Archive for category 冗長性

Date: 6月 12th, 2015
Cate: 冗長性

冗長と情調(を書きながら……)

オーディオにおける冗長性について書こう(書けるかな)と思ったのは、2008年9月。
ブログをはじめたばかりのころ、「redundancy(冗長性)」を書いている。

けれどそのまま放っておいていた
続きを書こうとは思っていたけれど、
「redundancy(冗長性)」のタイトルのままでは、先を書けなかった。

ここにきてやっと「冗長と情調」というタイトルを思いついた。
このタイトルにして、やっと続きが書けるようになったし、
書きながら、あれもそうだったのか、これもか、とこれまで、ばらばらのこととおもえていたのが、
関連していることに気づいている。

瀬川先生が求められていた音に関してもそうだ。
なぜイギリスとアメリカのふたつのスタジオモニターを鳴らされていたのか、
なぜEMTのカートリッジだったのか、
なぜLNP2にバッファー用にモジュールを追加されていたのか、
他にもまだある。

とかにくそういったことがやっとひとつにつながっていっている。

Date: 6月 12th, 2015
Cate: 冗長性

冗長と情調(その6)

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」タンノイ号で、
オートグラフについて井上先生が語られていることが、ここに関係してくる。
     *
(オートグラフは)安直に使ってすぐに鳴るようなものではない。現実に今日鳴らす場合でも、JBLとかアルテックなどとは全然逆のアプローチをしています。つまりJBLとかアルテックの場合、いかに増幅段数を減らしてクリアーにひずみのないものを出していくかという方向で、不要なものはできるだけカットしてゆく方向です。ところが、今日の試聴ではLNP2のトーンコントロールを付け加えましたからね。いろいろなものをどんどん付けて、それである音に近づけていく。結局、鳴らすためにこちらが莫大な努力をしないと、このスピーカーに拒否される。これはタンノイの昔からの伝統です。これが使いづらいといわれる点ですが、しかし一つ決まったときには、ほかのものでは絶対に得られない音がする。
     *
ここで井上先生がいわれている「今日の試聴」とは、
「タンノイを生かす組合せは何か」というタイトルの記事で、
オートグラフの組合せをつくられた試聴のことを指す。

最初井上先生はオートグラフを鳴らすアンプとして、マークレビンソンのML2を選ばれている。
コントロールアンプは、管球式のプレシジョンフィデリティのC4。

ML2の出力は25W。
このため、《これはこれで普通の音量で聴く場合には一つのまとまった組合せ》と評価しながらも、
大音量再生時のアンプのクリップ感から、マッキントッシュのMC2300に替えられている。
MC2300は出力にオートフォーマーをもつ300Wの出力のパワーアンプ。

ここで音像に《グッと引締まったリアリティのある立体感》が加わり、
音場感も左右だけでなく奥行き方向へのパースペクティヴの再現がかなた見事になり、
一応の満足の得られる音となる。

そこでさらに緻密な音、格調の高さを求めてコントロールアンプを、
C4と同じ管球式の、コンラッド・ジョンソンのアンプ、
それから、これもパワーアンプ同様、方向転換ともいえるマークレビンソンのLNP2を試され、
LNP2とMC2300の組合せに決る。

これが井上先生の《LNP2のトーンコントロールを付け加えましたからね》につながっている。

Date: 6月 11th, 2015
Cate: 冗長性

冗長と情調(その5)

ロングアームのことを書いていると、SMEからSeries Vが登場した日のことを思い出す。
別項「SME Series Vのこと(その1)」でも書いている。

Series Vの音に驚いた私は、長島先生に「ロングアームのSeries Vは……」と言ってしまった。
長島先生の返事はこうだった。

「Series Vに不満があるのか」と。
「ありません」と答えた。

不満などまったくなかった。
そのくらいSeries Vに取りつけたオルトフォンSPUは、それまで聴いたことのないクォリティを発揮していた。
それは想像もしていなかったクォリティで鳴っていた。

それでもSeries Vのロングアーム版を望んでいた私には、
12インチのトーンアームこそが標準長のアームであり、
9インチの標準長のトーンアームはショートアームという感覚があったわけだ。
いまもある。

