素材考(柔のモノ・その6)
私が初めて買ったCDプレーヤーは、マランツのCD65である。
CDが登場してから三年目にして、やっと自分で購入した。
それ以前もCDプレーヤーは使っていたが、借りものだった。
CDプレーヤーは1982年の登場からすべての機種を聴いていた。
まだまだ急速に良くなっていくオーディオ機器だけに、
無理していいモノ(高額なモノ)に手を出すのは控えていた。
とはいえ最新のCDプレーヤーの音を、手軽な価格帯で聴けるモデルということで、CD65を選んだ。
1985年にはCD34も登場している。
CD34は59,800円、CD65は64,800円だった。
人気があったのはCD34のほうだったが、素直に音が拡がるよさがあった。
いわゆる聴感上のS/N比がいいのは、CD65だった。
CD65は手に持つと、軽い。
CD34の方がずしっと重く感じられる。
比較すると、CD65はメカニズムを含めて、軽量に仕上げられている。
シャーシーは、いわゆるプラスチックだった。
井上先生の試聴が終った後に、
「これで金属シャーシーだったら……」といったところ、
必ずしも金属が優れていて、プラスチックが悪いとは限らない、と返された。
プラスチックというけれど、いまではさまざまな種類があって、
物性のコントロールがかなりできるようになっているから、
プラスチックをあなどってはいけない、ということだった。
いまから30年以上の前のことを、ふと思い出した。