羽二重(HUBTAE)とオーディオ(その12)
KK塾、三回目、
講師の石黒浩氏がモダリティの数について話された。
人間の認識において重要なことは、モダリティの数であり、
少なくても多すぎてもいけないということだった。
その数は二つだ。
二つのモダリティが満たされていると、人の認識は本物と錯覚するとのこと。
実例として、ある人の声を後方からスピーカーで鳴らす。
声の再生だけではモダリティは一でしかない。
ここにもう一つ、別のモダリティを足す。
例えば、その声の主がつけている香水の匂いを、声といっしょにかがせる。
声と匂い、モダリティが二つになる。
すると本人が真後ろにいて話しかけていると錯覚する。
ではもうひとつモダリティを加えると「不気味の谷」の問題が発生するため、逆効果になるそうだ。
二つのモダリティが、足りない情報を人間の脳が勝手に想像(補充)するから、らしい。
この話を聞いていて、以前川崎先生が話されていたことを思い出していた。
五感ではなく二感だ、ということ。
人間には視覚と触覚の、ふたつの感覚しかない、ということである。
まったく同じことをゲーテも語っている。
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視覚は最も高尚な感覚である。他の四つの感覚は接触の器官を通じてのみわれわれに教える。即ちわれわれは接触によって聞き、味わい、かぎ、触れるのである。視覚はしかし無限に高い位置にあり、物質以上に純化され、精神の能力に近づいている。
(ゲーテ格言集より)
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石黒浩氏の実験における二つのモダリティ(声と匂い)は、
どちらも触覚・接触の器官を通じての感覚である。