Archive for category デザイン

Date: 8月 27th, 2023
Cate: デザイン

管球式プリメインアンプのデザイン(その6)

アンプにおけるフロントパネルについて考えていると、
ラックスのパワーアンプM12、それのモノーラル版のB12のことを思い出す。

ヒートシンクをフロントパネル側にもってきたデザインといえば、
QUADのパワーアンプ、405がある。

いま見てもしゃれたデザインだと思う。
これが大きすぎると、そうは感じないのかもしれないが、
405のサイズは、登場時の1976年では、100W+100Wのパワーアンプとしては小型だった。

いまではD級アンプの進歩によって、もっと小さなサイズでより大出力も可能になっているが、
405のころは、405のサイズと出力は、それだけでも訴求力があった。

M12は405の数年後に登場している。
おそらく405の影響を受けている。

M12もヒートシンクをフロント側にもってきている。
405はヒートシンクのフィンは、1cmほど突き出している程度だが、
M12はもっと長く突き出している。

本格的なヒートシンクを、サイドやリア側ではなくフロントにもってきているのは、
M12が最初かもしれない。

M12に採用されているヒートシンクではパワートランジスターが露出してしまう。
この手のヒートシンクを採用した海外製のアンプでは、
パワートランジスターにキャップをかぶせて安全性を確保しているが、
ラックスはそんなヤボな手法をとらず、突き出ているヒートシンクをメッシュで囲っている。

そして、この保護用のメッシュが、いわゆるフロントパネル代りなのだ。
M12にフロントパネルという一枚の金属板ではないけれど、
まったくないともいえないように感じてしまうところもある。

ここで語っているテーマとはまったく不関係とはいえないような存在である。

Date: 8月 27th, 2023
Cate: デザイン

倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙

11月18日から来年1月28日まで、
世田谷美術館で、「倉俣史朗のデザイン ──記憶のなかの小宇宙」が開催される。

私が生きているあいだ、
これから十年か二十年のあいだに、もう一度、
倉俣史朗展が開催されるか、といえばないようにも思っている。

Date: 8月 21st, 2023
Cate: デザイン

管球式プリメインアンプのデザイン(その5)

ステレオサウンド 42号の表紙にもなっているヤマハのCA2000。
このプリメインアンプのデザインこそ、
42号登場のアンプのなかで、ラックスのSQ38FD/IIと対照的な存在のようにも感じる。

(その3)で引用している井上先生の発言。
そこに《普通アンプはそばで見ると、なるほどと思うことが多い》とある。
CA2000こそ、まさしくそういうアンプの代表でもあった。

アンプの中身について何も知らなくとも、
CA2000を管球式プリメインアンプと思うことは、まずない。

ここまで書いてきて、ヤマハには管球式アンプがなかったことに気づく。
ヤマハのプリメインアンプの最初の製品は、CA700である。
1972年に登場している。

翌1973年に、CA1000が登場している。
このころのCA1000にはパワーメーターはついていないが、
そのデザインはCA2000へとつながる最初のデザインである。

CA700とCA1000のデザインは、一年しか違わないのだが、
印象は随分と違う。

CA700に関しては写真でしか見たことがないが、
管球式アンプだよ、といわれれば、つい信じてしまうかもしれない面影がある。

CA1000には、そんな面影はまったく感じられない。

Date: 8月 10th, 2023
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(B&Oのデザイン・その2)

B&Oというブランドを知ったのは、「五味オーディオ教室」だった。
     *
 私がこれまで見聞したところでは、ヨーロッパでも、ずいぶんレコードは聴かれているが、まえにも書いたように、いわゆるオーディオへの関心はうすい。むきになってステレオの音質に血道をあげるのはわれわれ日本人と、アメリカ人ぐらいだろう。値段に見合うという意味で、国産品の音質は欧米のものと比べてもなんら遜色はない。リッパな音だ。
 ただし、カメラを持ち歩くのが嫌いなので写真に撮れないのが残念だが、ヨーロッパのアンプやレシーバーのデザインだけは、思わず見惚れるほどである。こればかりは、国産品もずいぶん垢抜けて来ているようだが、まだ相当、見劣りがする。B&Oの総合アンプやプレーヤーなど店頭で息をのんで私は眺め、見ているだけで楽しかった。アメリカのアンプにこういうデザインはお目にかかったことがない。
 オーディオ装置は、つづまるところ、聴くだけではなく、家具調度の一部として部屋でごく自然な美観を呈するものでなくてはなるまい。少なくともヨーロッパ人はそう思っているらしい。こうしたデザインは、彼らの卓抜な伝統にはぐくまれたセンスが創り出したもので、この点、日本やアメリカは逆立ちしてもまだかなわぬようである。
     *
《B&Oの総合アンプやプレーヤーなど店頭で息をのんで私は眺め、見ているだけで楽しかった》、
いったいどういうデザインなのだろうか、
この時は、ただただ想像するしかなかった。

