本末転倒だったのか(その3)
一台の自転車を、オーディオシステムにあてはめて考えてみると、
ホイールこそがスピーカーかもしれない。
空気に接していて、その空気を振動させて疎密波をつくり出すのがスピーカーなのだから、
地面と接して人と自転車を前に進めていく働きをしているのタイヤをふくめたホイールであり、
どちらも動くこと(スピーカーは前後、ホイールは回転)で仕事をする。
アンプはそのスピーカーを駆動するわけだから、いわばエンジンといえる。
自転車でエンジンとなるのは乗り手である。
となると自転車のフレームは何なのか。
アンプとスピーカーの間にあるのはスピーカーケーブルである。
フレームはスピーカーケーブルなのか。
こんなふうに捉えると、フレームはなんと地味な存在なのか……、となる。
こんな捉え方もできる。
ホイールはスピーカーの振動板である。
この振動板に駆動力を発生させるのは磁気回路であり、
乗り手は磁気回路に相当する。
となると自転車のフレームは、スピーカーユニットのフレームに相当する。
スピーカーケーブルなのか、スピーカーユニットのフレームなのか。
どちらにしても直接は目立たない存在である。
自転車にとって、視覚的にもっともその自転車の性格を特徴づけるフレームなのに。