Archive for category デザイン

Date: 4月 22nd, 2017
Cate: デザイン

「貌」としてのスピーカーのデザイン(その4)

DD66000のウーファーの下側には、レベルコントロールがあり、
通常はカバーで覆われている。

このカバーは簡単に外すことが出来る。
サランネットを外した音、さらにはこのカバーを外した音。
ここからDD66000の音が始まる、といえるかもしれない。

レベルコントロールのカバーを外した音と装着したままの音の違いは、
それほど大きいわけではないが、それでも一度その違いを聴いてしまうと、
カバー装着の音は聴きたいとは思わないし、無視できない違いであることは確かだ。

DD66000全体が、ひとつの大きな顔に見えてしまう理由のひとつが、
このカバーにもある。

カバー装着時の音は、鼻をつまんでいる離しているようにすら、
外した音を聴いてしまうと、そう感じてしまう。
つまりはカバーが、鼻の穴的にも思えてくる。

そなると、二基のウーファーの中心には、バッフルが角度をもって接合されているため線がある。
この中心線が鼻筋に相当するかのように見えてしまう。
エンクロージュア下部(台座)の凹んだところが口、
一度そういうふうに捉えてしまうと、このイメージを払拭できないでいる。

だからといって、スピーカーシステムのデザインは、
フロントがフラットであるべき、などとは考えていない。

それでも……、と、DD66000を見ているとおもう。
デザイン、ネーミングの難しさである。

Date: 4月 17th, 2017
Cate: デザイン

「貌」としてのスピーカーのデザイン(その3)

4350とDD66000は、同口径のダブルウーファーとはいえ、
ユニット構成で違うところがある。

4350は4ウェイで、12インチ口径のミッドバスがあり、
中高域のホーンも音響レンズ付きで、大きさもそれほどではない。
DD66000にはミッドバスはなく、中域ホーンも大きく横に長い。

だからDD66000全体が、何かの顔に見えてくるわけではない。
DD66000と同じといえるユニット構成のスピーカーは、昔からあった。

横にウーファーを二基並べ、その上に大型のホーンという構成は、
むしろ以前のほうが多かった、といえる。

それらのスピーカーシステムをすべて聴いているわけではないが、
いくつかは音を聴いているし、大半は実物を見えてもいる。

つまりDD66000以前、それらのスピーカーシステムを見ても、
何かの顔をイメージすることは一度もなかった。

なのに、なぜDD66000は違うのか。

ユニット構成、ユニット配置に起因することではなく、
デザインに起因する。

DD66000以前の同種のスピーカーシステムは、
フラットなフロントバッフルにスピーカーユニットが取り付けられていた。

ウーファーだけがエンクロージュアにおさめられ、
ホーンはエンクロージュア上部に置かれているシステムでも、
フロントバッフルはフラットである。

DD66000の二基のウーファーが取り付けられているバッフルは、
一枚のフラットな板ではない。

それぞれのウーファーを取り付けた板が、角度をもって接合されている。
それだけでなく、DD66000のフロントは、全体的にフラットとはいえない。

中高域のホーンも、ホーン単体で構成されているのではなく、
ホーンの左右は、エンクロージュアの一部でもある。

エンクロージュア下部は、中央が奥に曲線を描いて引っ込んでいる。
ウーファーバッフルの中央が、同一線上にあり、前に出ているのと対照的である。

DD66000のデザインをわかりやすくいうなら、
凹凸のあるデザインであり、私には成功しているとは到底思えないのだ。

Date: 4月 17th, 2017
Cate: デザイン

「貌」としてのスピーカーのデザイン(その2)

私が小学生のころ、テレビではゲゲゲの鬼太郎のアニメが放送されていた。
その影響もあるのかもしれない……、と自分でも思っているのだが、
DD66000は、ゲゲゲの鬼太郎に登場するぬりかべに近い、別種のいきもののように見えてくる。

ぬりかべの顔は、ほぼ全身といえるし、
目は小さい、鼻も口もない。
ぬりかべは丈夫で大きな体を活かして活躍する妖怪で、
手足は短く、のそのそとある。

その歩くイメージがDD66000に重なってくる。

つまりDD66000の15インチ口径のウーファー二基が、
目として認識してしまう。
ウーファーの上にある中域ホーンは、左右が一本につながってしまった眉、
もしくは深く太い皺のようにも見えてしまう。

