オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ダストカバーのこと・その10)
以前のオーディオ機器では、ウッドケースにおさまっていたり、
サイドにウッドパネルを採用することが、ひとつ格上の製品というイメージにつながっていたし、
高級感を醸し出すためにもよく使われていた手法であった。
たとえば私が高校生の時に無理して買い、愛用していたサンスイのプリメインアンプAU-D907 Limitedも、
サイドにウッドを採り入れていたし、天板の一部は木目仕上げとなっていた。
ベースとなったAU-D907はブラック仕上げの、木はどこにも使っていなかったけれど、
その限定版で、磁性体をできるだけ追放したことを強調する意味でも、
AU-D907 Limitedにはウッドのサイドパネルが採用された。
このアンプを手に入れたばかりのころは、初めてのウッドパネル採用のオーディオ機器だっただけに、
素直に嬉しく思っていた。
ウッドパネル採用のオーディオ機器を手に入れることができた、という感じだった。
けれど、それも数ヵ月も経てば、冷静にAU-D907 Limitedを眺めるようになる。
そうするとAU-D907の、あの洗練こそされていないけれど、精悍な感じのするフロントパネルに、
果してウッドのサイドパネルは似合うのだろうか、と思えてくる。
限定版であることを外観でもはっきりと表していることは、
ユーザーとしては嬉しいことではあるものの、その手法がうまくいっていないと、
その部分が、逆に気になってしまう。
どうも私はウッドケースやウッドパネルに、あまり魅力を感じないのかもしれない。
そんな私でも、QUADのコントロールアンプの33とチューナーのFM3を横一列に並べておさめることができる、
木製のスリーブは、美しいといまでも思っているし、
33とFM3、それにスリーブの組合せはいつかは欲しいし、
もっといえば、この組合せで満足できるような聴き手になれれば、
どんなにしあわせだろうか、とも思っている。