冷静にトーンアームを考えてみれば、
標準長のトーンアームのほうが有利なことが多い。

パイプが9インチと3インチ短くなれば、実効質量は軽くなるし、
同じ材質、同じ肉厚、同じ径であれば、短い方が強度、剛性の面でも有利になる。
どんな材質であれ固有音があり、その固有音はパイプ長とどう関係してくるのか、を考えてみても、
ロングアームは不利である。

けれど「耳」は、ロングアームを求める。

Date: 6月 9th, 2015
Cate: 冗長性

冗長と情調(その4)

SMEの最初の製品は、よく知られているように3012であり、
このロングアームは、これまたよく知られているようにオルトフォンのSPU-Gのためのトーンアームである。

ここで考えたいのは、なぜSMEのアイクマンはロングアームとしたのかである。
私にはアイクマンが16インチ盤を再生するために、12インチのサイズを採用したとは思えない。
一般的なLPである12インチ盤を再生するためのトーンアームとして、
そして当時アイクマンが愛用していたSPU-Gを、
オルトフォンのトーンアームよりもよりよい存在として追い求めた結果が、
あのサイズ(ロングアーム)だと思えてならない。

もちろんオルトフォンのトーンアームを意識していたのであろうから、
オルトフォンのトーンアームがロングアームだったから、
ということも考慮しなければならない要素ではある。

事実イギリスのグラモフォン誌の1959年9月号に載ったSMEの最初の広告、
ここには3012のプロトタイプの写真が、なぜだか掲載されている。

この広告は1983年のステレオサウンド別冊「THE BRITISH SOUND」に載っている。
この広告の写真からわかることは、
3012は軸受けがナイフエッジだがプロトタイプはピボット方式で、
バランスウェイトの上部に針圧印加用のスプリングがある。
つまりオルトフォンのRMG309を意識したものであることがわかる。

3012は1959年に登場している。
標準型である3009も続いて登場した。

ちなみに3012のイギリスでの当時の価格は27ポンド10ペンス、
3009は25ポンドとなっている。

うがった見方をすれば、SPU-G愛用者、それもオルトフォンのトーンアームを使っている人たちに対して、
買い替えをうながすためのロングアームした、ともいえなくもない。
けれどアイクマンは、あくまでも自分のためのトーンアームとして製作している。

そのプロトタイプが、彼のまわりにいるオーディオ業界の友人たちのあいだで好評になり、
商業生産にふみきった、といわれているのだから、
やはり3012のサイズは、アイクマンにとってSPU-Gを十全に鳴らすために必要なものであった、といえよう。

Date: 6月 7th, 2015
Cate: 冗長性

冗長と情調(その3)

EMTのカートリッジとエンパイアの4000D/III。
このふたつのカートリッジを所有していたら、
EMTのTSD15を鳴らすには、やはりEMTのプレーヤーシステムに装着した状態を絶対的基準とするわけで、
そうなると927Dst、さすがにここまでいくのは……、ということであれば930stということになる。

EMTのプレーヤーという、いわば特殊な例を除くと、
トーンアームはSMEの3012-Rにしたい。
3009-R、3010-Rもある。優秀なトーンアームだとわかっていても、
ここは心情的にもロングアームの3012-Rにしたい。

では4000D/IIIはどうかというと、3012-Rでもうまくは鳴ってくれるはずである。
私にとって3012-Rは、もっとも使い馴れたトーンアームであるから、
このトーンアームでうまいこと鳴ってくれないカートリッジは、
私にとって縁のないカートリッジになっていくのかもしれない。

4000D/IIIと3012-R。
なんとなくではあるが、視覚的印象としてアームが長すぎる感じがする。
オルトフォンSPU-Gと3012との組合せは、視覚的印象も合っている。
SPU-Gというカートリッジの視覚的ボリュウム感に対してロングアームのサイズが合う。

けれど4000D/IIIとなるとカートリッジの形状からしても、
標準型トーンアームの方がぴったりくる。
3009ということになる。
3009SII、3009SIII、3009-Rのどれかを選びたい。

ロングアームのSMEよりも標準型のSMEの方が、
私が感じている4000D/IIIの良さをよりキモチよく引き出してくれそうな気がする。

私の場合は、当り前すぎる結果に落ち着くわけだが、
人が違えばまた違う結果に落ち着くことだってある。

Date: 6月 4th, 2015
Cate: 冗長性

冗長と情調(その2)