巨大な顔が、目の前にある。
それも左右で二基のDD66000だから、至近距離にふたつの、得体の知れないいきものの大きな顔がある。

それがこちらに向って、のそのそと近づいてくる──。

言葉にする上で、省略しているところもあるが、
そんな感じを受けてしまい、聴いていて気持悪くなってきた。

これまでにも15インチ口径のダブルウーファーのスピーカーシステムは、
いくつも聴いてきている。

DD66000と同じJBLの4350、4355は何度も聴いているし、
サランネットを外して、かなり長時間聴いてもいる。
それでも、そんな印象はまったく受けなかった。

DD66000の写真をみた時から、何か顔みたいだな、とは薄々感じていた。
でも、すぐにはなぜ、そう感じるのかはつかめなかった。
実際に目の前にDD66000が二基ある状態で音を聴いて、つかめたといいえるところがある。

Date: 4月 16th, 2017
Cate: デザイン

鍵盤のデザイン

インターネットで検索、
検索結果のURLをクリック。
そのウェブサイトで、またリンク先をクリック……。

こんなふうに書かなくともネットサーフィンと書けばすむのはわかっていても、
死語ともいえそうな言葉を使うのは、ちょっと抵抗がある。

つまりはネットサーフィンをしていたわけだ。
それで見つけたのが、「ピアノ300年の歴史を変える──未来鍵盤が音もデザインする」。

こういうタイトルの記事は、読むとたいてはがっかりする。
記事の冒頭には、こうある。
     *
ピアノの鍵盤は、白鍵と黒鍵が互い違いに組み合わさったものだ。だが、ひとりの天才ピアニストがその常識に真っ向から挑み、新しい鍵盤を生み出した。白鍵と黒鍵が段差なく一直線に並ぶ、その新しい鍵盤は、究極の音を求めた結果だ。
     *
天才ピアニスト、いったい誰だよ? という感じで読みはじめた。
新しい鍵盤の写真が、まず目に入る。

見慣れたピアノの鍵盤とは、違う。
ただ段差がなくなっているだけではない。
記事を読んでいくと、天才ピアニストが誰なのかが、わかる。
菅野邦彦氏だった。

もうこれだけで十分なはずだ。
GQ JAPANの元記事を読んでいただきたい。

聴いてみたい、と思う。
それも菅野先生の録音によって聴いてみたい、とおもう。

Date: 4月 12th, 2017
Cate: デザイン

「貌」としてのスピーカーのデザイン(その1)

スピーカーの風貌は、他のオーディオコンポーネント以上に気になる。
サランネットをつけて聴けば、そんなこと気にならないだろう──、
そうとも思うけれど、そうでもないこともある。

例えばスペンドールのBCII。
サランネットをつけて聴くことを前提としたフロントバッフルの仕上げである。
サランネットを外した状態をすぐにイメージできるけれど、
その音を聴いていると、サランネット付きの姿しか目に入らない。

その一方で、サランネットをつけた状態で聴いていても、
サランネットを外した姿に気になってしまうスピーカーがいくつもある。

自分でもなぜだろう? と思い続けている。
しかもサランネットなしの姿が気になって仕方ないスピーカーに限って、
サランネットを外した状態の音が標準と思われる。
フロントバッフルもきちんと仕上げがなされたりしている。

サランネットがあろうとなかろうと、その姿が気になるスピーカーの代表格が、
私にとってはJBLのDD66000である。

60周年記念モデルとして発表された写真を見た時から、
優れたデザインとは少しも思えなかった。

1998年にAppleからiMac(ボンダイブルーの最初のモデル)に感じたこと、
それに近いことを感じていた。

しばらくして知人宅でじっくりと聴く機会があった。
きちんとセッティングをつめていけば、なるほどいいスピーカーだ、と感じた。

その感じは聴き進むにつれて強くなる。
と同時に、DD66000の姿が耐えられなくなってもきた。

DD66000はサランネットありとなしの音の違いは、かなり大きい。
一度外した音を聴いてしまうと、つけた音は聴きたくない。

ならば目をつぶって聴けば? となる。
たいてい目を瞑って聴いている。
それでもDD66000の姿が浮んできて、
DD66000がのそのそと前に歩き出しそうな感じすらしてきた。