B&Oの製品を見たのは、ステレオサウンド 41号だった。
モノクロ写真だったけれど、想像していたデザインとはまるで違っていた。

こういう製品(デザイン)があるのか。
あのころB&Oのデザインにふれた人ならば、多くがそうおもったはずだろう。

カラー写真は広告で見た。

はやく、一日でもはやく実物をみたい。
そうおもっても、熊本のオーディオ店では、どこにも展示してあるところはなかった。

B&Oの製品(デザイン)にふれることができたのは、東京に来てからだった。
それまでは写真のみで知るデザインでしかなかった。

それでもB&Oのアナログプレーヤー、Beogramシリーズの広告には、
リニアトラッキングアームの動く様の写真が使われたこともあった。

とはいえ実際に動くところを見るのは、もっと先のことだった。
そして気づいたのは、(その1)で書いているように、
B&Oのデザインの良さは、動きがある、ということだった。

このことは、実機を見たことがない者にとっては、
静的な写真だけでは理解し難かった。

Date: 8月 3rd, 2023
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(B&Oのデザイン・その1)

伊勢丹新宿店 本館五階には、B&Oショップがある。
Beolab 90がある。

B&Oは、OTOTENにもインターナショナルオーディオショウには出展していない。
各地で行われているオーディオショウでも同じだろう。

そんなこともあって、ひさしぶりに見るBeolab 90。
さっと入って見たらすぐに出るつもりだったけれど、
スタッフの方が「お聴きになりたいモノ、ありますか」と声をかけてくれた。

これがオーディオ店だと、特にない、とか言ってしまうのだけれども、
Beolab 90を聴かせてほしい、と。

Beolab 90の音を聴くのは二回目。五年ぶりである。

Beolab 90は、登場したころにステレオサウンドの表紙を飾っている。
新製品紹介でも取り上げられていたが、その後はほとんど取り上げられないまま。
存在は知っているけれども、聴いたことがないという人もけっこういるだろう。

B&OショップではApple Musicでの音出しである。
このことだけでさほど期待できないと思われるかもしれないが、
五年ぶりのBeolab 90の音は、いい雰囲気で鳴っていた。

グレン・グールドのモーツァルトのピアノ・ソナタを聴いた。
音の強弱のコントラストが、他のスピーカーシステムではなかなか聴けないほどに、
その表情の違いはきちんと出てくることもあって、聴いていて実にたのしい。

デパートという環境は、決して音にとっていい環境とはいえない。
Beolab 90の実力がどこまでのものなのか、そこまで見極められる環境ではない。

それでもスタッフの方が声をかけてくれなければ、
聴かずじまいだったのだから、聴けて良かったと思っている。

そしてひさしぶりにB&Oのオーディオ機器が動いているのをみて、
B&Oのデザインの良さは、動きがある、ところだと再確認もできた。

Date: 7月 29th, 2023
Cate: デザイン

管球式プリメインアンプのデザイン(その4)

いま書店に並んでいる管球王国Vol.109の特集は、
「インテグレーテッドアンプのストレートな音」で、
管球式プリメインアンプ、十一機種が登場している。

といっても、まだ読んでいないが、
ステレオサウンドのウェブサイトをみると、
十一機種中フロントパネルをもつのは、オーロラサウンドのHFSA01、
ラックスマンのLX380、カノア・オーディオのAI 1.10、
オーディオ・ノートのOverture PM5、レーベンのC5600Xと、五機種ある。

意外にもあるな、と思う。
けれど、記事中でフロントパネルのことについて語られているとは思えない。

Date: 7月 19th, 2023
Cate: デザイン

管球式プリメインアンプのデザイン(その3)