ロングアームに関することで思い出すのは、
瀬川先生が「続コンポーネントステレオのすすめ」で書かれていることだ。
     *
 それは、音の質感が、どちらかといえばカラッと乾いた感じで聴こえるか、それとも逆にどこかしっとりとしめり気を帯びたような印象で鳴ってくるか、という違いである。その違いはさらに、音の響きの違いにもなる。なった音消えてゆく余韻の響きが、どこまでも繊細にしっとりと美しく尾を引いて消えてゆく感じがヨーロッパのカートリッジなら、アメリカのそれは、むしろスパッと断ち切る印象になる。ヨーロッパの音にはえもいわれぬ艶があるが、そういう音は、たとえばカリフォルニア・サウンドを聴くには少し異質な感じを受ける。やはりそこは、アメリカのカートリッジの鳴り方が肌に合う。とうぜんその逆の言い方として、ヨーロッパの伝統的なクラシックの音楽には、やはりヨーロッパのカートリッジの鳴らす味わいが、本質的に合っているということができる。私がどちらかといえばヨーロッパのカートリッジを常用するのは、いろいろな音楽を気ままに聴きながらも、結局はクラシックに戻ってくるという個人的な嗜好の問題にゆきつくのだろう。そして、いわゆるカリフォルニア・サウンド、あるいはもっと広くアメリカの生んだ音楽自体に、クラシックほどのめり込まないせいだろう。
 現に私の友人でアメリカ系のポップ・ミュージックの大好きな男は、エラックもオルトフォンもEMTも大嫌いだ、という。あの湿った音、ことさらに響きをつけ加える感じが全くなじめない、という。低音のリズム楽器が、ストッと乾いて鳴らなくてはカートリッジじゃない、という。
 私もむろん、彼の言うことはとてもよくわかる。全くそのとおりで、そういう音楽を聴くときに、エンパイアの4000D/III LACやEDR・9、スタントンの881Sなどの鳴らすサウンド(そう、なぜかアメリカのカートリッジの鳴らす音には「サウンド」という言葉を使いたくなる)が、どうしても必要になる。
     *
エンパイアの4000D/IIIは、確かに瀬川先生が書かれている通りの音(サウンド)を聴かせてくれる。
湿り気がまったくなく、低音のリズム楽器が、ストッと乾いて鳴ってくれる。

クラシックを好んで聴く私には、
その乾いた音は一種の快感でもあったけれど、乾きすぎのような感じも受けていた。
4000D/IIIは、いま聴いてもいいカートリッジのような気もしている。
欲しい、と思ったこともある。

瀬川先生にとっても私にとっても、4000D/IIIはクラシックを主に聴くカートリッジでは決してない。
でも、クラシックを主に聴いているにも関わらず、4000D/IIIを常用していた人を知っている。
彼は瀬川先生、私がクラシックを聴くときに感じる、少し異質な感じを感じることはなかった、ということになる。
そのことをきいてみたこともある。
彼はまったく感じていなかったことを確認している。
おもしいろなぁ、と思ったことを憶えている。

この4000D/IIIを取り付けるとしたら、ロングアームは選ばない。
標準型のトーンアームを選ぶ。
それは針圧の重さということよりも、4000D/IIIの音の本質と関係してくることだ。

Date: 6月 4th, 2015
Cate: 冗長性

冗長と情調(その1)

トーンアームの実効長は、標準型で9インチ、ロングアームと呼ばれるモノは11ないし12インチ。
だからSMEのトーンアームの型番は標準型が3009、ロング型が3012となっている。

もともとロングアームは、16インチのレコード盤のためのモノである。
テープレコーダーの普及以前、録音放送用に16インチ盤が使われていた。
ずいぶん昔の話だ。
この16インチ盤をかけるには、9インチの実効長のトーンアームでは無理なのだから、
当然のこととして12インチの実効長のトーンアームが不可欠となる。

つまりロングアームは必要から生れてきたモノであり、
音質追求の結果生れてきたモノではない。

もちろんトラッキングエラーに関しては、実効長が長いほど減少していくのだから、
ロングアームにもメリットはある。

だがレコード盤は完全な平盤ではない。
反りや偏芯がまったくないわけではない。
そういうレコードの音溝を正しくトーレスするには、
トーンアームの感度は高くなければならない。