ここまでくると、聴いているのが気持悪くなってきた。
初めての体験だった。

Date: 3月 21st, 2017
Cate: デザイン

プリメインアンプとしてのデザイン、コントロールアンプとしてのデザイン(その1)

プリメインアンプとコントロールアンプのコントロール機能は同一である。
最低でも入力セレクターとレベルコントロールは必要で、
その他にテープセレクター、バランスコントロール、モードセレクター、
各種のフィルターとトーンコントロールなど、同じことが求められる。

つまりプリメインアンプとコントロールアンプのフロントパネルは、
ひとつのメーカーにとって、同じであってもおかしくはない。

実際にそういう製品はいくつもあった。
よく知られるところではラックスとマランツ(ともに1970年代)があり、
その他にもソニー、テクニクス、サンスイなどが挙げられる。

フロントパネルを共通、もしくはほぼ同じにすることで製造コストが抑えられる、
価格も抑えられるのであれば、購入を考えている人にとっては、
このことはデメリットにはならないだろう。

それでもプリメインアンプとコントロールアンプとで、
デザインをきっちりと変えているメーカーもいくつもあった(ある)。

ここてだ考えたいのは、そのことの是非ではなく、
タイトルにもしたように、
プリメインアンプとしてのデザイン、コントロールアンプとしてのデザインの区別を、
私のなかではどうしているのかについて、である。

例を挙げればラックスのSQ38FD/IIとCL35IIIのデザイン。
私にとっては、このふたつに共通するデザインは、プリメインアンプとしてのデザインである。

そのベースとなっているデザインに、
マランツのModel 7というコントロールアンプの存在があっても、そうである。

Date: 2月 11th, 2017
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ヤマハのA1・その9)

デザインに強い関心はあっても、デザインについて専門的に学んできているわけではない。
オーディオのデザインについて書きながらも、
どれだけオーディオのデザインを理解しているのか、を自らに問うている。

何かがひっかかってくるデザインのオーディオ機器の場合、
だからそのオーディオ機器単体で、そのデザインについて判断するのではなく、
いくつかの状況においての判断をするように心掛けている。

ヤマハのプリメインアンプのA1は、その意味でひっかかってきたデザインであった。
すでに書いているように、広告で見て、新鮮な印象を受けた。
その後、オーディオ店で実物を見て、精度感のなさに少しがっかりもした。

それでも気になるデザインのアンプであり、
「コンポーネントステレオの世界 ’78」での写真も、
A1のデザインについて考えるうえで、私にとっては重要な一枚だった。

瀬川先生は、以前、ヤマハのデザインはB&Oコンプレックスだ、といわれた。
熊本のオーディオ店でいわれたことだから、A1の登場よりも一、二年あとのことだ。

瀬川先生が、どのヤマハの製品のことを指してだったのかははっきりとしないが、
なんとなく察しはつく。

「コンポーネントステレオの世界 ’78」では、
そのヤマハのアンプがB&Oのアナログプレーヤーの隣に置いてある。
A1の下にはペアとなるチューナーT1がある。

B&Oとヤマハの後方にB&Wのスピーカーがあるというレイアウトだ。
ここでは、ヤマハのアンプとチューナーが浮いている。

B&WのDM5とB&OのBeogram 4002が並んでいるのに違和感はない。
にも関わらずA1とT1は浮いているように感じる。

Date: 2月 11th, 2017
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ヤマハのA1・その8)

ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’78」に、
ヤマハのA1もスペンドールのD40も組合せに登場している。

どちらも組合せも山中先生によるものである。
D40が登場する組合せは、スピーカーがスペンドールBCIIで、
アナログプレーヤーはリンのLP12にSMEの3009 SeriesIIIに、
カートリッジはオルトフォンのMC20、ヘッドアンプに同じオルトフォンのMCA76。

一昔前のドイツ系の演奏・録音盤を十全なかたちで再生したいというテーマでの組合せ。
メインとなる組合せはQUADのESLのダブルスタックで、
スペンドールの組合せは予算を考慮した組合せである。

カラーページに、この組合せの写真が見開きで載っている。
LP12もコンパクトなプレーヤーであり、D40もコンパクトなアンプ。
写真をみていると、まとまりのある組合せに感じた。

いま改めて見ても、視覚的にもいい組合せである。
D40はお世辞にもデザインされた、とはいえない。
LP12もこのころは電源スイッチが押しボタンで、洗練されているとはいえない。