1975年のステレオサウンドのムック「世界のオーディオ」のラックス号で、
井上先生が、SQ38FD/IIについて語られていることが、
私にとっての管球式プリメインアンプのデザインを考えるうえでの根っこになっている。
     *
永井 井上さんがステレオサウンドに、離れて眺めたらどうか書いていましたが、それはラックスの製品の一つの特徴的な見方かもわかりませんね。
上杉 離れて見たら、ってどういうことですか。
井上 普通アンプはそばで見ると、なるほどと思うことが多いのですが、ラックスのアンプは離れてマクロ的に見たときにいわゆるアンプらしさが感じられるということです。そばで見れば、フロントパネルに細かい文字のレタリングがすごく多く入っています──たとえば、メイド・イン・ジャパンまで書いてあるのは他社にはないはずです。
永井 ちょうど38FDのパネルが、ちょっと暗くなったんですね。遠くから見るというのが、おもしろいと思った。
岩崎 大体、日本のアンプは、すぐ目の前に置いて見るようにしか作ってないからね。離れた状態で見るなんて考えてないでしょう。
     *
井上先生の《離れて眺めたらどうか》は、
SQ38FD/IIだけのことではなく、ラックスのアンプ全体についてのことだとはわかっている。
そのうえで、この井上先生が語られていることを読んだ上で、
もう一度、ステレオサウンド 42号のプリメインアンプの総テストを読み返す(眺めると)、
確かにヤマハのCA2000とラックスのSQ38FD/IIのデザインの、
もっとも大きな違いは、このことだと気づく。

42号よりも先に「世界のオーディオ」のラックス号は出ているが、
私は42号を読んで、けっこうあいだがあいて、「世界のオーディオ」のラックス号を読んでいる。

そういうことがあって、SQ38FD/IIのデザインについて語る上で、
《離れて眺めたらどうか》は、いまも忘れていないし、
ここでのテーマである管球式プリメインアンプのデザインについても、
私の価値判断の基準となっているのも、
実のところ《離れて眺めたらどうか》なのかもしれない。

Date: 7月 15th, 2023
Cate: デザイン

管球式プリメインアンプのデザイン(その2)

ステレオサウンド 42号の特集に登場する35機種のプリメインアンプのなかには、
ヤマハのCA2000(158,000円)も含まれている。

CA2000よりも高価な製品もいくつかあったけれど、
42号の時点で、最優秀機といえば、CA2000と多くの人が思っていたはずだ。

私はそうだった。
物理特性もふくめて、試聴記を何度も読み返しては、
CA2000こそ最優秀プリメインアンプなのだ、と感じていた。

そのCA2000は、いかにも当時のヤマハの製品らしいデザインに仕上がっていた。
CA2000を見て、オーディオのことを何も知らない人であっても、
ソリッドステートアンプだと思うだろう。

CA2000をみて、管球式プリメインアンプと思う人は一人もいないはずだ。
このことが、ここでのテーマでは重要になってくる。

プリメインアンプとしてのベストデザイン、
好ましいと感じるデザインについて、ではなく、
あくまでもなく管球式プリメインアンプとしてのデザインについて、であるからだ。

ラックスのSQ38FD/IIは、当時、唯一といえる管球式プリメインアンプだった。
ラックスの製品としては、5L15も誌面に登場している。

5L15を見て、管球式プリメインアンプと思う人は、これもまた一人もいないと思う。
そのくらい、SQ38FD/IIと5L15ではまとっている雰囲気が大きく違う。

オンキョーのIntegra A722nIIはどうかというと、
このデザインならば、管球式プリメインアンプといわれれば、納得しそう──、
私はそんなふうに感じていた。

このアンプも、SQ38FD/IIほどではないにしても、
そんな雰囲気をまとっている気がした。

SQ38FD/IIとIntegra A722nIIは、
開発年代が、他の33機種とは違って古い。

Date: 7月 14th, 2023
Cate: デザイン
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管球式プリメインアンプのデザイン(その1)

真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その16)」に、
Tadanoさんのコメントがあった。

