Archive for category デザイン

Date: 5月 31st, 2025
Cate: JBL, デザイン

JBL フラッグシップモデルの不在(その4)

その3)で指摘していることは、何もJBLだけのことではない。
マッキントッシュのスピーカーシステム、ML1 Mk IIは、
もっとひどいというかあからさまというか、
とにかく品がない。

このことはML1 Mk IIが発表になった時に書こうと思っていたが、
近年のマッキントッシュのデザインのひどさについて、続けて書いていただけに、
今回は書かずにおこう、とやめていた。

けれどJBLの新しいSummitシリーズを見て、共通するひどさを感じたから、結局、こうやって書いている。

ML1 Mk IIは専用スタンドのベースに、“McIntosh ML1”と大きく入っている。
サランネット下部中央には、“Mc”とある。

スタンドにまで入れることはないだろう、とここまででも思うのに、
サランネットを取ると、トゥイーター、スコーカーをマウントしているサブバッフルにも、“McIntosh”と入れている。

ここまでしつこくしなくても思う。けれど、また先がある。
この“McIntosh”のロゴは、サランネットを装着していても、透けて見える。

このことについて、オーディオ評論家は、何か言っているのだろうか。

Date: 5月 19th, 2025
Cate: JBL, デザイン

JBL フラッグシップモデルの不在(その3)

ミュンヘンでのオーディオショウで発表になったJBLの新シリーズ。
オーディオ関係のウェブサイトが伝えているので、詳細は省くが、
これがJBLのフラッグシップモデルなのか……、と思った人は多いだろう。

来年はJBL創立80周年だから、本当の意味でのフラッグシップモデルは、その時なのかもしれない。

さすがJBL、と言いたくなるモデルが登場するかもしれないし、そうでないかもしれない。
期待はしているけれど、裏切られることも承知している。

今回発表になった新シリーズのスピーカーシステム三機種の写真を見て、菅野先生が書かれてことを思い出していた。
     *
 このわずかのつき合いの間に、私は、このスピーカーを欲しくなっている私自身を発見した。ただ、せっかくの仕上げの高さにもかかわらず、あの〝グランセプター〟のエンブレムはいただけない。前面だけならまだしも、サランをはずした時にはホーンの開口部にまで〝ONKYO〟と貼ってある。このユニークな傑作は誰が見てもオンキョーの製品であることを見誤るはずがない。本当はリアパネルだけで十分だ。エンクロージュアやホーンと看板とをごちゃまぜにしたようなものだ。
 私がこのシステムを買わないとしたら、このセンスの悪いブランドの誇示と、内容からして決して高いとは思わないが、とにかくペアで200万円という大金を用意しなければならないという理由ぐらいしか見つからない。
(ステレオサウンド 72号掲載「興味ある製品を徹底的に掘り下げる」より)
     *
JBLの新シリーズは、ホーン開口部の下側に、新シリーズを誇示するマークが目につく。
品がない、と思った。

これを、いまのJBLの人たちはカッコいいと判断したのだろうか。
だとしたら、80周年記念モデルも音、内容はともかくとして、
デザインに関しては、というよりもセンスが少しばかり不安でもある。

Date: 5月 3rd, 2025
Cate: オリジナル, デザイン

コピー技術としてのオーディオ、コピー芸術としてのオーディオ(その7)

(その6)は2016年8月に公開しているので、ずいぶん経ってしまったわけだが、
何も考えていなかったわけではない。

タイトルにコピー技術、コピー芸術を使っている。
2016年からの約七年間、コピーだけでいいのだろうか、と思うことが何度かあった。

コピー(copy)で日本語だと複写、複写に近い言葉として転写がある。
英語だとtranscription(トランスクリプション)。

何が言いたいのかというと、コピー技術、コピー芸術の中に、
トランスクリプション技術、トランスクリプション芸術という意味合いを込めていたのかだ。

Date: 11月 4th, 2024
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(その34)

