真夏の夜の戯言(その5)
音の分離技術は、日々進歩しているようだ。
たとえば市販されているCDからヴォーカルだけを検出する、
もしくはヴォーカルだけ削除する、ということが現実のものとなっている。
しかも検出の精度がどんどん高くなっている。
ということは、モノーラル音源をステレオにすることが現実味を帯びてきたことでもある。
それもモノーラルで録音されたオーケストラであっても、
ステレオに分離できるように、そう遠くない将来可能になるような気がしている。
モノーラル音源から、それぞれの楽器の音を検出し分離していく。
第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス……、
というふうにである。
オーケストラのすべての楽器の音を分離できたら、
録音された状況と同じ配置に、それぞれの音を配置していく。
そして合成することで、モノーラル音源をステレオに分離することは、
理屈の上では可能のはずだ。
正確な音の分離には、そうとうな時間と手間が必要となるだろうし、
それぞれの楽器の音源の配置にも、そうとう慎重に行う必要があるはずだ。
その際に録音現場の残響をどう処理するのか。
実際に行おうとすると、次々に細かな問題が出てきて、
それを処理していくだけでも大変なことになると思う。
それでもいまのデジタル信号処理による音の分離は、
少なくともそういう夢を見させてくれるだけのレベルに達してきている。
モノーラルからステレオへの技術の実現は、
意外にも早く訪れるのかもしれない。