし、
しかもいまの時代、見つけてくるだけでもけっこうな手間である。

トランスではなくカソードフォロワーにしたり、トランジスターアンプであればバッファーアンプ、
さらにはOPアンプを使ったりすれば、コストのことは別にしても、特性的にはぐんと有利になる。

特性が向上することは、基本的には良いことである。
ではあるけれど……、というところがないわけでもない。

Date: 9月 22nd, 2013
Cate: トランス

トランスからみるオーディオ(その15)

1981年春に、ラジオ技術社(現・アイエー出版)から、池田圭氏の「盤塵集」が一冊の本として出た。
ラジオ技術は、毎号とまではいかなかったけれど、無線と実験とともに、そのころはよく購読していた。
だから池田圭氏の連載も読んでいたから、「盤塵集」が出た時には、すぐに購入した。

「盤塵集」の項目は次の通り。
 第一部 NFBへの告別
 第二部 昔の吹込みと今の録音
 第三部 振動子とダンパー
 第四部 バフル今昔
 第五部 低域再生への道

それぞれの項目がさらに細かくわかれて書かれている。
第一部のNFBへの告別の中に、「L、C、Rの話」がある。

ここの書き出しを引用しておく。
     *
このところ、アンプの方ではCR結合回路の全盛時代である。結合トランスとかリアクター・チョークなどは、振り返っても見られなくなった。けれども、測定上のしけウは数特性とかひずみ率の問題よりも音の味を大切にする者にとっては、Lの魅力は絶大である。
     *
私は「盤塵集」を、自分のシステムにトランスを挿入した体験をする前に読んでいる。
「盤塵集」の前にカートリッジは、
MM型(エラックのSTS455E)からMC型(オルトフォンのMC20MKII)へとしていたものの、
昇圧手段はサンスイのAU-D907 Limited内蔵のヘッドアンプだった。
昇圧トランスも試してみたかったけれど、高校生にはそこまでは無理だった。

それが良かったのか悪かったのはなんともいえないけれど、
トランスに対して、ある種アレルギー的な拒否反応を示すことは、私にはまったくない。

中途半端なトランスでMC20MKIIを鳴らして、
その結果(音)にがっかりした後に「盤塵集」を読んでいたら、
トランスに対して、いまとは違う見方をしていた可能性だってあっただろう。

Date: 9月 21st, 2013
Cate: トランス

トランスからみるオーディオ(その14)

良質のオーディオ用トランスをつくれる職人は減っていくばかりで増えていくことは望めない。

いまや電源においてもスイッチング方式が幅を利かせているから、
電源部からも大型の電源トランスはいずれ消え去ってしまう方向にあるのかもしれない。

十数年後か何十年後には、トランスは信号用、電源用含めて前時代の遺物扱いとなるのだろうか。

いまでも電源トランスはしかたないとしても、信号用トランスは不要であり、
必要性をまったく感じないどころか、音を悪くするだけの代物でしかない、という人がいる。

トランスを、どこでもいい、信号系のどこかにいれれば、音は鈍(なま)る。
そんな音は聴きたくないから、トランスなんてものは信号系から完全に取り除くのがいい……、
そういう人を知っている。

そういう人の言い分も、まったくわからないわけでもない。
たしかにトランスの使い方がまずいと、そんな音になる。
それに良質のオーディオ用トランスも、そんなには多くはない。

良質でないトランスを、まずい使い方をすれば、「トランスなんて要らない」といいたくなるのもわかる。
そこでトランスに見切りをつけてしまうのも、ひとつの行き方ではある。

けれど、トランスは昔からオーディオには使われてきている。
再生系だけでなく録音系にも、むしろ以前は録音の現場においてこそトランスは使われる箇所が多かった。
そういう時代に録音されたものを、「トランスなんて要らない」と切り捨ててしまった人は、
どういう評価を下しているのだろうか。

鈍った音の録音だ、とでもいうのだろうか。

Date: 7月 14th, 2013
Cate: トランス

トランスからみるオーディオ(3Dとは)

3DはThree Dimensionだから、
平面に奥行きが加わったもの、ということになるわけだが、
ほんとうにそうなのだろうか、と感じてしまうことがある。

X軸とY軸から成る平面にZ軸という奥行きを加えたものは確かに3Dであることは間違いないのだが、
X軸とY軸からなる平面にZ軸として加わるものは、果して奥行きが最初に来るのだろうか。
そう思ってしまうのだ。

2チャンネルのステレオ再生を考えていくと、
左右の音の拡がりは理屈としても感覚的にも理解できることである。
けれど奥行きの再現となると、理屈からは理解し難い。
音像に立体感があることも、理屈からは理解し難い。

けれど入念に調整されたオーディオからは、
2チャンネルの再生であっても奥行きを感じたり、音像の立体を感じる。

そして奥行きの再現が浅かったり、
音像が平面的であることを、音が悪いことの証しのようにも捉えたりする。

なぜなのか、と考えていくと、
Z軸が奥行きとして考えていくよりも、
あくまでも個人的な感覚からいえば、Z軸を時間として捉えた方がしっくりくる。

そして思うのは、3Dプリント技術はたしかに立体物をアウトプットしているわけだが、
これまでの、X軸とY軸からなる紙にプリントされていたものに加わったのは、
奥行きではなく、時間として考えていくものかもしれない、ということである。