オーディオというシステムのデザインの中心は、コントロールアンプだ、と書いた。

そう考えている私なのだが、自分のシステムに常にコントロールアンプが存在していたわけではない。
いわゆるパッシヴフェーダーを使っていた時期が、二年ほどあった。

そのころはCDばかりだったからではなく、
アナログプレーヤーは、トーレンスの101 Limitedで、
イコライザーアンプを搭載していただけでなく、
CDプレーヤーのスチューダーのA727、どちらもトランスによるバランス出力を備えていたから、
ドイツのエッグミラーのH型を使っていた。

オーディオというシステムのデザインの中心──、
そういうことはまったく考えていなかった時期でもある。

だからといって、個々のオーディオ機器のデザインについては、
あれこれ言ったり思うところもあったりしていたのだから、
いまから見ると、未熟だったなぁ、とも思う。

Date: 9月 29th, 2024
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(その33)

誰かのリスニングルームに入る。
たいていの場合、最初に目に留まるのはスピーカーだろう。

オーディオというシステムの主役は、やはりスピーカーである。
オーディオマニアすべてが、そう考えているわけでないことは知っている。

今も昔も、このアンプに合うスピーカーはなんですか、ということが言われている。
オーディオ雑誌の記事でも、いまもそうである。
そこにオーディオ雑誌の編集部のポリシーは感じられない。

主役はスピーカーだからこそ、
別項で「終のスピーカー」をテーマとして書いている。

主役であるスピーカーが、
ここでのテーマであるオーディオ・システムのデザインの中心か、言えば、
私はシステムのデザインの中心は、コントロールアンプと考える。

セパレートアンプならばコントロールアンプで、
プリメインアンプならば、そのプリメインアンプである。

そう考えているからこそ、ずんぐりむっくりのプロポーションのアンプは、
何を考えての、このずんぐりむっくりなのか、と問い詰めたくなる。

Date: 4月 27th, 2024
Cate: デザイン, 新製品

Beosystem 9000c

B&OのBeosound 9000といえば、
六連奏のCDチェンジャーである。
登場は、いまから三十年ほど前のことであっても、
初めてBeosound 9000の動いているところを見て、
これが似合う部屋とそれだけの経済力があったらなぁ──、とおもった人は、
私以外にもけっこうおられるはずだ。

そのBeosound 9000も、いまでは完動品はかなり少ないときいている。
故障してしまっても、修理が困難らしい。

B&OがBeosound 9000を完全に復刻して、
スピーカーシステムのBeolab 28と組み合わせて、
Beosystem 9000cとして再構築した。

トータル価格は、7,500,000円。
限定二百台とのこと。

このシステムをどう評価するかは、人によってそうとう違ってくることだろう。
私は、といえば、まず動いているところを見たい。
それからだ。

Date: 12月 2nd, 2023
Cate: デザイン

倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙(その5)

倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙」では、
図面や写真の展示もあった。

山荘Tという図面と写真があった。
裾広がりの階段の写真と図面である。

その平面図を見ると、ホーン型スピーカーのように見えてくる。
そして、次の瞬間おもったのは、これって、もしかして──だった。

山荘Tの「T」とは、この山荘の持ち主のイニシャルではないのか。
そうだとしたら、田中一光氏の「T」なのではないのか。

展示されているモノクロの写真から受ける印象が、
ステレオサウンド別冊「コンポーネントの世界 ’77」で見た別荘の写真と重なってきた。

別荘V・ハウス「ビルト・インの手法」の写真のことだ。
山中湖にある。

そこにはJBLの4341が、壁にビルトインされていた。
コントロールアンプはLNP2のほかにAGIの511もあり、
パワーアンプはマランツのModel 510M。
レコードをふくめ、これらのオーディオ機器すべて、特別誂えの収納棚にビルト・インされている。

