瀬川冬樹氏のこと(ロジャースPM510・その6)
JBLの4343とロジャースのPM510。
同時代のスピーカーシステムであっても、その音はずいぶん違うし、
音楽の聴き方も違ってくるといえる。
4343とPM510は、瀬川先生が愛されたスピーカーだ。
4341とLS5/1Aとしてもいいのだが、
私にとっては4343とPM510である。
別項「ステレオサウンドについて(その88)」でも引用している、
瀬川先生の未発表原稿の冒頭に、こう書いてある。
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いまもしも、目前にJBLの4343Bと、ロジャースのPM510とを並べられて、どちらか一方だけ選べ、とせまられたら、いったいどうするだろうか。もちろん、そのどちらも持っていないと仮定して。
少なくとも私だったら、大いに迷う。いや、それが高価なスピーカーだからという意味ではない。たとえばJBLなら4301Bでも、そしてロジャースならLS3/5Aであっても、そのどちらか一方をあきらめるなど、とうてい思いもつかないことだ。それは、この二つのスピーカーの鳴らす音楽の世界が、非常に対照的であり、しかも、そのどちらの世界もが、私にとって、欠くことのできないものであるからだ。
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私も4343とPM510に憧れてきた。
PM510を選んだ。
私も大いに迷った。
PM510にしたのは、価格のことも大きく関係しているし、
このころすでにステレオサウンドで働くようになっていたから、
JBLは試聴室で日常的に聴ける、ということももちろん関係している。
だから自分でも、なぜ、この二つのスピーカーに対して迷うのか、と考える。
まだはっきりとした結論は出ていないが、それでもこうおもっている。
冒険(4343)と旅行(PM510)なんだ、と。
このことが、JBLで音楽を聴いている人は、ロマンティストなんだ、ということにもつながっている。