BCIIも、凝ったデザインのスピーカーシステムではない。

この組合せで際立ったデザインのモノは、SMEのトーンアームぐらいであるが、
このトーンアームが視覚的に浮いてしまっているからといえば、そうではない。
うまく収まっているように感じられる。

うまい組合せだな、といまも思う。
いまも、この組合せを聴いてみたい、と写真は感じさせる。

一方のA1が登場する組合せは、女性ヴォーカルを中心に楽しみながらも、
優れたデザイン感覚を持つ装置を、というテーマである。

こちらもふたつの組合せがあり、A1の組合せは予算を考慮した案である。
スピーカーはB&WのDM5、アナログプレーヤーはB&OのBeogram 4002である。

Date: 1月 30th, 2017
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ヤマハのA1・その7)

ヤマハのA1というプリメインアンプのデザインについてこうして書いていると、
イギリスのいくつかのプリメインアンプのことを、対比として考えてしまう。

スペンドールのD40、
ミュージカルフィデリティのA1、
オーラ・デザインのVA40のことを考えている。

D40もA1もVA40も、
フロントパネルにあるのは電源スイッチと入力セレクター、レベルとバランスコントロールくらいである。
トーンコントロールもフィルターも、搭載していない。

D40はA1とほぼ同じころに登場している。
価格は当時145,000円だった。
1980年頃には、198,000円に値上りしていた。

A1の価格は115,000円、CA2000が158,000円だった。
A1もCA2000も、国産プリメインアンプの標準的なサイズと重量だったのに対し、
D40はW33.2×H9.6×D22.3cm、6.0kgという小ささで、出力も40W+40W。

内部を比較すると、国産プリメインアンプの同価格帯のモノとの落差を大きく感じてしまうほどである。

つまり国産プリメインアンプが、
自社製のスピーカーシステムをうまく鳴らすことをいちばんに考えていたとしても、
他社製のスピーカーシステムもきちんと鳴らすことを前提としているのに対し、
D40は割り切って、自社製(スペンドール)のスピーカーのみがうまく鳴ればいい、
そんな感じの音なのだ。

当時ベストセラーモデルだったBCIIと組み合わせた音を一度でも聴いたことのある方なら、
確かにそうだった、とD40の音を思い出してくれるだろう。

私はBCIIとの組合せでしか聴いたことがない。
BCIIIやSA1との音は聴いていないので、はっきりしたことはいえないが、
BCIIを鳴らすほどには、BCIII、SA1をうまく鳴らしてくれるわけではないだろう。

他社製のスピーカーシステムを鳴らすよりは、よく鳴らしてくれたであろうが、
そう思わせるくらい、D40はBCII専用と言い切っていいプリメインアンプだった。

Date: 12月 31st, 2016
Cate: デザイン, 書く

2016年の最後に

2015年の最後に書いたのは「2015年の最後に」だった。
「2015年の最後に」が6000本目だった。

ちょうど一年が経ち、「2016年の最後に」を書いている。
7004本目である。
7000本目はベートーヴェンの「第九」について書いたものである。

どうにか一年で1000本を書くことができた。
書いている過程で、「2015年の最後に」で書いたことを何度か思い出していた。

どれだけ書けただろうか、とふり返りたくなるが、
明日になれば7005本目を書く。

Date: 12月 24th, 2016
Cate: よもやま, デザイン

2016年をふりかえって(その5)

2016年夏あたりから、2020年の東京オリンピック/パラリンピックのエンブレムが、
街中で見かけるようになった。

学校にも、スーパーにも、企業のピルでも、
いろんなところで、ようやく決ったエンブレムが飾られている。

大きなサイズのものである。
オリンピックとパラリンピック、ふたつのエンブレムが飾られているから、
見ていて、最初に選ばれた(といえるのだろうか)佐野研二郎氏のエンブレムでなくてよかった、
と心底思った。