つまりはトーンアームの実効質量は軽い方が、この点では有利であり、
そうなるとロングアームよりも標準型のようが短い分優れていることになる。

ロングアームは、いわば無用の長物なのだろうか。
トラッキングエラー以外は標準型が優れているし、
トラッキングエラーの減少よりも、それ以外のデメリットの影響が大きい。
標準型トーンアームがいい、という人もいれば、私も含めてロングアームに音質的良さを認めている人もいる。

昔からいわれ続けている。
そしてロングアームを支持する・評価する人の多くは、MC型カートリッジ、
それも針圧が重めかやや重めのモノを愛用する人が多い。

オルトフォンのSPU、EMTのTSD(XSD)15といった、
2g以上の針圧を必要とするカートリッジで、しかもヨーロッパ製のカートリッジを愛用する人は、
ロングアームを認める傾向にある、といえる。

Date: 7月 1st, 2011
Cate: サイズ, 冗長性

サイズ考(その71)

オーディオ機器にとっての冗長性は、
音を良くするためのものであり、オーディオ機器としての性能性を高めていくことに関係している。

けれどこういった、オーディオ的な冗長性が性能向上の妨げとなるのが、コンピューターの世界のような気がする。
コンピューターの処理速度を向上させるために、CPUをはじめて周辺回路の動作周波数は高くなる一方。

私が最初に使ったMac(Classic II)のCPUのクロック周波数は16MHz。
いま使っているiMacは3.06GHz。
CPUの構造も大きく変化しているから、単純なクロック周波数の比較だけでは語れないことだが、
もしClassic IIに搭載されていたモトローラ製のCPU、68030の設計のままでは、
いまのクロック周波数は実現できない。
68030ではヒートシンクが取りつけられることはなかったが、
次に登場した68040にはヒートシンクがあたりまえになっていた。

68040はMacに搭載されたかぎりでは、40MHzどまりだった(内部は80MHz動作)。
68030と68040はコプロセッサーを内蔵しているか否かの違いもあり集積度もかなり異る。
そのへんのことをふくめると、厳密な喩えとはいえないことはわかっているが、
68040までは、冗長性を減らすことをあまり考慮せずに最大出力を増やしていったアンプのようにも思える。

コンピューターの世界は、冗長性をそのまま残していては、速度向上は望めない。
CPUの進歩はクロック周波数をあげながらも、消費電力はそれに比例しているわけではない。
冗長性をなくしてきているからこそ、いまの飛躍的な性能向上がある。

電子1個を制御できるようになれば、コンピューターの処理速度はさらに向上する。
そうなったとき冗長性は、コンピューターの世界からはほとんど無くなってしまうのかもしれない。

冗長性を排除していくコンピューターの世界と、
冗長性がまだまだ残り続けているオーディオの世界が、これから先、どう融合していくのか。

Date: 4月 20th, 2011
Cate: サイズ, 冗長性

サイズ考(その70)

以前、冗長性について書いた。

冗長性とは、
言語による伝達の際,ある情報が必要最小限よりも数多く表現されること。
冗長性があれば雑音などで伝達を妨げられても情報伝達に成功することがある。余剰性。
と辞書(大辞林)にはある。

オーディオ機器のサイズを考えていく上で、冗長性と切り離すことはできないのではないか。

オープンリールデッキのテープ速度も、トーンアームのロングサイズも、
アナログプレーヤーのターンテーブルの慣性モーメントを増していったことも、
パワーアンプにおけるA級動作など、これらはすべて冗長性といえよう。

Date: 9月 23rd, 2008
Cate: 冗長性

redundancy(冗長性)

オーディオに冗長性は必要だろうし、実際に冗長性はある。

録音の過程も器材も、再生機器も、どれひとつ完璧なものは存在しない。 
だからこそ冗長性が必要であり、
実際に冗長性(といまのところ私が考えているもの)のおかげで、
家庭で、素晴らしい音楽を再生することが可能になっている。

冗長性が無駄になっては意味がないし、
無駄になる時代は、まだまだ来そうにないだろう。

冗長性が不要になるとき、オーディオは趣味として終るのだろうか。