ボンジョルノのこと、ジャーマン・フィジックスのこと(その23)
ステレオサウンドで働きはじめたころ、うまいぐあいにロジャースの PM510があった。
仕事が終ったあと、先輩編集者のNさんと試聴室で、アンプをいくつか替えながら PM510を鳴らしたこともある。
そのころのステレオサウンドのリファレンスアンプはマッキントッシュの C29と MC2255の組合せだった。
これでも鳴らしてみた。それからたまたまあったマイケルソン&オースチンの TVA1も接いでみた。
そのほか、いくつか聴きながら思っていたのは、少なくとも私にとって、
アンプの違いによる音の差がはっきりと聴きとりやすいのは、JBLの4343よりもPM510だということ。
4343で聴いていたときには気づかなかった、気づきにくかったところが PM510では、
しかっりと提示される。だからといって、これみよがしではなく、さりげなくであるところが、またいい。
もちろんすべの面において、4343よりもPM510のほうが音が聴き分けやすいわけではなかろう。
アンプの音の違いにしても、また違う側面に関しては4343のほうが明瞭に鳴らし分けるところもあるだろうし、
また人によっては4343のほうが聴きとりやすい、と感じてもなんら不思議ではない。
とにかく買える買えないは関係なく、そのとき試聴室の倉庫にあり、気になるアンプは片っ端から試してみた。
そして私の中に芽生えた結論は、スレッショルドの800Aで鳴らしてみたい、だった。
瀬川先生はステレオサウンド 56号の記事中では、スチューダーのA68を接いで「うまくいった」と書かれている。
PM510の「音が立体的になり、粒立ちがよくなってくる」のは、アメリカ系のアンプや国産のアンプではなく、
スチューダーのA68で鳴らしたとき、である。
瀬川先生は、「ルボックスのA740をぜひとも比較したいところ」とも書かれている。
スチューダーのA68か、そのコンシューマー版のルボックスのA740。
そのどちらかで鳴らすことで、PM510の音の世界が完結するだろうけど、
瀬川先生は4343も所有されている。だからそ対極の世界として、こういう組合せはたしかに素晴らしいだろうけど、
私にとってはPM510しかない。
これがメインスピーカーシステムだけに、
もうすこしその「世界」を拡大したい、と欲張った気持、若さゆえの諦めの悪さみたいなものもあって、
素直にA68もしくはA740にしようとはまったく考えていなかった。