サイズ考(その72)
ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’79」の巻頭、
瀬川先生の「’78コンポーネント界の動向をふりかえって」のなかに、こうある。
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35ミリカメラの一眼レフの流れをみても、最初はサブ機的なイメージでとらえられていたものが、数年のあいだに技術を競い合っていまや主流として、プロ用としても十分に信頼に応えている。オーディオもまた、こうした道を追って、小型が主流になるのだろうか? 必ずしもそうとは言いきれないと思う。
たしかに、ICやLSIの技術によって、電子回路はおそろしく小型化できる。パーツ自体もこれに歩調を合わせて小型化の方向をとっている。けれど、オーディオをアナログ信号として扱うかぎり、針の先でも描けないようなミクロの回路を通すことは、やはり音質の向上にはならないだろう。プリント基板にエッチングされた回路では電流容量が不足して音質を劣化する、とされ、エッチング層を厚くするくふうをしたり、基板の上に銅線を手でハンダづけする手間をかけて、音質の向上をはかっている現状では、アンプの小型化は、やはり限度があるだろう。オーディオがディジタル信号として扱われる時代がくれば、手のひらに乗るアンプも不可能ではなくなるだろうが……。
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この時代、国産アンプは、プリント基板の箔の厚みを増したことを謳ったモノが登場していた。
銅箔の厚みが増せば、電気抵抗もわずかとはいえ低くなる。
それによる音への変化ももちろんあるが、
プリント基板の振動(共振)という点でも違っていたであろう。
銅箔の薄いプリント基板と厚いプリント基板。
指で弾いてみると音は違っていたはずだ。
この数年後に、
ラジオ技術で富田嘉和氏が、2SK30一本(一段増幅)のラインアンプを発表された。
オーディオクラフトから製品化されているPL1000である。
発表後、部品についての記述があった。
抵抗を通常のW数よりもずっと大きなモノにすることによる音の変化の大きさを記されていた。
数十Wといった、かなり大型の抵抗まで試されていた、と記憶している。
通常の抵抗は1/2Wか1/4Wである。
抵抗のW数によって抵抗の精度はかわりない、といえる。
何が変るのか、といえば、富田嘉和氏によれば温度係数ということだった。