オーディオの殿堂(その3)
一昨日のスピーカー、昨日のアンプ、
今日のプレーヤー関係の殿堂入りの機種の発表を見て、
改めて、この「オーディオの殿堂」という企画の無理な面を感じざるをえなかった。
「オーディオの殿堂」は、
いわば50号の旧製品のステート・オブ・ジ・アート賞の焼き直しともいえる。
50号は1979年夏に出ている。
いまから四十年以上前である。
この企画に登場しているオーディオ機器は、まさしく「オーディオの殿堂」といえた。
オーディオの歴史を一端を窺い知れる面もあった。
勉強にもなった、といえる。
過去には、こんなスピーカーやアンプがあったのか。
もちろん知っている機種もあったけれど、初めて知る機種も少なくなかった。
ジェンセンのG610Bは、50号で初めて、その存在を知ることができた。
50号の特集は、何度も読み返した。
似た企画、同じような企画である「オーディオの殿堂」には感じられなかったことが、
いくつもあった。
50号をひっぱり出してくるまでもない。
それほどわくわくしながら読んだ50号なのだから、しっかりと憶えている。
ならば、今回も旧製品のステート・オブ・ジ・アート賞をやればよかったのか──、
そうとは思わない。
旧製品のステート・オブ・ジ・アートは、1979年ごろだったから可能だった企画である。
それに50号の一年ほど前まで、「クラフツマンシップの粋」という連載が続いていた。
この連載があったからこその旧製品のステート・オブ・ジ・アートでもあった。
今回の「オーディオの殿堂」には、それもない。
たとえあったとしても、これまで市場に登場してきたモデル数をふり返れば、
いかに難しい企画というか、無理な企画というのが誰の目にも明らかだったはずだ。
結果、中半端な印象を拭えないし、偏ってもいる。
なぜ、いまになっての「オーディオの殿堂」なのか。