当時、中学二年だった私は、いったいどんな人が、ここに住んでいるのだろうか、
どんな人の別荘なのだろうか、と想像してみたけれど、何もわからなかった。

それから一年後、ステレオサウンド 45号を読んで、田中一光氏の別荘だったことを知る。

このV・ハウスが、山荘Tなのではないのか。
確証は何もない。

ただそう感じただけである。

けれど、世田谷美術館で図録を購入した。
帰宅して、巻末の倉俣史朗年譜を眺めていたら、
1991年のところに、
《山中湖の田中一光氏の別荘を借り、妻の美恵子、長女の晴子とともに過す》とある。

これだけでは何の確証にもならないことはわかっている。
それでも、そうなのか、と思っている。

Date: 11月 30th, 2023
Cate: デザイン

倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙(その4)

世田谷美術館は砧公園のなかにある。
砧か──、とおもっていた。

帰り道、来た道をもどるよりも違う道を選びたい。
オーディオマニアだから、砧に反応する。

世田谷美術館を出て、砧八丁目をめざして歩き始める。
すぐに着くわけではないが、歩いた方が早い位置関係。

そんなところに何があるかといえば、瀬川先生が建てられた家がある。
ステレオサウンドに連載されていた、あのリスニングルームがある家である。

もう四十年以上経っている。
もう取り壊されて、別の建物があってもおかしくないほどの年月だ。

いまも残っているとは期待していなかった。
けれど、そこには「大村」の表札があった。

いまも残っている。
このことが、今回の「記憶のなかの小宇宙」ということと、
私のなかでは結びついていく。

Date: 11月 30th, 2023
Cate: デザイン

倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙(その3)

今日(11月30日)、「倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙」に行ってきた。

最寄りの用賀駅から世田谷美術館まで、住宅街を歩いていく。
車の往来が激しい環八をほとんど歩くことなく着けるのがいい。
途中、ステレオサウンドが入っているビルの前を通る。

このビルの少し先の横断歩道をわたると砧公園で、そのなかに世田谷美術館がある。
歩ければ十五分ほどかかる。

平日の午前中ということもあって、ゆっくり見ることができた。
見て感じたこと、書きたいことはいくつもある。

一つ書いておきたいのは、
オーディオに関心をもっているのであれば、
オーディオには直接関係ないだろう、とは思わずに来てほしい、ということだ。

行って見ても、オーディオとなんら結びつかない人もいよう。
でも、何かが結びついていく人も、きっといる。

世田谷美術館での開催は、2024年1月28日まで。
その後、富山県美術館で、2024年2月17日から4月7日まで、
京都国立近代美術館で、2024年6月11日から8月18日まで開催される。

Date: 11月 8th, 2023
Cate: デザイン

倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙(その2)

あと十日で、「倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙」が開催される。

ということを今日書くつもりでいたら、
こんな記事が飛び込んできた。
倉俣史朗デザイン、伝説のバー「COMBLÉ」(コンブレ)が復活!

今度こそ行ってみよう。

Date: 10月 23rd, 2023
Cate: デザイン

Where We Are – ヤマハデザイン研究所60周年企画展(その2)

最終日の今日、行ってきた。
平日の夕方にもかかわらず、会場には多くの人がいた。

熱気があった、と感じた。
できれば初日に行って、なにか書こうと思っていたのだけれど、
なかなか都合がつかずに、これを書いている時には、もう終ってしまっている。

いわゆるオーディオ機器の展示はなかったけれど、
無指向性スピーカーはあったし、
オーディオに関係しているといえるモノもあった。

もう少し会期が長ければ、とか、他のところでも開催してくれれば、とは思う。

今日、みてきたモノが、
これから先のヤマハのオーディオ機器のデザインにどう取り入れられていくのか、
それはいまのところなんともいえないが、
少なくとも期待してもいいのではないかと感じることがあった。