コメントの最後に、
《ところで宮崎さんに質問したいのですが、宮崎さんの思う真空管プリメインアンプのベスト・デザインを、ぜひ教えてください。また、その理由についてもお聞かせいただけると嬉しい限りです!》
とある。

無視するわけにはいかないとおもいながらも、この質問は難しい。
別項「プリメインアンプとしてのデザイン、コントロールアンプとしてのデザイン」、
ここでのテーマと関係してくることだし、
《真空管プリメインアンプのベスト・デザイン》でもある。

Tadanoさんのコメントを読んだのが昼過ぎ。
それからいままであれこれ思い浮べてきたけれど、
《真空管プリメインアンプのベスト・デザイン》は、いまのところない、としかいいようがない。

けれど好ましいと思う管球式プリメインアンプがないわけではない。
これまで難度も書いているように、私が最初に読んだステレオサウンドは41号。
その次の42号は、プリメインアンプの特集だった。

53,800円(オンキョーIntegra A5)から、
195,000円(マランツModel 1250)までの35機種がとりあげられていた。

この35機種のなかで、オーディオに興味を持ち始めたばかりの中学三年生だった私が、
デザイン的に、他のアンプとは明らかに違うと感じたのは、
オンキョーのIntegra A722nIIとラックスのSQ38FD/IIの二機種だった。

管球式プリメインアンプはいうまでもなくSQ38FD/IIであり、
Integra A722nIIはソリッドステート(半導体)アンプだった。

Date: 2月 26th, 2023
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(続ヤマハのヘッドフォン)

五年ほど前に、ヤマハのヘッドフォンのデザインに違和感を覚える、と書いている。
そのころのヤマハのヘッドフォンは、ハウジングのところに、
大きくヤマハのマークが入っていた。

遠くから見ても、はっきりと、すぐにヤマハのヘッドフォンとわかるくらいに、
大きくロゴがあった。

五年前に書いているのだが、
そのころのヤマハのヘッドフォンと同じように、
ロゴやマークが大きく入っているヘッドフォンは他社製でもけっこう多くあった。

それらの製品は、それでもいいと思っている。
ヤマハのヘッドフォンは、そうであってほしくない──、
これは完全に個人的なおもいいれでしかないのもわかっている。

1970年代からのヤマハのヘッドフォンを見てきている世代にとって、
マリオ・ベリーニによるデザインのHP1、
ポルシェデザインのYHL003は、印象に残っている。

なにも外部にデザインを依頼しろ、といいたいのではない。

こちらが勝手に思い描いているヤマハの印象にそうデザインのヘッドフォンを出してほしい、
ただそれだけなのだが、
そういう製品がメーカーから発売になることは、そう多くはない。

今回、ヤマハからワイヤレスヘッドフォンが発売になった。
YH-L700AとYH-E700Bである。

どちらのヘッドフォンも、五年前のヤマハとはまったく違っている。

Date: 11月 5th, 2022
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(オーディオによるデザイン)

「オーディオのデザイン、オーディオとデザイン」をテーマに書いているけれど、
書きながら、「オーディオによるデザイン」について考えていかなければならない。
ここにきて、そうおもうようになってきた。

Date: 5月 22nd, 2022
Cate: デザイン

日米ヒーローの造形(その5)

「シン・ウルトラマン」を映画館で観て、ほんとうにそうだ、と感じたのは、
その4)でも書いているように、
ウルトラマン(着ぐるみ)でないウルトラマン(CGI)の立ち姿は、
仏像そのものであるということ。

着ぐるみに人が入っていて演じていては、絶対に実現できなかった姿である。

仮に、アメリカの映画会社がウルトラマンをCGで作り出したとしても、
こういうふうには描かないはずだ。

「シン・ウルトラマン」は、日本でこその造形だ、と思うだけでなく、
最近のハイエンド・オーディオと呼ばれる製品のデザインを見ていると、
正反対の世界であるだけでなく、醜悪の方向に向っているようにも感じてしまう。

このことは、日本のオーディオだけでなく、欧米のオーディオ機器を見ても、
そう感じる。

Date: 3月 17th, 2022
Cate: デザイン

日米ヒーローの造形(その4)

月曜日に、映画「ザ・バットマン(THE BATMAN)」を観てきた。
今日、5月から公開の「シン・ウルトラマン」の新しい映像が公開になった。
ウルトラマンの後ろ姿である。

