羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その4)
音色は、ねいろ、とも読み、おんしょく、とも読む。
オーディオを語る際の音色は、おもにおんしょくである。
もう十年以上前になるが、菅野先生が音触(おんしょく)という造語を使われはじめた。
いまおもえば、このときなぜ気づかなかったのかだろうか。
音色、音触、どちらもおんしょくである。
ならば音の色見本を、いろみほんと呼ばずに、しょくみほんと呼べば、音の触見本を連想しても不思議ではない。
でも、音触という言葉に出会ってから、結局十年以上かかった。
それも羽二重=HUBTAEの登場というきっかけがなければ、まだ気づいていなかった。
いちど気づくと、あのことも気づかせてくれるきっかけとだったんだ……、と思い出すことがある。
九年前のことだ。
川崎先生が、五感について話された。
五感とは目(視覚)・耳(聴覚)・鼻(嗅覚)・舌(味覚)・皮膚(触覚)、
この五つの感覚を、何の疑いもなく、そのまま信じている。
けれど、川崎先生は五感ではなく二感だ、といわれた。
人間には視覚と触覚の、ふたつの感覚しかない、ということである。