頭の中で、例のエンブレムが飾られているところを想像したからである。
あのエンブレムが、このサイズで街のいろんなところに飾られたとしたら……。

この東京オリンピック/パラリンピックのエンブレムの件では、
デザイナー、デザインに対しての誤解が生れ、広まったといえる。

しかもエンブレム問題に留まらず、
その後も、いわゆるパクリがインターネットで指摘される事態となった。

そして今年11月には、東京デザインウィークでの事故(事件)が起った。

デザイナーと呼ばれる、呼ばれたい、ごく一部の人たちの起したことが、
デザイン、デザイナーをより誤解させ、貶める。

こんなことをやらかしてしまう人たちをデザイナーと呼んでいいのだろうか、という疑問がある。
でも、世の中ではデザイナーと呼ばれている。

ならば本来の意味でのデザイナーと呼ばれるにふさわしい人をなんと呼べばいいのだろうか。
心あるデザイナーの中には、デザイナーという呼称を拒否したいと思う人もいよう。

デザイン(design)に現在進行形のingをつけると、
このブログにも使っているdesigningになり、過去形をつけるとdesignedである。

いまのごく一部のデザイナーと呼ばれていても、
デザイナーとは到底呼んではいけない人たちがやらかしたこと、やらかしていることによって、
designにつくのは、ingでもedでもなく、deadなのかもしれない。

design + dead = designdead

Date: 11月 6th, 2016
Cate: デザイン
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オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ヤマハのA1・その6)

ヤマハのA1が新鮮に映ったのは、シーリングパネルの採用にある。
1970年代後半からアンプにシーリングパネルを採用するモデルは増えていったが、
A1登場以前は、プリメインアンプで採用しているモノはなかった、と記憶している。

セパレートアンプにはいくつかあった。
けれどヤマハのセパレートアンプCI、C2、BI、B2は採用していなかった。
ヤマハのオーディオ機器でシーリングパネルを使ったデザインのモノは、
チューナーのCT7000だけだった。

CT7000は当時220,000円するチューナーだった。
A1は最高クラスのプリメインアンプではなかった。
けれどヤマハは、シーリングパネルを採用している。

CT7000とA1のシーリングパネルは、同じではない。
CT7000では一枚のフロントパネルの一部がシーリングパネルになっている。
A1のフロントパネルは三分割されたようにデザインされていて、
そのうちの一枚全体がシーリングパネルとなっている。

こういうシーリングパネルは、それまでなかったはずだ。
そこにA1のデザインの大胆さを感じたのかもしれないし、それが新鮮と映ったようである。

その時思ったのは、ヤマハはCA2000のデザインに、なぜシーリングパネルを採用しなかったのか。
CA1000IIIとCA2000のデザインは同じといえる。
パッと見で、CA1000IIIとCA2000のデザインの区別はつかない。

CA2000にはシーリングポケット採用のデザイン案があったのではないだろうか。
もしくはCA2000の上級機としてのCA3000というモデルが構想されていて、
そこでシーリングポケットを採用したのだろうか。

とにかくA1には軽い昂奮をおぼえていた。
けれど実機のA1をオーディオ店で見た時には、すこしがっかりした。
広告の写真で見て感じた精度感が、そこになかったからだ。

特に三つの正方形のプッシュボタンがそう感じさせた。

Date: 11月 4th, 2016
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ヤマハのA1・その5)

私がステレオサウンドを読みはじめたころのヤマハのプリメインアンプといえば、
CA2000かCA1000IIIが代表機種といえた。

CA2000のデザインは、中学生の目から見ても上品、洗練という表現が似合うと感じていた。
ステレオサウンド 42号のプリメインアンプ特集では、音室面でも高い評価を得ていた。
測定結果も、非常に優れたアンプであることがわかった。

いつかはセパレートアンプと思いつつも、現実にはプリメインアンプが先に来る。
CA2000はA級動作に切替えることもできた。
このことが、また中学生だった私には、とても魅力的だった。

ヤマハのCA2000を手に入れれば、とにかく不満なく聴ける──、
そう思っていた時期だ。

でも同時にCA2000には、色気や艶といった要素が、
磨き上げられている音質とは裏腹に欠けているような印象を、
瀬川先生の文章からも、つたない耳ではあっても実際に音を聴いても感じられた。

CA2000の優秀性をそのままに、色気、艶がもう少しだけ加わってくれれば……、
そんなことを思っていたところに、A1の登場だった。

それまでのヤマハのプリメインアンプの型番はCAがついていた。
アナログプレーヤーはYP、スピーカーシステムはNS、カセットデッキはTC、
ヘッドフォンはHP、チューナーはCT、スピーカーユニットはJAというように、
アルファベット二文字で始まっていた。