見終って会場をあとにしようとしたとき、入り口にあったパネルにある文章を読んでいた。
するとスタッフの方(おそらくデザイン研究所の方だろう)が、話しかけてこられた。

その話の内容に頷きながら、その人の熱っぽさを感じていたからだ。

Date: 10月 13th, 2023
Cate: デザイン

Where We Are – ヤマハデザイン研究所60周年企画展(その1)

ヤマハのデザイン部門が発足して、今年で60年ということで、
東京・六本木のAXISギャラリーで、
10月21日(土)から23日(月)まで、
Where We Are – ヤマハデザイン研究所60周年企画展」が開催される。

三日間という短い開催だけれども、
都合をつけて行くようにしたい。

Date: 8月 27th, 2023
Cate: デザイン

管球式プリメインアンプのデザイン(その6)

アンプにおけるフロントパネルについて考えていると、
ラックスのパワーアンプM12、それのモノーラル版のB12のことを思い出す。

ヒートシンクをフロントパネル側にもってきたデザインといえば、
QUADのパワーアンプ、405がある。

いま見てもしゃれたデザインだと思う。
これが大きすぎると、そうは感じないのかもしれないが、
405のサイズは、登場時の1976年では、100W+100Wのパワーアンプとしては小型だった。

いまではD級アンプの進歩によって、もっと小さなサイズでより大出力も可能になっているが、
405のころは、405のサイズと出力は、それだけでも訴求力があった。

M12は405の数年後に登場している。
おそらく405の影響を受けている。

M12もヒートシンクをフロント側にもってきている。
405はヒートシンクのフィンは、1cmほど突き出している程度だが、
M12はもっと長く突き出している。

本格的なヒートシンクを、サイドやリア側ではなくフロントにもってきているのは、
M12が最初かもしれない。

M12に採用されているヒートシンクではパワートランジスターが露出してしまう。
この手のヒートシンクを採用した海外製のアンプでは、
パワートランジスターにキャップをかぶせて安全性を確保しているが、
ラックスはそんなヤボな手法をとらず、突き出ているヒートシンクをメッシュで囲っている。

そして、この保護用のメッシュが、いわゆるフロントパネル代りなのだ。
M12にフロントパネルという一枚の金属板ではないけれど、
まったくないともいえないように感じてしまうところもある。

ここで語っているテーマとはまったく無関係とはいえないような存在である。

Date: 8月 27th, 2023
Cate: デザイン

倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙(その1)

11月18日から来年1月28日まで、
世田谷美術館で、「倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙」が開催される。

私が生きているあいだ、
これから十年か二十年のあいだに、もう一度、
倉俣史朗展が開催されるか、といえばないようにも思っている。

Date: 8月 21st, 2023
Cate: デザイン

管球式プリメインアンプのデザイン(その5)

ステレオサウンド 42号の表紙にもなっているヤマハのCA2000。
このプリメインアンプのデザインこそ、
42号登場のアンプのなかで、ラックスのSQ38FD/IIと対照的な存在のようにも感じる。

(その3)で引用している井上先生の発言。
そこに《普通アンプはそばで見ると、なるほどと思うことが多い》とある。
CA2000こそ、まさしくそういうアンプの代表でもあった。

アンプの中身について何も知らなくとも、
CA2000を管球式プリメインアンプと思うことは、まずない。

ここまで書いてきて、ヤマハには管球式アンプがなかったことに気づく。
ヤマハのプリメインアンプの最初の製品は、CA700である。
1972年に登場している。

翌1973年に、CA1000が登場している。
このころのCA1000にはパワーメーターはついていないが、
そのデザインはCA2000へとつながる最初のデザインである。

CA700とCA1000のデザインは、一年しか違わないのだが、
印象は随分と違う。

CA700に関しては写真でしか見たことがないが、
管球式アンプだよ、といわれれば、つい信じてしまうかもしれない面影がある。

CA1000には、そんな面影はまったく感じられない。