いろんな意味で対照的だな、と思い、
その3)からあいだが空いてしまったけれど、また書き始めている。

「シン・ウルトラマン」に登場するウルトラマンは、
ウルトラマン(着ぐるみ)ではなくウルトラマン(CGI)である。

そのことがあって、というか、そのための、というべきなのだろうが、
ウルトラマンのデザイナーである成田亨氏の元のデザインそのもの、といえる。

ウルトラマン(着ぐるみ)にあった着脱に必要なファスナーを隠すための背びれがない。
カラータイマーもない。

それだけでない体型そのものが、人間のようでいて、人間と違っている。
後ろ姿を見ると、よけいにそのことを感じる。

なにか似ている──、と思いつつ、
シン・ウルトラマンの後ろ姿が公開になったことを友人のAさんに伝えると、
「仏像のような雰囲気ですね」という返事があった。

たしかに、そうだ。
仏像のようなシルエットである。

仏像のようなシルエットのウルトラマンが、怪獣と戦うのか。

Date: 12月 30th, 2021
Cate: デザイン

簡潔だから完結するのか(その6)

私が熱心に読んでいたころのステレオサウンドには、
若いころ、オーディオのいろんなことに挑戦してきた人が、
ある年齢に達してからは、高能率のスピーカー(ラッパ)と直熱三極管のシングルアンプの組合せ。

これが一つのオーディオの「あがり」のように、
音楽を楽しまれているオーディオマニアの方が登場していた。

私がまっさきに思い出すのは、(その4)で触れている長谷川氏である。
ステレオサウンド 54号の「スーパーマニア」に登場されている。

長谷川氏のリスニングルームの写真を、十年ほど前に、
別のオーディオ雑誌でみたことがある。
JBLのパラゴンを鳴らされていたころの写真だ。

長谷川氏は「スーパーマニア」の本文を読んでもらえばわかるように、
まさしくスーパーマニアと呼べる人である。

ハイエンドオーディオ機器を一式揃えて鳴らしているから、といって、
その人をスーパーマニアと呼べるとは限らない。

その長谷川氏が、「あがり」として、
シーメンスのオイロダイン、伊藤先生製作のアンプ、EMTの927Dstである。

このスタイルが、すべての人にとっての「あがり」となるわけではない。
長谷川氏にとっての「あがり」であり、
長谷川氏にとっての「あがり」とは、耳に近い音の実現ではなく、
心に近い音を鳴らすことだった──、
今年になって、そうおもうようになった。

Date: 8月 5th, 2021
Cate: デザイン

プリメインアンプとしてのデザイン、コントロールアンプとしてのデザイン(その11)

amazonがKindle Unlimitedのサービスを開始したとき、
ラインナップにそれほど魅力を感じずに、利用しようとは思わなかった。

それからずいぶん経って、今年になって、友人からステレオサウンドが、
Kindle Unlimitedで読めることを聞いた。
ステレオサウンド以外にオーディオアクセサリーも読めるし、
レコード芸術もある。

契約しようか、と思っていたところに、最初の二ヵ月間99円で利用できるキャンペーンが始まった。
なので先月から利用している。

ステレオサウンドも、四冊分読んだ。
217号のベストバイのところを読んでいて、
ここで書いている(取り上げている)ヤマハのコントロールアンプのC5000のところで、
目が留まった。

黛健司氏が書かれている。
《このデザインのオリジナルは1973年に登場したCA1000プリメインアンプで、和の洗練の極みと言いたいテイストに衝撃を受けた》
とある。

私はC5000のデザインは、コントロールアンプとしてのデザインではなく、
プリメインアンプのデザインだと書いていたのは、的外れなことではなかった。

いわれてみるとCA1000に似ているといえばそうなのだが、
C5000を見て、CA1000を思い浮べたことはこれまでなかった。

私がオーディオに関心をもったころには、すでにCA1000はCA1000IIIになっていた。
CA1000にメーターはなかった。
CA1000IIもメーターなしだったが、III型になり、メーターがつくようになった。
CA2000と共通のデザインでもある。

なのでCA1000といえば、私にはCA1000IIIの印象である。
今回、CA1000の写真を見較べた。

私には、CA1000IIIからメーターを外したデザインというふうに映った。