ただしセパレートアンプだけ違っていた。
CI、C2、BI、B2というようにアルファベットは一文字だけ。
C2とペアとなるチューナーT2もそうだった。

そこにA1という型番での登場。
C2はコントロールアンプのC、B2はベーシックアンプのBなのだから、
A1のAはアンプリファイアーの頭文字のはず──、中学生の私はそう受けとった。

しかもA1である。
このアンプならば、CA2000に欠けているものがあるのではないか。
その新鮮なフロントパネルの写真を見ながら、期待しはじめていた。

Date: 9月 19th, 2016
Cate: デザイン

TDK MA-Rというデザイン(その9)

TDKのMA-Rには、アルミダイキャストのハーフが使われている。
当時、MA-Rが最初にアルミダイキャストのハーフを採用したカセットテープだと思っていた。

けれどMA-Rの一年前に、テクニクスがダイキャストのハーフを採用している。
テクニクスの広告には材質にはふれていないが、
テープのハーフに磁性体を使うわけはないから、アルミのはずだ。

テクニクスがアルミダイキャストのハーフを採用したのは、三種のテストテープにおいてである。
RT048CFが周波数特性/角度補正用のクロームテープで、25,000円(桁は間違っていない)。
RT048Wがテープ速度/ワウ・フラッター試験用で、17,000円。
RT048NFが周波数特性/角度補正用のノーマルテープで、25,000円。

テストテープということもあって、プラスチック製の一般的なカセットケースではなく、
厚手のハードカバーの書籍を思わせるケースとなっている。

テクニクスのRT048シリーズはあくまでもテストテープであるから、
いわゆる生テープと呼ばれる録音可能なテープとは違うから、
生テープで最初にアルミダイキャストのハーフを採用したのはTDKのMA-Rであり、
RT048シリーズのことを知っている人もいまでは少ない、と思う。

RT048の実物は見たことがない。
カラー写真で見たきりだ。
ダイキャストのハーフの写真がなければ、
RT048の写真を見ただけで、ダイキャストのハーフであることに気づく人は少ないはずだ。

よく見れば、質感が通常とは違うことは気づいて、アルミダイキャストであるとは思わない。
RT048とMA-Rの違いを、写真でもいいからじっくりと比較してほしい。

MA-Rというデザインが、はっきりとしてくるからだ。

Date: 8月 15th, 2016
Cate: オリジナル, デザイン

コピー技術としてのオーディオ、コピー芸術としてのオーディオ(その6)

別項「2405の力量」でのことが、ここに関係してくる。

スピーカーの接続、アンプのセッティングが終り、どんな音が鳴ってくるか。
毎日触れている自分のシステムではなく、セッティングから始めるこういう音出しでは、
緊張とは違うが、少しどきどきに近いものがある。
あまりにもひどい音が鳴ってきたとしたら、残り時間はそうないわけで、
どうするのかを考え行動しなければならないことも関係してくる。

でもいまのところそんなことはない。
「新月に聴くマーラー」では、確認のために最初に鳴らしたのは、
レイ・ブラウンとオスカー・ピーターソンの”This One’s for Blanton!”から、
一曲目の”Do Nothin’ Till You Hear From Me”である。
出だしのピアノが鳴ってきた。

私の中にある、このディスクのピアノのイメージは、
長島先生が鳴らされていた音である。
同じ音が出てきたとはいわないが、
長島先生が、このディスクで出そうとされていた方向と同じではあった、といえる。

つづいてバド・パウエルの”The Scene Changes: The Amazing Bud Powell (Vol. 5)”から、
“Cleopatra’s Dream”を、さらにボリュウムを上げて鳴らした。

扉はもちろん閉めていたけれど、隣の喫茶室にも音は漏れていた。
しばらくしたら店主の福地さんが扉を開けてきいてきた。
「これ、バド・パウエルの演奏とは違いますよね」

きかれた私は、ちょっと考え込んだ。
何をきかれているのかがつかめなかったからだ。

誰が聴いても、バド・パウエルの演奏だから、
ジャズの熱心な聴き手でない私が、仮に喫茶室にいたとしても、
漏れ聴こえてくる音で、バド・パウエルとわかる。

彼がそう訊いてきたのは、バド・パウエルのディスクとは思えない音で鳴ってきたから、だった。
誰か、いまのジャズの演奏者が、バド・パウエルそっくりに演奏して、
それを最新録音で捉えたものだと思った、という。